曇り空の夜のプリキュア   作:popoponpon

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第118話 プリズムシャイン

 

ソラと共にましろが家に戻ってきた時はすっかり暗くなっており、夜になっていた。すぐに風呂に入り、暖かい恰好になり、飲み物で暖を取って少しでも落ち着きながら、ましろは皆に今日何があったのかを話していた。机の上には雨でしわくちゃになってしまったスケッチブックが置いてあり、なんとか乾かして千切れたページをテープでつなぎ合わせて修復を施そうとしていた後があった。しかし、よれよれで汚れてしまったスケッチブックはもう以前のようにまともには使えないだろう。

 

「……ごめんね、皆。私のせいで……ミラージュペンも取られちゃって」

 

一通り話し終わると、ましろは皆に謝罪の言葉を口にする。特に、ミラージュペンを取られてしまったということは、ましろはもうキュアプリズムに変身できないと言うこと。それはあまりにも痛い。皆への迷惑を考えたらましろも特にその点を後悔しているだろう。しかし、

 

「ましろさんのせいじゃありません!」

「そうだよ!あいつ、ましろんを騙して傷つけて……!」

 

当然、ソラ達の怒りはバッタモンダーへと向けられていた。当然だろう、紋田とあまり話したことのないソラ達からすれば、バッタモンダーが姿を偽ってましろに接近し、ましろと親密になったところで彼女を裏切ったばかりか、ミラージュペンまで奪って行ったようにしか見えないのだから。

 

「……いっぱい騙されたけど、酷いこともされたけど……バッタモンダーのこと……今はあまり怒る気になれないんだよ……」

「ましろさん……」

 

だが、紋田として接していた時の彼の姿。そこにどれだけ偽りがあったとしても、あの時激昂してスケッチブックを破いた彼の言葉は、本当だったのだろう。その言葉を考えると、とてもましろはバッタモンダーに怒りをぶつける気にはなれなかった。

 

「アンダーグ帝国の人たちは強さや力の事ばかりで……他の人より優れてないと価値がないって思ってる……その気持ち……ちょっとだけ、わかる気がするから……」

 

バッタモンダーが自分達と戦っていたのも、今回のような凶行を打って出たのもアンダーグ帝国の価値観が根付いていたからだろう。アンダーグ帝国のその価値観に振り回されたのは彼だけではない。ミクモや、そしてスキアヘッドに利用されたミノトン。また、カイゼリンに殺されそうになったカバトンなど。特にソラとヤクモは以前出会ったカバトンやミノトンの事を思い出していた。

 

「将来の夢もなかったから……自分には何もない気がして……でも……今は違う。自分は自分のままでいいって、気付けたから」

 

それでも、ましろが前を向けたのは、こうして絵本作家という夢を見つけ、腐らずに進むことができたのは、ソラやあげは、ヤクモらと出会ったから。プリキュアとして、一緒に戦ってきたからだ。

 

「ましろさん……」

 

ソラが、ボロボロのスケッチブックを見る。スケッチブックが破れないように慎重に持ち上げると、絵本に描かれていた文字を読み始める。多少滲んだりしているところはあったが、それでもまだまだ読めるぐらいにははっきりしていた。

 

「地面に落ちた落ち葉君は……ましろさんだったんですね」

「!」

 

ソラの言葉に、ましろは驚く。確かに言われてみれば、その通りだと思ったからだ。

 

(楽しいだけじゃない。苦しんでいる人を元気づけるような、そんな絵本を描きたいと思ってた。あの時……落ち葉を見て辛そうにしてた紋田さんみたいな人を元気にできたらって……でも……この絵本は……)

 

自分はこの絵本を、紋田のような人の為にと描いた。だが違う、この絵本は、本当は彼のために描いた絵本というだけではない。

 

(私のお話でもあったんだ……!)

