曇り空の夜のプリキュア   作:popoponpon

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最終話 ひろがる世界

「えー、残念なお知らせがあります。ハレワタールさんが転校することになりました」

 

ソラシド学園の教室。ホームルームで告げられた突然のソラの転校。それを聞いて驚くクラスメイト達。当然休み時間の話題はソラの転校についてとなり、クラスメイト達から転校の事について様々なことを聞かれていた。

 

「ヤクモ、お前知ってたの?あんま驚いてなかったけど」

「ああ、話は聞いてたから」

「えー!?だったら俺にも教えてくれよ」

「悪かったって」

 

ソラが転校すると言う話を聞いた時、ヤクモとましろは反応をしていなかったことを指摘するあさひ。しかし、ヤクモとましろはソラの転校、その実態がスカイランドへと帰ることだと知っている。トンネルの存在があるため、ソラもソラシド市に戻ることはできるだろうが青の護衛隊の活動なども踏まえるとその機会はかなり減ってしまうだろう。クラスメイト達と会えるのは本当にこれが最後になるかもしれない。そう考えると寂しいものがある。

 

「元気でね」

「はい!」

「寂しくなるなぁ」

「そうですね……」

「SNS送るね!」

「スマホの電波が届かないところに引っ越しちゃうので、お手紙がいいです!」

「それどんな田舎……?」

 

クラスメイト達と話をするソラ。そんな光景を微笑ましく、教室の扉の方から見つめていたヤクモとましろは顔を見合わせて笑う。そして時間は過ぎて昼。屋上へと足を運んだヤクモとましろは、ソラから皆から寄せ書きを入れてもらったヒーロー手帳のページを嬉しそうに見せる。

 

「見てください!寄せ書きを皆に書いてもらいました!野球部の皆も!」

「よかったね、ソラちゃん」

「はい!」

「あっという間にもう春になっちゃったね」

「本当ですね」

 

ダークヘッド、ダイジャーグとの戦いも年が明ける前に起こった。それから数ヶ月経ったものの、今でも去年の戦いを昨日の事のように思い出せる。

 

「戦いはありませんでしたが、それでも色々大変でした」

「今になってやっと落ち着けたぐらいだからね」

 

あっという間に過ぎ去った時間の話でソラとヤクモが花を咲かせていると。

 

「……2人とも、寂しくならない?」

 

ましろからそんな声を掛けられる。それを聞いたソラとヤクモは少しだけ沈黙するが、

 

「……寂しくないと言ったら、嘘になります。でも、住む世界が変わるだけですよ」

「トンネルを使えばいつでも会えるし、どの世界にだって行ける。今までとはちょっと変わるかもしれないけど、それでも変わらないところの方がいっぱいあるよ」

「はい!」

 

ましろの言葉にそう返答して再び笑い合う。既にこの別れに2人はちゃんと区切りをつけており、これからの新しい関係を受け止めているのだろう。そしてましろも、そうしなければならないのはわかっていた。ソラ達にはスカイランドと言う元の世界があり、プリンセス、賢者、青の護衛隊とそれぞれの立場もある。自分がこのように言って引き留めるのは間違っているのだと。

 

「……2人の言う通りだね。住む世界が変わるだけでトンネルを使えばいつでも会えるし、変わらないことの方が多いもんね……」

 

そう言い、ましろは2人に寂しさを誤魔化すように微笑むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ソラが学校で最後の生活を過ごしていた頃。虹ヶ丘家ではツバサとエルが家の掃除を行っていた。今日で最後になるこの家は、エルは1年、ツバサは2年程お世話になったかけがえのない場所。このソラシド市は第二の故郷と言っても過言ではないだろう。だからこそ、その恩を返すようにツバサは掃除に熱を入れる。

 

「……ふう」

 

研究室にあった資料などは、必要なものは既にスカイランドの方に移動させ終えている。掃除もひと段落したところで汗を拭って落ち着くツバサ。ものが消え、綺麗になった研究室を見ると、寂しさを感じる。

 

「!」

 

と、研究室の扉が突然開かれ、エルが入ってくる。エルは研究室の中を見渡していたが、

 

「とっても綺麗!」

「……プリンセス?ご自分の部屋の掃除は終わりましたか?」

 

