曇り空の夜のプリキュア   作:popoponpon

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第116話 未熟な先

 

「見つかりません!?」

 

シャララがスカイランドへと戻った翌日。虹ヶ丘家にソラの悲鳴が響き渡っていた。

 

「どうしたらいいんですかあ!?うわああああ!!」

 

当然そこまでの大声となれば部屋の外にも声は響いてくる。一階から心配そうに上の階を見つめるましろ達だったが、あげはがソラの様子に思わず苦笑してしまう。

 

「悩み、駄々洩れだね」

「完全に行き詰ってますね……」

「……ヤクモ君」

「うん……行った方がよさそうだね」

 

今来たばかりのヤクモも、この声を聞いては黙っているわけにもいかない。ましろにも言われ、息抜きの為に皆と出かけようとソラの部屋へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「昨日、買い物で来られたばかりですけど……」

「僕は来られなかったですし……」

 

悩むソラをヤクモが説き伏せ、全員で再び外出。その先として一旦プリティホリックのカフェに訪れたのだが、昨日の今日ではないかという疑問がソラから出てくる。とはいえ昨日はツバサがいなかったため、その兼ね合いだというとソラも納得したようだ。

 

「少年、最近部屋にずっと籠りっぱなしだったからさ」

 

ツバサと一緒にお出かけができて嬉しそうにしているエルと、そんなエルに笑いかけるツバサを見ながらあげはがいう。

 

「今日は思いっきり羽を伸ばそう!」

「はい!」

 

悩んでいるが答えは出ないのは事実。まずは心をリフレッシュしてから考え直すのも悪くないだろうと、ソラもましろの言葉に笑顔で頷く。そしてカフェから出たその時だった。

 

「……!」

 

ヤクモがアンダーグエナジーに感づく。その様子を見て一目で何があったのか理解した5人はヤクモと頷き合うと、スキアヘッドが現れた場所へと走り出す。

 

「スキアヘッド!」

「来たか」

 

街中に現れたスキアヘッドがヤクモ達を一瞥する。その顔を見たソラの頬を冷や汗が流れる。

 

「……キラキラエナジーを研究しているとか」

「!?何故それを……」

「無駄なことを……アンダーグエナジーは最強の力」

 

すぐにキョーボーグを呼び出すかと思えば、スキアヘッドが言及したのは、ツバサがキラキラエナジーを研究しているという事実を把握しているという内容だった。研究を進め、知識を深めると言う点はスキアヘッド自身も思うところがあるようだが、アンダーグエナジーが最強の力であるという確固たる事実を自分の中で固めている以上、その研究は些細なことに過ぎないと一蹴する。

 

「それをどうこうしようなどと……小賢しい。アンダーグエナジー、召喚」

「キョーボーグ!!」

 

標識とマネキンに注がれたアンダーグエナジーが人型のキョーボーグを作り出す。その手には標識のマークの部分が円盤のように握られている。だが、ソラの視線はキョーボーグではなくスキアヘッドへ向けられたまま、その体は固まってしまっていた。

 

「ソラさん!」

「!?は、はい!」

 

ヤクモに言われ、自分が全く集中できていないことに気付くソラ。すぐにペンを取り出すと、6人はプリキュアへと変身する。

 

「キョーボーグ!」

 

先制攻撃とばかりに標識をフリスビーのように投擲する。それを跳んで回避するのだが、スカイだけが1人で遅れてしまい、シューズに標識が掠ってしまい姿勢が前のめりに崩れてしまう。慌てて両手を地面について着地するのだが、そのチャンスをキョーボーグが逃すわけもなく、スカイを攻撃しようと拳を振り上げる。

 

「!」

 

それに気付いたスカイが攻撃を避けられないと確信する。しかしその目の前に彼女を守るようにクラウドが降り立ち、さらに空中からウィングとマジェスティが足を交差させながらキョーボーグへ迫る。

 

「「はああああ!!」」

 

スカイへと振り下ろされるはずだった一撃、それは2人の蹴りによって阻まれ、キョーボーグの拳が真上へと蹴り上げられる。それによってのけ反り、無防備になるキョーボーグ。ここがチャンスとばかりにプリズムとバタフライがキョーボーグへと迫る。

 

「「やああああ!!」」

 

さらにプリズムとバタフライが同時に拳を放ち、無防備になったキョーボーグの胸部を吹き飛ばす。クラウドがスカイに手を貸して立たせると、

 

「大丈夫?」

「は、はい……」

「キョウ……ボーグ!!」

 

吹き飛ばされたキョーボーグもすぐに体勢を立て直すと、今度は何枚もの標識を取り出す。それを同時に投げることで、今度は先ほどよりも多くの標識が投擲されることとなり、弾幕となってスカイとクラウドへと襲い掛かる。

