曇り空の夜のプリキュア   作:popoponpon

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第126話 聖夜

 

スリクマスパーティをすることが決まり、ヤクモ達はもちろん、ソラやツバサの家族も協力してパーティの準備が進められていた。街の飾りつけの方は青の護衛隊や衛兵たちも協力して行い、その美術監督をツバサが行っていた。ましろとレミがケーキ作りを行い、あげはとヨヨがサンタの赤い帽子を作り始めてる中、シドとヤクモはスリクマスパーティを開催すると言うチラシを何人かの青の護衛隊のメンバーと一緒に街の皆に配り始めていた。

 

「クリ……スリクマスパーティを開催するので、是非来てください!」

 

一体何を配っているのか疑問そうにヤクモからチラシを受け取る男性。そしてそれを読むと、

 

「へえ……スリクマスパーティやるのか。今年はこんな状況だしやれないと思ってたんだが……ありがとう。子供達も喜ぶよ」

 

ヤクモに礼を言い、去っていく。そして自分の今持っている分のチラシがなくなってしまったことに気付いたヤクモは次のチラシの束を取りにいくのだが、

 

「ヤクモ君、もうこっちは大丈夫だよ。他の皆の所に行ってもいいよ」

「わかりました。それじゃ他の皆の手伝に向かいます」

「うん、お願いするよ」

 

チラシの大本を管理してた隊員がヤクモにもうチラシは無くなってしまったという。そのため、他の人の所に行くことにしたヤクモは今も飾り付けを皆で作っているソラの手伝いに行くことにする。そして城に戻り、ソラが作業をしている部屋へ辿り着くと、扉をノックする。

 

「……?」

 

しかしソラの反応がない。しかし部屋からは作業している音は聞こえているので、それほどまでに集中しているということなのだろう。確かソラはエルとベリィベリーと一緒に作業していたはずだが、人手はあって損はないはず。自分も作業を手伝えば早く終わるはずだろうと考えて皆の邪魔にならないようにゆっくりと扉を開けると。

 

「「ふー!!」」

 

そこには一心不乱に風船を膨らませているソラとベリィベリーの姿があった。2人とも、大量の風船を既に膨らませていたようで、息も絶え絶えになりながらも今膨らませている風船を縛ると、次の風船に手を付ける。

 

「そ、ソラには……負けないぞ……」

「わ、私だって……負けません……」

「いや少しは休もうよ」

「「!?」」

 

どうやら風船をどちらが早く、大量に膨らませられるかどうかの勝負をしていたようだ。それで2人とも碌に息継ぎをすることなく風船を膨らまし続けていたようで、その結果がこの有様と言うわけだ。そして勝負に熱中する2人は当然周りが見えていなかったわけで、ヤクモの声にびくっと体を震わせる。

 

「ヤクモさん!?」

「や、ヤクモ!?」

「2人とも酸欠で倒れちゃうよ?」

 

よくよく見れば2人とも顔色が悪くなっている。これ以上続けて倒れてもらったら折角のパーティが台無しになってしまうというヤクモの考えが段々酸素が巡り始めた頭で理解できたのか、

 

「そ、それもそうだ……まあ、まだやれはしたけど、万が一があっちゃいけないから……」

「わ、私達まで倒れるわけにはいきませんからね……ま、まだやれましたが……」

 

勝負はまだまだ続けられたがヤクモの顔を立ててここは手打ちにする、という話に落ち着いたようだった。

 

「そ、それで、ヤクモさんはどうしてここに?」

「チラシ配りしてたんじゃ?」

「そっちは終わったから他の皆を手伝ってくれって言われたから来たんだ」

 

そう言いながらこの部屋で自ら作業に一生懸命取り組むエルを見る。難しい顔をしながら黄色いモールのようなものを握るエル。この部屋に風船だけがあるのは、刃物などの危険なものをエルの近くに置くわけにはいかないと言う配慮からだろう。こちらはひとまず心配しなくていいかと視線を外すと、

 

「2人は少し休みなよ。その間俺が風船を膨らませておくからさ」

「いいの?」

「うん、休憩は必要だよ」

「そ、それじゃあ……」

 

