「……ん?」
週末の昼間。エルのためにミルクを作ってきたソラが階段を上って部屋に入る。そして感じたのは違和感だった。その部屋にいたのはエル一人だけ。その手にはガラガラが握られており、一見不自然な所はないようにも見える。
「えるぅ~!」
嬉しそうにガラガラを鳴らすエル。ソラが感じた違和感は、そのガラガラだった。確かこれは部屋のベッドの上に置いてあったと記憶していたのだが、エルよりも足が高いベッドの上からどうやってガラガラを取ったのか。それに、
「人の気配……?」
ソラが感じたもう一つの違和感。それは人の気配であった。今、この家にいる人間は限られているし、ましろとヨヨは一階の方にいるはず。つまり他に人はいないはずなのだが……
「……あ」
ソラが窓の外を見ると、そこにはオレンジ色の鳥が佇んでいた。鳥といえば、リビングには鳥の巣箱があったことを思い出すが、その中にいる鳥がどんな姿をしているのかソラは見たことがないことに気付く。もしこの鳥がこの家で飼われている鳥なのだとすれば普段ここにいたから気付かなかったのだろうかと思案しながら、ソラは鳥に話しかけることにする。
「すみません、鳥さん。誰かいませんでした?」
ソラの言葉は多分鳥にも聞こえたはずだ。しかし鳥には通じていないのか、大空をずっと見たままの鳥を見て、
「……そういえばこの世界の鳥は喋れないんでしたね」
と、この世界の鳥が人と同じ言葉を喋ることができないことを思い出す。これでは、仮に自分の話している言葉を理解してもらっていたとしても、鳥と会話することができない。
「……じゃあ何だったんでしょうか?うーん……気のせい?でも……」
ぶつぶつと悩みながらもう一度エルを見る。そしてベッドを。やっぱり、エルがガラガラを取るというのはまだ無理なのではないのかと考えてしまう。まだ、誰かがガラガラを取ってあげたと考える方が自然である。しかしそれに繋がる証拠は何もなく。ただただ答えの出ない悩みの中に落ちていくようにも感じた、その時だった。
「……あ!ヤクモさん!」
ふと窓の外を見ると、道を歩くヤクモの姿が目に入る。今日はましろの家に遊びに来るようにと誘っていたことを思い出して声をかけると、ヤクモもこちらに気付いたのか軽く手を振って応えると玄関の方に向かっていく。ソラはエルを抱くと、
「エルちゃん、ヤクモさんが来ました!一緒に会いにいきましょう!」
「える!」
ヤクモに会いに一階へと降りていくのだった。
★
女の子の家に上がるというのはハードルが高い。最初はそう思っていたがこうも何回か来ると人というものは慣れてしまうようである。人間という生き物の図太さやタフさを実感しながらヤクモは、自分の腕の中で喜んで収まるエルをあやしながら2人と話をしていた。
「本当にエルちゃんはヤクモさんが大好きですね」
「普段から一緒にいれる人じゃないから、たまに会うと思いっきり甘えたくなるのかもね」
「なるほど……」
赤ん坊の心理としてはそういうものなのか。そこら辺についてはやはり2人の方が詳しいのだろう。どちらにせよエルが喜んでいるようならそれでいいだろう。そんなことを考えていると、エルが嬉しさを表現するかのようにガラガラを鳴らす。
「……あ」
「ソラちゃん?どうしたの?」
「ガラガラで思い出したんですけど……」
ここでソラが、先ほどの事を話す。エルがベッドの上にあるはずのガラガラを取っていたということ。そして部屋からは人の気配がしたはずなのだが誰もいなかったことを。それを聞いたましろは感嘆の声を漏らす。
「へぇ……それって掴まり立ちができるようになったってことじゃないかな?どんどんいろんなことが1人でできるようになっていくから、これまで以上に目を離さないようにしないとね」
「それは……そうだったら嬉しいんですけど……でも人の気配が……」
