ほのぼの生存戦略、気ままに生きるのは難しい   作:こふし無双

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一章66話 過ぎ行く日々 マリエッタ①

 

 そしてそして、またある日のこと。

 その日は二層に潜った日のことだった。

 

 

 最近は遺跡に潜った日には件の美味しい料理店――『キーブ・デリキーエ』で夕食を食べると決めている。非常に美味いが、その分値段が張るので、毎日行くのは少し抵抗がある。

 まあ、現在の収入のペース的に毎日行っても問題は無いのだが、なんとなく、特別な日に行く事にしている。そして、遺跡に潜った後はギルドで希少品を換金しているので、多くの金が手に入る。まあ、財布の紐が緩むというやつだろうか。これだけ金貨を入手したのだから、そういう日くらいは行っても良いだろうということで、高い店に入っている。

 

 夜の大通りを歩きながら店へと向かう。以前は夕方に行っていたが、最近は夜に行く。なぜかというと探索を変則的に行っているからだ。

 昼にギルドで昼組の帰還を確認し、その後の遺跡に潜る。遺跡の中では、クールタイムを研究したりしつつ、一層と二層を探索し、夕方に一度、腐る恐れがある採取物を持ってギルドに戻り換金作業に勤しむ。そうして、換金作業が終わったら再び遺跡に戻り能力の検証をする。夜組がだいぶ帰還したあたりで、遺跡を出て店へと向かう。換金作業後に腐る恐れがあるものを遺跡で見つけた時は採取せず放置し消失現象を待つ。

 このやり方だと夜組とも昼組とも会う機会がないので、内気で隠し事が多い俺には合っていると思う。また腐らないものは換金していないので、段々と宿に希少品が溜まっていく。いつか別の街に行く機会があったら、その時に売却を行おう。

 

 そうこう考えているうちに店についた。やはり混んでいる。まあ、夕方に来た時でさえ混んでいたのだから、人々が賑わう夜になれば、さらに混雑するのは当然と言える。本来なら待つしかないところだが、今の俺にはもう一つ手がある。俺は店内を見回すと、向こうもこちらに気付いたのか大きく手振ってきた。店員に待ち合わせであることを告げ、手を振ってきた茶髪の少女――マリエッタのいるテーブルへと向かった。

 

「マリエッタさん、相席良いですか?」

 

「良いよ、良いよ! 今日は遅かったね! カイさん!」

 

 相変わらず力強い声音だ。俺はマリエッタのむかいの席に座り、メニューを軽く見た後にいくつか料理を注文する。それに合わせてマリエッタも飲み物を一つ注文した。

 この店で食べる時は、最近はマリエッタと相席している。こうなった経緯は二回目に二層を探索した日に遡る。その日ははじめて夜まで探索をしていた。夜の込み具合についてあまり深く考えずにこの店に流れ着き、想像以上に混んでいて、店を変えようか悩んでいた時に、店内にいたマリエッタに声をかけられたのだ。彼女に相席を勧められ、それに従い、彼女と夕食を囲った。

 彼女は以前言っていた通り、この店の常連のようで、いつも夜ごろこの店で食べるらしい。そしてその時、俺の探索の戻りが夜ごろになるという話が話題になり、マリエッタから、今後もタイミングが合えば相席しても良いという言葉を頂いた。

 彼女曰く、俺は良い人で話しやすいので一人で食べるよりも一緒に食べたいとのことだ。とても高い評価を貰えて純粋に嬉しく、それ以来、こうして、タイミングが合う時は相席させてもらっている。

 

「思ったより探索に熱中してしまって」

 

「おお! 流石はソロ十層! 気合が違うね!」

 

 本当は二層なので、少し気まずい。

 

「はは……気合はまあ、それなりに……マリエッタさんはどうですか? 最近の探索は」

 

「かなり良いよ! この前の探索は二十三層まで行ったし、私も仲間も傷一つ負わなかったし、あと拾えた素材も凄かったよ! 滅多にお目にかかれないレアもので、『ルカシャの灰』っていうんだけど分かる?」

 

 知ってる。というか、持ってる。

 

