曇り空の夜のプリキュア   作:popoponpon

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第103話 2人の思い出

 

「うわーい!」

 

ましろの膝の上に座るエルが嬉しそうな声を上げながら、一冊のアルバムを覗き込んでいた。そのアルバムには、ましろの小さい頃の写真が載っていた。

 

「ましろちっちゃい!」

「私もエルちゃんみたいに小っちゃい時があったんだよ?」

「懐かしいねぇ」

 

小さなましろを見て喜びと共に驚くエル。あげはもこういう時があったなぁと懐かしむように写真を見ていた。そんなましろの隣ではソラが別のアルバムを楽しそうに覗き込んでいる。

 

「エルちゃん、こっちも見てください。可愛いですよ!」

「これ、ヤクモ?かわいい!」

 

ソラがエルに見せたアルバムにはヤクモの小さい頃の写真が載っていた。そのアルバムを持ってきたヤクモは少し恥ずかしそうに頬を掻きながら苦笑する。

 

「あ、はは……なんか小さい頃の写真を皆に見られるのって恥ずかしいな……」

「あはは……ちょっとわかるかも」

「でもさ、偶然見つけちゃったら見たくなっちゃうよね」

 

何故、全員でアルバム鑑賞をしているのかというと。部屋の掃除や整理をしていたところ、偶然ましろの小さい頃のアルバムが出てきたのをきっかけに、他にアルバムがないか探している中でソラが、

 

『ヤクモさんの小さい頃はどうなのでしょうか?』

 

と、口にしたのがきっかけで、ヤクモも自分の小さい頃のアルバムを持ってくる流れになったのだ。ヤクモも自分の小さい頃の写真を皆に見られるのが恥ずかしいとは思ったものの、ソラが見たがっているのもあってかそのまま持ってきてくれたようだ。ヤクモの小さい頃を見るソラの楽しそうな様子を見ると持ってきて間違いはなかったとヤクモも思える。

 

「ソラさんの小さい頃の写真……とかはないよね」

「スカイランドに写真はありませんからね」

「だよね」

 

ツバサの言う通り、スカイランドに写真はない。もしかしたら小さい頃の姿を描いた絵ならあるかもしれないが、ソラとツバサもわざわざ持ってきてはいない。かといってこのためにスカイランドに戻るかというとそこまでしようという気にもならない。結果、ましろとヤクモのアルバム鑑賞を皆で楽しんでいるのが現状だった。

 

「もう少し大きくなった写真も見る?」

「みる!」

「えっと、じゃあ……」

 

今持ってるアルバムをエルが見終えたところで、次のアルバムを見るかと聞くましろ。エルが喜びの返事をしたのを聞き、ましろが次のアルバムを手に取る。全員がじっとアルバムの中の写真を見つめ、ページを開く音だけが耳に聞こえる中、ましろの思い出の中にある登場人物が現れる。

 

「あ!この女の子って……」

「あげはさんです!」

 

ましろと一緒に映る、ましろよりは大きな女の子には、今のあげはの面影がはっきりと残っていた。あげはもその時の事を思い出して懐かしそうに口を開く。

 

「この写真、私とましろんが初めて出会った時のじゃない?最初、ましろんってすっごく人見知りで話しかけるとこんな感じだったもん」

 

あげはが言うように、写真にあげはと一緒に映るましろの姿は気恥しそうに顔を逸らしていた。あげはに当時の事を言われ、ましろも苦笑する。

 

「小さくてあんまり覚えてないけど……そうだったみたい……」

「へえ……2人はいつから仲良しに?」

「あ、僕も知りたいです!」

「える!」

 

2人が初めて出会った時、ましろが人見知りだったということもあってあまり良い出会い方ではなかったのかもしれないとは予想できる。だが、今の2人はこんなに仲良しなのだ。一体どういう経緯があったのかが気になるソラとツバサ。ヤクモも声には出さないが同じ気持ちだった。

 

「えっと、それは……」

 

ましろがアルバムをめくっていく。年代別に写真が載っているなら、丁度この先にその時の写真があるはずだ。とはいえその写真がどのページにあるのかわからないため、ある程度めくろうとしていたようだが、その写真は次の1ページにあった。

 

「「「わあ……」」」

 