やはり、ソラの悩みの種は謎の気配だった。気のせいと片づけることだけは確かに簡単なのだが、もしこれが本物だったら。先ほどはたまたま自分が入ってきたから助かったというだけでエルに危害を加えようとしている人物が近くにいたとしたら。不安そうな顔になっていくソラを見て考えこんでいたヤクモは、エルに聞いてみることにする。
「エルちゃん、そのガラガラって、エルちゃんが取ったの?」
「える?……える!」
「え!?」
そしてエルは、はっきりと首を横に振った。それを見たソラは疑惑が確信になり、勢いよく立ち上がる。ましろも、驚いた様子で辺りを見渡す。
「ま、まさか不審者!?本当にいるの!?」
「やっぱり……!とっちめてやりましょう!これがもしもカバトンの仲間だったら大変です!!」
「とにかく落ち着いてって。ヨヨさんに聞いてみたほうがいいんじゃ……」
「あら、何か気になることでも?」
「おばあちゃん!こ、この家に不審者が!!」
警戒心を一気に跳ね上げ表情を険しくするソラと、慌てふためくましろ。そんな2人を見て心配そうな表情のエルをヤクモがあやしながらソラの話について考えていると、ヨヨがリビングにやってくる。ヨヨを見つけたましろは両手を振って慌てながら発言する。
「不審者?」
「先ほど、2階にいたんです!エルちゃんに接触したようで……幸いエルちゃんには何にもないようでしたけど……」
「エルちゃんが、その人からおもちゃを受け取ったようなんです。今日って他に誰か来ていたりするんですか?」
「……」
3人の言葉を聞き、少しの間考え込むヨヨ。そしてヨヨは、リビングの隅に置かれている巣箱を一目見ると、
「じゃあ彼に会いにいきましょうか」
「「「え?」」」
「える!」
突然そう言い放ち、驚く3人を連れてヨヨは2階へと上がっていく。そして3人が入ったのは、ソラが人の気配を感じたという部屋。そこには人の姿はなく、開かれたままの窓の外に景色が広がっている。何の変哲もない部屋だ。
「……だ、誰もいないけど……」
「あの時感じた気配は、やっぱり気のせいではなかったようですね……!」
「……窓、か」
部屋の中にいないのなら窓の外にでもいるのか。窓際に近づいて辺りを見渡し、ちょうど視線が屋根を見るように見下ろすと、そこにはオレンジ色の鳥がいた。
「……あ」
その鳥は以前ましろの家に訪れた時、巣箱の中に入っていたのを見たのと同じ鳥だった。どうやら今は巣箱を出て屋根の上に留まっているらしい。確かにこの鳥もこの家の住人ではあるのだろうが、ソラの言う不審者ではないだろう。そう思い、窓に背を向けようとしたその時だった。
「える!えーる!」
「え、エルちゃん?いや危ないって」
抱っこしたままのエルがヤクモの行動に異を唱えるように声を上げ、その鳥に向かって手を伸ばしていた。このまま万が一にでも振り落としてしまうわけにはいかない、エルを落とさないように気を付けながら、ヤクモは部屋の中へと戻っていく。
「どうしたの?」
「下の巣箱に入ってる鳥がいたんだ。それに気付いたのかな」
「え?下の?確かにありましたけど……どんな鳥が住んでたんです?」
「……え?見たことなかったっけ?去年よりちょっと前ぐらいからおばあちゃんが飼ってる鳥なんだけど……」
ソラの言葉にましろは疑問を感じる。この家に住み始めてあの鳥を見たことがないなんてそんなことはあり得るのか。ましろも、巣箱から出て止まり木に立っている姿を日常的に見ていたのだが、そういえばソラがこちらに来てから示し合わせたようにめっきり見る頻度が減っていることに気付く。
「そういえば、最近私も見てなかったけど……」
「……ツバサさん、あなたの姿を皆に見せてあげて」
「え?」
ヨヨの言葉が届いたのか、鳥が窓に上がってくる。そのまま床に降り立ってヨヨを見上げると、ヨヨはツバサと呼んだその鳥に頷く。それを合図としたのだろう、その鳥の体が煙に包まれたかと思うと、
「「……」」
