曇り空の夜のプリキュア   作:popoponpon

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第100話 家族と友達

 

「……文化祭……」

 

校舎前。屋台が立ち並び、生徒だけではなくソラシド市の人々も客として訪れている。既に文化祭の楽しい雰囲気が漂っている中。校門の前に一人の男が立つ。

 

「……これは、チャンスだ……!」

 

雑に一本に束ねた深緑の髪。一見優男のようにも見えるその男は、ましろ達が紋田と呼んでいた青年ことバッタモンダーだった。彼はヤクモ達がこの学校に通っていることを知って、今度こそましろに仕返しをしてやろうと目論んでいるのか。いや、それは違う。紋田は神妙な面持ちでポケットの中に手を入れて、その中にある自分の全財産が入ったがま口を強く握りしめるのと同時に紋田のお腹が空腹を音で訴え始める。

 

(文化祭に出てくる料理は……安い……!)

 

バイト先でちらと聞いた話。それは紋田にとってはまさに光明だった。日々の食事すら満足に取れるかどうか怪しい程度の稼ぎ。とにかく食費を抑えられるならそれに越したことはない。そのために半額セールの時間を狙って弁当を買う、一食を安いカップラーメンなどで済ませる、等といった対策を取ってこそいるがそれでもギリギリだった。もっと羽織を良くするにはバイトを増やすなり夜勤に切り替えるなりといった方法があるのだろう。しかし、

 

(んなことやってられっかよ……)

 

という残念な彼のプライドがその選択を許していなかった。今やってる分は生きる上で仕方ないのでもう割り切るしかないと受け入れているがバイトを増やして余計に疲れるのはまっぴらごめんだし、寝るはずの時間に働くなんて馬鹿のやることだろうと、夜勤で過ごしている隣の部屋の住人を見下している始末だ。ちなみにバッタモンダーの存在を一方的に認知しているそのお隣であるカバトンは昼夜逆転しているだけで普通に生活もできているし何なら貯蓄すら普通にあるのだが。

 

「……まぁ、いい……それより俺の飯だ……」

 

今日の案件とは関係ないことはおいておこうと首を横に振って一旦頭の隅へと追いやる。大事なのは文化祭で買える料理は安いという事実だ。

 

(まぁ、どうせガキ共が作った素人料理だ……味なんざ期待もしちゃいねえが……背に腹は代えられねえ)

「おっ、盛り上がってるね!」

「うぎゃああ!?」

 

瞬間、少し離れたところから聞こえてきたあげはの声に一瞬で反応しその場から離れる紋田。先ほどまで紋田がいたなんて露ほども知らず、あげは達が校門の前に立つ。その様子を離れたところから見ていた紋田は、なぜ彼女たちがここにいるのかと冷や汗を流しながら見ていたが、その視線がミクモへと向けられる。

 

(あいつは!?)

 

ミクモの姿を見た紋田は唖然となる。彼女の姿は、アンダーグ帝国でも見たことがある。しかし、紋田から見た彼女は、アンダーグ帝国の全てから冷遇される残念な少女だったはずだ。アンダーグ帝国の女皇帝、カイゼリン・アンダーグの娘でありながらその怒りを買い、名前すら与えられなかった存在。生まれながらの罪そのものとまで言っていた人もいたような記憶がある。

 

(なんであいつがプリキュア達と一緒にいやがる……?)

 

紋田も鼻で笑っていた存在だったが、直接的に関わりがあったわけではない。自分やカバトンが教官の役も担っていたミノトンにしごかれているときも彼女の姿を見たわけではないからだ。となれば、紋田が彼女の事を気にすることなどあるわけもない。しかし、そんな彼女が何故あげは達と一緒に居るのかが全く分からなかった。彼女も自分たちのようにこの世界に来てプリキュアと戦ったというところは想像できる。戦いの後、彼女もカイゼルの導きでこの世界で暮らし始めたというのもわかる。だが自分達と異なりあそこまでプリキュアと親密なのは何故なのか。そしてプリキュア達も何故彼女を受け入れているのか。

 

「人がいっぱいいる……」

「ミクモ、あれ!」

「エルちゃん?あれって……え、えっと……ベビー……カステラ……?」

「そうだよ!凄い、読めるんだ!」

「えへへ……漢字はまだ難しいけど、ひらがなとカタカナはムラクモさんに教えてもらったから……」

(ミクモぉ……?別人か?)

