曇り空の夜のプリキュア   作:popoponpon

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第132話 最強の力

 

クラウド達が辿り着いた最奥には、浮遊する平らな岩が1つだけ浮いていた。乗れと言わんばかりに存在していた岩に3人が乗ると、それを合図としたかのように3人を乗せて岩は下がり始める。どうやらこれは目的地へ向かうためのエレベータとなっているようだった。

 

「……この先に、カイゼリンがいるのかな……」

「そしてそこには、ダークヘッドが……」

「……3人になっちゃったね……」

 

自動で床が進むため立ち止まらざるを得なくなったことで、色々思うところが出てきたのかプリズムがぽつりと呟く。アンダーグ帝国に突入してきたのは6人全員いたはずなのに、今や半分の3人。この人数でダークヘッドと戦い、カイゼリンを救い出せるのか。不安を感じて思わず呟かれたその言葉に、スカイが口を開く。

 

「……私、最初は独りぼっちでしたから……」

 

そう言い、クラウドとプリズムの顔を見て笑いかける。

 

「2人が一緒に居てくれて、凄く嬉しい。ヤクモさんも、ましろさんも私にとっては特別な人ですから。一緒に居るだけで、心強いんです」

「……うん」

「ソラさん……」

 

スカイの言葉にプリズムとクラウドも微笑む。そして岩が最下部へと到着し、3人の前に下り階段が現れる。

 

「……いこう。カイゼリンの下に」

「はい!」

「うん!」

 

3人が階段を下り、その奥の通路を走る。走るにつれて暗い紫の靄が立ち込めてくる。

 

「「……はぁ……はぁ……」」

 

次第に走るにつれて足音と共に聞こえてくるのは仲間の呼吸の音だけになってきていた。ピリピリと、近づくアンダーグエナジーを感じ取り、警戒心を跳ね上げる。無言のまま険しい表情になっていき、クラウドは少しペースが落ちてきた2人に先行するように少し前に出る。

 

(……おかしい……なんだろう、この息苦しさ……プレッシャー?)

「出口だ!」

「!」

 

スカイが違和感を感じ始めた次の瞬間、クラウドが出口に差し掛かったと声を上げる。その言葉に思考を中断し、3人が通路を出る。3人が出た場所は広い空間となっていた。だが、大半はアンダーグエナジーによって満たされた海のような場所で構成されており、足人が足を踏み出せる場所は見た目ほど広くはない。3人が視線を動かすと、少し離れたところにカイゼリンが倒れており、それを見下ろすダークヘッドの姿を確認できた。

 

「カイゼリン!」

「助けに来たよ!」

「!ダメだ、これは罠……あぐ……!」

 

クラウドとスカイの姿を見たカイゼリンが必死に声を上げる。しかしダークヘッドがカイゼリンの背中を踏みつけ、その声を中断させる。

 

「カイゼリン!?ダークヘッド、何をするんだ!」

「もうあなたの好き勝手もここまでです!カイゼリンに酷いことはやめなさい!」

 

クラウドとスカイが声を上げるも、全く意に介さないダークヘッド。だがカイゼリンが痛みに呻き口も開けずになっている状態になっていればいいと思ったのかそれ以上彼女へ痛みを与えるような行動は起こさずに3人へと視線を移す。

 

「誰でも胸の中に心って言う名の大切な物語を抱えてる!」

「その人たちの事を入れ物呼ばわりするあなたなんかに負けるわけにはいきません!」

「300年前の事も、今の戦いも、全ての原因がお前にあるなら、ここで全てを終わらせる!そして、カイゼリンを助け出す!皆のためにも!」

 

ダークヘッドは強敵だ。おそらくこれまで戦ったどの敵よりも強いだろう。だが、それでも絶対に負けない。自分達の心を鼓舞するように声を張り上げながら3人は構えを見せる。

 

「「「いざ勝負!!」」」

 

3人がダークヘッドへと飛びかかる。スカイが拳を放つも、ダークヘッドは冷静に受け止める。続く連撃も顔色一つ変えずに捌くと、反撃とばかりにアンダーグエナジーを拳に宿らせスカイへと放つ。しかしその拳を割り込んできたクラウドが受け止め、ダークヘッドからアンダーグエナジーを吸い取ることで一瞬動きを鈍らせる。

 

「はあああ!!」

 

それを待っていたとばかりにプリズムが光弾を連射し、ダークヘッドを攻撃する。ダークヘッドはその攻撃を前に自身を黒い霧へと変えて転移するが、プリズムの背後に現れることは既に予想済み。プリズムはダークヘッドの出現に合わせる形で光弾をゼロ距離で炸裂させる。