そこには1人の男の子が立っていた。オレンジを基調とした明るい配色の服装に身を包み、同じくオレンジ色の髪で片目を隠したその少年を前にましろとヤクモは完全に固まってしまっていた。それもそうだろう、突然鳥が人間になるなど、プリキュアになり様々な出来事を経験した2人であってもいまだ理解の範疇を超える出来事であった。
「えええええええええええ!?」
そして許容量を超えたましろの叫びが木霊する。そんなましろの姿を見て、申し訳ないと思ったのか、後ろめたさを感じたのか視線を逸らすツバサ。ソラは彼を見て、あることに思い至る。
「人間に変身することができる鳥……あなたは、プニバード族ですね?」
「……はい。僕はツバサって言います……」
プニバード族。どうやらそれが、人になることのできる鳥の種族名らしい。そういえばそんな話を以前ソラがしかけていたことを思い出しながら、ヤクモはふとある疑問を抱く。
「えーっと……ツバサは、スカイランドに住んでたってことでいいのかな」
「はい」
「えっと、どうしてこの世界に?もしかして何か行き来する方法とか知って……」
「!」
ヤクモの質問にソラもはっとなる。そうだ、プニバード族はスカイランドの住人。それがこのソラシド市にいるということは何らかの方法でこの世界に辿り着いたということになる。その方法が分かれば、ヨヨの作るトンネル以外の方法でスカイランドに戻れるのかもしれない。そんな期待を打ち砕くように、ツバサは申し訳なさそうに話す。
「残念ですが……僕はその方法を知りません。僕は1年とちょっと前……大きな嵐によって2つの世界のつなぎ目にひびが生じたことでトンネルが一瞬だけ繋がった際にスカイランドから落ちてきたんです」
「他にも、スカイランドからあれこれが落ちてきたりするの。スカイランドで取れるスカイジュエルがこのソラシド市で取れるのもそういうことなの」
ツバサの説明に補足を入れていくヨヨ。スカイジュエルというスカイランド原産の鉱石を取りにいったことがあるのだろう、ましろとソラは納得したようにヨヨの言葉に頷いていた。それと同時に、ツバサの言葉は、スカイランドからは条件次第で一方的にこちらの世界に来れるという今求める情報とは少々異なる事実を告げる内容であることを理解する。
「こちらの世界に来てからはずっと、ヨヨさんの元でお世話になっていました……ずっと、僕のことを隠してきたことは申し訳ありません」
「そっか……私がこっちに越してきてからずっとただの鳥のフリをしていたってことだよね……どうしてそんなことを」
「話しても信じてもらえないと思って……」
実際問題、喋る鳥、などと言われても信じられるかどうかというとかなり怪しいだろう。それに、1年前のましろはスカイランドのことは知らないただの一般人だったのだから自分のことを隠してただの鳥として振る舞うのは理解できる。しかし、
「問題はそこじゃありません!」
「!」
ソラの表情には怒りが浮かんでいた。ソラはその怒りのまま、ツバサに質問を重ねていく。
「私とエルちゃんがこちらに来てからは隠す必要はないはずです!なのになんで黙っていたんですか!?」
「そ、それは……」
「そ、ソラちゃん、怖い顔になってるよ……」
「ゥワンッ!!」
「落ち着こうよ……狂犬みたいになってるから……」
詰め寄り、犬のように吠えるソラにツバサも気圧されてしまい、縮こまってしまう。ましろとヤクモが慌ててソラを落ち着かせようと2人を離すと、ヤクモはツバサに向き直る。ツバサも、同性相手で一つ屋根の下で暮らすことになっていた2人と異なり他人であるヤクモ相手なら女性陣よりは少しは気楽になったのか、先ほどまで縮こまっていた雰囲気も多少は和らぐのを感じる。
「えっと……正直何から話したらいいか全然わかんないんだけど……エルちゃんに会った時……何か変なことしてたってわけじゃないよね」
「していません……エルちゃんがベッドの上のガラガラを取ろうとしていたのが目に入って……でも、倒れそうになっていたのでそれを支えて取ってあげただけです……その時に、人の姿を見られてしまいましたが……」
