曇り空の夜のプリキュア   作:popoponpon

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第106話 取り戻した羽

 

「か、怪獣……」

「……何の用だ」

「「「喋った!?」」」

 

ぽつりと呟いたましろの声。自分たちの事を怪獣と言われたのが不本意だったのか、不満げな声で恐竜はなんと流暢に喋り始める。まさか普通に話すことができるとは思わず、女性陣が驚きの声を上げる中、彼らの正体に気付いたツバサが一歩前に出る。

 

「もしかして……あなた達は竜族ではありませんか?」

「竜……ドラゴン?」

「だったら……何だってんだ?」

 

警戒を緩めることなく、ツバサを睨みつける恐竜、いや竜族。しかしツバサは彼らの視線に臆することなく見上げていたが、真剣な表情が緩み、満面の笑みへと変わっていく。

 

「感激です!」

 

この状況で飛び出してきたまさかの発言に、ソラ達はもちろん竜族も含めて全員が固まってしまう。ヤクモだけがツバサから竜族と聞いた段階で何となく彼の感情を理解していたのかおいおいと呆れたような表情になってしまっていたが。

 

「……俺達が怖くないのか?」

 

赤い竜族が困惑した様子でツバサに問いかける。先ほどのツバサの言葉にすっかり毒気が抜かれてしまったのか、今の竜族たちに敵意は全く感じられない。だが、逆にツバサの感情が理解できないと言った様子にも見える。

 

「怖いだなんて!!大昔、スカイランドにいたといわれる伝説の竜族ですよ!?本では読んでいましたが……会えて嬉しいです!!」

 

ツバサの話を聞けば聞くほど困惑が強まっているようで、竜族たちもどう反応するのが正解なのか顔を見合わせている始末だ。そして、その姿を見て構えを解いたソラがヤクモの腕をつっつく。

 

「ヤクモさん、竜族の皆さんってもしかして悪い方達ではないのでしょうか?」

「多分……」

「それにしてもツバサ君、まさかあんなに大喜びするなんて……」

「……本当にツチノコが見つかったらああなるのかな……」

「それ……なるかな?」

「い、いまいち頷きにくい……!」

 

ツバサの興奮気味な反応に軽く引きながら、竜族を刺激しないように小声で話すソラ達。ヤクモのいまいち同意しにくい例えに困惑しながらもましろとあげはが再び竜族たちに視線を向けていると、ツバサが鳥の姿に戻っていた。

 

「僕はプニバード族のツバサといいます!こちらはヤクモさんでー……」

「あ、ああ……」

 

そして自分たちの事を竜族に自己紹介していた。ここまでくると自分達に会いにわざわざ来たのか?と考えたのだろうか、先ほどよりは竜族たちも落ち着き始めていた。しかし、

 

「実は、ハレバレジュエルの光が消えてしまったので、元に戻すためにこの島に来たんです」

「ハレバレジュエル!?」

「……何か知ってるの?」

 

この島に来た目的を伝えられた竜族たちがあからさまに動揺する。絶対に何か知っていると確信し、ヤクモからも質問をぶつけると、バツが悪い様子で竜族たちは視線を逸らし始める。

 

「皆、夜飛べなくて困ってるんです!何か知っていることがあれば教えてください!」

「スカイランドの人たちを助けたいんです!」

「……ある」

 

ツバサとソラの熱意に打たれたのかぽつりと赤い竜族が呟く。おそらく彼らの中のリーダーなのだろう。彼は一旦その場から離れると白い布で包まれた何かを持ってくる。

 

「ここに」

「おい!?」

「ジュエルを戻したいのは本心だろう……」

「……」

 

それを見せたくないのか、仲間の1人が咎めようとするも、リーダーに返す言葉が見つからないのか大人しく引く。そして白い布を剥がすと、そこから眩い光が溢れる。

 

「これが……ハレバレジュエル!!」

「凄い光です……でも、どうしてここに……?」

 

そこにあったのは、紛れもなくハレバレジュエルだった。その光に感嘆の声をヤクモ達が漏らしたのもつかの間、ソラが真っ先に疑問を口にする。少なくともこうしてハレバレジュエルを見せられるまで、ソラ達はハレバレジュエル自体は島の中央部に配置されており、それが何らかの要因で光を失っていたと考えていたのだ。しかし確認した限り、ハレバレジュエルそのものに異常はまるでないように見える。昼間でもわかるほどの圧倒的な光量を出すのも目に悪いと再び布でハレバレジュエルを覆うと、リーダーがソラの疑問に答え始める。

