ほのぼの生存戦略、気ままに生きるのは難しい   作:こふし無双

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一章90話 お別れは少し寂しくて

 

「はい?」

 

「せっかくだし二人で二次会しようよっ」

 

「あー、いえ。明日、朝早いので……」

 

「えー。やっと二人っきりになれたのに~」

 

「まあ、その……クリスクに戻ったら、時間はあるでしょうし、またこういう風な機会を作ってみるのもいいかもしれませんね」

 

「うむむー。その時は、今日のお店か、それ以上に美味しいお店をお兄さんには期待だね」

 

「まあ、今日のお店くらいなら、なんとかなるかと」

 

「ほうほう。何だか余裕そうだなー。お会計の時も全然ぴんぴんしてたし、もっと高いものを注文すればよかったよ~」

 

「余裕というか……必要経費としてある程度予想していたので……予め知っていた事が起こっても、そんなに慌てないですよ。勿論、食費としては、まあ高かったな、とは思ってますよ。あー、でもこういのって食費じゃなくて交際費とかですっけ? だとしたらそんなに高くは無いのかな?」

 

「高くない、か~。うーむ、お兄さんのお財布を空っぽにする計画を練り直さないとなー」

 

「空っぽにするは許して下さい」

 

「だいじょーぶ、だいじょーぶ。お会計の時に足りなくなったら、スイちゃんが補填してあげるから~。他にもお金が足りなくなったらどんどん融資してあげよー」

 

「ちなみに、利息は?」

 

「利息は無しで良いよ。代わりに担保として、お兄さんを独占できる権利を貰おう~。今日みたいにユリアたちに邪魔されたくないからね~」

 

「独占できる権利って何時から何時くらいまでですか?」

 

「毎朝礼拝の時間と~、後はデートの時間はずっとかな~。他の時間はお兄さんの好きにしていいよー。ユリアとかとイチャイチャしたかったらしても良いよ」

 

 それって今までとあまり変わらないな。礼拝(ざつだん)中は誰かが介入してくる事は殆ど無いだろうし、夕食だって基本的には他の人が介入することは無いだろう。まあ、今回は偶々、隣のテーブルに知り合いがいたが、それも稀だろう。つまり、ほぼデメリット無しで融資が受けれるわけだ。俺が金欠だったら考えたかもしれない。まあ、お金があるので、別に受けないのだが。

 

「なるほど……まあ、機会があった考えてみます」

 

「機会が無くても考えてみてね~」

 

 スイの声が夜に消えるとともに、また少し無言になる。そして、そんな無言を嫌ったのか、スイが口を開いた。

 

「そうそう、お兄さん。言ってなかったかもだけど、聖導師は未来が視えるんだよ~」

 

「未来を……」

 

 確か『導き』と呼ばれる技術だったはずだ。

 

「そーそー。まあ、そんなに精確なやつじゃなくて、漠然とーって感じだけどね~」

 

「なるほど、それで……?」

 

「うむうむー。そ、れ、で、ねー、スイちゃんくらいの天才聖導師だと、結構当たる未来が視えるんだよね~。そこで、お兄さんの未来もちょこちょこ視といたんだけどー。どう、聞きたい?」

 

「そこそこ、興味があります」

 

「ふむふむ。良し。教えてあげよー。なんと! お兄さんは将来、スイちゃんと、らぶらぶデートをしていました……! やったね~」

 

「えーっと、ああ、つまり、クリスクに戻ってきて、それでスイさんとまた今日みたいに食事会をしたんですね。今日がお別れ会だから、なんでしょう? 帰還祝いみたいな?」

 

「んー、たぶん違うと思うよ~。だって、何かクリスクじゃない場所みたいだったから。街の中に綺麗な川があってー、橋の上で~、こうっ、らぶらぶしてたんだよね~。あんな感じの橋はクリスクで見たことが無かったから、きっと別の街だよ~。たぶん、お兄さんが辛抱たまらなくなってスイちゃんと観光に行きたいって言ったんだろうなー。それで、優しい優しいスイちゃんはオーケーして、二人で観光……! うーん、間違いないね!」