「じゃあカバトンとかとは無関係なんだね」
「はい!」
カバトンと一緒にされるのは心外だと言わんばかりに強く首を縦に振るツバサ。自分の故郷で皇族拉致未遂を行った大犯罪者の一味として扱われるのは誰だっていやだろう。それに、ヨヨが知っているのなら彼が悪人ということもないのだろう。一通り質問に答えてもらったところでヤクモはソラに振り向くと、ソラを安心させようとする。
「ほら、大丈夫じゃないかな」
「大丈夫じゃありません……」
しかしソラから返ってきたのは不安な声だった。ヤクモの質問によってさすがにソラも彼が怪しい人物ではないことは把握したようだが、それでも何が気になるというのか。
「大丈夫じゃないって、ソラちゃん何が気になるの?」
「えっと……」
「……皆、一度下に行きましょうか?」
ましろがソラに聞くも、ソラからの返答は歯切れが悪い。4人を見て、ここで一旦仕切り直した方がいいと考えたのだろう、ヨヨの言葉に従う形で全員部屋を出るのだった。
★
再び場所は変わってリビング。しかし、そこにツバサとソラの姿はない。ツバサはどこかへと姿を消してしまったようだが、主にソラからの印象が悪いと感じているのもあってなのだろう。そしてソラはというと、
「ソラちゃん……大丈夫かな……」
部屋を出てすぐ、眠気を訴えてきたエルを寝かせ、2階で1人付き添っている。結果、リビングの方に降りてきたのはヤクモとましろの2人だけになっていた。
「ツバサは普通にいい子のように見えたし、俺は心配ないと思うけど……エルちゃんも助けてもらったみたいだし」
「じゃあ何が気になるんだろ……」
「怖くなったのね」
「「え?」」
ソラが何を気にしているのか、その答えが中々出てこない2人に、ヨヨがその答えを告げる。
「今回はツバサさんだったからよかった。だけど、もし本当にカバトンの仲間だったら……」
「連れ去らわれていたかもしれない……」
ソラの心配はそこだったのだろう。今回は運よくエルが無事だったが、それも自分がエルから目を離し、他人の接近を許していたのが原因。スカイランドに帰るまで、彼女を守らなければならないという意識が人一倍強いソラにとっては大事なことだったのだろう。
「……そっか。確かにそうだな……」
「……でも、それならエルちゃんから目を離していたのは私にも責任があるよ!」
ツバサの無実が晴れたのだからそれでいいだろう。そうヤクモは考えていたがソラの懸念までは思い至らなかった。そういう意味では先ほどかけた言葉は見当違いだったのだろう。そう考えている横で、自分にも今回の一件は非があると立ち上がるましろ。
「今すぐソラちゃんと話してくるよ!」
そう言い、2階へと上がっていくましろ。その後を追おうと遅れて部屋を出ようとしたヤクモだったが、
「……あれは」
通路の奥でツバサが本を持って部屋に入っていく姿を見てしまう。一瞬2階の方を見ていたが、ましろも向かっているしひとまず彼女に任せよう、今回の問題は一つ屋根の下で一緒に暮らしていた彼女の方がいい言葉をかけてくれるはずだ。
「……」
部屋に消えていったツバサともう少し話をしてみてもいいのかもしれない。ちょっと前なら必要でもなければ自分から話をしようとは思わなかっただろうなと考えながら、扉をノックする。すると、ガタン!と椅子が震える音が部屋の中から聞こえ、それから少しの静寂の後に扉がゆっくりと開けられ、ツバサが顔を出す。
「な、なんだ……あなたですか、えっと……」
「ああ、自己紹介まだだったっけ、俺はヤクモだよ」
「ヤクモさん……その、どうしてここに?」
「ああ、部屋に入ってくところが見えたから」
「……そうですか」
会話を早々に打ち切りたい。そんな雰囲気が言葉の節々から伺えた。その理由はおそらく、部屋の中を見られたくないのだろう。今だって、扉をちょっとだけ開けて顔だけ出しているという状態だからだ。