そこには、夕日の下で2人で写るましろとあげはの写真があった。だが、ましろの表情や様子からは先ほどのような気恥しさなどは見えておらず、むしろ嬉しそうにあげはとお互いの手を合わせてハートマークを作っていた。幼い2人の少女の友情の形を写した写真を見ていると、こちらまで嬉しい気分になってくる。

 

「素敵な写真です!」

「ハート!」

「あ!この木覚えてる!確かここで仲良くなったんだよね!」

 

皆が2人に注目している中、あげはが着目したのはその背後にある1本の木だった。その木は、2人の思い出の場所を示す大事な要素なのだろう。ましろも、その木のことは覚えているようだが、ここに来たからといってすぐ仲良くなったというわけではないはずだ。しかし、

 

「でも、仲良くなったきっかけってなんだっけ?」

「私も……その肝心なところが思い出せないんだよね」

 

2人ともその時に何があったのかまでは覚えていないようだった。2人とも首を傾げて当時の事を思い出そうとするも、あと一歩のところで引っかかってるのか中々出てこない。と、

 

「そうだ!この場所に行ったら思い出せるんじゃない?」

 

あげはが実際に行ってみようと提案する。確かにそこにいけばそこで何があったのか思い出せるかもしれない。そして、2人の思い出の場所に行くと聞いてソラも嬉しそうに反応する。

 

「!私達も行きたいです!」

「そうだね、2人の間に何があったのか知りたいし」

「うん!」

「いくー!」

「うん、行ってみようっか!」

 

皆の言葉を聞き、ましろも笑顔でそう答えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

週末。田んぼなどが広がる山の麓を車を走らせるあげは。水が抜け、実った稲穂が黄金色に田んぼを彩る光景をソラ達は楽しそうに見ていた。

 

「おやま、きれい!」

「紅葉、って言うんだよ」

 

山は秋という季節もあり、紅葉が混ざってこれまでとはまた違った綺麗な景色を見せてくれていた。その光景を見て喜ぶエルにましろが紅葉だと説明する。

 

「ヤクモさん、あの乗り物はなんですか?」

「ん?ああ、コンバインだね。あれで稲を収穫してるんだよ」

「へー、凄いですね……どんどん吸い込まれていきます」

 

と、田んぼの中を走るコンバインを見たソラが疑問そうにヤクモに質問したり、手を繋いだり、ソラに誘われるがまま顔を窓に近づけたりしている光景からツバサがやれやれと溜息を漏らしながら視線を外してあげはの座る運転席を見る。

 

「それで、思い出の木ってどこなんですか?」

「まあぶっちゃけそこがどこかは覚えてないんだよね」

「「え?」」

 

2人の会話にヤクモとソラが少し驚いたように運転席の方を見る。てっきりあげはにはある程度見当がついていると思っていたのだが、どうやらそうではないようだ。

 

「だって、来たの随分前だし?」

「?じゃあましろさんは?」

「私も小さかったから……」

「ヨヨさんにも聞いてみたんだけど……そしたら、自分達で探した方が宝探しみたいで面白いわよ、って!」

 

では、ましろの方が心当たりがあるのかと思いソラが質問するも、ましろも苦笑しながら覚えていないのだと答える。しかし、ヨヨがその記憶を辿ってみるのも面白いだろうと言ってくれたことで、今回は記憶探しに来たのだという。

 

「さがすのおもしろい!」

「はい!」

「そうだね」

 

宝探しと聞いて興奮するエル。2人の思い出の場所を探すという流れを宝探しと表現されると、ソラもヤクモもわくわくしてくる。

 

「まずは、今日泊まらせてもらうせつこおばあちゃんの所に行ってみようと思ってるんだ。前の時もお世話になったし、何か情報もらえるかも!」

 

テンションをアゲていくあげはは、そう言うと目的地へ向かって車を意気揚々と走らせる。そしてしばらく車を走らせて一軒の民家を訪れる。

 

「こんにちはー!」

「よーきたねー。あげはちゃんもましろちゃんも大きくなって、お友達も連れてきちゃって」

「お久しぶりです!」

 

あげは達の来訪を出迎えてくれる老婆、せつこ。2人が小さい頃に会ったことも覚えているのだろう、2人が成長した姿を見て嬉しそうに微笑む。

 

「急にお邪魔しちゃってすみません」

「遠慮せんでええって。賑やかなのは大好きだし、お友達も大歓迎よ」

 