 

紋田があれこれ考えている目の前で楽しそうに談笑するミクモ達。その中で彼女がミクモと呼ばれたことで紋田は首を傾げる。紋田の知る彼女には名前がなかったが、目の前の彼女にはちゃんとミクモという名前があることがエル達の発言からわかる。となると、自分が知るあの少女とは別人なのかという考えが浮かんでくる。

 

(……まぁ、そうだよな。いかにプリキュアがお人よしだったとしてもあれに名前なんざ付けねえか。それよかプリンセスの親族とか言われた方がしっくりくる)

 

最終的に紋田の中のミクモという人物に対する評価は、自分が把握していなかっただけで存在はしていたスカイランドに住んでいたエルの親族というものに落ち着いたようだった。

 

「……あいつらに遭遇しないように少し間を置いてから入るか……」

 

意気揚々と校舎の中へと入っていくあげは達の後ろ姿を見て、紋田はそう呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お買い上げ、ありがとうございましたー!」

 

料理を出している教室から出てくるヤクモとソラとましろ。その手にはたこ焼きが握られており、教室の中からはたこ焼き器を使って調理している音やたこ焼きの美味しそうな匂いがしてくる。

 

「たこ焼き……凄く美味しそうです」

「そうだね。これで大丈夫かな?」

「シフトが午後になって都合がよかったね」

 

自分たちの教室でそれぞれ思い思いのエプロンを付けて接客しているクラスメイトを遠目に見ながら、ヤクモが言う。3人の手にはたこ焼きの入った袋や自分たちの教室で買ってきた皆のためのジュースが入っている袋があり、後でツバサ達と合流して皆で食べようとしていたものであった。

 

「そういえばソラちゃんはどこか行きたいところとかある?」

「行きたいところ、ですか……むむむ、どこも興味があって迷ってしまいます……!」

 

それぞれの教室や場所で出されている出し物の一覧が載っているパンフレットを見ながら唸るソラ。その様子を微笑ましく見ていたましろだったが、スマホにあげは達が届いたメッセージを確認し、

 

「あげはちゃん達も来たみたい」

「では、行きましょう!」

 

3人は玄関まで行き、そこであげは達と合流する。ヤクモ達の姿を見つけたツバサとミクモがこっちだと嬉しそうに手を振る。

 

「こっちですよー!」

「楽しんでる?」

「今来たばっかりです」

「すっごく楽しんでるよ!」

「エルも!」

「そっか、よかった」

 

来てすぐじゃまだまだ楽しみも少しだけだ。本格的に楽しむのはこれからだと言うツバサだったが、ミクモ達はこの雰囲気だけで楽しいようだ。これならもっと文化祭を楽しめるだろうとヤクモとソラとましろも顔を見合わせて楽しそうに頷く。

 

「あ、皆これ買ってきたよ」

「おっ、助かる!どこか飲食できるスペースってある?ついでにちょっと美味しそうなものもいくつか買ってきてそこで食べようか?」

「それなら……」

 

ましろに教えてもらい、全員で軽く屋台をめぐり、焼きそばやベビーカステラなどの売り物を追加で買うと、今日の文化祭の為に解放されている休憩スペースを訪れる。そこには他にも食事をしている生徒や休んでいる家族などがおり、空いていた長机を挟む形でヤクモ達は座る。

 

「美味しいー!」

「これこれ!こういうのだよね文化祭のご飯って!」

 

生徒が自分達で作る料理。簡単で作りやすいものが多いが、皆の情熱が込められているのが良くわかるものばかりだ。文化祭という場所で食べるご飯はその雰囲気もあってよりおいしく感じる。

 

「丁度小腹が空いてたので丁度よかったです!」

「……本当に夢みたい。家族や友達と一緒に外に出かけて、ご飯を食べるときが来るなんて」

 

しみじみとした様子でミクモが言葉を漏らす。その言葉を聞いたソラ達はミクモの家庭環境を思い出して少し神妙な面持ちになってしまうも、すぐにヤクモとあげはがフォローを入れる。

 