 

自分の気持ちを、体験を込めたお話でもあったのだ。であれば、自分がバッタモンダーにするべきことは。

 

「皆!お願いがあるの!ミラージュペンは必ず取り返さなきゃいけないけど……その前に私、バッタモンダーと話したい!」

 

ましろの強い決意にソラ達も頷く。彼女がそうしたいと思うのなら、それに異論はない。そのうえで、

 

「父さんにも連絡してみるよ。何か、いいアドバイスをくれるかもしれない」

「ありがとう!そういえば……バッタモンダーがカイゼル様が助けてくれたって言ってたから、何か知ってるかも」

「!わかった、それも聞いてみるよ」

 

ヤクモがムラクモに連絡をする。そして少し通話していたがヤクモがスマホの電源を切って少しすると、突然虹ヶ丘家のインターホンが鳴る。

 

「?こんな時に……ムラクモさん!?」

「……父さんってトンネル使えたっけ……そういえば」

 

自力でスカイランドにも行ってたし、そもそも元々アンダーグ帝国から出てきたのだからトンネルを使えるのはある意味当然の事かもしれない。通話で話さなかったのはあかりへの配慮もあるのだろう。対応したあげはにリビングまで案内された小さな袋を持ってきたムラクモは、机の上に置いてあったスケッチブックを一目見ると、ヤクモからスキアヘッドがやらかした行動と、ましろのミラージュペンを奪っていったこと、そしてバッタモンダーがムラクモと何らかの経緯で接触していたことが明らかになったことを改めて伝える。それを黙って聞いていたムラクモが溜息を吐くと、

 

「……そうだな。確かに俺は、カバトンやバッタモンダーがアンダーグ帝国から切り捨てられた後、この世界で生きていけるようにある程度手助けをしていた。といっても最低限であいつらがこの世界で自分の力で生きていけるようにってことで俺も問題を起こそうとしない限りはそのままだったがな」

「そんなことやってたんですか!?」

「あいつらの事をお前らに伝えなかったのは、あいつらからもお前らと関わりたくないって思ってたんだよ。まさかこんなことしてるとは思わなかったが……」

 

バッタモンダーやカバトンの事を話す。ソラも偶然カバトンと出会ったが、その時のカバトンの台詞からして、出会った以上は仕方ないが元アンダーグ帝国の住人としてプリキュアと関わる気はないというスタンスだったため、ムラクモの言う通り本来は関わり合いたくはなかったのだろう。

 

「……悪かったな。これは俺のミスだ」

「ううん、私は気にしてません。それに、バッタモンダーは言ってました。ムラクモさんに迷惑をかけたくなかったって。だからきっと、バッタモンダーも感謝してると思います」

「……そうか。あいつも色々苦しんでたからな。まぁ、やったことを擁護する気はないが……スキアヘッドの奴を見て追い詰められていたんだろうな。少しずつ前を向き始めてはいたと思ったんだがな……」

 

ムラクモの言葉を聞いている内に、ましろはもちろん、ソラ達もやりきれないといった様子になる。特にヤクモは複雑な表情を浮かべていたが、次第に、絶対にバッタモンダーを助けなければならないと決意を露わとする表情へと変わっていく。それは、父が見ていた人物であったからということもある。だがそれ以上に、放っておけなくなってしまった。

 

「父さん、俺達に任せてよ」

「そうか頼むぞ……ああ、それとこれだ」

「ん?」

 

ヤクモは父から袋を投げ渡される。ヤクモが中を確認すると、そこには着替えが入っていた。

 

「この雨で帰るのも酷だろ。俺は1人でもさっさと帰れるがな。話は通してるから泊まらせてもらえ」

「いいの?」

「明日、いつ動くかわからないんだからそうしとけ」

「わかった」

「よかったですね」

 

ヤクモも虹ヶ丘家に泊まることが決まり、ソラを始めるとして皆憂いそうな表情を浮かべる。そしてムラクモが帰宅し、ヤクモ達は翌日に備え休むことになるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、雨はすっかり止み、綺麗な朝日が差し込んできた。ましろ達は、バッタモンダーが正体を現した公園へと最初に向かうことに決めていた。そしてそこには、しゃがみ込んで地面に張り付くように落ちていた一枚のイチョウの葉っぱを見つめるバッタモンダーがいた。