自分も作業に加わると言い、2人に少し休憩するようにと言う。2人は一旦休憩し、その間ヤクモは風船を手に取るとそれを伸ばした後に空気を送り込んで膨らませていく。ソラやベリィベリーとはペースが遅いものの、ヤクモの場合はだいぶ余裕をもって膨らませているようで酸欠に陥ると言った気配は見えない。

 

「「……」」

 

特に何かすることもなく、風船を膨らませているヤクモの動きを見ていた2人だったが、淡々と作業を進めていくヤクモを見るとどうしてこんなことで勝負に拘ってきたのかという考えも出てくる。そしてベリィベリーは休憩しながらエルの作業を見学していたのだが、呼吸も落ち着いてきたのでもう一度作業に戻ろうかと風船に向き合おうとヤクモの方を見ると。

 

「……ソラ。お前何やってんの……」

「え?あ、い、いやぁ……」

 

ソラがヤクモにもたれかかって休憩していた。ヤクモはそんなソラの様子を不思議がることもなく受け入れていたが、それを見たベリィベリーは無言になってしまう。

 

「……」

「ベリィベリーさん?どうかしましたか?」

「いや……何でもない……さっさと続きやろう」

 

こいつらこういう関係だよな……もうなってたよなと内心呟きながら女としての敗北感に襲われるベリィベリー。しかし当のソラはというとヤクモが現れたことで心底安らいだ表情を見せており、ベリィベリーがどのような想いをしているかは理解が及ばない様子だった。

 

「そうですね!3人でやればすぐ終わりますよ!」

 

ソラの元気な声と共に作業を再開する2人。そして少し経ち、

 

「できたー!」

 

エルの方は作業を終えたようで星形の形になったモールを嬉しそうに掲げる。その傍では3人が膨らまし終えた風船に囲まれ、一息ついていた。

 

「おほしさまー!」

「うわ!凄いね!」

 

ヤクモが飾りを作ったエルを褒めようとした時だった。同じく作業を終えて合流しに来たましろ達が嬉しそうに声をかける。

 

「ましろさん!あげはさん!ツバサ君!」

「こっちの準備は終わったよ。お手伝いしに来たんだけど……綺麗にできたね!」

「うん!」

 

ましろに褒められ、嬉しそうに笑いながら星の形になったモールを見せる。風船の方もひと段落したため、残りの小物や飾りつけもこの人数で作れば間に合うだろうと、あげはがやる気に満ち溢れた表情を浮かべる。

 

「それじゃあ、残りを皆で一気に片付けちゃおうか!」

「ですね!」

 

あげはとツバサの言葉にヤクモ達も頷き、部屋の大半を埋め尽くしていた風船を一旦片付けてから残りの飾り物を作り始めるため、裁縫を始めていたが、

 

「あ」

 

勢い余ってしまったのかソラが縫っている途中で糸が切れてしまう。

 

「あはは……これだけはまだ慣れませんね……」

 

糸をもう一度針に通し直しながら苦笑するソラを見てましろも笑う。そして2人はひとしきり笑うと、

 

「こうしてると、いつもの私達に戻ったみたいですね」

「いつも?」

 

ソラは普段の自分達みたいだと呟く。それを聞いたベリィベリーは、普段からこんなことをしているのかと問いかける。

 

「今までも、こういうのやってたんです。歓迎会や、ハロウィンパーティ、結婚式ごっこも」

「結婚式?」

 

ツバサの発言に祝い事を今までもやってきたのかと聞いていたベリィベリーだったが、結婚式というフレーズに思わず固まってしまう。実際はごっこであり、そもそも式を執り行ったのはツバサとエルなのだが、まさかこの2人がとはベリィベリーも思ってないのか、ヤクモとソラを見る。しかし、実際の式の内容を知っているソラとヤクモは首を傾げてしまう。

 

「みんなにこにこしてた!」

「うん!ニコニコ楽しい気持ちが皆にも伝わるといいな……」

「……そうだね、きっと伝わるよ」

 