 

「はぁ!」

「っ!」

 

衝撃で吹き飛ぶダークヘッドだが、壁に激突する前にトンネルの中にその身を投じ、ダメージを回避する。だがクラウドは周囲を見渡し、スカイもその場から跳んで壁へと張り付く。精神を集中させたクラウドは、次なるアンダーグエナジーの出現を感知する。

 

「そこだ!!」

 

クラウドが雲のチェーンを放つのとダークヘッドが再び現れたのは同時。ダークヘッドの体を雲の鎖が縛り付けると同時に、壁を蹴って飛び出したスカイの拳が炸裂する。

 

「……!」

 

攻撃が命中したものの油断せず一旦距離を取って警戒を続けるスカイ。スカイランドで戦っていた時とは違う。ダークヘッドの動きも、戦術も、仲間から想いを託されて来た今の3人にはお見通しといっていい。

 

「今の私達にはそんな技は通用しません!!」

「入れ物なしでやれるのはここまでか」

「まだそんなことを!?」

「無駄だ!もうカイゼリンはお前なんかに従わない!」

 

だがダークヘッドは自分では3人に手を焼くことは予想済みだったのか、顔色一つ変えない。しかし、クラウド達からすれば、この期に及んでカイゼリンを利用しようなどと腹立たしいにもほどがある。

 

「もう大丈夫だよ!カイゼ……!?」

「プリズム!?……うっ!?」

「スカイ!?プリズム!?」

 

自分達ならダークヘッドと戦える。それを証明し、カイゼリンを安心させようとしたプリズムが突然苦しそうに頭を抱える。遅れてスカイも苦しそうに膝を付く。

 

「なんで……」

「アンダーグエナジーの海から生まれた者にとって光は毒であるように、お前たちにとってこの海は毒……ここまで近づいて無事で済むわけがない」

 

何故スカイとプリズムが苦しむのか。そしてクラウドが平然としているのかを語るダークヘッド。アンダーグ帝国人とのハーフであるクラウドは、この空間でも行動が可能なようだが、2人はそうはいかない。

 

「罠があるのは……百も承知で……ここまできました……!この程度の事、で……」

「大したものだな。だが」

 

クラウドに支えられながら、スカイが何とか立ち上がろうとする。しかし、クラウドに支えられてようやく立てる、といった有様だ。これでは戦闘など続行不可能に近い。さらに、体力のあるスカイだからまだこれで済んでいる、という状態なのだろう。誰かが倒れた音と共に2人がプリズムの方を見ると、彼女は既に倒れ込んでしまっていた。

 

「プリズム!?」

「アンダーグエナジーを取り込んで悪影響が出てくるなら、それを外に出せば……!プリズム、待ってるんだ!」

「……」

 

クラウドが雲を使って2人のアンダーグエナジーを吸い出そうと試みる。しかし、その前にダークヘッドが倒れたプリズムの真下にトンネルを開き、その中にプリズムを落としてしまう。

 

「プリズム!?」

「あ……!?」

 

そして吸い込まれたプリズムは、なんとアンダーグエナジーの海の上で宙づりにされてしまう。もしこのまま落とされてしまったらどうなるのか。海から噴き出す僅かであろう気体だけで自分達はこんなに苦しんでるのだ。もし落とされてしまえば、間違いなく命はないだろう。

 

「や、やめなさい……!」

「ならばヒーローの力で止めてみせるがいい」

「……スカイ、少しだけ待ってて」

「ま……まっ、て……!」

 

スカイから手を離し、クラウドがダークヘッドへと向かう。しかし、クラウドを1人で行かせるわけにはいかない。いや、行かせたくない、そしてプリズムを助けなければ。様々な想いがぐちゃぐちゃになりながらも、全身を蝕む苦しさに抵抗しながら、クラウドとの手を借りずに必死に立ち上がろうとする。そんなスカイの必死な行動を尻目に、自身へ向かって歩いてくるクラウドをダークヘッドは観察する。そして、その周囲からアンダーグエナジーを取り込み始めているクラウドの姿を確認し、視線をスカイへと移すと指を鳴らす。

 

「力が足りないか?ならば求めるがいい」

 

ダークヘッドが指を鳴らすと同時に海からアンダーグエナジーが立ち上り、巨大な球体を作り出す。それは、スカイの目の前へと移動する。

 