 

「……」

 

ましろ達の足音に気付き、立ち上がるバッタモンダー。ましろが皆の顔を見ると、皆は頷き、ましろに話を促す。そしてましろは一歩前に出ると、バッタモンダーへと話しかける。

 

「バッタモンダー」

「……ミラージュペンを取り返そうってなら……無駄だ」

 

ましろ達に背を向けたまま、バッタモンダーが答える。その声音は震えており、様々な感情がごちゃ混ぜになっているかのようにも聞こえた。

 

「ここにはないからな……」

「戦う気はないよ。あなたと話したいだけ」

「……話す?やっぱり……お前は何もわかっちゃいない……」

 

振り向くバッタモンダー。その顔は何かを悟ったような表情となっていた。何故バッタモンダーがこんな表情をしているのか。その理由はすぐに明らかとなる。

 

「俺にはもう……そんな時間なんかねえんだよ!」

「!?お前……」

 

バッタモンダーの手には、濃縮されたアンダーグエナジーの球体があった。それはスキアヘッドから与えられた、バッタモンダーの心を完全に消滅させ怪物を作り出す魔の力。当然、それを一目見たヤクモが険しい表情を浮かべる。

 

「……それを自分の中に入れるつもりか!?」

「ああ、そうだよ!へっ……今日こそお前らを倒すためにな……!そして俺の強さを証明する……!」

「やめて、バッタモンダー!」

 

それを取り込めばどうなるか。ミノトンの姿を知っているだけに、6人は強くそれを否定する。だがバッタモンダーには、それを受け入れようが受け入れまいが結果は変わらないのだ。

 

「我らにとって、力は全て」

 

アンダーグエナジーを震える手で取り込もうと胸元に近づけようとするバッタモンダー。しかし、自分が消える恐怖からかその先へと動かない。と、そこにスキアヘッドの冷徹な声が聞こえ、バッタモンダーの手が止まる。

 

「スキアヘッド!?」

 

バッタモンダーの後ろに現れたスキアヘッドの右手の上には、ましろのミラージュペンが浮かんでいた。

 

「この期に及んでまだ迷うか。プリキュアに負け、無様に足掻いた末、負け犬として終わるつもりか」

「く、う、う……!」

 

それを見て、ましろ達は悟る。バッタモンダーがこのアンダーグエナジーを取り込まなければ、すぐにスキアヘッドに殺されてしまうだろう。だからこそ、バッタモンダーは時間がないと言っていたのだろう。死か消滅か、最悪の二択を突きつけられたバッタモンダーは、アンダーグエナジーを自分の腹部に勢いよく押し込むと、それを取り込んでいく。

 

「うがああああああ!!」

 

苦悶の声を漏らしながらバッタモンダーの全身からアンダーグエナジーが噴出される。ジャケットが千切れ、徐々に肉体が肥大化していき、肌は灰色へと染まっていき、髪が逆立ち始める。ましろ達が呆然と見ていることしかできない中、変態を終えたバッタモンダーが姿を現す。

 

「バッタモンダー!?

「呼びかけても無駄だ。奴の弱い心は消え、力そのものになるのだ。破壊そのものの獣にな……アンダーグエナジーは強大だ。使い道のない無価値な存在にさえ、これほどの力を与える」

「無価値……」

「そう、力を持たぬ者に価値などない」

 

変わり果てたバッタモンダーの苦しそうな姿を見ながら、体のいい廃棄処分ができたと要約する語るスキアヘッド。ましろはぐっと堅く拳を握りしめながら、静かに怒りを込めながらスキアヘッドに言い放つ。

 

「……価値がないなんて、あなたが決める事じゃない!!」

「!」

「自分の価値は、自分で決めるんだよ!!」

「……」

 

ましろの言葉が力に呑まれ、苦しむバッタモンダーを静止させる。だが、スキアヘッドは今一番無価値なプリキュアとなり果ててるましろを嘲笑する。

 