しかし、それによってソラ達はいつも楽しく過ごしてきたのだろう。だからこそ、このパーティを通して皆が笑顔を取り戻してくれると確信しているのだろう。そしてその力は、ベリィベリーとしても疑う余地はない。と、

 

「すまない。急で申し訳ないのだが……極秘の任務を君たちにお願いしたい」

「極秘……?」

「スリクマスに関わる重大な任務だ」

 

作業を進めていると突然シャララが入ってくる。極秘の任務をソラ達に頼みたいというシャララは、ソラ達に極秘任務の概要を説明するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

スカイランドにある針葉樹の森。寒く強い風が吹く森を訪れたソラ達は、ある人物を探していた。

 

「この辺りのはず……」

 

その人物はこのスリクマスに関わる大事な人物なのだと言う。その人物に危機が迫っているという報告を受けたソラ達を乗せた鳥が、できる限り急いで森の中を走り回る。と、

 

「ホーホー……」

「「「「「「!!」」」」」」

 

頭上から声が聞こえてくる。その声の主がまさかそうなのかとソラ達が顔を上げると、そこには赤い帽子が風に揺れていた。それは一体誰なのかと6人が視線を向ける。そこにいたのは、

 

「あ、あの帽子は!?」

「まさか!?」

「「ターサン!?」」

「「「サン……え?」」」

「助けてホー!!」

 

サンタクロースのような白髭と赤い帽子をかぶったフクロウが黒い竜巻のようなものに呑み込まれそうになっている姿だった。

 

「本当にいたんですね!」

「ターサン……?」

「へえ、スカイランドのサンタさんは鳥なんだ!」

 

サンタクロースに出会って興奮する子供のように、ソラとツバサは目を輝かせてターサンと呼んだフクロウを見つめる。彼がどうやら助けてほしいと言うスリクマスに大切な人間……もといフクロウのサータンのようだ。

 

「ホー!感動している場合じゃないホー!は、はやくいじわるトルネードを払ってホー!!」

「いじわるトルネード……って何?」

「いじわるトルネードはいじわるトルネードです!サータンを助けますよ皆さん!」

 

色々わからないことはあるのだが、とりあえずあの雲をどうにかするのが先だ。ソラ達はすぐさまプリキュアへと変身すると、

 

「ひろがるクラウドプロテクト!」

 

とりあえず竜巻雲相手ならどうにかなるだろうとクラウドがクラウドプロテクトを放つ。それがいじわるトルネードを呑み込み、クラウドプロテクトが消えるとそこにはいじわるトルネードの姿が消えていた。

 

「さすがですね、クラウド!」

「これで……」

「ホー!?」

 

ターサンもこれで助かっただろうと思ったのもつかの間。スカイの言葉にクラウドが一瞬視線を逸らしていた隙にまたしてもターサンの悲鳴が聞こえてクラウドとスカイが空を見ると、そこには消えたはずのいじわるトルネードが再び発生しておりターサンが閉じ込められていた。

 

「えぇ……」

「いじわるトルネードは単発では発生しないんです」

「先に言おうよ」

 

ウィングの解説に呆れるクラウド。周囲を改めて見渡すといたずらトルネードは何個か発生してしまっているようだった。

 

「仕方ない、時間はかかるけど1つ1つ潰していくか……」

「それなら私達に任せてください」

「うん、いじわるトルネードを一気にやっつけよう!」

 

この数を消して終わればいいんだがとぼやきながら再びクラウドプロテクトを発動しようとするクラウド。それを制したスカイとプリズムがスカイミラージュを取り出す。

 

「「プリキュア!アップドラフト・シャイニング!!」」

 

2人の力でいじわるトルネードたちをまとめて円盤の中へと吸い込んでいき、まとめて消し飛ばす。これによって空からいじわるトルネードが見えなくなり、スカイ達がターサンの方を確認すると、

 

「ホホー……凄い力だホー……じゃがすまん、また捕まってしまったホー……助けてえええええ!!」

「「「「「「えぇ……」」」」」」

 