「……あー、ごめん。部屋、見られたくないよね」
「あ、いえそういうわけでは……でも、その……」
「いいよ、見せたくないものとか話したくないこととかいろいろあるだろうし」
相手に無理強いするのもよくもないだろう。話したいと思うなら話してくれればいいし、見せたいと思うならその時に見せてくれればいい。そこについてヤクモが追及することはなかった。
「でも、スカイランドに帰らないぐらい大事な部屋ってことでしょ?」
「……はい」
「じゃあやりたいことをやればいいんじゃないかな?」
「……え?」
傍から見ると自分が怪しいことをしているというのはツバサにも自覚があった。ソラから白い目で見られてもそれは仕方ないだろうとも思っていた。しかしヤクモは、この世界の住人であり、他人である。それ故かこの状況を3人の中で一番フラットに見ているのかもしれない。
「俺も、できることとかやれることやりながら生きてるようなものだし……って、なんかすごい偉そうだな……」
「いえ、そんなことはありませんよ」
ツバサが笑いながら言う。ヤクモの言葉に良い意味で思うところがあったのだろう。先ほどよりは警戒心なども薄れているように見える。
「あなたは……凄いですね。そうやってランボーグを倒すためにプリキュアに……」
「え?いや俺別に倒すためにプリキュアになってるってわけじゃないんだけどな」
「え?そうなんですか?だって……つまりヒーロー活動ってことですよね?」
ヤクモの話に首を傾げるツバサ。確かに、悪人を倒し、懲らしめるというヒーロー像も創作だとある。しかしヤクモはそういうヒーローと自分は戦闘スタイルもあるのだが無縁だと考えていた。
「まぁ、結果としてランボーグは倒してるってだけで、エルちゃんやソラさん、ましろさん、そしてこの街や皆を守ったり困ってる人たちを助けられたらいいなってだけだし」
「……いいですね、そういうの」
ヤクモの語るスタンス。しかしツバサから聞けば、それもまたヒーロー像。敵を倒すヒーローではなく、弱きを守るヒーロー。だが、そんな人間だからこそ、あのようなプリキュアになったのかもしれない。そう踏まえると、ヤクモの人柄というものもよくわかる。
「……ありがとうございます、少し気が楽になりました」
「そ、そう?特に何かしていたわけじゃないけど……」
「他の男の子と話すのも随分久しぶりなので……それにこの家、僕以外皆女性の方でしたから」
「……あぁ……」
ツバサの言葉に納得するヤクモ。ただの鳥として振る舞っていた頃もこの家にいたのはましろとヨヨ。当然ましろと会話することもできない以上、話す相手はヨヨだけ。そしてソラが来てからは自分の存在を隠すために一層力を入れることとなり、ヨヨと話す頻度も減っていたのだろう。しかもこの家に訪れる客を含めて全員女性であり、男子のツバサからすればやはり居心地がいいものでもない。その中でスカイランドの事情を知って訪れている唯一の男子であるヤクモは他の皆より気が楽な相手なのかもしれない。
「……そういえばあげはさんに初めて会った時……」
「……無茶言わないでくださいよ、まだこの世界の鳥のフリをしていた時だったんですから」
ふと、ツバサと初めて出会ったことになる以前の事を思い出す。気まずそうに視線を逸らしながら言い訳するツバサにそれもそうかと返すヤクモ。そして気付けば2人とも笑い合っていた。
「あはは……っと、そうだ。そろそろソラさんの所に行かないと……ましろさんの方も話終わってるかもだし……」
談笑がひと段落したところで2階に上がったましろの事を思い出すヤクモ。そろそろ自分もソラの下へ向かおうと思った、その時だった。
「「あああああ!?」」
「「!?」」
女子2人の大声が1階にまで聞こえてくる。ヤクモとツバサが驚いたように顔を見合わせると、何か異変が起こっていると確信し2階へと向かうのだった。