 

「……訳があってな……ハレバレジュエルは先祖代々、俺達竜族が守ってきた。だがあの夜……ジュエルの輝きがいまいちだったのではりきって磨いた……」

「え?ジュエルは曇りなく永遠に輝くのでは!?」

「「なわけないだろう……」」

「……まあ、ずっと光り続けてたとしても埃とかはほっといたらつくだろうし……」

「あーあるある。暗いなーって思って電球見ると埃凄かったりするよね」

 

どうやらハレバレジュエルに関する逸話は長い年月をかけて誇張されたものらしい。実際のハレバレジュエルは竜族が欠かさず手入れを施すことで輝きを維持し続けてきたものだったようだ。

 

「まあともかく、作業に集中していたんだが……足場が崩れ落ちてしまって、ハレバレジュエルを持ったまま落ちてしまってな……それで今に至る……てっぺん近くの階段が崩れてしまっては、俺達にはどうしようもない」

 

彼がてっぺんの方を見やると、確かに階段の先が一部崩れ落ちていた。そのせいで竜族たちはハレバレジュエルを元の場所に戻すことができなくなってしまったのだろう。

 

「あれ、でもそれなら元の場所に戻せると思うよ?」

「本当か?それならば助かるんだが」

 

ましろが言っているのは自分達をここまで乗せてくれた鳥さんに頼もうという案だろう。確かに彼ならハレバレジュエルを運んでくれるし、彼が飛んでいる間に後の作業を行えば問題ないはず。ハレバレジュエルを元の場所に戻す方法があると知り、赤い竜族も嬉しそうな顔を見せていたのだが、

 

「竜族がジュエルを守ってるって知れば、スカイランドの皆も協力して……」

「駄目だ!!」

「え……?」

 

続くあげはの言葉に対し、急に怒号と共に否定の声を上げる。まさかの拒否にあげは達が驚いていると、

 

「この島に来てしまった以上、お前たちに知られるのは仕方がない……だが誰にも言うな!俺達の存在は秘密にしておいてくれ……」

「ど、どうして……?」

「……もしかして、この島の周囲が強い乱気流で覆われているのって……」

 

自分たちの存在を秘密にしてほしいと言う竜族。その理由に見当がついたヤクモが、この島の気候について触れると、竜族たちも頷く。

 

「俺達の事が知られればスカイランドの人々が怖がるからだ……」

「え……?」

「俺達のご先祖は人々に怖がられて共存が叶わなかった。そしてこの島に逃げるように飛んできたという……この島なら、外部から来る奴はいないはずだったからな……」

 

目の前にその来訪者がいるわけだが、それでも普通はあの乱気流で島に辿り着けないはずだ。ヤクモ達がこの島を去り、自分たちの事を黙っていればスカイランドの人々は竜族の事を何も知らず平穏なまま過ごせるし、この島にさえ来なければ自分達の事がばれることもない。

 

「えっと……そのご先祖様がハレバレジュエルを見つけて岩山に置いたんですよね?スカイランドの人々が夜、道に迷わないように……」

「辛い目に遭わせてしまったのに、どうして……」

「さあ……それが竜族の伝統だからな」

 

過去に先祖が何故ハレバレジュエルをスカイランドの皆の為に設置したのかは今を生きる彼らにはもうわからない。しかし、過去に先祖たちは人々から畏怖の対象として見られており、それから逃げるようにここに来たことは事実。今姿を見せて今度こそ受け入れてもらえる、という保証はどこにもない。

 

「とにかく……また人々の前に姿を見せれば、怖がられてしまう」

「そんなこと……」

「俺達は人じゃないし、鳥でもない。お前たちとは異なる存在だ……それに。俺達は羽が退化してしまった」

 

そう言いながら、自分たちの両腕を見せる。そこで初めて、ツバサ達は彼らの腕から小さな羽が生えていることに気付く。おそらく、この島から出ることがなかったために空を飛ぶ機会もほとんどなくなり、竜族の羽は空を飛ぶよりも地上で腕として使用する方向へ進化した結果なのだろう。環境に適応した、といえば聞こえはいいが昔はできた飛行が今はできなくなったこともまた事実だった。

