「おはようございます、ヤクモさん!」
「ああ、おはようソラさん、ましろさん」
「おはようヤクモ君」
ソラが転入してから数日。最初の頃と比べれば、時折漢字やこちらの世界の用語などに弱くなるのを除けばソラもすっかり学校に馴染んでおり、今となっては緊張したりといったところもなく普段通りでましろと一緒に登校してきていた。
「おはよう、ヒーローガール!」
「おはようございます!」
「おっはよー、ヤクモ」
「おはよう、あさひ」
2人と挨拶を終えると、このタイミングで登校してきたあさひに挨拶される。あさひはヤクモに聞きたいことがあるのか、ヤクモの机の上に立つ。
「な、なんだ?」
「いやさ、教室来る途中でちらーって聞いたんだけどさ。この前桜が化け物になって暴れ出したのあったろ?」
「あ、あー……」
ランボーグのことを指摘され、内心おぉう、と漏らす。ヤクモ達もこの話題は他の人の目があるところでは絶対にやらないように心がけてはいるのだが、一般生徒からすればそのような事情など当然関係なく。
「で、その時3人のかっこいい男女が化け物を退治してくれたってことでさ」
「うん……」
「学校中大騒ぎだったよね」
「あの後も話題になってたよねましろん」
「あ、ははそうだね……」
つむぎからあさひの話の内容に便乗するようにましろに話を流す。当事者であるましろはどうやって受け答えするか考えながら当たり障りのない回答を選んでいく。ちらとヤクモがソラを見ると、迂闊なことを喋りかねないという自覚がやはりあるのだろう、この場では黙っておくことに専念するようだ。
「まあ、化け物も3人もあれから出てこなかったし、今だと夢だったんじゃないかって言ってる人もいるけどね。先生とかそんな感じだし」
「集団幻覚ってやつ?それにしちゃすっげーリアルだったぞっと」
「そうなのよね……」
つむぎはあの時の出来事が今生徒達にどのように伝わっているのかを話す。まだ学校で変身したのは1回だけだったというのもあり、実際に避難などこそしたものの非日常すぎてあれは夢だったのではないかという意見も出てきているようだ。とはいえあさひからすればいや現実だろうとなるのも真っ当な意見であり、生徒たちの多くが夢みたいな出来事であるだろうけどそれでもちゃんと現実のものであったという認識が主流になっている。
「そうそう、その3人組だけどさ」
「ん?」
と、会話にクラスメイトの男子が割り込んでくる。6人の視線を向けられた男子は特にソラ達が気になることを口にする。
「美術部でさ、その3人の絵を描くのが流行ってるんだよ」
「「「え!?」」」
そういやお前美術部だったなーというあさひ。その言葉にうなずいた男子生徒は、突然明かされた事実に驚くソラ達にその詳細を語り始める。
「特に部長がさ、その人に助けてもらったんだーって」
「部長ってあの女子の?」
「そうそう」
(……あー、そういや……)
なんでそんなことになってるのかわからなかったが、部長に関する話を聞いてヤクモは該当する出来事を思い出す。前回のランボーグとの戦闘で、偶然助けることになった女の子。あの時はまったく気にしていなかったが、改めて思い返すと確かに美術部の部長だった、ような気がする。
(まあ、そりゃそうだよな……ランボーグ……いや、怪物を倒すかっこいい女の子2人。そりゃ色々思うところもあるか)
あの戦いをある意味一番見ていた一般人だ。スカイとプリズムの姿に惚れるのも無理もないだろう。それが転じて美術部ではちょっとしたブームになっているのかもしれない。
「部長が3人はプリキュアって呼ばれてたんだって結構話しててさ」
「へ、へぇ……な、なんか事になってるね……」
「プリキュアの絵ですか……!」
とはいえいずれ収まりもするだろう。自分たちに直接関わりがないのならあまり気にすることでもないのかもしれない、それに自分たちの絵を描いてもらえるのは恥ずかしさも少しあるが決して悪い気もしない。しかし、