「変身できず、何の力もないお前が自分には価値があると吠えたところで、所詮は綺麗事」

「自分の価値は……自分で、決める……」

「バッタモンダー。これでお前も、漸くアンダーグ帝国の役に立てる」

 

静かになったバッタモンダーが、ゆらりとスキアヘッドを見る。と、ここでスキアヘッドはバッタモンダーの向こう側にある人物を見つけて驚きの表情を浮かべる。

 

「お前は、カイゼル……!?」

「ああああ!」

「っ!?」

 

遠くにいたムラクモの姿。コートを羽織ったその姿を見て一瞬気を逸らされた瞬間にバッタモンダーはスキアヘッドの胸部を勢いよく殴りつける。

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

そのまま、スキアヘッドからミラージュペンを奪い返す。一瞬の隙を突かれたスキアヘッドがバッタモンダーと、その様子を見て満足そうに姿を消すムラクモを見ながら、何故意に反したのかと問いかける。

 

「何を……」

「いい加減むかついたから殴っただけだよ……おっさん!」

 

自分の価値は自分で決める。自分の価値を決めるのはアンダーグ帝国でも、スキアヘッドでもない。ムラクモだって、自分の価値を定めるようなことはしなかった。それは、自分の手で這い上がり、自分自身という価値を打ち立てろという彼からのメッセージだった。そのことに、やっとバッタモンダーは気付けたのだ。ましろのおかげで。

 

「やはりお前は無価値な存在」

「ああそうだよ!俺は馬鹿だ!!……でもな、俺は無価値なんかじゃねえ!!」

 

勢いよくミラージュペンを握りこむ。瞬間、スキアヘッドがまとわせていたアンダーグエナジーが完全に吹き飛び、呪縛から解き放たれたペンがましろの手に戻る。

 

「!ありがとうバッタモン……!?」

 

しかしましろの手にペンが戻った直後、バッタモンダーは完全にアンダーグエナジーに呑み込まれてしまう。

 

「吞まれたか」

「うああああああ!!」

 

全身に赤黒いオーラを纏い、完全に我を失ったバッタモンダー。しかし、取り戻されたペンを強く握りしめ、ましろは啖呵を切る。

 

「絶対に助け出す!」

 

ましろが変身するのに合わせ、ヤクモ達も変身する。今のバッタモンダーがかつてのミノトン以上の力を発揮していると考えれば、真正面からぶつかるのは危険。そう判断したバタフライが早速ミックスパレットの力を発動する。

 

「元気の力、アゲてこ!」

 

プリキュア達の体を桃色の光が包み込む。そしてスカイとバッタモンダーが同時に跳び、拳をぶつけ合う。そのまま激しい乱打戦に入るが、次第にバッタモンダーの方が速さで上回り始める。スカイへ向かって放たれた鋭い蹴りをどうにかのけ反って回避するスカイ。それと同時に空中からマジェスティが仕掛けてくる。

 

「はあああ!」

「マジェスティ!」

 

だがその拳を片手で受け止めて逆に握りしめて捕まえてしまう。プリズムがマジェスティを救うために攻撃するも、バッタモンダーが空いた左手を突き出しそこからアンダーグエナジーを放出すると光弾を呑み込んでかき消してしまう。

 

「!?」

「っらぁ!」

 

直後、クラウドがバッタモンダーへと走り、左手をアンダーグエナジーに突っ込みながら右手のアンブレランスで攻撃してくる。しかしそれをしゃがんで回避すると、クラウドが突っ込んだ手とアンダーグエナジーを切り離して蹴り飛ばす。

 

「ぐっ!」

「があああ!」

「プリズム!」

 

そのまま左手をプリズムへ突き出すと、アンダーグエナジーのビーム砲を放つ。咄嗟にプリズムの前にバタフライが立ち、シールドを出現させてビームを受け止める。が、いとも簡単にシールドが貫通され、2人がまとめて吹き飛んでしまう。