綺麗に掃除された部屋に感動したような様子を見せる。その姿を見て、あることに気付いたツバサはエルに自分の部屋の掃除はできたのかと質問する。冬休み前はエルも赤ん坊だったため、個人の部屋というものはなかった。しかしエルレインの力を受け継ぎ、普通の少女にまで成長した彼女は新たに部屋が用意されていた。そのため、スカイランドへ戻るにあたってエルもまた、ツバサと同様に自分の部屋を掃除することとなっていたのだ。ちなみにソラについては今日学校に行くこともあり昨日で早めに掃除を終えているようだった。

 

「……も、もうちょっと、かなぁ……?」

「散らかしっぱなしじゃダメですよ?こちらの世界のことわざで言うじゃありませんか。立つ鳥跡を濁さずって」

「エル、赤ちゃんだからわからないよー」

 

痛いところを突かれたのか、まだ掃除が終わっていないと言うエルを諭すツバサ。しかしエルは自分は赤ちゃんだからと誤魔化そうとする。

 

「……そういうズルも駄目です」

 

しかしすぐにピシャリと言い放つツバサ。これが本当に年齢通りの赤ん坊であればともかく、体も成長し、心もそれに伴った情緒を手に入れたエルがそのような言い訳をしても通じない。

 

「最強のプリンセスが実はお片付けが苦手だなんてわかったら、スカイランドの国民の夢が壊れちゃいますよ……?」

 

すぐにエルに掃除に戻ってもらおうと諭し続けるツバサだったが、ふとエルの視線が窓の外の街へと向けられていることに気付く。エルが何を考えているのか気付いたツバサは彼女の隣に立って共に街を見渡す。

 

「……この見慣れた街とも、お別れですね」

「……うん」

「ソラシド市……落ちてきたのがこの街で本当に……よかった」

 

この街に落ちてきて、ヨヨと出会い、航空力学に出会い、そしてソラやヤクモと出会って自分の夢も世界も広がっていった。この街はかけがえのない思い出を与えてくれた場所。この街への思いはとても深い。

 

「……夕方になったらソラさんも帰ってきます。そうしたら、お別れですよ」

「……うん」

「だからそれまでに、部屋の掃除を終わらせましょう」

「……うん」

 

残る時間が僅かだからこそ、皆できちんとお別れをするために必要なことをやろう。そう言われ、エルは少し寂しそうに頷く。その頃一階のキッチンではあげはが弁当を作っていた。

 

「……よし」

 

あげはの前にはソラ、ツバサ、エルの3人をイメージした弁当があった。スカイランドに帰るときに3人に餞別として送るものなのだろう。と、

 

「ただいまー」

「あ、お帰りましろん。ソラちゃ……あれ?」

「あ、ソラちゃんは……ちょっとヤクモ君と街を歩くって。だから途中で別れたんだ」

「そっか……じゃあ着替えて待っていようっか」

「うん」

 

ましろが1人で帰ってくる。少し寂しそうにも見えるが、ある意味仕方のないことだろう。自分も寂しさを感じているのは一緒なのだから。そしてあげはは窓の外を見ると、2人は今どこにいるのかに思いを馳せるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここ……初めて会ったのは少し違うけど、初めて話をしたのはここだったね」

「……そうだね」

 

ましろと別れた2人はショッピングモールのフードコートに来ていた。2人が初めて出会ったのは人助けを共にしたところだったが、あの時はお互いに印象的な初対面というものではなかった。それよりも場所としての印象が強いのは、昼食中のヤクモと初めて話をし、そしてこの場所で初めてヤクモが変身したフードコートになるのだろう。

 

「あの時は……こうなるなんて思わなかったな」

「そうだね」

 

飲み物だけ頼んで席に座りながら、当時の思い出について話をしていく。初めてソラと会った時、女の子と話すことにも抵抗を感じてしどろもどろになっていたヤクモの姿。今はソラとはもちろん、他の女子とも話をするだけなら問題なく話ができるようになった。そしてソラとは戦いや日々を通じて恋人同士にまでなっているのだから人生とはわからないものである。

 

「私、凄い遠くに引っ越すことになってますから、ここへも来づらくなっちゃうかな」

「そうだね。出かけるとしたら……こっちの世界じゃなくてスカイランドになるのかな」

「その時は、私が案内するね」

「うん、お願いするよ」

 

飲み物を飲み終え、場所を移しながらもこの世界での話を少しでも続けようと口を開き続ける2人。どこへ行くともなく、ショッピングモールを出てきたが、ソラをある場所へ連れて行くかのようにヤクモは街を歩いていると、人がいない公園がふと目に入る。

 

「……ここなら、いいかな」

「どうしました?」

「うん。どこかで言おうと思ってたんだけど……」

 