「凄く美味しいし楽しいでしょ?」

「うん、とっても」

「そうだよね……ミクモちゃんはずっと、家族と過ごしたいって思ってたもんね。家族に見てもらいたくて、辛くても腐らずに頑張ってきたんだもん。やっと報われたんだからさ、もっと楽しんじゃおうよ」

 

やはりこの中では親の離婚に遭遇したあげはが一番ミクモに寄り添えるようだ。ヤクモもいとこの立場として寄り添うことはできるがヤクモとあげはが取れるアプローチはそれぞれ別物。だからこそ、ミクモにとってより良い方向へと働きかけることが可能だろう。

 

「さて、お腹も膨れましたし!次はここに……ヤクモさん?どうしました?」

 

買ってきた食べ物も食べ終え、ソラが次に行きたいところを決めたのかヤクモに話しかけようとする。しかし、ヤクモは遠くを睨みつけていた。

 

「……アンダーグエナジーを感じた。多分……」

「まさか……スキアヘッドが!?」

「スキアヘッドが……!?」

 

びくっ、とミクモの体が震える。ヤクモがトンネルが開かれたのを感じた以上、スキアヘッドが自分達を攻撃しに来たのは間違いない。しかし、ムラクモは大丈夫とは言っていたものの、やはりミクモとスキアヘッドを遭遇させないに越したことはない。怯える彼女の肩に手を置く。

 

「大丈夫。俺達が何とかするよ。だからミクモは皆と一緒に隠れてて」

「う……うん。負けないでね」

 

ヤクモの言葉に安心したのか、ほっとした様子でミクモが席を立つ。そしてヤクモ達は顔を見合わせると、スキアヘッドが現れた方角へと走る。それは校門の前。

 

「……」

 

そこで6人が待ち構えていると、校門前にスキアヘッドが降りてくる。自分の気配に気付いたヤクモを一瞥すると、言葉を交えるつもりもないと言わんばかりに手を上げる。

 

「アンダーグエナジー、召喚」

「キョーボーグ!!」

 

スキアヘッドの放ったアンダーグエナジーがたまたま無人となっていた屋台とガスボンベへと注がれていく。この2つによって作り出されたキョーボーグは屋台に手足が付いたような姿をしており、その両腕はガスボンベとなっている。

 

「キョーボーグ!!」

「げぇ!?」

 

突然出現したキョーボーグとスキアヘッドの姿を見て、焼きそばを食べていた紋田が恐怖の声を上げる。おそらくは偶然だということは前回の事でわかってるが、だからといって戦闘に巻き込まれたくない。他の客や生徒達と共に一目散に逃げる紋田。そして逃げる人々の声を聞きながら、ヤクモは5人と共にミラージュペンを取り出す。

 

「ミクモや皆の為にも文化祭を壊させはしない!」

「ええ、その通りです!いきましょう、皆!」

 

ヤクモに続く形でソラが口を開き、6人がプリキュアへと変身する。6人が変身したのと同時に、スキアヘッドはキョーボーグに指示を出す。

 

「やれ」

「キョーボーグ!!」

 

キョーボーグが勢いよく殴りかかってくる。6人が跳んで回避しようとするのだが、キョーボーグが地面に拳を叩きつけると、なんとそこから爆発が発生し、その衝撃で6人は吹き飛ばされてしまう。

 

「「「「きゃあああ!?」」」」

「うわあああ!?」

「く!?」

 

両腕はガスボンベになっていることもあってかガスが充満しているらしく、それを爆発させることが可能なようだ。しかもキョーボーグを見る限り、本体へのダメージはそこまでなさそうにも見える。

 

「く……こいつ、手強い!?」

「キョーボーグ!!」

 

吹き飛ばされたキョーボーグが吹き飛んだスカイへと追撃を仕掛ける。いち早く復帰したクラウドがまだ立てないでいるスカイの前に立ちはだかり雲の壁を作るも、雲の壁を爆発で吹き飛ばす。しかし、2発目を撃つ前にクラウドはスカイを連れてその場から離脱しており、キョーボーグは2人を仕留め損なってしまう。

 

「あ……ありがとうございます、クラウド」

「何とかなってよかったよ。でも、厄介だな……」

 

