曇り空の夜のプリキュア   作:popoponpon

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第127話 プリンセスの目覚め

 

『……プリンセス。目覚めるのです』

「……?」

 

夜も深まり始めた時間。王様と王妃の2人と一緒に眠っていたエルだったが、突然彼女の頭の中に、聞き覚えのある声が響く。その声に目を覚ましてしまったエルが体を起こすと一体誰が呼んだのかと視線を動かし始める。

 

『こっちです。プリンセス』

 

すると、彼女を導くようにまたしても声が聞こえてくる。それは、女性の声だった。エルは両親を起こさないようにベッドからゆっくりと降りるとエルがその声の主を探すように暗い城の中を1人、歩き始める。そしてバルコニーに出てその寒さに身を震わせていると、

 

『ここです』

 

声と共に空から光が溢れる。エルが顔を上げると、そこには光り輝く一番星が浮かんでいた。

 

『こんばんは』

「!」

『久しぶりですね』

「?だれ?」

 

星から挨拶されたと聞き、驚きを露わとするエル。その一番星から久しぶりと言われるも、エルには何の事だかわからず聞き返してしまう。しかし、一番星はそんなエルの様子が可愛いのか微笑ましそうに笑うと、エルを光に包んでいく。一瞬視界が光によって塗りつぶされたエルが眩しさに目を閉じ、再び目を開くと幻想的な光景が周囲に広がっていた。そしてその中に、

 

「!おっきなプリンセス!!」

「メリースリクマス、小さなプリンセス」

 

なんとエルレインの姿があった。

 

「スリクマース!」

 

嬉しそうにスリクマスへのお祝いの言葉を口にしながら、エルがエルレインの下へと駆け寄る。300年前の過去に出会い、もう会えるとは思っていなかった相手への再会にエルはとても嬉しそうにしていた。

 

「エルね、おもちゃもらったんだよ!」

「あら、いいわね」

 

エルが、今日寝るときに一緒に持っていた鳥の人形をエルレインに見せる。1人で城の中を歩くのが怖くて一緒に連れてきたのだろう。それを見せられたエルレインがしゃがみ、エルに楽しそうに笑いかける。と、人形を見たエルレインの視線を見て、人形遊びがしたいと考えたのだろう、

 

「あそぶ?かしてあげる!」

 

と、人形遊びを提案され一瞬エルレインがきょとんとした表情を見せる。しかしすぐに笑うと、

 

「ふふ、立派になって。ねえ、今日はプレゼントを渡したくて会いに来たんですよ」

「プレゼント!!」

「ええ……」

 

エルに贈り物を届けに来たのだと告げる。それを聞いたエルが、エルレインからのプレゼントを期待するように目を輝かせる。一体どんなものがもらえるのかとわくわくする彼女を見つめながら、エルレインは自分の胸に手を当てる。瞬間、その手に光が集まり始める。その光にエルが触れた瞬間。彼女の体が光に包まれ、周囲の景色が現実へと戻る。そしてバルコニーに1人の少女が立っていた。

 

「……これって……!?」

「エルちゃん!?……え?」

 

そこに、慌てた様子でソラ達が駆け付ける。外に出ていたソラ達はもちろん、ヤクモ達もその異変に気付きすぐに飛び出してきたのだ。だがそこにいた少女を見て、驚いた表情を見せる。

 

「エル……さん……?」

「あ……」

 

そこにいた少女は、エルレインやミクモに似た、だが違う姿をしていた。だが、その少女の顔や髪型などは、初めてエルがキュアマジェスティに変身したあの時、変身する前に見せた姿と一致している。つまり彼女は、

 

「プリンセス……なんですか?」

「!わ、私……大きくなっちゃった!?」

「え、ええ!?」

 

間違いなくエル本人だった。今まで自分たちの知ってる赤ん坊のエルが、どうして急にプリキュアになったわけでもないのに成長したのか。特にツバサが一番驚いていると、

 

「な、何が起こったの?」

「わ、わからない……」

 

ましろが驚き半分心配半分でエルに問いかける。今のところ、この急な成長に伴う悪影響は出ていないようだが、エル自身にもわからないこの変化、そのままにしておくわけにもいかないだろう。と、再び光がバルコニーに注ぎ、今度はエルだけでなく他の5人もエルレインの下へと移動する。

 

「あ!?プリンセスエルレイン!?」

「え!?それって、300年前の世界で会ったっていう……?」

「そう!伝説のプリキュアだよ!?」

「ほ、本当にミクモさんとそっくり……というか瓜二つ……と、は、初めまして!僕は……」

 