 

「!クラウド!」

「ああ!」

「きゃっ!?」

 

今の不調のスカイを戦わせるのはまずい。そう判断したウィングとクラウドが頷き合うと、クラウドがスカイをお姫様抱っこの形で抱えると近くの建物の屋上へと移動する。そんなスカイの姿を見ていたスキアヘッドはプリキュアとキョーボーグの戦いを見守るべく、邪魔にならない近くの別の建物の屋上へと移動する。

 

「戦いに集中できていない。前と同じか……」

 

どこか呆れたようにすら聞こえてくる声を漏らすスキアヘッド。戦う気のない戦士に用はないと言わんばかりにスカイから意識を外してプリキュアとキョーボーグの戦いを観戦し始める。

 

「何故……戸惑う……私は……」

「スカイ……」

 

屋上で降ろされたスカイは、俯きながら膝を付く。戦闘が始まったと言うのに、いまだに悩みのせいで集中できず、皆の足を引っ張ってしまう。そんな自分の姿が未熟で、そしてあまりにも情けなくて仕方がなかった。だが、そんな弱ったスカイをキョーボーグが逃すわけもなく、プリキュア達の隙を突いて高く跳んだキョーボーグがスカイとクラウドの姿を認識すると、

 

「キョーボーグ!!」

「……あ!?」

 

先程を超える枚数の標識を投擲してくる。突然目の前に現れたキョーボーグの攻撃に、スカイは反応しきれずに呆然としてしまっており、攻撃の回避などとてもできそうにない。

 

「危ない!」

 

スカイに危害は絶対に加えさせない。そう言わんばかりにクラウドが声を上げてスカイの目の前に立ち塞がりながらアンブレランスを開き、キョーボーグの攻撃を防ぐ。アンブレランスに次々と標識が命中し、弾かれ吹き飛んでいく中、クラウドはスカイに向かって語り掛ける。

 

「く、クラウド……」

「……スカイはどうしたい?」

「え……」

 

キョーボーグの攻撃をどんどん受け止めながら、クラウドはスカイへと話しかける。今のスカイの迷いは、クラウドもよくわかる。だって、スキアヘッドのあの発言は、クラウドも聞いていたのだから。実際に会ったこともないとはいえ、アンダーグ帝国の事も考えるようになり始めたクラウドも、スカイと同様にずっと考えていた。そして辿り着いた答えは、

 

「俺は……知らないままでいるより知りたい。どうして戦うのか……この戦いの先にその理由が知れるなら……俺は迷わない。どこかに相手の事を知れるとっかかりだって、いつか生まれるはずだよ」

「クラウド……」

 

戦い続ける。でもそれは思考停止で戦い続けることではない。真実を知るために前に進み続けるということだと。その言葉を聞いたスカイははっとなる。と、そこにウィングが駆け付け、円盤を1枚蹴り砕くとスカイの隣に近づく。

 

「スカイ、だったら話して来ればいいじゃないですか!」

「ウィング!?」

「それって、スキアヘッドと?」

「はい、そんなにスキアヘッドが戦う理由が気になるなら、話して見たらどうですか!」

「話す……スキアヘッドと……」

 

ウィングの言葉に、スカイは盲点だったかのように驚きの声を漏らす。スキアヘッドは敵であり、とても話し合う存在ではないと思っていた。だが、改めて考えてみれば、かつては敵であったミクモやミノトンともわかり合ってきたのだ。スキアヘッドとだって、敵同士という関係は崩せなくとも、言葉をぶつけ合えば何か見えてくることがあるのかもしれない。遠くの建物の屋上で佇むスキアヘッドを見ていたスカイだったが、次第に決意を固めたように表情を引き締めると。

 

「……お願いします」

「よし……いこう!」

 

スカイの決意を聞いたウィングが、屋上から飛び出し、キョーボーグとの戦闘を続ける3人へと話しかける。

 

「皆!スカイをスキアヘッドの元に!スキアヘッドと話をさせてあげてください!!」

 

ウィングの声を聞いたプリズムたちが一旦スカイ達の元へと合流してくる。そしてプリズムが嬉しそうにスカイの手を握る。

 

「スカイ!スカイを行かせることが私達ができることだね!」

「プリズム……皆!」

「一気に行くよ!クラウドはスカイと一緒に居てあげて!」

「わかった!」

 

皆の顔を見て、嬉しそうに頷くスカイ。早速、バタフライがミックスパレットを使い、スカイとクラウドの速さを引き上げる。これで、キョーボーグをすり抜けてスキアヘッドの元へと迎えるはずだと太鼓判を押すようにバタフライが言う。