今度は公園のベンチに2人で座る。夕日のオレンジ色の光が2人を照らす中、手を繋ぎ合ってる中、ヤクモが零した話にソラが耳を傾ける。

 

「ソラさんやツバサ、エルちゃんがスカイランドに帰った後のこと……考えてたんだ」

「……」

「これからも、スカイランドとアンダーグ帝国の和平のために、俺達にもできることはあると思うんだ。皆の力も借りるけど、それでも俺にしかできないことってやっぱりあると思う」

「きっと……ヤクモさんにしかできないこともあると思う。でも、その時は私も協力するね」

「ありがとう、ソラさん」

 

3人がスカイランドに帰った後も、自分たちのやることはまだまだ続く。いやむしろ、戦いが無くなったからこそ大変になる日々もあるかもしれない。だが、だからこそやる気が出てくる。特に、アンダーグ帝国と関わりのあるヤクモだからこそ、2つの世界の架け橋になれるだろう。そのために、ソラや皆と一緒に頑張りたいというヤクモの言葉に、ソラも喜んでと言わんばかりに笑顔を浮かべる。

 

「それで……ソラさんに2つ、言おうと思ってたことがあるんだ」

「2つ?」

「……うん。いや、これは言うと思ってたことってよりは見てもらいたいことになるのかな」

「?見てもらいたいもの?」

 

そう言うと、ベンチから立ち上がり、目の前に手を向ける。ソラはヤクモが何をしようとしているのか、疑問そうに首を傾げながらじっと見つめる。ヤクモは精神集中するかのように目を閉じると、深呼吸をする。そしてその目が開かれると同時に、

 

「はっ!」

「!?」

 

ヤクモの目の前に、アンダーグエナジーのトンネルが出現する。それを見たソラは驚きの表情を浮かべる。

 

「ヤクモさん、これって」

「アンダーグエナジーのトンネル……戦いが終わった後、父さんから教えてもらったんだ。ソラさん達が帰るまでには絶対に覚えようと思って……それでもギリギリだったけど。これで、スカイランドに自由に行けるようになる。そうすれば、いつでもソラさんと会えるから」

「!!」

 

自分に会うためにトンネルを開く術を身に付けた。ヤクモの言葉にソラの顔が明るくなる。凄く嬉しそうに顔をにやけさせると、

 

「凄い……やっぱり凄いよヤクモさん!トンネルを開けるようになるなんて……これで、スカイランドに帰った後も会いやすくなるね!」

「うん。スカイランドに行くたびに父さんやヨヨさんに頼むこともなくなるし……2人とも快く開いてはくれるだろうけど、やっぱり俺の手で行きたいって、ソラさんに会いに行きたいって思ってたから」

 

ヤクモがトンネルを開けるようになったことを喜ぶ。今はトンネルを使うことはないのでそれを閉じるとソラに抱き着かれるヤクモ。そのまま嬉しそうにお互いに抱きしめ合っていたが、

 

「……もう1つ、言いたいことがあるんだ」

「はい」

 

その中でヤクモが残りのもう1つについて触れる。そして深呼吸を入れてからソラの顔をじっと見つめると、ゆっくりと語り始める。

 

「俺、いつになるかはまだ詳しく決めてないけど……大人になったらスカイランドに行こうと思ってる。スカイランドで暮らして……2つの世界の為にできることをしたいと思ってる。そして……ソラさんと一緒に暮らしたいんだ。それが……今の俺の夢だよ」

「……ヤクモさん……!」

 

ヤクモから告げられた今の彼の夢。それを聞いたソラがこれまで以上に嬉しそうに抱きしめる力を強くする。

 

「私、その時を楽しみにしてるから!」

「うん、絶対に叶えるよ」

 

ヤクモも絶対に夢を叶えると宣言すると、期待するソラに顔を近づける。ソラも、そんなヤクモの様子に気付いて自分の方もヤクモを求めるように顔を近づけるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

(住む世界が変わるだけ……トンネルを使えばいつでも会える。どんなに離れていたって、私達は友達だし、一緒に過ごした時間が無くなっちゃうわけじゃない。でも……それでもやっぱり、寂しいよ……お別れなんて……悲しいよ……)

 

帰宅し、着替えたましろはあげはと共に皆の別れの準備を進めながら、そんなことを考えていた。今頃2階では先ほど戻ってきたばかりのソラが制服から着替えて、荷物の点検をしていることだろう。ヤクモも着替えて家に着けば、今度こそお別れ会が始まってしまう。それが、たまらなく寂しいと庭に出ていたましろは思っていた。

