曇り空の夜のプリキュア   作:popoponpon

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第17話 歓迎パーティ

「……」

 

夜の自室。寝間着姿のましろは両親へ向けた手紙を書いていた。その内容は、ソラやヤクモ、そして新たに仲間になったツバサのこと。片やヒーローになるため、片や空を飛べるようになるため、毎日努力を続ける2人の姿は、ましろにとって色々な意味で眩しかった。

 

「2人とも、凄いなぁ……でも、私には……」

 

その理由は、ましろには夢らしい夢がないということ。2人のように目指そうといえるものもない自分は未来に向かってどうすればいいのか。クラスメイトの中には将来を決めている人だってたくさんいるのに。

 

「そういえば、ヤクモ君も将来の夢……あるのかな?」

 

ぽつりと呟くましろ。一緒にプリキュアとして戦うようになり、ヤクモについてもただのクラスメイトだった時期よりも知ることができ、仲良くもなった。最初は会話するのもヤクモの方から壁を作られてたところはあるが。しかし今では主にヤクモの方が受け身になることが多いが会話も普通にできるようになった。そんなヤクモも、ツバサが新たに仲間になってからは、同じ男の子が仲間に加わったからか以前よりも精神的に余裕が出てきているように見える。それはツバサも同様なようで、ソラやましろと話しているときと比べると心なしかヤクモに対してはいい意味で遠慮がないようにも見える。だが、それでもやはりわからないことはあるようで。

 

「……ヤクモ君の夢、かぁ」

 

1年生の時、そういえば皆の夢について語るみたいな授業があったのを思い出す。さすがに1年も前の話なので朧げな記憶なのだが、自分は今と同じく明確な夢がなかったため、あまりいい答えはできていなかった気がする。ではヤクモはどうだったのか。確か、

 

「……夢はないから今できることを頑張りたい、って言ってたっけ」

 

そんなことを言っていた気がする。そうだった、やりたいことはないけど、今を一生懸命頑張りたい、そんな言葉を聞いて自分もそういう考え方もあるんだと思った記憶がある。そう考えると、

 

「今を一生懸命……プリキュアを頑張る……ちゃんと、できてるんだね」

 

ヤクモは当時の言葉通りのことを実践できているといえるだろう。自分も、まずは両親への手紙を書き終えるところから頑張ろうとペンを動かすましろ。そして数分後、手紙を書き終えたましろは明日が土曜日なのをカレンダーを見て確認する。

 

「……明日は休み……そういえば」

 

プリキュアも四人になってそれなりの大所帯になってきた。特にツバサがプリキュアになったことをエルもヤクモも喜んでいるようだし、ここらで一つ、祝い事を企画するのもいい気がする。

 

「……うん、それいいかも!よーし、早速明日ソラちゃんに言おう!」

 

善は急げ。明日が来るのが待ち遠しいといった様子でましろはベッドへと潜り込むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ツバサ君の歓迎パーティ!?」

 

翌日。ましろからの提案を聞き、嬉しそうな表情を見せるソラ。

 

「うん、新しくプリキュアになったツバサ君と、これから一緒に頑張っていこうっていうパーティをしたいなって」

「……え?僕のですか?」

「うわあ!?」

 

突然後ろから聞こえてきたツバサの声に驚いて立ち上がるましろ。リビングの隅に置いてある巣箱と止まり木。その中にツバサがいたのだ。

 

「つ、ツバサ君……そ、そこにいたの……?」

「一応ここが僕の寝室なので……」

 

驚きの表情を見せるましろに、人の姿に変身しながら答えるツバサ。ソラはプニバード族のツバサなら普段はそこにいるとわかっていたのか、ましろのように驚きはしていないようであり、これがスカイランドとソラシド市の人の差なんだなぁと内心感じながら苦笑する。

 

「あ、はは……ごめんね、なんかちょっと慣れなくて」

「いえ……それよりも、そこまで気を使ってもらわなくても僕はいいですよ?そもそも僕もましろさんやヨヨさんにお世話になっているような状態なのに……」

「気を使ってなんていません!」

 