「見てみたいです!」
「そ、ソラちゃん……」
「いいんじゃない?そこら辺の話聞いて他の部活の人たちもちょっと見に来たりとかしてるし、興味あるなら放課後おいでよ」
ソラの反応も割とある部類だったのだろう。男子生徒は放課後来るようにと誘うとそのまま自分の席に戻っていき、準備を始める。直後、朝のホームルームのチャイムが鳴って先生が教室に入り、皆席に移動し始めるのだった。
★
そして放課後。美術部が活動している美術室にヤクモ達は向かっていた。
「ふふ……」
「ソラちゃん、嬉しそうだね?」
「はい!私たちの絵を描いてくれるなんて、すっごく嬉しいです!」
ソラのモチベの高さはやはり、プリキュアの絵を描いてくれてるということなのだろう。本人たちとしてはそういうのを求めているわけではないし、エルを守り、ランボーグを倒して街や人への被害を防ぐために戦っているだけなのだが、それでもこういうことがあると知ると嬉しくもなるものである。
「……あ、そっか。スカイランドに写真とか動画ってないから……」
「ああ、肖像画とかそういう方向になるのか」
と、ソラのテンションが上がっている理由がスカイランドの文化事情にあることに気付くましろ。先日、ソラが写真の存在に疎かったことを思い出し、カメラがスカイランドにないことに気付くと、絵は2人の思った以上にスカイランドにおいては大きなものなのしれないと考える。
「まぁ……そんなもんか」
「どんな絵があるんでしょうね?やっぱりヤクモさんが多かったりして」
「まさか」
美術部の部員がどれくらいいて、男女比率がどれだけあるかはわからないが、明らかに2人には劣るだろう。そう考えていたためか、そのヤクモが一番多いんじゃないかと考えていたソラは驚いた様子だ。
「え?」
「男子がどれくらいいたかわからないけど、誰を描くってなったら明らかに逃げだろうし」
「に、逃げって……」
ヤクモの言葉に納得しきれてないソラを見ながらも、言葉の意味自体は理解できてしまったのかうぅんと唸るましろ。確かに、授業でモデルになった生徒を描けと先生が言ってくれるような状況とは異なり、自分たちの意思で選んで描く、ともなれば男子には女子を描くのはハードルが少し高いのかもしれない。美術部というと男子よりも女子の方が比率として多いイメージがあるヤクモとましろから見れば、クラウドが一番少ないと考えるのはある意味自然なことかもしれない。
「まぁ俺よりかっこいい方を描くんじゃない?俺そこまで見栄えいいことやってないし」
「そんなことはありません!」
「そ、ソラちゃん声が……」
「あ、す、すみません……」
あっけらかんとした様子で言うヤクモに反論するソラ。思わず飛び出した大声が廊下に響き、この場にはいなかったが遠くの方や教室の中にいた生徒たちの注目を集めてしまい、慌ててましろに指摘されて謝りながら声のボリュームを下げる。周りに人がいないからある程度プリキュアの話もやっているが、声音を上げて聞こえてしまっては余計に大事になってしまう。自分の声量に注意しながらも、ソラは先ほどの反論の続きを口にする。
「ヤクモさんはかっこいいですよ……私たちを守ってくれましたし、この前は巻き込まれた人も助けてくれました。だからそういうこと言っちゃうと……私はイヤです」
「……ごめん」
申し訳なさそうに謝るヤクモ。自分がどう見られようが関係ないとは考えていたが、ソラからすればやはり友達であるヤクモがあまりよく見られないのは心苦しいのだろう。
「ま、まぁ。着いたよ」
自分の言葉を聞いて認識を改めてくれたヤクモから視線を外すと、ちょうど美術室の前についていたようだった。3人が美術室の扉を見ると、ちらほらと美術部とは無関係な女子が出てきている姿があり、どうやら彼女たちのお目当てもソラ達と同じようである。
「ここが美術部……たくさんの絵がありますね、あれは粘土でしょうか?」
「まあ美術部だからね」