まさかの再会に驚くソラ達。あげはとツバサも自分達が会える存在だとは思っていなかったようでその驚愕は大きい。そんな中、ツバサが慌てて自己紹介をしようとすると、

 

「キュアウィング。空を飛び、小さなプリンセスを守り、そして夢を大きく広げ続けるプリキュア」

「!」

 

エルレインはツバサの事を知っているかのように、キュアウィングの事を語り始める。ツバサの事を知っているということはもしや。そう考えたあげはがエルレインに続けて質問をする。

 

「私の事は知っています?」

「キュアバタフライ。皆を守るために戦い、最強の保育士を目指す。アゲーなプリキュア」

「アゲーって言うんだ?伝説なのに?」

「イェイ」

「「「「……」」」」

 

フランクにピー

スサインをしながらウィンクをするエルレイン。だが、300年前に見た彼女とは雰囲気が全く違うことにソラ達は逆に戸惑っていた。

 

「な、なんだか……性格、変わりました?」

「ふふ、友の姿を見ているとつい。空の上から見守るしかできませんでしたが……やっと会うことができました」

 

今まで、彼女は一番星としてエルやプリキュアの戦いを見守ってきたのだろう。そして彼女の言う古き友というのは、おそらくは。

 

「それって……父さんのこと?」

「ええ、今はムラクモと名乗っているようですが……カイゼルは良き友でした。ですがまさか、彼があなた達の世界に赴き、子を作るとは……正直、驚きです」

「は、はは……」

 

こうして父の昔の知人である彼女に面と向かって言われると照れてしまう。しかし、もしエルレイン本人ならば300年前の、彼女しか知らない続きを知っているはずだとすぐにヤクモは切り替える。

 

「エルレイン、教えてもらいたいんです。300年前、アンダーグ帝国とスカイランドの国交が断絶した後に何が起こったのか。アンダーグ帝国でカイザーが死んだ理由、そして父さんが再びスカイランドにたどり着くまでに何があったのかを」

「戦いを終わらせたカイゼリンは、今スカイランドを滅ぼそうとしているんです。どうして変わってしまったのか……教えてください!」

 

ヤクモの言葉に続くようにましろも言う。2人の言葉を聞いたエルレインは少し考え込むように無言だったが、

 

「……ごめんなさい」

 

申し訳なさそうに俯いてしまう。

 

「あなた達が見たこと、以上のことは私にもわからないのです……カイザーが既に死んでいた、ということも再びカイゼリンがスカイランドに現れてようやく察したぐらいで……」

 

そしてエルレインは、自分にも真実はわからないと言う。アンダーグ帝国に居たムラクモでさえわからなかったのだ、一番星として見守ってはいてもアンダーグ帝国にまでその力を及ぼすことのできないエルレインには知りようがないことなのだろう。

 

「……私が最後にカイゼリンと会ったのは、私の誕生日の日でした。その日、カイザーと共にスカイランドに訪れた彼女は、私そっくりな人形を作ってくれて……この2つの世界は友好的な関係を築いてきたはずでした。なのに突然、アンダーグ帝国は一方的に交流を絶ちました」

 

だからこそ、真実を紐解くカギになることを信じて自分の視点で起こった出来事を説明し始めるエルレイン。

 

「トンネルは二度と開くことなく、何が起きたのかも、カイゼリンの身に何が起こったのかも、カイザーがどのようにして死んだのかもわからないまま、悪い予感がしました」

 

そう言うと、エルレインは光を浮かばせる。そこには、マジェスティクルニクルンが安置されていた遺跡の映像が現れる。遺跡の中、クルニクルンが収められていた部屋に場面が移ると、そこでは老いたエルレインがクルニクルンを生み出す姿があった。

 

「クルニクルンが……」

「何かが起こった時の為に、私のパワーを本の形で残したのです。私の意思を継ぐヒーローたちがマジェスティクルニクルンを受け取ってくれると信じて……」

 

エルレインは、クルニクルンを生み出した後、光となって遺跡から空へと昇っていく。そして一番星となった彼女は今日に至るまでスカイランドを、そしてプリキュア達を見続けてきたのだ。景色が元の風景へと戻っていく中、エルはクルニクルンを取り出す。

 

「クルニクルンの力に、何度も救われたよ。これからも私達を守っていてね」

 

エルレインにクルニクルンを遺してくれたことに感謝し、これからも自分達の事を見守っていてほしいと告げる。しかしエルレインは、エルの言葉に寂しそうな表情を浮かべていた。