どこに潜んでたのかさらに姿を見せたいじわるトルネードにターサンが捕まってしまっていた。これにはクラウドだけではなく残りの5人も呆れるしかない。

 

「皆まとめて浄化するよ!」

 

こんな不毛なイタチごっこは終わらせると言わんばかりにマジェスティがクルニクルンを取り出しながら言う。決して色々せずにここら一帯まとめて薙ぎ払えば解決するだろうと思ったわけではない。そう、決して。

 

「「「「「「プリキュア!マジェスティック・ハレーション!!」」」」」」

 

マジェスティック・ハレーションが全てのいじわるトルネードを薙ぎ払い浄化する。

 

「……ホー」

 

完全にいじわるトルネードから解放されたターサンが、同じく解放されたソリの傍に降りてくる。そしてプリキュア達を見る。

 

「助かったホー……ところで君らは誰だホー?青の護衛隊じゃなさそうじゃが……」

「私達はプリキュア……」

「ホ!?プリキュア!?本当にいたのかホ!?凄いホー!感激ホー!」

 

スカイが自分達はプリキュアだと名乗るとターサンはすぐさま食いつき、その手を握る。自分達がターサンを見た時よりも驚いているその素振りにぽかんとしていたクラウド達だったが、ここでマジェスティがソリを一目見る。

 

「ソリは大丈夫ですか?」

「!!」

 

マジェスティの言葉にはっとなり、慌ててソリと積まれた荷物を確認する。そして、

 

「ソリは大丈夫だけどプレゼントが汚れてしまったホー……家に戻って新しいのに取り換えるホー」

「僕らも運ぶの手伝います」

 

プリキュアを伴って新しいプレゼントに取り換えるため、ターサンの家へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「まあまあ、随分とお世話になったホー」

「ターサンのプレゼントを楽しみにしてる人はたくさんいますから!」

 

変身を解き、ターサンの家に辿り着いたソラ達を彼の妻が持て成す。彼女にお礼を言うために振り替えると、子供達が書いたであろうターサンへのメッセージカードが壁に貼られている姿と、奥への部屋が見える。

 

「……あの部屋は?」

「見てみるホー?」

 

ターサン達に促され、奥の部屋へと入る。そこにあったのは、

 

「わー!おもちゃー!いっぱーい!」

 

様々なおもちゃやプレゼントが保管されている倉庫のような場所だった。そのプレゼントが入った袋などを興味深そうに見て回る中、ましろがターサン達に問いかける。

 

「手作りなんですか?」

「ばあさんとわしで作ってるホー」

「スカイランド中の子供の分、全部ですか!?」

 

たった2人で、スカイランドにいる全ての子供達のプレゼントを作るとは。とんでもない労力を費やしていることを知り、驚くツバサ。それにプレゼントを取り換える、という発言から察するに予備のプレゼントも用意しているのだろう。

 

「1年かけて毎日作って、スリクマスに届けるホー」

「凄い……けど大変すぎ」

「子供達が喜んでくれるなら大変でも何でもないホー」

「私達はその代わり、皆の笑顔と言う素敵なプレゼントをもらってるホー」

「皆の笑顔……私達も同じです」

 

だがそのための苦労も子供たちの、ひいては皆の笑顔のため。ターサン夫妻の話を聞いていたソラは、自分達も同じだと言う。

 

「争いを全部終わらせて、皆を笑顔にしたい」

「うん、そうだね」

「ソラちゃん……」

「大丈夫ホー、あんなに手強いいじわるトルネードを消したホー。争いだって終わらせられるホー」

 

そんなソラの言葉に、きっとできるとターサンが頷き笑う。

 

「はい」

「穏やかな世界を取り戻しましょう」

「とりもどすの!」

「私達ならできる!」

「皆で頑張ろう!」

「そのためにも、まずは今日の事だねソラさん」

「その通りです!なので今日は、ターサンのお手伝いをさせてください!」

「ホ?」

「みんなニコニコにしたいの!」

 

ソラの突然の申し出にターサンが驚く。だがエルの言葉に頷く5人の姿を見て、ターサンも快く頷く。

 