美術部の外の壁には風景画などが飾られており、美術部に入ってみると教室の奥の方には粘土で作られたと思われるオブジェを感想させるために並んでいる。他にも教室内に展示されていたであろう石像だったりと、美術部っぽい内装になっている。それぞれの机で生徒達は絵を描くため色鉛筆やら絵具やらに手を出している
「皆さん一生懸命ですね……凄い集中しています」
「そ、そうだね……邪魔しちゃうと悪いし、また今度にした方がいいかな……」
「あ、気にしないで、あなたたちも例のを見に来たの?」
そんな会話が聞こえてきたのだろう。部員の1人の男子がこちらに気付き、手慣れた様子で3人に声をかけると、ファイルを持ってくる。
「皆で描いたのこれにまとめてるんだ、よかったら見て、気に入ったら美術部入ってみてよ」
「え、見ちゃっていいの?」
「いいよいいよ、最初はいい機会だからで描いてたけど結構いい感じに話題が広がってきたから新入部員を増やすためのアピールにもなるからね。ちなみに俺副部長やってんだ」
「ありがとうございます」
ファイルを受け取ったソラ達に手を振り、見終わったら返してねと言って近くの椅子に座る。そしてソラ達がファイルを開くと、そこには様々なプリキュアの絵が載っていた。
「わぁ……!」
「凄い……」
「おぉ……」
感嘆の声が漏れる。1回しか変身してなかったし、皆ほとんど逃げ出していてあまりまともに見られてなかったと思うのだが、それでもプリキュアの特徴を掴んだ絵がほとんどであった。それでもコスチュームの細部などが少々違っているのはご愛嬌といったところか。それを描いた人の熱意が伝わるものばかりでソラも感動した様子で絵を食い入るように見ている。
「これ見てください、凄いですよ」
一旦絵から視線を外して美術室を見ていると、小声で興奮したようにヤクモの制服の裾を引っ張り、ソラが絵を見せてくる。それは、一際高い画力で描かれたキュアクラウドの絵であった。桜の花弁が舞う中、勇ましく立つその姿にソラが目をキラキラと輝かせている。
「うん、凄い上手だね……」
「お、おぉ……」
やたらイケメンに描かれてるその絵を見て、さすがに本物はここまでじゃないのでは?と考えてしまうヤクモ。描いた本人に悪いのと先ほどソラに言われた手前口にはしないが、ここまでハードルを上げられるとさすがに思うところはあるのか、少し気恥しそうに顔を上げると、いつの間にか目の前に部長の女の子と副部長の男子が立っていた。
「うお!?」
「その絵、凄いでしょ?部長の力作なんだよ」
「当然、実際に見たので」
「そ、そうなんだあはは……」
まさかばれてないよね?と内心びくびくしながら相手の目を見ないように逸らしてしまうましろ。その行動の意図は彼女にばれずに済んだようで、部長は得意げにその絵について解説する。
「あの時、化け物に襲われて腰が抜けちゃってね……もうやばいって思ってた時にこの人が助けてくれたの。他の2人も見てたからばっちり描けるわ!一番描いてるのは彼だけど、とにかくプリキュアって凄かったのよ!」
「そ、そうなんだ……」
プリキュアを見た感想、特にキュアクラウドへの熱い思いを語っていく部長。こそばゆい感じがしてしまい、たじたじになってしまうヤクモだったが、その思いに共感しているのだろうか、ソラは特に嬉しそうに笑っていた。
「はい!すっごくかっこいいです!」
「俺も、そのプリキュアっての見てみたいんだけどなぁ、本当にいるやつでかっこいい絵描いてみたいぜ」
「どんな絵を?」
「ああ、こんなの」
そう言って見せてきたのは、特撮系のヒーローの絵であった。太陽のような仮面をつけており、線が荒いがその分勢いが強い絵に仕上がっている。
「おお、かっこいいです!なんて言うんですか?」
「……これ太陽マンか……?」
「よく知ってるな?ちょっと古いぜ?」
「知ってるだけだけどな」
見覚えのあるそのキャラを引っ張り出したヤクモに正解を出す。この手の知識があることを意外そうに思いながら翔太はヤクモに少し踏み込んでみることにする。