 

「行って!スカイ!クラウド!」

「はい!」

「ああ!」

 

スカイとクラウドが同時にその場から跳び出す。高く跳躍し、雲の足場を乗り継ぎながらキョーボーグが手を出せない高度をキープしながらスキアヘッドの元へと素早く向かう。跳んでも届かないとなれば当然、投擲でキョーボーグもスカイとクラウドを攻撃しようとするのだが、足場を細かく、素早く乗り継いでいくことでそれらの攻撃は簡単に回避できる。

 

「キョウ……!」

 

次第にただ投げていくだけでは当たらないと悟ったキョーボーグが、偏差射撃を行うようになる。だが、ここでプリズムたちが割って入り、キョーボーグの攻撃を粉々に砕いてしまう。

 

「キョーボーグは私達に任せて!」

「はい!」

 

尚も攻撃を続けるキョーボーグを捌くプリズムたち。その間に完全にキョーボーグの射程圏内から逃れたスカイとクラウドは雲から飛び降りる。その視線の先にはスキアヘッドがおり、スキアヘッドもこちらを見上げる。戦う気のあるクラウドはともかく今のスカイなど眼中にもない。しかし、このままプリキュアの思い通り、こちらに向かわせるわけにはいかないと判断したのか右手を広げる。

 

「小賢しい」

 

アンダーグエナジーの球体を次々と連射する。クラウドがその球体をかき消しながら迫るも、1人でカバーしきれる量ではなく、一発がスカイに命中してしまう。

 

「きゃあ!?」

「スカイ!?」

 

直前に腕を交差して受け止めたことでダメージはないようだがその衝撃で吹き飛ばされ、道路に落ちる彼女を見て、クラウドが雲の足場を作り出してそれを蹴ってスカイの落下地点に先回りして受け止める。そしてスカイを下ろして2人が振り向くと、トンネルを使って移動してきたスキアヘッドが現れる。

 

「……ずっと、考えていました」

「?」

「何故私に隙が生まれたのか……あの言葉を……聞いたから……!」

「我らが戦う理由を聞いて怯んだというのか?今になって?」

「……?」

 

スカイが何故戦意を失ってしまったのか。それはスキアヘッドにとっては呆れる理由だったのだ。しかし、そんなスキアヘッドの言い方に、クラウドは何故か違和感を感じてしまっていた。今まで戦う理由を知らずに戦っていた敵の戦う理由が愛する人のためだとわかったことで戦意を喪失してしまうというのは、アンダーグ帝国の倫理観ではおかしいということか。しかし、スキアヘッドの感覚はどこか根本的にずれている。そんな印象があった。

 

「あなたも誰かの為に戦っている……私達と同じじゃないかって」

「……だったらなんだ?」

 

スカイの言葉を聞き、少しの間を置きスキアヘッドがこう返答する。

 

「だとしたら、私達は戦わなくてもいいんじゃないかって!」

「つくづく未熟。戦う相手を気に掛けるとは!そのような愚行が、取り返しのつかぬ事態を生むのだ」

 

その言葉は、スカイに向けて言ったようには聞こえなかった。とすれば、スキアヘッドが語り掛けている相手は誰なのか。いや、それこそ考えるまでもない。

 

(カイゼリンに向けての言葉……?)

 

スカイがその結論に達するのと同時にスキアヘッドの手から放たれたアンダーグエナジーの球体が地面を吹き飛ばし、瓦礫でスカイとクラウドを攻撃する。クラウドがスカイの盾となって瓦礫を受け止めようとすると、その瓦礫に球体を命中させ、その爆発の衝撃で2人を攻撃する。その間にトンネルを使って再び屋上へと移動するスキアヘッド。

 

「そして、この前と同じ……考え、悩むことで戦いに迷いを生む」

 

トンネルが開かれると共にそこから湧き出たアンダーグエナジーが集まっていき、巨大な球体へと変わっていく。だがそれはただの球体ではない。クラウドの能力を防ぐかのようにその内部では高速でアンダーグエナジーが蠢き流れており、クラウドが迂闊に触れても即座に弾き飛ばせるようになっているようであった。

 

「見せてやる……お前の迷いがこの街ごと吹き飛ばす」

「あなたはどうして……!迷わないんですか!?悩まないんですか!?誰かの為に戦うあなたが、どうして!?何故人を傷つけられるのか……何故あなたが皆を傷つけるのか……教えてください!」

「お前が知ることはない。ここで消えるのだから」

 