 

「もう空は飛べないし、この島から出ることもできない」

「……この島から出るかどうかはともかく……スカイランドの人たちに竜族の事を伝えても昔のようにはならないと俺は思うよ」

「ヤクモさん」

「……何を根拠に……」

 

ここまで、竜族の話を聞いていたヤクモが、彼らの言う通りにはならないと言う。無論、過去の事実もあって信じられないでいる竜族だが、

 

「だって、今の竜族はハレバレジュエルをずっと管理してきているし、今を生きている人たちは竜族を伝説の存在だと思っていたぐらいにはもう過去の恐怖は風化しているんじゃないかな?それに……自分が違う、って思ってても他の人たちから見たら案外そこまで気にされるようなことじゃなかったりするものだよ」

「……」

 

ヤクモの言葉に竜族たちは考え込んでしまう。ヤクモの言葉にも一理あるとは感じ取ったのだろう。確かに口ではまた怖がらせてしまうかもしれない、などと言ってはいたが、本心では人々に恐れられる関係を終わらせたいと言う気持ちもどこかにあったのだろう。

 

「……そうですね。今の竜族の皆さんが何をしているかを説明すればきっと、皆受け入れてくれます!」

 

ヤクモに同意するようにソラも声を上げる。2人の発言に竜族たちは完全に黙りこくって悩んでしまった。この決断は彼らにとってそれだけ重いものなのだろう。だが、彼らがその答えを出そうとする前に、ヤクモはアンダーグエナジーを感じて振り向く。

 

「!!」

「ほう……竜族がいるとは……興味深い」

 

そこには、竜族を見て感心したような声を漏らすスキアヘッドが立っていた。何故この島に彼ら以外の人間がと竜族たちが驚くも、トンネルを使って移動できるスキアヘッドならば確かに乱気流は関係ないだろう。そういう意味ではスキアヘッドがこの場所を訪れたことそのものは納得がいく。

 

「スキアヘッド!」

「またあなたですか!?」

「アンダーグエナジー、召喚」

 

プリキュアを狙い現れたスキアヘッドだったが、まさかこの場にスカイランドで絶滅していると言われていた竜族がいるとは彼にも思わなかったのだろう。それに対し興味深そうな反応を示すも、すぐに本来の目的であるプリキュアの撃破を行うことにする。

 

「キョーボーグ!」

 

アンダーグエナジーが注がれた島に群生しているキノコとハエトリソウのような植物が1つになり、巨大なキノコ型のランボーグとなる。しかしその両腕はツルのようになっており、ヤクモや竜族達よりもずっと巨大な体格を誇っていた。

 

「な……なんだ!?」

「皆さん!!」

 

戸惑う竜族達だったが、スキアヘッドとキョーボーグの姿を前に人の姿へと変わったツバサはミラージュペンを取り出しながら声をかける。その言葉に5人は頷くと、プリキュアへと変身しキョーボーグとの戦闘を開始する。

 

「キョーボーグ!!」

 

キョーボーグが両腕のツルを伸ばす。その先の手はハエトリソウの葉となっており、プリキュア達を掴み取ろうとする。

 

「はっ!」

「ふっ!」

 

そのツルが伸ばされた先には竜族達もいる。バタフライとクラウドが雲とシールドを組み合わせた強化シールドがツルの行く手を阻み、開かれた葉がシールドを噛み千切ろうとするかのように深く食い込んでくる。

 

「な、何者だ!?」

「今の内に安全な所へ!!」

「あ、ああ……」

 

バタフライとクラウドがキョーボーグを食い止めている間にウィングが動揺する竜族達を広場から避難誘導する。しかし、冷酷な瞳でそれを見たスキアヘッドが口を開く。

 

「安全な場所などない」

 

その発言の直後、森の中から何本ものツルが木々を突き抜けて天へと伸びる。

 

「!?」

 

キョーボーグのツルがこれほどの数存在しているとは思わず、スカイ達が驚きで一瞬反応が遅れてしまう。瞬間、伸びてきたツルが一体の竜族を捕まえてしまう。

 

「!はあ!」

 

即座に反応し、ツルを踏みつけて竜族を解放するスカイ。しかし、竜族を助けようとするのに集中していたあまり、自分に迫っていたもう1本に気付けず、全身を締め付けられてしまう。

 