「お前ほどのヒーローならば、クラウドのようにアンダーグエナジーを自らの力としてコントロールできるかもしれないぞ」

「……」

 

身動きすら取れない自分の前に現れた巨大なアンダーグエナジー。これを取り込めばクラウドのように自由に動けるかもしれない。もしかしたらもっと強くなれるかもしれない。そうすれば、プリズムを助けてダークヘッドも倒せるかもしれない。しかし、この力を取り込んでクラウドのように操れるのか。アンダーグ帝国の刺客や、アンダーグエナジーに身を捧げた時のカイゼリンのように我を失ってしまうのではないか。恐怖と不安、欲望、が一瞬にしてスカイの中で渦巻く中、

 

「仲間が惜しくないのか?」

「スカイ、君がそんなことをする必要はない!」

 

立ち止まり、スカイの目の前に移動したアンダーグエナジーへとクラウドが手を伸ばす。ダークヘッドの狙いがスカイをアンダーグエナジーに染める事、そのためにプリズムを人質にしたのだと理解したのだろう。そのまま、アンダーグエナジーを吸収しようとする。しかし、

 

「それが狙いだ」

「「!?」」

 

アンダーグエナジーに手を伸ばした一瞬。その隙にクラウドの傍に転移してきたダークヘッドが、なんとクラウドを海の中へと蹴り飛ばしてしまう。

 

「……!」

 

スカイとカイゼリンが声を出す間もなく、海から伸ばされたアンダーグエナジーの触手。それは、クラウドの体を待ち望んでいたかのように海の中へと一瞬にして引きずり込んでしまう。

 

「―――!!」

 

瞬間。スカイの中で何かが切れた。それに反応するようにアンダーグエナジーの球体は急速に圧縮されていき、スカイへ向かって高速で飛んでいく。球体はスカイに命中し、彼女の体を吹き飛ばす。直後、彼女の体をアンダーグエナジーが包み込み、その中から変わり果てたスカイが現れる。

 

「はぁ……はぁ……!」

 

スカイのコスチュームは黒を基調としたコスチュームへと染まっており、右肩からは黒い羽が伸ばされている。髪も藍色に染まっており、その瞳は青い炎のような光を宿らせていた。彼女の呼吸は荒く、戸惑っている様子が見て取れる。それは、アンダーグエナジーを受け入れたことで先ほどよりも楽になり、力が湧き上がってくる状態からくる違和感からなのだろう。だがそんなことよりも。

 

「力を求めたか。それでいい」

「!」

 

ダークヘッドは変わり果てたスカイの様子を前にプリズムを海へと落とす。直後、空へと飛び出したスカイはプリズムの元へ一瞬で移動して抱えると、クラウドを探すように海を見渡しながら地上へと飛び出す。その様子を見て、無事にアンダーグエナジーを使いこなせていることを確認できたのかダークヘッドは笑みを浮かべる。

 

「入れ物に一歩近づいたな。クラウドが染まり切るまで、こちらも調整しよう」

 

救出したプリズムを安全な所に寝かせると、スカイは怒りの表情をダークヘッドへと向ける。

 

「許さない……絶対に許さない……!ヤクモさんを……よくも、ヤクモさんを!!……うっ」

 

しかし彼女の全身に流れるアンダーグエナジーは、今も彼女の意識を食いつぶそうとする。そんなものには負けない、絶対に負けるわけにはいかないのだと必死にスカイの理性はアンダーグエナジーを制御しようとする。

 

「負けない……負けるもんか……こんな力……コントロールしてみせる……!強く、なって……皆を、助け……ああああ!!」

 

その場から飛び上がり、ダークヘッドへ攻撃を仕掛ける。ダークヘッドがバリアを作り出すもスカイの拳はそれを容易く破壊し、ダークヘッドを吹き飛ばす。

 

「す……素晴らしい……!キュアスカイでこれほど……!」

 

全身に痛みが奔っているはずだが、それでも心底嬉しそうに笑顔を浮かべるダークヘッド。対するスカイは、苦しそうに胸を抑える。力を使えば使う程、アンダーグエナジーに心を蝕まれ、食われていくかのような感覚だった。このような地獄の感覚の中、クラウドは平然としていたのかと思うと彼の凄さをひしひしと感じていた。

 

「はぁ!」

「!?ああああ!!」

 

このままスカイの心をアンダーグエナジーで食いつぶしていくことが狙いなのだろう。ダークヘッドは体を起こしてスカイの前に立つ。それを見てスカイが即座に反応してダークヘッドを吹き飛ばす。柱を何本も破壊しながらも勢いが止まらず、吹き飛ばされるダークヘッド。