「ホッホッホ、じゃあ一緒に届けるホー」

「それと、スリクマスが終わったら街へ避難してください。バリアがあるので安全です」

「わしらがターサンであることは内緒じゃぞ?」

「はい!」

 

そしてターサン達に避難の案内を行い、その了承を得たことで、まずは今日のスリクマスイベントを成功させるためにともう一仕事を開始するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日は年に一度のスリクマスの日だ」

「皆大いに楽しんでくださいね」

「たのしんでねー!」

 

そして夕暮れ。昼間にやれるターサン達の手伝いも終わったソラ達は一旦王都に戻り、王様達のスリクマスパーティの開催宣言を皆で聞いていた。風船を配ったりケーキを皆で食べたりと賑やかに楽しんでいく中、時刻はあっという間に夜になる。それと同時に街がライトアップされていき、綺麗なスリクマスの夜の風景が街を彩っていく。

 

「綺麗!」

「皆、ばっちり笑顔だね!」

「そろそろ……あれ?ヤクモさんとソラさんは?」

 

ターサンの手伝いに行く時間が近づく中、エルを抱っこしているツバサがヤクモとソラの姿がないことに気付く。ましろとあげはがその言葉を聞いて無言で微笑んでいる中、そこから少し離れた建物の屋上でソラとヤクモは街を見渡していた。

 

「いい景色ですね」

「うん、チラシ配ってるときにここからなら飾りもよく見えると思ってたんだ」

 

2人が街の中を見渡してその景色を楽しんでいる中、ヤクモがソラの手を握りしめる。そして、

 

「……正直、今日がクリスマスだってのはわかってたけど……そういう状況じゃなかったし、スカイランドでそういう行事はないだろうなって思ってたから、ソラさんに頼まれてたものを用意することしかできないかなって思ってたけどさ」

「ヤクモさん……」

「ソラさん」

「!?」

 

ソラがヤクモに振り向く。その瞬間、ヤクモはソラに顔を近づけて唇を重ね合わせる。ソラは一瞬驚くも、すぐにトロンとした表情になりながらヤクモに身を預けるように彼の体を抱きしめ、お互いに抱きしめ合いながらキスをするという図になる。そして、どれくらい時間が経ったかわからないがヤクモが名残惜しそうに唇を離す。

 

「あ……」

「メリースリクマス。プレゼントは何も用意できなかったけど……初めてのキスで、許してくれないかな」

「……ふふ、もちろんだよ」

 

初めてのキス。夏休みの時のキスは事故のようなものだしあの時はプリキュアだった。だからこれが、自分達の本当に初めての口づけだと言うヤクモの言葉に嬉しそうに返事をするソラ。

 

「最高のプレゼントで、私とっても嬉しい」

「ソラさんのその顔が見れただけで俺も満足だよ。それに、今の砕けたソラさんも可愛いよ」

「!そ、そうかな……」

 

普段は律しているが家族の前では砕けた口調になるソラの様子を見て、ヤクモも可愛いと言ってくれた。それも嬉しくてソラは顔を赤くしながらヤクモを抱きしめる腕に力を入れてより密着する。

 

「じゃあ……ヤクモさんの前なら、いいかな……?」

「うん、もっとソラさんのこと、知りたいな」

「私も、ヤクモさんのこと、これからももっと知りたい」

 

そう語り合い、2人は顔を見合わせて改めて嬉しそうに笑い合う。そして一しきり過ごすと、

 

「そろそろ、かな?」

「そろそろ、ですね」

 

夜も深まったところで頃合いかと2人は離れ合い、皆の元へと戻っていく。既に皆は変身してターサンとソリの下に集まっており、ヤクモとソラも変身する。

 

「お待たせしました!」

「皆、待たせちゃってごめん」

「遅いですよ!この夜でプレゼントを配り切らないといけないんですよ!」

 

ウィングからそう言われ、スカイとクラウドも苦笑する。どうやらそれぐらい長い時間過ごしていたようだった。

 

「ほほほ、それじゃ行くホー」

 