「しまっ……きゃあああ!?」

「スカイ!!」

 

そのままキョーボーグの方へと連れて行かれるスカイを助けようと、アンブレランスを手に飛び出すクラウド。しかしそれを待っていたかのようにキョーボーグは大岩を何個も持ちだすと、それをクラウドへとぶつけてくる。

 

「クラウド!?」

「くっ……」

 

それらを回避し、雲で受け止め、アンブレランスで受け流すのだが、大岩は四方八方から飛んでくる。遂によけ切れずに一発をもらってしまい、そこに畳みかけるように次々とツルで打たれ吹き飛ばされてしまう。

 

「ぐあっ!!」

「クラウド!」

 

吹き飛ぶクラウドを見るも、クラウドは大丈夫だと判断し、まずはスカイを助けようとプリズムとマジェスティが動く。まずは相手の動きを止めようと光弾を打ち出すも、その光弾はツルの壁によって阻まれたばかりか足元からツルが出現し、プリズムへと振り下ろされ吹き飛ばしてしまう。

 

「きゃあああ!」

「プリズム!?」

 

プリズムが打ち出した光弾をツルが受け止めた際の煙を目隠しに迫っていたマジェスティだったが、プリズムが攻撃を受けたことに反応して一瞬反応が遅れる。それを狙ってツルが次々迫るも、咄嗟にバタフライがシールドをマジェスティの足元に展開。それを足場にしてマジェスティが後ろへと跳ぶことで難を逃れるも、キョーボーグは追撃を仕掛けるかのようにどんどんツルを打ち込んでいく。

 

「ウィング!」

「はい!」

 

ここで戻ってきたウィングに声をかけるマジェスティ。ウィングも捕らえられたスカイを見て状況をすぐに理解すると、マジェスティと共にキョーボーグの猛攻へと突っ込んでいく。バタフライのサポートも得ながらツルを一本一本対処しながら着実に迫ろうとするのだが、

 

「キョーボーグのツルは、この島全体のツルと連なっている。どこまでも追う……そして、逃れることはできない」

「うぁ……!」

「プリズム!?」

 

ツルは絶えず迫り、押し戻されてしまう。そして、遂にもう1人、プリズムがキョーボーグの魔の手にかかり捕らえられてしまう。さらに四方八方から岩で押し固められたような物体をツルで雁字搦めにされた何かもキョーボーグは持っており、あれはアンダーグエナジーの吸収を行うため、岩を間に挟む形でクラウドを捕獲しているのだろう。二重にも覆われていることでクラウドの苦悶の言葉は聞こえないが、これでキョーボーグは3人のプリキュアを捕らえたこととなる。

 

「「「……」」」

「……お前たち」

 

悪くなっていく戦況に3人が顔を顰めていると、彼らに守られるように後ろに立っていた竜族達が何かを決断したのか、声をかける。

 

「……ハレバレジュエルを頼む」

「え……何を言ってるんですか!?」

「俺達は空を飛べん……例え飛べたとしても俺達はこの島以外に行く場所がない……」

「そんなことありません!」

 

悲しそうにハレバレジュエルを託そうとする竜族の言葉にそんなことはないと異議を唱えるウィング。竜族達も、自分達を逃がし、守ろうとしながら戦おうとしたせいでこの状況を招いてしまったと考えたのもあるのだろう。そんな彼らの不安を取り除くように、ツバサが語り掛ける。

 

「怖がられたとか……ご先祖様の言い伝えだけじゃないですか!皆さんはスカイランドの人たちと会ったことないでしょう!?」

「……!」

「……怖がる人も、いるかもしれません。けど、同じように受け入れてくれる人たちもいるんです!!」

 

ウィングの説得を聞き、ヤクモの言葉を思い出す竜族達。2人の言葉に心が揺れている中、ウィングが竜族達と話を始めた隙をキョーボーグが見逃すわけもなくツルを伸ばしてくる。それらが風揺りの木が群生していた地面から何本も飛び出してきたことで木が次々と巻き上げられ、全員をまとめて攻撃してくる。バタフライとマジェスティがまとめて木々を吹き飛ばすことでその攻撃を凌ぐ。

 

「風揺りの木の葉……そうか……!皆さん、あれを!!あの葉を羽にして飛ぶんです!!」

「飛ぶって……!?」

「僕がおびき寄せます!その隙に!」

 