 

「はははははは!!」

 

しかし、彼の高笑いが止まらない。戦えば戦う程、スカイは堕ちていく。それがわかっているからこその余裕なのか。一方のスカイも、これ以上はまずい、これ以上戦い続けていては自分がどうなってしまうかわからないと、本能的に判断していた。故に、トドメの一撃を放とうとする。そして2人の目が交差した瞬間、そろそろ頃合いかと判断したダークヘッドが、スカイの心を完全に破壊するための言葉を口にした。

 

「皆を助けるか?だがクラウドなら死んだぞ?どうやって助ける?」

「!!」

 

次の瞬間、スカイの目から光が消える。その瞳は光のない藍色へと染まり、青い炎も消えてしまう。それでも攻撃は続けられ、ダークヘッドへと放たれたトドメの一撃は、大きな衝撃をその身に叩きこんだ。

 

「……っ」

 

その音が聞で、プリズムが目を覚ます。アンダーグエナジーの海から離れたこと、大量のアンダーグエナジーをスカイとクラウドが取り込んだことで濃度が一時的に下がったことで彼女の体調も多少はマシになったのだろう。だが、彼女が見た変わり果てたスカイの頬には、涙が流れていた。

 

「あ……ああ……」

「そ、ソラちゃん……?ヤクモ君は……!?」

「ダークヘッドが……スカイを……」

「え!?」

 

カイゼリンの目にははっきりと見えていた。ダークヘッドが蛇のような姿となって、心を失ったスカイの中に入っていくのを。彼女の体は赤黒いオーラに包まれており、その胸にはアンダーグエナジーの人魂のようなものが宿っている。それが、ダークヘッドなのだろう。

 

「……!」

「そ、ソラちゃん……」

「駄目だ……もう、彼女の心は……」

 

スカイがふらりとプリズムとカイゼリンへ振り向く。その顔を見たプリズムの頬を冷や汗が流れる。カイゼリンもまた、彼女の光を失った瞳を見て絶望の表情を浮かべていた。

 

「そんなこと……」

「しかし、ヤクモは……海の中へ……」

「!?」

 

先程まで意識を失っていたプリズムはここでクラウドがどこにいるのかを知る。アンダーグエナジーの海の中。その外にいるだけで自分はあれほど苦しんだのだ。いかにクラウドといえど、あの海の中に沈んでしまえばどうなるのか。彼女にもわからないわけがなかった。

 

「……そ、そんな……」

 

スカイがアンダーグエナジーに負けるとはプリズムだって思いたくない。しかし彼女の心を揺するものがあれば、話は変わってしまうだろう。そのために、ダークヘッドは一番厄介でもあったクラウドを手にかけたのだ。

 

「……ソラ、ちゃん……」

 

ダークヘッドに操られたスカイが拳を構える。その拳は躊躇なくプリズムへと放たれ、彼女の命を容易く奪い取るだろう。そして心を失った今の彼女に、それに抵抗する手段は存在しない。

 

「……!?あれは……」

「!」

 

彼女が拳を放とうとしたその瞬間。アンダーグエナジーの海が胎動し、割れていく。そこから現れたのは、黒のコスチュームを纏ったクラウドだった。だが、その背中からは漆黒の左翼だけが伸びる片翼の姿となっており、赤黒く染まった髪色と、金色の瞳が冷静に戦況を見渡していた。

 

「ヤクモ、君……」

「ヤクモ……」

 

カイゼリンはもちろん、プリズムでもわかるほどに、クラウドの体内に満ちるアンダーグエナジーの力。スカイとは違い、オーラという形でそれはまとわれていないが、立っているだけで足が震えるほどの威圧感を放っていた。

 

『ふはははは!遂に誕生したぞ!最高の入れ物が……アンダーグエナジーこそ最強の力と証明する存在が!やはりキュアクラウドと言えど海の膨大なアンダーグエナジーの前では自我を喪失する!』

「こ、このために……」

 

ダークヘッドの歓喜に満ちた声が響く。クラウドはその声に反応するように無言でスカイを、その胸に灯るダークヘッドの気配を一瞥すると、プリズムとカイゼリンを見る。と、

 

「きゃあああ!?」

 

プリズムへ向けて開かれた手から放たれたアンダーグエナジーが、彼女へと命中する。直後、プリズムの体はドームのようなものに閉じ込められてしまう。

 

「な、なんてことを……」

『素晴らしい……!』

 