 

「?」

「ねえ、小さなプリンセス。先ほどあなたに贈った力で何ができるのか、やってみせてもらえませんか?」

「え!?って言われても……」

 

その表情を見て疑問を浮かべたエルに、誤魔化すようにエルレインが要求する。とはいえ突然言われても何ができるか、などぱっと思いつかない。だが少しして思いついたのかクルニクルンを一旦置くと、綺麗な動きで前方宙がえりをするとそのまま何回も体を捻って回転しながら華麗に着地してみせる。その俊敏な動きにヤクモ達が驚いたような表情でエルを見ていた。文句のつけようがない10点満点の大技だ。

 

「うおお!凄いパワーアップですね!」

「えへへ……暖かい力を感じる……キュアマジェスティになったら、私どうなっちゃうんだろう?」

 

赤ん坊だった時には当然できず、大きくなるにはプリキュアに変身する必要があった、だがプリキュアの身体能力ならこれぐらいの技は皆やろうと思えばできて当然なぐらいにはパワーアップしている。しかし今、プリキュアに変身していない状態で大きくなった自分がここまでできるようになれたこと、そしてそうしてくれたエルレインの力が暖かくてエルは嬉しく感じていた。

 

「ツバサ!」

「え?」

「これからは私が守ってあげるからね!」

「わわ!?えー!?」

 

エルがツバサに嬉しそうに抱き着く。赤ん坊の時は微笑ましく受け止めていたツバサだったが、今のエルは大きくなっており、可愛い少女に成長している。そんな姿で抱き着かれると元々エルを特別に想っていたツバサも色々と意識せざるを得ないようでは恥ずかしそうにされるがままに扱われていた。

 

「な、何を言っているんですかプリンセス!?」

 

そんな2人の様子を微笑ましく笑うソラ達。それを見つめていたエルレインだったが、

 

「……それが、最期のパワーです」

「……どういうこと?」

 

突然、このように言う。一体何を言っているのかと6人がエルレインを見ていると、その意味をエルが問いかける。

 

「……今から1年前、私はアンダーグエナジーの急激な高まりを感じ取りました。とてつもない危機が迫っている……緊急事態でした。アンダーグ帝国に対抗するために私は、300年間かけて少しずつ溜めたパワーを使い、あなたを地上に送りました。そして……」

 

エルレインは、エルがどのようにして生まれたのかを話す。300年間もの長い時間を費やして生まれたパワーによって生まれた運命の子、エルに、最後の戦いに立ち向かうための力をエルレインは与えた。それは、彼女にとってあることを意味していた。

 

「今送った力が、私の最期のパワーです」

「……!?」

 

自分を維持し続けていた力が消滅すると言うこと。それが意味することに気付き、エルが目を見開く。ソラも、嫌な予感を感じ取りながらも、もしかしたらそうならないで別の結末に落ち着くかもしれないだろうと、それを確かめるように問いかける。

 

「あ、あの……エルレインさんはどうなってしまうんですか?」

「……」

 

エルレインが自分の手を見る。もうすぐその時間は来ると、彼女自身が悟っているのだろう。そして遂にその時間が来たようで彼女の体が徐々に光へと変わっていく。

 

「エルレインさん……」

「そんな!?」

「っ!」

 

徐々に消えていくエルレインの姿を見て、エルが慌てて彼女へと駆け寄る。そして消えかける彼女の手を握りしめると、

 

「だったらいらないよ!!パワーを返すよ!!」

 

彼女を消してまでこの力はいらない。その力を戻すことで消えないでくれと懇願する。その言葉を聞いたエルレインはエルに優しく笑いかけると、彼女のてを優しく握る。

 

「300年の間、スカイランドを見守ってきました。その役目が終わるときが来たのです……この世界の明日は……今日を生きる、あなた達の手に委ねます」

「……」

 

エルレインの覚悟と想いを、改めてエルも感じたのだろう。言葉も出てこなくなり、泣きそうな目でエルレインを見る。エルレインもまた、ここまで見守ってきた皆と、スカイランドを別れるのが辛いのか、瞳を潤ませる。そしてエルを優しく抱きしめると、

 

「寂しいよ……大きなプリンセス……」

「私もです……小さなプリンセス」

 

我慢できなくなったのか、エルは涙を流しながらエルレインと別れたくないとその想いを言う。自分も同じ思いだと、涙を堪えながら、エルを少しでも気遣うように優しく言うエルレイン。そしてエルレインはソラ達の方を見ると、