葉を見て、ウィングは風揺りの木の葉を羽変わりにして飛ぶことを思い付き竜族達にそれを告げる。まさかの提案に唖然となる竜族達。確かにそれができれば、あのツルから逃れることもできる。しかし、不安な気持ちもあり、なかなか踏み切れずにいた。だが、ウィングは有無を言わさないといった様子でキョーボーグに向かい、竜族にツルが向かわないように必死に飛び回る。

 

「し、しかし……」

「島から出ましょう!一歩を踏み出すんです!!」

 

そして複数のツルを引きつけながら天高くまっすぐに飛んでいく。まるで、竜族達に見せつけるように、太陽を背にする。

 

「「おお……」」

「あんなに高く……うお!?」

 

竜族達が感動の声を漏らしたのもつかの間、遂に竜族達も地面を割って現れたツルによって打ち上げられてしまう。このままでは地面に落ちてしまう。そう思った竜族達の目に飛び込んできたのは、先ほど打ち上げられた際に千切れ、そのまま宙を舞っていた風揺りの木の葉。それを見て、赤い竜族が声を張り上げる。

 

「皆!葉を取るんだ!!」

 

そう言いながら自身も葉を手に取る。風揺りの木の葉は、人の手でも突風を巻き上げるほどの風量を起こす。それを人よりも力強いであろう竜族が振るえば、その風量はその比ではない。一体が空を飛ぶと、それに続くように他の竜族達も次々と空を飛ぶ。

 

「飛んでるぞ!?俺達!?」

「このまま飛んでいけば……!」

「無駄なことを」

 

これで、竜族達も危険になってしまった島から脱出できる。後はキョーボーグを倒すだけだとウィングがキョーボーグを見る。だがそこでは、

 

「マジェスティ!?バタフライ!?」

 

奮戦空しく、バタフライとマジェスティも遂にキョーボーグに捕らえられてしまっていた。それに目を奪われてしまったことで、竜族を目指して打たれた一撃にウィングは反応しきれず、ツルが竜族の腕を打ち、腕を攻撃された竜族が葉を落として落下してしまう。

 

「うわっ!?」

 

それを助けようとするも、ツルのせいで近づくこともままならない。

 

「このままじゃ……!」

「……うおおおおおお!!!」

 

このまま落下するのを見ているだけなのか。だが、その状況を打ち破ったのは、なんと竜族本人だった。咆哮と共に、両腕を羽のように動かす。確かにその手に葉はもうない。だが、昔は飛べており、退化したとはいえ、羽はまだ残っているのだ。何より、自分達の背中を押してくれたクラウドの為に、そして勇気を与えてくれたウィングのためにも、絶対に飛ばなければならない。そう思い、必死に動かした羽が、僅かに揺れ大きく伸ばされる。そして、

 

「おおおおおお!!」

 

すれすれのところで上体を起こし、そのまま大空へと飛び出してみせたのだ。

 

「飛べた!?俺の羽で!!」

「わあ……!」

 

空を飛ぶ竜族。それを見て、戦闘中だと言うのに思わず感激の声を漏らしてしまうウィング。自由に空を飛ぶ力を取り戻した竜族は、先ほどとは打って変わって身軽な動きでツルを回避していく。そのアクロバティックな動きに追いつこうとしたツルは互いに絡まってしまい動きが止まってしまう。

 

「……そうか!」

 

その様子を見てキョーボーグの攻略法を見出すウィング。一旦距離を取ろうとする動きを見せるウィングを無数のツルが捕らえようと迫る中、ウィングはある目的を持ってツルの隙間を縫って飛んでいく。すると段々ツルは互いに絡まり始めていき、ツルの動きが鈍くなってきたところで急上昇。すると、大きな塊となったツルはクラウドが閉じ込められていた大岩へと命中して破壊する。

 

「!」

「クラウド!皆を!」

「!よし!!」

 

大岩の中から解放されたクラウド。岩に潰されていたものの、咄嗟に雲のクッションを間に仕込んでいたようで見た目よりダメージは少なく済んでいるようで、ウィングの指示と皆とキョーボーグの姿を見て状況を理解すると、砕かれた岩の破片を次々とアンブレランスで打ち出していく。それらは鋭い刃の形へと変化し、スカイ達を拘束していくツルを切り裂いて解放する。

 