それは、内部で高密度のエネルギーが流動する危険なものだった。この中に閉じ込められてしまえば、プリズムは脱出することすらできず全身を傷つけていくことだろう。仲間すら認識しない今のクラウドにとって、味方とはアンダーグエナジーでしかない。その確信を得たダークヘッドがスカイの体を動かし、彼の下へと飛ばせる。

 

『出来上がるまでは仮の入れ物とする予定だったが、こうも早く生まれるとは。早速、最高の入れ物を使わせてもらうとしようではないか!はーはははは!!』

 

逆らう者など誰もいない。勝利を確信したダークヘッドが、クラウドの体を奪い取ろうとした、その時だった。

 

『がっ!?』

「……」

 

クラウドの手が人魂を掴む。ただのアンダーグエナジーの塊となったはずなのに感じる痛覚。それが、キラキラエナジーによる浄化の感覚だと即座に理解したダークヘッドは焦りの声を上げる。

 

『馬鹿な!?これは……まさか貴様、まだ意識を……』

「……彼女から出ていけ」

『がぁああああ!?』

 

そのまま、スカイの体からダークヘッドを引き抜くクラウド。引き抜かれた人魂は蛇の姿をしており、この状況から逃れようと暴れるも、クラウドの手から生み出された、先ほどプリズムへと放った攻撃に閉じ込められてしまう。しかしこれが、ただのアンダーグエナジーなら自らの糧へと変えるだけ。アンダーグエナジーの化身であるダークヘッドならそれも難しい話ではないだろう。そう、それがアンダーグエナジーによる攻撃だったら。

 

『ぐああああああああ!!!こ、これは……ま、まさか……!?』

「な、何が……」

 

だがダークヘッドから聞こえてきたのは苦痛の声だった。しかし、そんなものはどうでもいいと言わんばかりに、ダークヘッドが消え、力なく倒れ込むスカイの体をクラウドは抱きしめる。

 

「帰ってきたよ。ソラさん」

「……ヤクモ、さん……?」

 

クラウドの声を聞いたスカイの目に光が僅かに戻る。うっすらと取り戻した意識で目の前のクラウドの姿を見た瞬間。彼が生きていたという事実を実感するのと同時にアンダーグエナジーに蝕まれていた心が光を取り戻していくのをスカイは感じていた。

 

「ヤクモさん……!よかった、生きてた……!」

「心配かけてごめんね。でも……皆を、ソラさんを残してなんて死ねるわけがない。アンダーグエナジーに俺の体も心も渡したりなんてしない……俺は、俺のやりたいことを絶対に諦めたりなんてしまい」

「ひぐ……私……未熟です……ヤクモさんが、本当に死んでしまったと思って、心を揺さぶられて……ダークヘッドに……」

「もうそんなことはさせない。俺が、仲間たちが一緒にいるんだから」

 

クラウドの胸に飛び込んで泣きじゃくるスカイ。アンダーグエナジーの海の中に落とされたクラウドが自我を失わず、力を得て戻ってきた理由。それは、今まで出会い、共に戦ってきた仲間たちとの絆と記憶。そしてソラへの想い。そしてスカイもまた、ヤクモへの想いから本当の心を取り戻したのだ。

 

「……さあ、まだ終わってないんだ。話は後でいっぱいしよう」

「……はい!」

 

クラウドがスカイの涙を拭う。そしてスカイは満面の笑みでクラウドに笑いかけると、ダークヘッドを閉じ込めているドームを見据える。ダークヘッドはドームの中でも暴れていたのか、蛇の姿ではなく人型に戻っていた。そして、残る力でどうにかドームを吹き飛ばし、自由を取り戻したようだが、全身が傷だらけになっていた。しかし、自身へのダメージを気にする余裕もなく、困惑と驚愕の表情を、2人へと向ける。

 

「馬鹿な……何故、堕ちない……!?何故、心が戻っている……!?」

「……簡単だよ。信じて待っている人がいるから、何度だって立ち上がれる……きっとそれが、ヒーローだから」

「!?」

 

その声は、プリズムの声だった。ダークヘッドとカイゼリンの視線がプリズムが閉じ込められたドームへと向けられる。ドームはひび割れていき、アンダーグエナジーとなっていた外装が剥がれ落ちていく。その内側にあったのは、高濃度のキラキラエナジー。その中に入っていたプリズムは、完全にアンダーグエナジーによって蝕まれていた肉体を回復させただけでなく、

 

「ふっ!」

 