 

「「きゃあああ!!」」

「プリズム!?」

「僕も!」

 

バッタモンダーが2人に追撃を仕掛ける気配を感じたのだろう。スカイとウィングが同時にバッタモンダーへと迫る。だがバッタモンダーはマジェスティを2人へと投げつけると、2人は攻撃を中止してマジェスティを受け止めるしかない。が、2人がマジェスティを受け止めた隙に背後に高速で移動してきたバッタモンダーが3人を地面へと叩きつけようとする。

 

「皆!」

 

だが拳が命中する直前に吹き飛ばされたバタフライがシールドを張るのが間に合う。何重にも重ねられたシールドでバッタモンダーの攻撃を受け止めるも一撃でシールドは消し飛んでしまい、直撃こそ免れたものの3人は地面へと叩きつけられてしまう。

 

「そんな……!?」

 

3人がいとも簡単にやられてしまった姿を見て絶句するバタフライ。だが、その背後に現れたバッタモンダーに気付いて回し蹴りを放つも、軽く受け止められてしまい、逆にバッタモンダーに吹き飛ばされてしまう。

 

「きゃあああ!!」

「バタフライ!?」

 

これで残るはプリズムだけ。バッタモンダーは最後に残ったプリズムを始末するかのように光のない瞳でプリズムを見据える。

 

「さあ、プリキュアを始末しろ」

「……バッタモンダー!」

 

だが、プリズムは諦めずにバッタモンダーへと語り掛ける。しかし、そんなプリズムの説得など意味はないとスキアヘッドは一蹴する。

 

「弱い者が足掻き続ける様は目障りだな」

「あんたの評価なんかどうでもいい!バッタモンダーは助けるって覚悟は決めたから!私は絶対に諦めない!」

「その通りだ!」

 

プリズムがバッタモンダーに呼びかけるも破壊衝動に支配されたバッタモンダーは無情にもプリズムへ襲い掛かろうとする。だが、その拳をクラウドが受け止める。

 

「っ!?」

「クラウド!」

「バッタモンダー。自分を思い出せ!プリズム!呼びかけるのをやめるな!!」

「!!」

 

先程、バッタモンダーから奪い取ったアンダーグエナジーを取り込み、クラウドの髪は赤黒く染まっていた。力を増強させ、さらに掴む腕からアンダーグエナジーが吸い取られていく。それだけではない、クラウドは空いた左手をバッタモンダーの頭部へと当てると、バッタモンダーが興奮したように空いた左手や両足でクラウドを攻撃し始める。

 

「クラウド!?」

「これぐらいの痛み……大したことはない!聞け!!俺達の……プリズムの……ましろの言葉を!!」

「!!」

 

バッタモンダーが放つ攻撃は、コスチュームの中に挟み込んでいた雲がクッションとなり、ダメージが軽減される。そのうえで受けたダメージは奪い取ったアンダーグエナジーを浄化し、取り込むことによる回復で相殺していく。その中でもアンダーグエナジーは吸収が続けられていく。そしてバッタモンダーの瞳に映るクラウドの姿に、カイゼルの姿が重なるほどに、バッタモンダーの意識が浮上してくる。

 

「バッタモンダー!」

「!!」

 

そしてプリズムの言葉を聞いた瞬間だった。なんとバッタモンダーの胸部に、黄緑色の光が浮かび上がる。

 

「あれは……バッタモンダーの心の輝き!?」

「ぐうう……!?」

「おっと……!!」

 

それを握りつぶそうとする、アンダーグエナジーによって制御を離れたバッタモンダーの肉体。しかしクラウドが左腕を掴み、バッタモンダーが自分の心を握りつぶさないようにする。

 

「今だ!!」

「!私が……!!」

 

プリズムが両手を前に突き出す。瞬間、その手に光が集まっていく。だがそれは、プリズムショットではない。金色の光を放つ、新たな力をプリズムが天へと掲げる。

 

「照らしてみせる!煌け!プリズムシャイン!!!」

 