「!」

「こいつも喰らえ!」

 

続けてさす又状に変化させた岩をキョーボーグへと打ち出す。残り1人と言うこともありウィングを捕獲するためにツルのほとんどを使っていたことで絡まって動けなくなり、残っていたツルも次々岩のさす又で地面へと固定されてしまい、完全にキョーボーグは身動きを止められてしまう。そして地面に突き刺さった刃やさす又には、クラウドがアンダーグエナジーで変化させたことを示すようにランボーグの瞳が確認できた。

 

「皆さん!」

「ええ!」

 

ウィングの声に頷き、クルニクルンが取り出される。

 

「「「「「「プリキュア!マジェスティック・ハレーション!!」」」」」」

「スミキッター……」

 

マジェスティック・ハレーションを受け、キョーボーグが浄化されていく。クラウドがばら撒いていたランボーグ達もその余波でまとめて浄化されていき、クラウドの体内へとエナジーが戻っていく。

 

「……飛べなくなった竜族が飛んだか。知識の宮殿に記録しておこう」

 

キョーボーグを倒されたものの、竜族が再び飛ぶと言う歴史的瞬間を目撃したこと。それに対してこのように言うと、スキアヘッドはまたトンネルを通って消えていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ハレバレジュエルが元の位置に戻ったことは、暗くなればその光でよくわかるだろう。そして王城には、ツバサ達が無事に帰還してきていた。

 

「!あれは……」

 

それを出迎える王様と王妃とヨヨだが、城に現れたのはツバサ達だけではない。なんとその周囲には自分達で空を飛ぶ竜族達の姿があったのだ。

 

「まあ!王様、あの者は竜族です!」

「なんと……」

 

伝説の竜族と会えるとは思っていなかったようで、王様と王妃も驚いていたが王城の広場に降り立ったツバサ達から竜族に関する話を聞く。

 

「あの光は、竜族のおかげだったとは……心から感謝する。そして……これからはそなた達と共に、あの光を守っていきたい」

「「「「「!!」」」」」

 

ここまでツバサ達と来たものの、受け入れてもらえるかどうか、実際に反応されるまで不安はどうしても消えてなかったのだろう。しかし、王様からの言葉に竜族達も不安が消え、喜びが満ちていくのを感じていた。その様子を微笑んで見守っていたツバサに、ヨヨが声をかける。

 

「ツバサさん」

「!」

「あなたならあの島へ行き、必ず竜族を説得できると思っていました」

「竜族のこと……知っていたんですか?」

「ええ」

 

ヨヨにツバサは、何となく考えていたことを聞いてみる。どうやら案の定、ヨヨはあの島に竜族がいることを知っていたようだ。

 

「でも彼らをここへ連れてくるとは予想しなかったわ。このことはあなただからこそできたのよ」

「そんな、大げさな……」

 

だが、自分の予想していた結果を超えてきたツバサに、ヨヨはとても嬉しそうだった。ヨヨからの言葉を聞き、照れるツバサ。だが、そんなツバサに王様が声をかける。

 

「いいや、ツバサよ。光が戻ったのも、竜族の心を動かしたのも、そなたのおかげだ」

「王様……ですが、竜族の皆の心を動かしたのは僕だけでは……」

「一番頑張ったのはツバサだよ」

「ヤクモさん……」

「ふふ……王様。どうでしょう?今後彼を賢者として迎えてみませんか?」

「ええ!?」

 

賢者。そう言われ、ツバサが驚いてしまう。おそらくスカイランドの城において、それほどまでに重要な存在ということなのだろう。そのような役職に自分がなるということにツバサはただただ驚いてしまう。だが王様達は嬉しそうな表情を見せる。

 

「こちらはいつでも迎え入れよう」

「そんな!?恐れ多いです!それに……」

「スカイランドの未来にはあなたが必要になるわ。あなたの智慧と、その勇気がね」

「……僕で、大丈夫でしょうか……?」

「大丈夫よ。立派に解決できたでしょう?」

 

だが、自信なさげに渋るツバサにヨヨが優しく語り掛ける。ツバサがその場にいた全員の顔を見る。皆、自分の事を応援してくれている。無言ではあったが、その顔だけを見れば何を思っているのかすぐにわかった。それを見ると、無性に嬉しくなってくる。そして、

 

「はい!!」

 

元気よく返事を返すのだった。

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