「やっぱりヒーローとか詳しいのか?」
「そういうので語れるようなものじゃないよ……特撮とかは見たり見なかったりするからある程度知ってはいるけど……ってやっぱり?」
「そりゃあ嵐堂ヤクモと言えば人を助けて颯爽と去っていく正義の味方だろう?」
「何それ」
正義の味方と変な異名を付けられて困惑するヤクモ。直後、正義の味方の部分は今考えた冗談だけどな、と言われたことで少しほっとする。普通にこんな風に皆から呼ばれたらと思うと凄く恥ずかしかったので冗談でよかったと思う。
「やっぱりヤクモさんはヒーローなんですね!」
「今の言葉は真に受けないで」
「この二つ名が広まったら俺も恥ずかしいからやめてくれると助かるね」
(じゃあ言わなきゃよかったんじゃないかな……)
しかしそれを完全な冗談と受け取ってくれなかったのがソラだった。とはいえ前半部分に関しては事実ではあるのだが。このままでは自分も被害を受けると察したのか強引な話題転換を行うことにする。
「ま、次に化け物が現れてヒーローたちが現れたらばっちり……」
「危険だからやめなさい」
副部長の言葉に割り込み、厳しい口調で戒める部長。彼女にとっては全くシャレになっていないし、結果的に無事とはいえ命の危機を本人は感じていたのだろう。副部長も迂闊な言葉だったと申し訳なさそうに謝る。
「あー、ごめん、変なこと言って。危ない真似とかは俺もやらないからさ……」
「それがいいよ」
「怪我してからじゃ遅いです!」
「わかったわかったって」
皆からそう言われ、逃げるように席へと戻っていく。ファイルを見終わったソラはその絵を部長へと返す。
「ありがとうございます!良い絵でした!」
「ふふ、ありがとう。あなた転校生よね?どう?美術部入ってみない?」
「あ、いえ……部活動は……」
「あら残念」
部活動に興味はあるし、絶対に楽しいとわかっているのだが、ヤクモとましろは部活動に所属していない。そのため、自分だけ所属したら2人と一緒に過ごす時間が減ってしまうのもあり、部活動をやるつもりは今のところはないというのがソラの意思だった。
「でも、興味があったらまた来てね」
「わかりました!」
「それじゃ、帰ろうっか?」
そして3人は美術部を後にし帰宅することにするのだった。
★
「へぇ~プリキュアのファンアートってこと?」
「ファンアート?」
その後、帰宅する途中で偶然あげはと出会ったヤクモ達は彼女に誘われファミレスを訪れていた。そこで学校であったことを話したところ、あげはも面白そうに言う。
「つまり、プリキュアを応援する絵ってこと」
「成程!」
「でで、誰が多かった?」
「え?」
「誰がって……」
「いやそこまでは見てなかったけど……」
絵はたくさんあったが、そういえば誰の絵が多かったかというのはヤクモは全然意識してなかった。3人の絵は全員それなりにあったとは思うが、そもそも生徒達がプリキュアの存在を初めて知ったのがあの1回でそれら数日しか経っていないのだから誰が多いも何もなかったと思うのだが。
「はい!クラウドが一番多かったです!」
「……まじ?」
迷いなくクラウドが一番多かったと答えるソラ。
「そういわれると確かに多かったかも?」
「ヤクモ君は誰が多かったって思ったの?」
「誰って……そこまで意識はしてなかったのでなんとも……どっちかというと2人の方が多かったようには見えたけど……ちょっと格好は怪しいかなってのはあったけど」
「だからじゃない?」
ましろも心当たりがあるようだ。そうだったかなと首を傾げていると、その理由を探り当てたあげはがビシッと指を立てて得意げに言う。
「ずばり、スカイとプリズムはまだ描きようがないってことだよ」
「へ?」
「その部長さん、ヤクモ君が助けたんでしょ?なら、クラウドの姿はばっちり覚えてたから描けてたけど、2人はクラウド程覚えてなかったから、それを元に描いてる他の人たちもどうしても比率が偏ってくるんじゃないかって」