スカイの言葉を聞いてもなお、スキアヘッドは無表情のまま一蹴する。彼の行動原理に迷いも悩みもない。本人の中の確固たる信念に基づいて動く彼に、スカイの言葉は届かないのだろう。そして遂に、アンダーグエナジーが投げ落とされる。

 

「戦う相手への興味、それ自体は否定しない。だが、お前の興味は感情的。街は消える……全てはお前が引き起こした。己の未熟さを呪うがいい」

「……未熟……」

「……いいじゃないか。それならそれで」

「!」

「スカイはやりたいことをやったんだ。それに何か言われることがあったとしても……否定される謂れはない」

 

スキアヘッドの放った未熟と言う言葉。だがクラウドはそれを否定し、それがスカイの良いところだと言う。それを聞いたスカイは胸の中が温かくなるのを感じた。そうだ、その未熟さに皆は、クラウドは付き合ってくれたのだ。それが自分らしいと信じて。ならば自分こそ、最後までその未熟さを信じなければならない。何故ならそれが、自分の信じるヒーローなのだから。

 

「その通りです。これが未熟なら……未熟でも構いません!未熟だから……知りたいんです。未熟だから……私のやり方で知りたいんです。未熟だから……前に進まなければならないんです!!」

 

完全に迷いを振り切り、クラウドに目で合図をして拳を構えるスカイ。クラウドはアンブレランスを手にしてアンダーグエナジーを受け止める準備をしていたが、スカイの合図を見てアンブレランスを閉じる。その様子を見て、何をする気かと僅かに眉を寄せるスキアヘッド。

 

「考えて悩むことが未熟だと言うのならば……それでいい!それこそが!仲間と共に私が目指すヒーローです!!ヒーローガールスカイパンチ!!」

 

地面がひび割れるほどの勢いで跳び出し、スカイパンチを放つスカイ。その体は青い光ではなく金色の光を纏い、その必殺の一撃はスキアヘッドが放った強大なアンダーグエナジーの塊を浄化し、キラキラエナジーへと変えていく。

 

「この力は……!」

 

スカイが見せた力を見て、スキアヘッドも驚きの声を漏らす。スカイはそのまま屋上へと着地すると、

 

「スキアヘッド。話をしましょう」

 

と、語り掛ける。しかし直後、他の4人によって吹き飛ばされたキョーボーグが偶然、スカイとスキアヘッドのいる屋上へと落下してくる。それを見たスキアヘッドはキョーボーグの敗北を悟ったのか、一瞬だけ興味深そうにスカイの拳を見るとトンネルの中へと入っていく。

 

「スキアヘッド!」

「スカイ!」

 

スカイの傍に5人が降り立つ。話をする前にスキアヘッドが消えてしまったことは残念ではあったが、今はそれよりも残されたキョーボーグへの対処が先だ。スカイは皆に頷くと、マジェスティクルニクルンの力を開放する。

 

「「「「「「プリキュア!マジェスティック・ハレーション!!」」」」」」

「スミキッター……」

 

マジェスティック・ハレーションによってキョーボーグが浄化され、元のマネキンと標識へと戻っていく。そして時刻は夕方となり、本来の人気を取り戻した町中の一角でソラは夕日を浴びながら座り込んでいた。

 

「スキアヘッドにも、戦う理由はあるのかもしれません。ですが……どうして誰かを傷つけることができるのでしょう……」

「……うーん……答えは簡単には見つからないかもね」

 

人によって戦う理由は違う。スキアヘッドにとってはそういうものだと結論付けるのは簡単なことだ。しかし、そこで考えるのを止めたくない。そんなソラのスタンスに同意するように、あげはも悩みの声を漏らす。他の皆も、うまく言葉にできないようでただ黙ったまま、あげはの言葉に頷く。

 

「……はい。簡単じゃないかもしれないですけど……もっと彼らの事を知れば、きっと、答えは見つかると思うんです」

「うん、そうだね。それは簡単なことじゃないかもだけど……でも、知ろうと思えば今まで見えなかったことが見つかるはずだよ」

「はい!ヤクモさん、一緒に見つけていきましょう!」

 

ヤクモが今やっているように、ムラクモやミクモ、アンダーグ帝国の住人達からアンダーグ帝国の事を教えてもらえば、そして調べれば、何故スキアヘッドがカイゼリンの為に尽くすのか。そもそもカイゼリンがどうしてエルを狙っていたのか。何故プリキュアを抹殺しようとしているのか。色々なものが見えてくるはずだ。そして戦いの中で悩むことも、迷うこともいっぱいあるだろう。それでも前を向いて歩き続けていけば、きっと答えは見えてくるはずだ。それを皆で、そしてヤクモと一緒に見つけていきたい。ソラは、改めてそう思い、ヤクモに向かって笑うのだった。

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