あくまで爆発の直撃を受けたわけではないため、深刻なダメージというわけではない。だが直撃すれば大ダメージは免れないことを衝撃で感じ取りながら、6人は態勢を立て直すために再び集まる。

 

「あの爆発……厄介ですね」

「だったら、近づけさせなきゃ!」

「よし!」

 

接近戦を挑むスカイやウィングではキョーボーグに対して分が悪い。プリズム、バタフライ、マジェスティの3人が遠距離攻撃でキョーボーグを攻め立てる。しかしキョーボーグは軽いフットワークで左右に攻撃を素早く避けていく。

 

「えぇ!?」

「は、速い!?」

「この!」

 

そのまま近づいてくるキョーボーグの前にクラウドが再び雲の壁を展開する。しかしキョーボーグも先程の攻撃で学んだのか、まず左の拳で雲を吹き飛ばす。さらにプリキュア達を守るものがなくなったところに右の拳をぶつけようとする。しかしクラウドのおかげで防御に行動を切り替えることが間に合ったバタフライがシールドを作り出す。しかしそれも一撃で破壊してしまい、その衝撃はシールドを貫通してバタフライを吹き飛ばしてしまう。

 

「きゃああああ!?」

「バタフライ!?」

「キョーボーグ!!」

「っ!」

 

バタフライの守りが一撃で破壊され、吹き飛んだことに驚いたせいで一瞬マジェスティの意識が逸れてしまう。一瞬遅れてマジェスティもシールドを作り出すも、キョーボーグは両手の拳を同時にシールドに叩きつける。防御が一瞬遅れたことでバタフライ以上にシールドは簡単に砕けてしまい、一気に大爆発を引き起こす。

 

「「「きゃあああああ!?」」」

「「うわああああ!?」」

 

爆発で吹き飛ばされ、先に吹き飛ばされたバタフライ共々校舎へと叩きつけられてしまう6人。おそらくこの爆発も拳から放つアンダーグエナジーを利用したものなのだろう。だからクラウドの雲はアンダーグエナジーの吸収を恐れ拳が触れる前に爆発させその威力で吹き飛ばしたのだ。しかしバタフライやマジェスティのシールドは拳を当て、そこから爆発させることができる。そのため、クラウドの時よりも高い威力を発揮できていたのだ。

 

「く……」

 

壁が破壊され、教室へと飛び込むクラウド。既に校舎内からは皆避難しているようであり、誰かを怪我させたとかはないことは不幸中の幸いかと体を起こすと、手に何かが触れる。視線を動かすと、それは裁縫用の糸だった。どうやら文化祭の準備か何かで用意していたものらしい。

 

「……これなら」

 

クラウドが校舎の外へと飛び出す。他の5人もふらふらになりながらもどうにかキョーボーグの前に戻っており、構えている。

 

「クラウド、大丈夫ですか?」

「うん、皆……俺に任せてくれないか?」

「……何か、策があるんですね」

 

スカイの声に頷くクラウド。そしてクラウドがバタフライに視線で合図を送ると、バタフライはミックスパレットを取り出し、全員の速度を強化する。

 

「よし……いくよ!」

「キョーボーグ!!」

 

クラウドの言葉と共に6人が反撃を開始する。キョーボーグが拳で応戦するも、その周囲を高速でスカイとウィングが駆け、キョーボーグを錯乱していく。懐に潜り込んで攻撃に転じようとすれば応戦されてしまうが、あくまでランボーグの注意を逸らすことが目的。それに注力すればキョーボーグの攻撃を受けないことも容易い。さらに、キョーボーグの動きを惑わせるのは2人だけではない。

 

「「「やああああ!!」」」

「キョ、キョ……!」

 

プリズム、バタフライ、マジェスティの遠距離攻撃がキョーボーグの動きを阻害するように連射される。進行方向を塞ぎ、身動きが取りにくくなるのをメインとした動きに、キョーボーグも段々とイライラした様子になる。と、その眼前にクラウドが迫る。

 

「キョーボーグ!!」

 

キュアクラウドが直前に雲を展開する。再びその雲を吹き飛ばすキョーボーグだったが、そこにクラウドの姿はない。直後、キョーボーグの全身が糸で縛られてしまう。

 