その後、荷物を寝泊まりさせてもらう部屋に移動させ、縁側でせつこが出してくれたお茶を飲みながら、田舎の自然の景色を見ながら休むことにしていた。この家では鶏を飼っているようで、庭を鶏とひよこたちが撒かれていた餌を呑気な様子で食べていた。

 

「鶏さんです!」

「皆、凄く元気そうでのびのびしていますね」

 

都会では見ることのまずない本物の鶏とひよこの姿を見ることができるとは思わなかったのか、ソラとツバサも楽しそうだ。特にエルも初めて出会う鶏と触れ合いたいと思ったのだろう、せつこからもらった麦わら帽子をかぶって庭に降りると鶏たちに歩いていく。

 

「こっこー!」

「あ、プリンセス……」

 

鶏たちの食事の邪魔をしてはいけないと、ツバサがエルに慌てて近づいていく。その光景をソラとヤクモは微笑ましく見ていたが、ふとましろとあげははある記憶を思い出す。それは、小さい頃のましろが、丁度エルのように麦わら帽子をかぶって鶏たちと触れ合っていた光景。そこではあげはも、鶏たちの姿を見て楽しそうにしていた。

 

「思い出すなぁ、前に来た時もここでお茶したよね」

「うんうん……あ、そうだ。せつこお婆ちゃん、この木見覚えあります?」

「どれどれ……?」

 

と、本題に入るためにあげはが例の写真をせつこに見せてみる。せつこはその写真を見て考えていたが、

 

「見たことある気がするけど……わからんなぁ……」

 

当事者であるはずの2人も昔過ぎて覚えていないのだ。当然というべきかせつこも詳しくは把握していないようだった。ある程度予想はしていたが、期待もしていたというのもあり、少し残念そうな声がましろの口から漏れる。

 

「そうですか……」

「き、みつからない?」

「まだまだですよ、あちこちをお散歩して見つけましょう!」

「おさんぽ!」

 

そんなましろの様子に反応したエルの声に、ツバサがこれから散歩して見つけようと提案する。その提案を聞いたエルがましろ達の顔を見ると、ましろ達もうんうんと頷いたのを見て、皆で散歩に行くことを喜ぶように両手を上げてはしゃぐ。

 

「ツバサ、おさんぽ!」

「はい、もう少しだけ待ちましょうね」

 

今にも行きたそうな様子のエルを抱きかかえながら話しかけるツバサ。散歩とツバサに抱っこされていることが楽しそうなエルのためにも早速行こうとあげは達も縁側に出していた靴を履こうとすると、ここでせつこからある提案を持ちかけられる。

 

「それなら、シロも連れてってくれんかねぇ」

「了解です!」

「「「「シロ?」」」」

 

突然出てきたシロという謎の存在。この家には鶏たちの他にも住んでいる生き物がいたのかとソラ達が疑問を浮かべながらどこかへ消えたせつこを見送っていたが、少しして戻ってきたせつこと共にシロが現れる。

 

「メエエエエエ」

「え、えっと……?」

「シロって……」

「ヤギだね……まぁ、そっか……そうだよね……」

 

シロと聞いて現れたのは、なんとヤギだった。まさかの動物の出現に驚くツバサ達。

 

「真っ白で、目がクリっとしてて可愛いでしょう!」

「シロと聞いて犬かと思いましたが……」

「可愛いです!」

「シロ、かわいい!よーしよーし」

 

ツバサに抱きかかえられた状態で、シロの頭に手を伸ばすエル。シロの方もエルのやりたいことに気付いたのか、頭を下げてエルが頭を撫でやすいようにする。そしてエルに頭を撫でられたシロは嬉しそうに鳴く。

 

「まさか、ヤギさんと会えるとは思いませんでした!」

「俺もだよ。それにしても、いろんな動物がいるんだね」

「鶏さんにひよこさん、そしてヤギさん!次はどんな動物に会えるんでしょうか!」

「外を歩いてみたらきっとわかるよ」

「そうですね!」

 

エルとシロの触れ合いを見て、ここから一体どんな出会いが待っているのかと考えると期待に胸が膨らむソラとヤクモ。そんな2人やシロと触れ合うエルとツバサを楽しそうに見ながら、あげは達は散歩に出発するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おさんぽー、おさんぽー!シーロとおさんぽー!」