打ち上げられた光が、バッタモンダーを照らしていく。その光を浴びたバッタモンダーの全身から力が抜けていき、その場に座り込んでいく。クラウドも、バッタモンダーの中から彼の心を脅かすアンダーグエナジーが鎮まったのを感じ取り、手を離す。

 

「何……?」

「バッタモンダー。もう少しだけ待っていてくれ。お前も見捨てたりはしない」

 

クラウドの足掻きは予想していた。だがプリズムが見せた新たな技、プリズムシャインの力はバッタモンダーにとっても予想外だった。

 

「……」

 

バッタモンダーが、背を向けて皆の元へ歩くクラウドを見る。そして、こちらを見るプリズムを。そしてクルニクルンを取り出したマジェスティがクラウドに頷く。

 

「「「「「「プリキュア!マジェスティック・ハレーション!!」」」」」」

「スミキッター……」

 

最後の締めと言わんばかりにマジェスティック・ハレーションがバッタモンダーを蝕むアンダーグエナジーを浄化する。そして、スキアヘッドが消えたのを確認して6人が変身を解くと、バッタモンダーはゆっくりと立ち上がる。

 

「……まさか、本当に助けるとは……お人よしもここまでくると呆れるね……」

 

浄化の影響か、それとも本当の意味でアンダーグ帝国とスキアヘッドから解放されたからか清々しい表情を浮かべ答えるバッタモンダー。

 

「……特にそこの……」

「?」

「僕の事なんか到底許せやしないだろうに……」

 

バッタモンダーがソラとヤクモを見る。かつて戦っていた時はこの2人に色々なことをしていたはずだというのに。ソラはましろに同意して助けようとしてくれたし、ヤクモに至ってはぼこぼこにされてでも自分を救おうとしてくれた。何より、いつの間にか父の世話になっている、などと知ったら嫌な感情すら浮かびそうなもののはずだ。

 

「反省しているんですよね。だったら、これ以上私から言うことは何もありません」

「俺も気にしてないよ。それに、父さんもずっと心配してたようだしね。だったら俺がすることなんて決まってるよ」

「……」

 

2人の言葉に少しバツが悪そうな顔をしながら歩き出す。そしてましろの隣を通った時に立ち止まると、

 

「……破って、ごめん……」

「あ……」

 

そう言い残して去っていく。その後ろ姿を見ながら、バッタモンダーが謝罪したこと、そしてちゃんと前を向き始めたことを確信し、ましろは笑顔を浮かべるのだった。

 

(大丈夫。自分の輝きを信じることができたなら……きっと)

 

 

 

 

 

 

 

 

『僕の素敵な所は、僕が決めればいいんだ!川をぷかぷか浮くことも、空を飛ぶことだってできるよ!さあ、行こう!ひろがる世界へ!』

 

絵本コンテスト。入賞作品として展示されていたのは、ましろが描いた絵本だった。あの時に読んだ続き。特に理由があったわけではない。ただ色々思うところがあって結末を見届けただけだった。しかし、不思議と前を向ける。そんな気持ちになりながら、紋田が会場から出ると、

 

「よお。ちっとはいい顔できるようになったんじゃねえか?」

「!カイゼ……ムラクモ様……さん」

「はは、いい加減慣れろっての」

 

ムラクモが紋田の姿を見つける。嬉しそうに紋田の肩を叩くムラクモの姿。今までのひねくれていた自分では気づけなかったが、今ならムラクモが心の底から自分の成長を喜んでいるのがわかる。

 

「今から暇か?」

「え?まあ……バイトはありませんけど……」

「よし、なら付き合え。全員で飲むぞ」

「え?全員って?」

「見た目の年齢の問題があるからミクモの奴は連れてこれなかったが……ここらできちんと顔合わせておくのもいいだろう?」

「は、はぁ……」

 

そしてムラクモに言われるがまま、バッタモンダーは彼についていくのだった。これから何が起こるのか、それを楽しみにしながら。

 

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