「ああ、聞いたことあります。かなりレアで有名でしたよね。凄いですね、マリエッタさんのパーティーは。流石はAAランクパーティーですね」

 

 実際、『ルカシャの灰』はかなり貴重で、一般的に入手が難しいらしいからな。まあ、俺も持ってるけど……

 

「まあね! とはいっても、流石に『ルカシャの灰』は貴重過ぎて、パーティーの皆、腰を抜かしちゃったよ! うちのリーダーは探索者として長いんだけど、それでも『ルカシャの灰』は初めて採れたって言ったから、やっぱ凄いんだと思う」

 

「実際凄いですからね。中々見つからない聞きますし」

 

「だよね! あ、そうだ! それで『ルカシャの灰』でかなり稼いだから、今日は奢るよ、カイさん!」

 

 それはなんとも気前の良い話で。

 

「ええ、ああ、いやいや、そんな悪いですから」

 

 俺も結構稼いでるし……というか、下手したらパーティーで稼ぎを分配しなければいけないマリエッタよりも稼いでいるかもしれない。

 

「いいって、いいって! 遠慮しないで! こういうのは貰えるときに貰っときなって!」

 

「いやいや、自分も稼いでるんで、今日も結構稼いだので、大丈夫ですよ」

 

 お金があるのに奢られるのは気まずいので断る。

 

「だから、遠慮しなくていいって! 私も昔はよく、深層の探索者に奢ってもらったし、カイさんもこういうのは慣れてときなって!」

 

「いやいやいや、相席まで許してもらってるので、そこまでしてもらうと悪いですから」

 

「んー! そっか! じゃあ、まあいっか! それで……そうそう! 遺跡の話だった。遺跡は順調! 四人とも『ルカシャの灰』で腰抜かした! そんな感じ!」

 

「そういえば、マリエッタさんのパーティーって四人構成なんですよね。よくパーティーって三人から五人が多いですけど、これって何か理由あるんですかね?」

 

「そのくらいの数が活動するのにちょうどいいんじゃない? 多すぎると連帯しにくいし、分け前も減るから」

 

「なるほど……以前、ギルドで、『トーライト鉱石』を採取するグループに誘われたんですけど、あれは結構な人が集まっていたみたいですが、これは例外って感じでしょうか?」

 

「あー、十七層のやつ? あれは危険だから行かない方が良いよ。重傷者良く出すし」

 

 マリエッタは質問には答えずに、けれど件の集団に思うところがあったのか、少し声を低くして言葉を放った。

 

「気を付けます」

 

「まあ、ソロで十層行けるカイさんなら平気か!」

 

「上手く立ち回りたいです。ところで、深層の探索ってどんな感じなんですか。あの辺りは魔獣も危険ですよね。何か中層や低層とは違うところってあったりします?」

 

「それは層によるかな! でも十五層を超えるとどこも個性的って感じ! 低層はわかりやすく簡単だし、中層は似たような感じのが続く難しさだけど、深層は個性的だね! 層毎に攻略法が全然違う。だから対策が変わってくるし、必要な人員や装備も違う。固定パーティーでやりくりするならパーティーメンバー全員が万能に使える必要があるし、その場限りのパーティーなら強さと協調性を両立させる必要があるから、どっちにしろ難しいね!」

 

 なるほど。確かに層毎に攻略法が違うならば、数人の固定メンバーだと対応力が必要になるな。そしてそれを満たすには万能性が要求されると。一方で、その場限りの方は強さと協調性か。これは確かに深層攻略は難しそうに聞こえるな。道理で深層組が少ないはずだ。まあなぜか俺の知り合いには結構多いけど。

 

「個性的ですか。しかし、聞けば聞くほど難しい感じがしますね。マリエッタさんのパーティーも全員、万能って感じなんですかね?」

 

「うん! そうだよ! うちは皆、何でもできるね! でも、まあそれでも四人で組まないと深層は……あー、一人例外はいるけど、まあ基本的に四人で進まないと深層は行けないから、むしろ中層をソロでやってるカイさんの方が凄いかも!」

 

 そうなのだろうか。その辺の感覚は上手く分からないのだが、やっぱりソロって難しいのかな。

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