両手を上げるとともにそのキラキラエナジーがプリズムシャインと合体し、さらに巨大なものとなっていく。その光は、スカイとクラウドを元の姿へと戻していくばかりではない。その浄化の力はダークヘッドを消し飛ばしていき、近くにいたカイゼリンも受けることとなり、彼女の胸に開かれていたはずの傷が一瞬にして完治していく。それだけにとどまらず、その光は海を照らしていき、海に蠢いていたアンダーグエナジーはキラキラエナジーの満ちた空間へと変わっていく。

 

「これは……!?」

 

何故怪我が治ったのか。その事実が分からず驚愕するカイゼリン。一方、スカイとクラウドはプリズムの前へとゆっくりと降りてくる。

 

「お帰り、2人とも」

「ただいま!キュアプリズム!」

「心配かけちゃったね」

 

元の姿に戻り、こうして皆で話ができることを喜ぶ3人。そこに、傷が治った胸に何が起こったのか確認するように、カイゼリンが3人に問いかける。

 

「な、何故傷が……光の力は私にとって……」

「生まれや世界が違っても、あなたも私達と同じだから」

「それに、本当にアンダーグエナジーとキラキラエナジーが相反する性質なら、俺はプリキュアになんてなれていないし、2つの力を一緒に使うことなんてできない。慣れない力を取り込んだことで拒絶反応が出てきていたのをダークヘッドがそれらしく言っていただけだよ」

「……そうか、同じか……」

 

ヤクモの言葉に納得したように頷くカイゼリン。スカイランドに生きる者達もアンダーグ帝国で生まれた者も、ソラシド市で生まれた人々も、異なるところはあるかもしれないが、全員同じなのだ。だからこそ、プリキュアの浄化は自分の傷を、心を癒したのだと。

 

「時間を旅して私は知りました。どんな困難が立ち塞がっても、自分が正しいと思ったことを信じ抜いたヒーローの姿を」

「だが、私は道を誤った!ヒーローを名乗る資格など……」

「私も未熟です。ヒーローなんて名乗れるほど立派じゃありません。道だって何度も間違えて……迷って……足が止まって……でもそんなときには、いつも支えてくれる友達や、大切な人がいてくれました」

 

しかし、だからといって自分の行動が許されるわけではないだろう。元凶がダークヘッドであったとして、実際に行動を起こしたのは自分なのだから。しかしスカイは自分も間違え続けてきたのだと言い、クラウドとプリズムの顔を見る。そして2人はスカイに頷き返すと、スカイは改めてカイゼリンを見る。

 

「力が全てではないのだとしたら、何を信じればいい……カイゼリン、これが私達の答えです」

 

そう言い、手を差し出すスカイ。そして、

 

「友達になりませんか?」

 

そう、彼女へと言う。突然差し出された手に、困惑するカイゼリン。しかしカイゼリンが3人の顔を見ると、3人は笑って彼女に応える。それを見たカイゼリンは嬉しそうに少し笑うと、スカイの手を握り、握手を交わす。その時だった。

 

「仲良し、だね」

「「「!」」」

 

2人の様子を見て、マジェスティの嬉しそうな声が聞こえてくる。

 

「皆!」

 

3人が視線を移すと、そこにはマジェスティ、ウィング、バタフライの姿があった。3人とも、それぞれの戦いを制してここまで駆けつけてくれたのだろう。体は傷だらけだったが、それよりもこうして再び再会できたことの喜びが勝っていた。

 

「これまでいっぱい絵本を読んでもらったけど……私、やっぱりハッピーエンドのお話が好き!」

「そうだね!」

「また合流できたね」

「そういう約束でしたから」

 

マジェスティとプリズム、ウィングとクラウドがお互いに喜び合う。と、そんな感動的な雰囲気をぶち壊すかのように、キラキラエナジーへと変わった海の中から、浄化しきれずに残っていたであろうアンダーグエナジーの集合体となった巨大な蛇が現れる。

 

「ダイジャーグ!!」

「……あのさ、あんたの出番、とっくに終わってるよ?」

 

怒りとも憎しみともとれる感情の雄たけびを上げる存在、ダイジャーグ。しかしバタフライは呆れたように言い放つ。

 

「しぶとさだけはあるってことかな?」

「だとしても、大きくて強いだけの奴なんかに負ける気なんてしません!」

「6人の力、見せつけちゃお!」

「いくよ!」

 

クラウド達も、バタフライに続き、ダイジャーグへ向けて構える。そしてスカイが、意気込むように拳を構え直すのだった。

 

「ヒーローの出番です!!」

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