 

「ヤクモ君……どれくらいで来るんだろう」

「着替えてから来るって言ってたしそんなかからないんじゃないかな?」

「……3時間、いや6時間ぐらい後に来ないかな」

「いやいや」

「ご、ごめん!そういう意味じゃなくて……」

「わかってるって」

 

ヤクモが来なければそれだけお別れ会は遠のく。ならばいっそ来なければいいのではないかとすらぶっちゃけるましろに思わず突っ込んでしまうあげは。無論、ヤクモに来てほしくないなんて思ってるわけではなく言葉の綾なのは重々承知なのだが、それでもこんな事言うべきではなかったとすぐに反省する。と、そんなことを話している間にも、ヤクモの姿が見えてくる。

 

「あっ、来た来た!おーいヤクモ君!」

 

あげはがヤクモに気付いて声をかける。ヤクモもあげはの声に反応するように手を振ると庭の方へと出てくる。

 

「皆、準備は大丈夫?」

「うん、私達はばっちり!皆ー、ヤクモ君が来たよー!」

「「「はーい!」」」

 

あげはが皆を呼ぶと、3人の返事が聞こえてくる。それから少ししてソラ達が降りてきて、ヨヨがトンネルを開く。そしてトンネルの前に立った3人と、ヤクモ達が向かい合う形になる。

 

「長い間、お世話になりました」

「こちらこそ、お世話になりました」

 

エルに頭を下げられ、ヨヨも微笑みを返す。そして顔を上げたエルは、ずっと疑問に思ってたことについてヨヨに質問する。

 

「私とソラをこの家に受け入れてくれた時、ヨヨさんはどこまで知っていたの?」

「スカイランドの様子はミラーパッドで時々観察して、ムラクモさんと考察と調査を重ねていたから、あなたが空から降りてきたことや神秘的な存在から遣わされたであろうことはわかっていたわ。でもね、一緒に暮らそうとしたのはそんな理由じゃないの」

 

この世界に暮らしているとはいえ、スカイランドの情報なども定期的に調べてはいたのだろう。その中でエルの存在を知り、ムラクモとも情報を共有していた。だが、それはエルの正体についての話であって、エルを受け入れた理由ではないという。

 

「いい子達だって、一目でわかったからよ」

 

自分達をこの家で受け入れたのは、使命によるものでは断じてないのだと。それを聞かされたエルが嬉しそうな顔を見せる。と、その視線がヨヨの横にいるましろへと移る。ましろの顔は落ち込んでしまっており、この別れを誰よりも寂しく感じていることが見て取れた。ましろも、エルがこちらを見ていることに気付いて慌てて微笑みを作って誤魔化そうとするもうまくいかず、言葉も出てこなくなりつい顔を逸らしてしまう。

 

「……ましろ。ぎゅっとして」

「!」

 

エルからハグを求められ、一瞬戸惑うもすぐに彼女の言う通り、エルを抱きしめるために近づくましろ。と、エルがましろの背中に手を回して彼女を勢いよく抱き寄せる。

 

「……暖かい。大好きだよ、ましろ……」

「……私もだよ、エルちゃん……」

 

ましろの目には涙が浮かんでいた。こうして抱きしめ合ってると、どんどん別れに近づいているような気配を感じてしまうのだろう。と、それを見たあげはがましろとエルをまとめて抱きしめる。

 

「「わ!?」」

「私もどっちも大好き!」

「……うん!」

 

そう言い、笑うあげはにエルも笑う。その様子を見ていたツバサだったが、ここでヤクモに視線を向ける。

 

「ヤクモさんは……いいんですか。ソラさんとは……」

「あ……大丈夫。俺達の方は済ませたから」

「はい。それに、今別れてもまた、いつでも会えますから」

「……そうですか」

 

ここまで静かにしていたヤクモとソラにこのまま何も言わずにいいのかと問いかけるが、既に2人きりの間で別れは済ませてある。だから安心してくれと口を揃えて言う2人を見て、ツバサも何かを決心した様子であげはへと話しかける。

 

「あげはさん」

「?」

「お弁当ありがとうございます、向こうでいただきます」

「美味しいよ」

 

まだ弁当の中身は見ていない。ならば向こうで開けたとき、きっと驚いてくれるだろうとあげはも楽しみそうに自分の弁当の美味しさを保証する。

 