「キョーボーグ!?」

「……無駄だ、ランボーグでキョーボーグには勝てん」

「……ランボーグだったら、ね」

 

それは、クラウドが教室から拝借してきた糸を元に作り出したランボーグだった。それでキョーボーグを縛り、身動きを封じるも一瞬だと言い捨てるスキアヘッド。しかしそんなことはわかっていると言わんばかりに不敵な笑みを浮かべるクラウド。次の瞬間、糸が光へと変わっていく。

 

「キョーボーグ!?」

 

瞬間、脱力したような声がキョーボーグから漏れる。光の糸へと変わったランボーグ。それは、クラウドがランボーグに使用していたアンダーグエナジーを浄化し、プリキュアの力へと置き換えたものだ。全身からアンダーグエナジーを一気に吸収、浄化されていき、悲鳴を上げるキョーボーグ。このままではまずいと思ったのか、なんとキョーボーグは倒れた状態で両手を同時に地面に付けると、自分諸共大爆発に巻き込ませ、糸を破壊してしまう。

 

「なんて強引な……!?」

「でも効果はあった。こういうやり方だって、ちゃんと意味があるだろ?」

「……」

 

爆発の中から出てくるランボーグ。その全身は所々焦げており、本人もふらふらしている。糸を用いた戦術は、ミクモが使用していたものだ。不敵な笑みを浮かべるクラウドの顔を見て、スキアヘッドは何を思っているのかはわからない。しかし、自己満足ではあったがミクモのやってきていたことはアンダーグ帝国の人々が蔑むようなものではないと証明できたような気がした。

 

「相当弱ってるわ。今がチャンスよ!」

 

そして、キョーボーグも大分弱っている。今ならとマジェスティクルニクルンを取り出すマジェスティ。そして6人が手を翳し、キョーボーグの浄化を開始する。

 

「「「「「「プリキュア!マジェスティック・ハレーション!!」」」」」」

「スミキッター……」

 

6人の攻撃によって浄化され、キョーボーグから屋台とガスボンベが解放される。校舎も元へ戻っていき、スキアヘッドも無言でいなくなる。そして6人も皆が戻ってこない内に変身を解除するため、人目のないところへと姿を消すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヤクモ!皆!」

 

ミクモの元に戻ってきた6人にミクモが駆け寄ってくる。キョーボーグとの戦いが終わり、少しして生徒達や客も戻ってきていた。そして、一時間もすればすっかり元通りの文化祭となっていたのだった。

 

「ミクモ、大丈夫だった?」

「うん。でも……凄いね皆。スキアヘッドに勝っちゃうんだもん」

「勝ったのはキョーボーグだけどね。そして、今日勝てたのもミクモのおかげだよ」

「え?私の……?」

 

皆が無事に戻ってきてくれたことに安堵する彼女に笑いかけるヤクモ。一体どういうことなのかと首を傾げるミクモだったが、

 

「ミクモの力の使い方を思い出せたから勝てたんだ。だから、ミクモのおかげだ」

「……そっか、よかった。ヤクモの助けになれたのなら私も嬉しい」

 

ヤクモにそう言葉をかけられ、ミクモも嬉しそうに笑う。これまでの努力が、皆を救う力になってくれたことがとても嬉しいのだろう。それは、自分の存在価値を認めてもらうため、自分の為に力をつけてきたこれまでとは別の感覚だった。

 

「……本当に良かったね」

「うん」

 

そんな様子のミクモを見てほっこりするあげはとエル。そして、ここでしんみりとするのも悪くないが今日は文化祭に来ているのだ。ここはがらっと切り替えようとあげはが手を叩いて皆の注目を集める。

 

「それじゃ、ここからは気分変えようっか!せっかく来た文化祭、もっとアゲてこ?」

「!うん!」

「では、早速皆で行きましょう!私、行きたいところがあるんです!」

 

そういえばそうだったと文化祭の事を思い出し、ヤクモの腕を握りしめるソラ。そのままヤクモを引っ張って、目的の場所へと向かうソラを見て笑いながら、ましろ達もその後をついていく。

 

「あはは、別に出し物は逃げないよ」

 

ヤクモも、文化祭を楽しそうにしているソラの様子を嬉しそうに見つめながら、彼女にされるがまま、腕を引かれて歩くのだった。

 

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