ターサンがソリを引いて空を飛び始める。それに乗り込んだスカイ達だったが、サンタもといターサンのソリに乗ると言う貴重な経験にバタフライが興奮の声を上げる。

 

「ワンダホー!」

「静かにしないと起こしちゃいますよ」

「ごめんごめんテンションアガっちゃって」

 

呆れた様子で隣を飛ぶウィングに窘められるバタフライ。マジェスティも苦笑しながらウィングに話しかける。

 

「ウィングだってターサンに会った時はしゃいでいたじゃない」

「そ、それは……」

「さあ、プレゼントを配るホー」

 

昼間の事を言われ照れながら顔を逸らすウィングを見てマジェスティがさらに笑う。そしてターサンに言われ、プリキュア達は子供達を起こさないようにプレゼントを配り始める。そして全部のプレゼントを届け終え、空っぽになったソリにプリキュア達は戻ってくる。

 

「全部届け終わったね」

「はい、幸せ気分です!」

「でも……なんか物足りないよねえ……」

 

これでやることは終わったわけだが、ちょっとだけ不満そうに夜空を見上げるバタフライ。そしてすぐにミックスパレットを取り出すと、

 

「温度の力、サゲてこ!」

 

夜空の雲の温度を下げていく。すると、街に雪が降り始め、一瞬でホワイトクリスマスになる。降り始めた雪を見て喜ぶスカイ達。

 

「やっぱクリスマスには雪でしょ!」

 

子供達も朝、プレゼントを見て喜ぶだろう。満足げに今日の活動を終えた皆は城へと戻っていく。そして元の姿に戻ったエルもすっかり疲れて眠ってしまい、王様達と一緒に寝室へと入っていく。それを見送るましろ達。

 

「お疲れ様、エルちゃん」

「……ソラさん、これを」

「!ありがとうございます」

 

一旦部屋に戻りある袋を持ってきたヤクモがそれを皆に気付かれないようにソラへと手渡す。今日来るときに途中で買ってきたものだった。

 

「じゃあ、私も寝ようかな?」

「僕達も寝ましょうか、行きましょうヤクモさん」

「そうだね。でも家族と一緒に寝なくていいの?」

「……まあ、今は暇な時間ならいつでも過ごせますからね。同じ場所で寝てますしいいんじゃないですか?」

 

本当は親と一緒に寝るのが少し恥ずかしいだけなのだが、そこについてはヤクモも何も言わずツバサを伴って寝室へと消えていく。そしてその場にましろとソラだけが残ることになる。

 

「ましろさん……ちょっと、いいですか?」

「うん、いいよ」

 

そしてソラがましろにそう告げると、外にある巨大なツリーの前に移動する。そしてソラは、ヤクモから受け取った袋をましろへと差し出す。

 

「「これ……え?」」

 

だが、ましろの方もソラに全く同じ袋を差し出し、お互い驚いてしまう。

 

「プレゼントって……」

「ソラちゃんも……?」

 

お互いにプレゼントを交換し、中身を見る。両方の袋に入っていたのは、ソラがヒーロー手帳として使ったメモ帳の新品だった。

 

「同じ……?」

「ましろさんにもらってほしくて、ヤクモさんに買ってきてもらったんです。私のヒーロー手帳はましろさんにもらったものなので」

「私はソラちゃんのヒーロー手帳、もうすぐなくなりそうだと思ったから、渡そうと思って……」

 

お互い、相手に贈り物をしようと考えていたと知り、笑い合う2人。朝のような緊迫した状況が続くようなら、クリスマスプレゼントではなく普通の贈り物としても渡すことをましろは考えていたようだが、結果として袋の方も無駄にならずに済んだようだ。

 

「今日は楽しかったですね」

「うん」

「ましろさん……この世界を守りたいです」

「一緒に頑張ろう、皆で」

 

ツリーを見上げながら、ソラが言う。ましろもそれに同意するように頷く、そして、

 

「メリークリスマス、ソラちゃん」

「メリースリクマス、ましろさん」

 

今日という日を2人は静かに祝うのだった。と、その時だった。城のバルコニーの方から、紫の光が放たれるのだった。

 

「「!?」」

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