「メエ~」

 

シロという同行者を連れて田んぼ道を歩くソラ達。エルの可愛らしい歌声に合わせるようにシロが合いの手を入れる。長閑な景色を見ていたヤクモの目に、トンボが飛んでいる姿が目に入る。

 

「へえ、トンボもいるんだ」

「トンボ……ですか?」

「ほら、あそこ」

「あ、本当です!他にもいますよ!」

 

ヤクモが飛んでいるトンボに合わせるように指差す。その視線の先を追ったソラがトンボを見つける。それを皮切りに何匹ものトンボが周囲を飛んでいることに気付き、忙しなく彼らの姿を見ようと頭を動かすソラ。

 

「ソラさん、足元が危ないよ」

「大丈夫です……きゃっ!」

「ソラさん!」

「ソラちゃん!?」

 

と、足元を見落としていたソラが偶然あった田んぼ道の穴に躓いてしまう。前のめりに倒れかけた彼女の腕をヤクモが掴んで引き寄せる。そのままヤクモがソラを抱きしめる形になり、転ばずに済んだソラはほっと安堵する。

 

「た、助かりました……」

「ちゃんと足元も見ないと危ないよ」

「はい……」

「そのままだったら転ばないで済むんじゃない?」

「え?あ、えっと……その……すみません」

「あ、はは……俺は気にしてないから」

 

あげはの茶化すような提案にソラも今の自分たちの姿に気付いたようだ。恥ずかしそうに、だが照れながらヤクモから離れる。ヤクモも名残惜しそうにソラを離すと、ましろ達も散歩を再開する。そして少しだけ皆から距離を取った2人は、

 

「……また、転んだらいけないよね」

「そ、そうですね……いろんなものがあって、目が移ってしまうから仕方ありませんよね」

 

などと言い訳しながら手を握り合って歩き出す。2人はバレていないと思っていたが、2人が何をしているのかはとっくにあげは達にはバレているようで、無言で微笑む。と、あげはとましろの足が止まる。2人が見つけたのは小さな公園で、そこには木でできたブランコがあった。

 

「ここは?」

「ここ、こういうスペースがあったんだよね。あの頃と少し変わってるけど、この道も前に来たんだ」

「ということは、この先に例の木が?」

「うん、きっとそうだよ!」

 

あげはが覚えてる道。ならばこの先に思い出の木があってもおかしくないのではというツバサの指摘に頷く2人。そんな中、エルの視線はブランコへと向けられていた。

 

「ブランコ!」

「プリンセス、遊びたい気持ちはわかりますが……今は我慢ですよ。その代わり、木を見つけたらこのブランコで僕と心行くまで……」

「ツバサ、はやく!」

「え」

 

今は木を探すのが先だと言いつつも、興奮したように妄想を描き始めるツバサ。しかし、こんな状態になってしまったツバサからは距離を取りたくなってしまうのか、無言でツバサを置いて移動し始めてしまっていた。ただ1人、エルだけがツバサを案じるように早く行こうと言ってくれたおかげで気付くことができたが、エルに声をかけてもらってなかったら一体いつ気付いていたことか。

 

「ツバサ、あそぶのあと!がまん!」

「メェ~」

「いや、僕は……待ってくださあい!!」

 

慌ててそうではないと弁明しようとするも、当然エル達は聞く耳を持たない。下手な言い訳をしてもどうせ聞き入れてくれないことを悟ったツバサは慌てて皆を追いかけるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

その後、近隣の住人に聞いてみたり、様々な場所を歩いてみたりしたものの、結局ましろ達の思い出の木は見つかることはなく、時刻も夕方になってしまった。ましろ達が気付けば、ススキが辺り一面に広がる野原まで来ていた。

 

「……中々、見つかりませんね」

「この辺りに見覚えは?」

「……ないなぁ」

「前は来なかったかも?」

 

ソラに問われ、一応記憶を掘り起こしてみるが、当時はここまで来ていなかったのか、首を傾げながら苦笑するあげは。

 

「そうですか……」

「でも、ここは違うってことはわかったんじゃない?」

「そうだね。それに……ここに来たことは無駄じゃなかったよ。ほら、綺麗な景色!」

「メエ~」

「確かに」

 