 

「この子を守ってくれて、本当にありがとう。辛いことや苦しいことがたくさんありましたね……ごめんなさい」

 

エルをずっと守ってくれたことへの感謝と、彼女がプリキュアとして選んだことで大変なことに巻き込んでしまったことへの謝罪をする。しかしソラは首を横に振ると口を開く。

 

「楽しいこともいっぱいありましたから!」

「エルちゃんと会わせてくれてありがとう、エルレインさん!」

「絶対に、カイゼリンを止めます。それをきっと、父さんも望んでいるから……そして、俺もそうしたいと思っているから!」

「ありがとう……カイゼルに……いえ、ムラクモに、皆さんを助けてくれてありがとうと、伝えてください」

「はい、必ず伝えます」

 

ソラだけではない、ましろとヤクモの各々の思いと感謝を述べる。その心強い言葉にエルレインは満足げに頷くと、もう一度エルの顔を見る。

 

「残酷な運命を押し付けてしまったこの時代の王と王妃にも伝えてください……ごめんなさいと。そして……心からのありがとうを」

「……うん」

 

自分と両親が出会ったことを感謝している。エルレインのその言葉はとても心強く、エルは笑みを取り戻しながら頷く。それを見届けエルレインが消滅し、周囲の景色が元のバルコニーへと戻っていく。

 

『人も……鳥も……竜も……手を取って一緒に暮らす素敵な世界……ずっと……ずっと……続きますように』

「……バイバイ、一番星さん……ありがとう、伝説のプリキュア」

 

一番星が消滅し、存在していた光が流星群となって空を流れていく。その大空に手を振りながら、エルは別れの挨拶をするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝。さすがに成長したエルを元の寝室で寝かせたら起きた時に王様と王妃が混乱するということもあり、あげはの部屋で朝まで眠ることになり、翌朝王様達が目を覚ますところで事情をあらかじめ説明しておいたヨヨから2人が混乱しないように話を通してもらった後、成長したエルの姿をあげは達は2人に見せる。

 

「……ぷ、プリンセス!?プリンセスはどこだ!?」

「いや、そこです……」

 

思わず混乱してしまう王様を説得し、エルが成長したのだと指差すあげは。王妃はエルへと近づくと、彼女の髪を撫でる。

 

「こんなに素敵なお姉さんになったのね」

「……パパ、ママ、これまで本当にお世話になりました。空から来た私を受け入れてくれて、ありがとう」

「お……おお……」

 

母の成長を喜ぶ姿に嬉しそうな表情を見せ、エルは2人に感謝する。それを聞いた王様は娘の感謝の気持ちが嬉しすぎるのか感極まって泣き出してしまう。

 

「ごめんなさい、あなたが何だか遠くなってしまった気がして……」

「……1つお願いがあるの」

「!なんだい?」

 

アンダーグ帝国との戦いが始まってから、エルは両親の元に居られたほとんどいない。だからこそ、自分たちの知らないところで成長し、プリキュアになり、こうして成長した姿になった彼女は確かに遠くに行ってしまったように感じてしまうのだろう。だからこそ、エルは自分の思いを語る。

 

「成すべきことをやり終えて……運命が一回りしたら、これからもずっとパパとママの隣に居させて?」

 

また、自分を2人の娘として一緒に居させてほしいというエルの頼み。それを2人が拒否する理由などあるわけもない。エルたっての頼みに2人は涙を流しながら何度も頷く。エルと2人の関係はこれからも変わらず続くことが決まり、安心したようにヤクモ達も見守っていたが、

 

「……?」

 

ふと、お腹の鳴る音が聞こえてくる。それはエルのお腹から鳴っており、そういえばまだ朝ご飯もまだだったとヤクモが今の時間を思い出していると、エルの体が光に包まれてあっという間に赤ん坊の姿に戻ってしまう。

 

「える!?」

「ど、どういうこと!?」

「お腹が空くと元に戻っちゃう……とか」

「それだ!」

 

お腹の音が鳴って戻ったということはやはり空腹が原因なのだろうとツバサが推測する。王様と王妃はエルを嬉しそうに抱き上げると、

 

「大きいプリンセスも、小さなプリンセスも可愛いのぉ!」

「本当に」

 

愛おしそうに彼女に頬を擦り寄せる。その光景を見ながら、ソラはヤクモを見ながら内心呟くのだった。

 

(全ての出会いは運命……意味のないものなんて1つもない……だから、カイゼリンとの出会いだって……きっと)

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