「あー……」
そういわれると確かにと納得する。それなら時間が経てば比率もいずれ逆転していくんだろうなと思いながら、ドリンクバーで入れてきたコーヒーに口をつける。
「そういえばファンアートで思い出したんだけどさ」
「はい」
「ちらほらと噂にはやっぱりなってるみたいなんだよね、プリキュアって」
「そうなんですか?」
「町中で戦ってるわけだからまあ……」
プリキュアの存在が、というよりも町中で突然現れて街を壊して回るランボーグの存在が噂に最初になったのだろう。そしてそのランボーグを倒すプリキュアの存在も噂として出てきているのだそうだ。
「噂は広がっていくよね……全然意識してなかったけどいずれ街の皆がプリキュアの事を知るようになるのかな」
そんな日が来るのであればそれはそれで見てみたいと思うところもあるが、見方を変えればそれだけランボーグも出現し、戦闘も行われているということになる。そうなる前に解決できればそれに越したことはないんだろうけども。なんてことをヤクモは考える。
「……でもかっこいいプリキュアの姿ね」
「どうしたんですか?」
「いや……そういうのが欲しいなら写真撮影でもする?って思って」
「いやしない」
あげはの提案を即否定するヤクモ。写真撮影そのものが恥ずかしいというよりは、撮影自体がないと思ってるような口ぶりだった。
「皆を守ったり助けたりするために変身してるのに撮影のために変身はするものじゃないと思うんだ」
「うん……あげはちゃんには悪いけど私もそう思うな」
「はい……なんていうか、見世物になるためにプリキュアの力はあるわけではないと思うんです」
ヤクモの意見に同調する2人。3人にとってプリキュアの力は特別なものである。だからこそ、こういった俗物的な行為にそれを簡単に使いたくないという意識がどうしてもあるのだろう。そっかそっかと特に残念がることもなくあげはは自分の飲み物に手を付ける。
「でも……美術部の皆さんはプリキュアの事を凄く慕ってました。それに応えたいっていう気持ちはありますし……こうやって、誰かが私たちのことを慕っているって思うと、ちょっとあの人に近づけた気がします」
「……あの人?」
感慨深そうに言うソラ。ソラにとっては大きな人物のようだが、一体誰なのか。ヤクモの疑問の声に、まるで待ってましたと言わんばかりにソラはその人の事について語り出す。
「はい!私にとって憧れの人……スカイランドのヒーローです!」
「スカイランドのヒーロー……」
興奮したように話すソラ。ヒーローを目指すソラにとって憧れの存在なのだろうということは見て取れるし、今のソラにも大きな影響を与えていることを予想するのは決して難しいことではないのだろう。
「スカイランドの人でソラちゃんが憧れるヒーローかぁ……気になるね」
「うん、私もその人の事はそういえば聞いたことないから気になるかも」
ましろとあげはも興味津々といった様子だ。ヤクモも、ソラの憧れの存在には興味がある。その人物についての話を聞こうとしたその時。
「……あ、ごめん」
ヤクモのスマホが鳴り、一旦席を外すヤクモ。スカイランドのヒーローについて話そうとしていたソラはヤクモの突然の退席で喋ることができず、しょぼんと項垂れてしまう。
「あはは……タイミング悪いね」
「ま、まぁすぐに戻ってくるだろうしその時にまた話してよ」
「はい……」
今すぐにでも話したかったのだろう、とはいえ仕方ないと頭ではわかっていているのだが。
「それだけヤクモ君には知っていてほしかったんだね」
「はい……ヤクモさんはこの世界のヒーローをいっぱい知っていると言っていたので、是非あの人のことを教えてあげたいと思って……」
「「……ん?」」
ソラの言葉に2人はヒーローについて彼女が誤解していることに気付く。それについて訂正してあげようとあげはが口を開こうとすると、電話を終えたヤクモが戻ってくるのだった。