確かにお目当ての木は見つけられなかったが、それでもここまで皆で歩いてきたことは無駄ではなかった。それ自体が新しい思い出だし、その思い出にぴったりの景色を見ることができたのだと言うましろにその通りだとシロが鳴き、ヤクモも同意する。

 

「ここは皆と見つけた新しい思い出の場所だね」

「うん、それじゃあ……そろそろ帰ろうっか」

 

ましろの言葉に全員で頷き、あげはが夜になる前に戻ろうと言ったその時だった。突然強風が吹き、ススキ達が揺れていき、大きくざわめいていく。そして風は、エルが被っていた麦わら帽子を飛ばしてしまう。

 

「あ!ぼうし!」

「待っていてくださいプリンセス!今取り戻してきます!」

「私も行きます!行きましょうヤクモさん!」

「うん、ちょっと待っててね」

 

それを見て一足早く飛び出したツバサに遅れ、ソラとヤクモも走り出す。帽子を追いかける人の光景を見たましろとあげはは、呆然となってそれを見ていた。その理由は、デジャヴを感じたからだ。

 

「確か、あの時も……帽子が」

「あ……そうだった!最後にすっごい手がかり見つけたね!」

「うん!」

 

そうだ。あの時もましろの被っていた帽子が風で飛んでいって、2人で追いかけていた。忘れていた過去の記憶を思い出したましろとあげはは、飛んで行った帽子を無事に確保して喜びながら小走りで戻ってくるツバサと、遅れて歩いてくるソラとヤクモを見るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして夜。昔ながらの囲炉裏と鍋を囲み、夕食に舌鼓を打つましろ達。せつこが腕によりをかけて作ってくれた鍋を1口食べ、

 

「「「おいしい!」」」

 

その絶品さにほっぺが落ちそうになっていた。

 

「後で作り方教えてください!」

「ふふ、いいわよ。特別なことはなーんもしてないけど」

 

家に帰った後もこの鍋を作ってみたい。そう思ったましろがせつこに料理の作り方を教えてもらえることになって喜んでいると、

 

「それで、探しているのは2人の思い出の木なんだって?」

 

今日の散歩で思い出の木が見つかったかどうか、その進捗を確認する。せつこから成果を問われたましろとあげはは頷くと、思い出した過去の記憶について触れていく。

 

「はい!手がかりは見つけました!」

「少しだけ思い出したんです。あの時もお散歩してたら私の帽子が飛ばされて、あげはちゃんが追いかけてくれたんですけど……帽子がどんどん飛んで行って……あの木に引っかかってしまって……でも、その後は思い出せなくて」

「だよねぇ……私達、どうしたんだっけ?」

 

2人が思い出したのは間違いなくその時の記憶なのだろう。しかし、帽子を追いかけ、木に引っかかった後に何が起こったのかを思い出せずにいた。

 

「わかりました!あげはさんが帽子を取ってあげて仲良くなったんです!」

「それなら写真のましろさんが持っていそうですが……」

「ここ!」

「「「「「あ!」」」」」

 

この後の出来事を予想するソラに、それはおかしいのではないかと指摘するツバサ。確かにソラの言う通りなら木に帽子が引っかかったままにはならないだろう。と、エルが何かに気付いたように木を指差す。するとそこには、なんと帽子が引っかかっていたのだ。

 

「こんなところに帽子が……」

「全然気づかなかったよ……」

「エルちゃん凄い!」

「えっへんなの!」

 

お手柄だと言わんばかりにあげはがエルを褒めるとドヤ顔を見せるエル。エルが新たに見つけてくれた手がかりだったが、そのせいでツバサは逆にわからないことが増えてしまう。

 

「帽子が引っかかったままなら、どうして2人は仲良くなれたんですか?」

 

ツバサの疑問に全員で黙りこくって悩んでしまう。と、ここでせつこが何かが引っかかったのか、写真を受け取ると虫眼鏡を使って帽子を見る。すると、

 

「帽子……ああ!この木って……思い出したわ!」

「「「「「え!?」」」」」

「思い出したんだけど……この木がある場所って……」

 

木のある場所を思い出したというせつこ。その場所がどこなのか聞こうとしたのだが、妙に歯切れが悪くなってしまう。そしてましろ達は、あの木が生えている場所を遂に知るのだった。

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