 

「なるほど……? これは関係の無い話ですが……前言ってたスイさんが異動するかもしれないって話ありましたよね。近々異動する予定とかありますか?」

 

 色々なパターンが考えられる。前言っていたスイの異動がその一つだ。スイが異動し、異動先でたまたま俺と会う可能性もある。もしかしたら、俺がリデッサスにいるうちに、リデッサスの大聖堂にスイが異動してきて、その街並みを見たのかもしれない。

 まあ、何らかの理由があって、クリスクに戻った後、スイを観光に誘うという可能性も無いことも無いだろうけど。あとは、他にもそもそも予知能力が精確ではないとか無いとか、スイが俺に嘘を吐いているとかもあるかもしれない。

 

「んん~。関係ない話だから分からないな~」

 

「じゃあ、関係のある話なんですけど、偶々スイさんの異動先に自分がいたとかはないですか?」

 

「ん~。未来の話だから分からないな~」

 

「未来の話を始めたのはスイさんだったような……」

 

「知らなーい、知らなーい。とにかく、私とお兄さんはどこか遠い街でらぶらぶデートするんだよ~。お兄さんはそれを楽しみに、リデッサスでは無理しないようにね~。せっかくスイちゃんとデートできるのに、リデッサスで怪我とかしたら良くないからね~」

 

「了解です。楽しみにします」

 

「うむうむ~。実際お兄さんも私も楽しそうだったから、期待してて良いよ~」

 

 そうして話が一区切りついたところで、俺が泊る宿のエントランスが見えてきた。話ながら歩いていたからだろうか、思ったよりも早かった。

 

「うむむー。着いちゃったか……これでお兄さんとはお別れか~」

 

 スイはとても残念そうな顔をした。

 

「まあ、別にずっと別れるわけではないですし、さっきのスイさんの話が当たるなら、どこかで会えるんでしたよね。あと、まあリデッサスに着いたら、前に言ってた手紙も送りますよ」

 

「そうだね~。デートも手紙も期待してるよー、お兄さん」

 

「手紙は近いうちに。それじゃあ、明日も早いので、これで。クリスクでは色々と、ありがとうございました。楽しかったですよ」

 

「うん、私も楽しかったよ~、お兄さん……それじゃあね。寂しくなったら、いつでもスイちゃんの名前を唱えていいからね」

 

 スイは笑顔を作りながらも、そんな事を最後に言った。自分の名前をまるで神の名前みたいに言うとは、最後までマイペースな聖導師であった。

 

 手を振るスイと別れた後は、そのまま宿の自室へと戻った。この宿はこちらの世界に来てからずっと泊まっていたが、それも今晩で最後だ。まあ、またクリスクに来たら泊まるかもしれないが……まあ、とてもお世話になった事には違いない。最後まで良い宿だった。クリスクは良い街だった。宿も良く、寝心地も良く、飯も良く、そして何より人が良い。まあ、人以外の大半は金貨の力によるところも大きいし、人に関しても偶々出会った人が良い人ばかりだったのかもしれないが。

 ……それでも、俺個人にとってはとても良い街、良い時間だった。リデッサスでも良い日々を過ごしたいところだ。まあ、そのためにも、まずは明日の馬車に乗れるように早く寝て、早く起きることだろう。

 

 これまでの良き日々と明日からの期待を胸に眠りについた。

 




これにて一章終了です。

ここまで読んで下さり、ありがとうございました。
また評価、ブックマーク、ここすき、感想などで応援して下さった皆様、本当にありがとうございます。大変励みになっております。お陰様で、なんとか一章終了まで投稿を続けることができました。

明日からは二章に入っていきますので、以降も読んでいただけると、とても嬉しいです。
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