「また食べたくなったらいつでも遊びにおいで」

「はい」

「……で、少年。これからどうするの?」

「賢者を名乗るには僕にはまだ知識も経験も足りていません。なので、しばらくスカイランドを旅してまわって見聞を広めようかと」

 

スカイランドを旅する。今のツバサならキュアウィングとなってどこへでも飛べるだろうし、きっとその旅も実りあるものになるだろう。

 

「へえ、楽しそう!私も一緒に行きたいな!……あ、何なら車出す?なんてね」

「……」

 

これからについて語った後、ツバサは我慢するように俯いてしまう。あげはも、顔を上げて夕暮れのオレンジ色の空を見上げる。

 

「……少年の夢が、全部叶いますように」

「……僕、あげはさんに言ってない夢が1つあるんです」

 

この空に願掛けするあげはに、やがて気持ちに整理がついたのか再び顔を上げるツバサ。

 

「何?」

「あげはさんみたいに、格好いい大人になりたい」

「!」

 

一旦深呼吸を置くと、あげはの目を見ながらはっきりとその言葉を伝えるツバサ。それを聞いたあげはも驚いたように目を大きく見開き、そしてすぐに嬉しそうに笑う。

 

「……僕達、良いコンビでしたよね」

「うん……タイタニックレインボーは、私とツバサ君しかできない、最高で最強の技だった」

「はい!」

「……ツバサ」

 

嬉しそうに笑い合うツバサとあげは。と、隣のエルからツバサに声がかけられる。2人が視線を動かすと、ソラとましろが2人で話をしようとしていた。

 

「……行きましょう、プリンセス」

「うん……」

「じゃあね、近いうちに会いに行くよ」

「会いに……って、まさかヤクモさん」

「ん?」

「……まぁ、敢えて黙っておきますよ」

「じゃあね、あげは、ヤクモ」

 

ソラとましろ、2人だけで話したいこともあるだろうと、先に2人はトンネルへと向かうことにする。その時のヤクモとの話で、ツバサはヤクモがトンネルを自力で開けるようになったことに気付いたようだが、この雰囲気を壊す必要もないと黙っておくことにする。そして2人に手を振りながらツバサ達は一足早くスカイランドへと帰っていく。

 

「……」

 

手を振って見送っていたあげはとヤクモだったが、その姿が見えなくなるとあげはが寂しそうに手を下ろす。そしてソラ達の方を見ると。

 

「……やっぱり、スカイランドに帰るの、明日にしない……?」

 

ましろは名残惜しそうにソラに言う。ソラとしても、それが魅力的な提案なのは間違いない。明日にすれば今晩は一緒に居られるのだから。しかし、それはできないとお互いわかっていたし、何よりツバサとエルはもう帰ったのに自分だけが残る、なんてこともできないだろうと、惜しそうに苦笑する。

 

「明日お休みだから雲パン焼くよ!ね?皆で食べようよ、ヤクモ君とも一緒にさ……それが無理ならこれから一緒に夜ご飯食べて……」

「ましろさん」

「……変、だよね」

 

どうにか、ソラを引き留めたくて仕方ないましろ。しかしソラに名前を呼ばれてバツが悪そうに視線を逸らす。

 

「わかってるよ……住む世界が変わるだけ……トンネルを使えばいつでも会える……それに、どんなに離れていたって……う……」

 

頭では理解しているつもりだった。しかし、友達と、ソラと別れるのはとても寂しく、悲しい。遂に我慢できず、泣き出してしまうましろに、ソラは優しく声をかける。

 

「どんなに離れていたって、私達はプリキュアです」

「……うん」

 

涙が止まらず、泣き続けるましろに、ソラは手を差し出す。

 

「これまで、何回手を繋いだか覚えていますか?」

 

そんなこと、覚えているわけがない。ましろは泣いている顔を両手で抑えながら首を横に振る。当然だろう、一々そんなことを記憶している人間なんていない。

 

「私のヒーロー手帳によると、なんと142回!……なんてこれは冗談ですけど」

「ふ、ふふ……」

 

さすがにヒーロー手帳にも一々手を繋いだことまでは書いていないし、ソラだって覚えてはいない。だが、それぐらいはましろと手を繋いできたとは思うのだろう。それが多いか少ないかはわからないが、それだけの回数、手を合わせてきたのだと誇るように笑う。ましろも、そんなソラの冗談に嬉しそうに、涙を拭って笑う。本当にそれぐらい手を繋いでたらいいな、そう考えながら。

 

「私、ましろさんの笑顔が大好きです。だから、笑ってお別れしましょう」

「……やっぱり、ソラちゃんはヒーローだよ。本当に強くて、格好いい……」

「そうじゃないって……知ってるくせに」

 

笑いながらも、2人は涙は止まらなかった。だが、それでいい。本当の気持ちを言って、泣いて駄々を捏ねても、その後なら本当に笑ってお別れができるのだから。そして手を改めて繋ぎ、笑い合う。そして涙も収まった頃、ソラは皆に会釈をして、ヤクモと握手をする。

 

「じゃあ、また今度」

「うん、またね」

 

既に別れは済ませている2人の間にこれ以上の言葉はいらない。最後の挨拶を終えたソラもスカイランドへと戻っていき、トンネルが消えていく。

 

「……皆、行っちゃったね。ヤクモ君、今日泊まってかない?」

「うん、そうさせてもらおうかな」

 

一気に3人が減ると、わかってはいたがやはり寂しい。そんな思いもあってかヤクモに泊まっていくことを打診する。それを理解したのかヤクモも、あげはからの申し出を受けることにする。そんな2人の話を聞きながら、ましろは空を見上げるのだった。こうして、自分達の長い冒険が終わったのだと。そんなことを考えながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。朝日が差し込む部屋の窓を開けたましろが伸びをする。視線を下に向けると、そこにはヤクモがもう起きていたようで庭で日差しを浴びていた。

 

「うーん……あ、ヤクモ君、おはよう」

「おはようましろさん」

 

元気に挨拶をするましろの姿を見て、少し安心した様子で体を伸ばすヤクモ。そこから視線を外して机の上を見ると、そこには6枚の絵が置いてあった。それに描かれていたのはましろ達6人の絵。ましろは、昨日の夜に新たな絵本を作ることを決めていた。

 

(空から降りて来た不思議な赤ちゃんとその子を守るヒーローガールと、そして普通過ぎる女の子のお話……その仲間は空を飛ぶ勇敢な男の子と優しくて格好いいお姉さんと、ヒーローガールと仲良しになる優しくて、誰にでも手を差し伸べる男の子)

 

それは、自分達のお話だった。プリキュアの戦いを絵本にしていきたい、そう思ったのだ。新たな絵本作りにましろがやる気を漲らせていると、

 

「……あ!」

 

ヤクモの声が聞こえてくる。何かを見つけたのかとましろが庭の方を見ると、なんとそこにはトンネルが開かれていた。そしてトンネルの中から、ソラ達が現れると、まずヤクモの姿を見つける。

 

「ヤクモさん!おはようございます!あ、ましろさんもおはようございます!」

「ソラさん、皆!おはよう、早速来てくれたんだ」

「ど、どういうこと!?というかヤクモ君もなんで平然としてるの!?」

「あはは……昨日大げさに別れたばかりだからちょっと恥ずかしいけど……でも、ヤクモさんが平然としているのはヤクモさんがトンネルを作れますからでしょうね」

「初耳なんだけど!?」

 

ミラーパッドを使ってトンネルを開くしか手段がないからこそ、少し遠くに行ってしまったとましろは考えてしまったようだが、ヤクモがトンネルを作れたのであれば平然としているのも納得だ。

 

「でも、どうしてこんな朝から?」

「遊びに来ました!」

「でも、私お腹空いちゃった。まだ朝ご飯食べてないの……あ」

「プリンセス!?」

 

と、エルの姿が空腹によるものか赤ん坊に戻ってしまう。それを見たツバサも鳥になってエルと同じ目線になって彼女に駆け寄る。

 

「ヤクモさんもいるってことは、一緒に朝ご飯が食べられますね」

「あはは、そうだね。今日は休みだしこっちから行こうかなって考えてたけど、同じこと考えてたのかな」

「ふふ、そうですね」

「……くすっ」

 

いつもと変わらない賑やかな様子を見て、ましろの顔からも笑みが零れる。と、ソラ達の話し声が聞こえてきたのだろう、勢いよく階段を駆け上ったあげはがましろの部屋の扉を開ける。

 

「ましろん!」

「うん!」

 

ましろとあげはもすぐに靴を履いて庭へと飛び出し、ソラ達の下へ向かう。プリキュアとして戦ってきた冒険は確かに終わった。しかし、まだまだ6人の物語は、この空のように、無限に広がっていくのだと。わくわくする思いを胸に秘めながら、6人は再会を喜び合うのだった。

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