当のツバサはというと、歓迎パーティをしてもらうほど気を使わせていることに申し訳なさを感じているようだった。しかし、ソラが言っているように2人とも気を使っているつもりは全然なく。

 

「やりたいです!歓迎パーティ!」

「えるぅ!」

「エルちゃんも賛成みたいですよ」

「ツバサ君、ダメかな?」

 

ソラの言葉に同意するようにエルも喜びの声を上げる。エルも歓迎パーティをやりたがっていると聞いたツバサは少し照れながら答える。

 

「いや……ダメってわけでは……嬉しいです」

「では開催決定ですね!」

「うん!」

 

ツバサからの賛成を得たことで歓迎パーティの開催が決定し、喜び合う女性陣。早速準備開始だと言わんばかりに2人は立ち上がる。

 

「じゃあ準備に取り掛かろう!」

「僕も手伝います」

「「……え?」」

 

と、ここでツバサの申し出に驚く2人。今回、ツバサは招かれる側なのにその相手に準備をさせてしまっていいのだろうか。

 

「ツバサ君の歓迎パーティなんですから……ドーンと構えていてください!」

「でも……なんだかじっとしてられないっていうか……申し訳なくて」

 

やはりツバサに準備をさせてしまうのはちょっと違う気がする。そう思ったのか、ツバサに待っていてほしいというソラ。しかし、ツバサの方も、このままではパーティが開催されるまで手持無沙汰になってしまうのも事実。その間が耐えられないのもあるのだろう。そんな気持ちを察したのか、ましろはツバサにも手伝ってもらうことにする。

 

「ソラちゃん、手伝ってもらおうよ。ツバサ君の希望を聞いて準備をしたら、一番喜んでもらえるパーティにできるかも!」

「確かに!」

 

ましろの言葉に納得したように頷くソラ。

 

「じゃあ、ヤクモ君も呼んで4人で準備をしないとね!」

「はい!そうで……あー!?」

 

後はヤクモも呼んで全員で準備を始めよう。同じ男子のヤクモも準備に入れば、ツバサもより喜びそうなパーティにできるだろう。そんな期待が膨れ上がってる中、ソラは大事なことに気付いたのか思わず大声を上げてしまう。突然の声に驚きながらソラを見る3人。あわあわと、体を震わせながらソラはショックを受けているような表情を浮かべる。

 

「ど、どうしたのソラちゃん!?」

「何かあったんですか?」

「えるぅ?」

「……私、とんでもないことに気付いてしまいました……」

 

3人が心配そうにソラを見つめる。一体、ソラは何に気付いてしまったというのか。恐る恐るといった様子で口を開いたソラは、ましろも完全に失念していたある事実を口にする。

 

「私たち、ヤクモさんの歓迎パーティをやっていません!!」

「……そうだったあああああ!?」

 

驚愕の事実を知らされ、ましろも頭を抱えてしまう。そうである、ツバサの前にプリキュアになったヤクモに関しては一切歓迎パーティをしておらず、しかもそのことに今まで気づいていなかった。

 

「え、やってなかったんです?てっきり毎度やってるのかと」

「「はうっ」」

 

恒例行事だと思っていたのだろうか、ツバサの口から漏れた特に考えも何もなく出てきた素直な感想がソラとましろに突き刺さる。まさかこのまま、ヤクモを無視してツバサの歓迎パーティを行うわけにもいかないだろう。となればどうするか。

 

「……こうなったら……やることは1つしかありません!」

「うん、そうだね……!」

「「ヤクモ君(さん)とツバサ君の歓迎パーティ……!」」

「……あ、そういう方向性になるんですね」

 

名案と言わんばかりに顔を見合わせ、頷き合う2人。その顔を見ながら、ツバサは苦笑するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

突然ソラから電話を受け、「大変なので今すぐ来てください!」と言われ、急いで虹ヶ丘家に向かったヤクモ。今か今かとヤクモが来るのを家の前で待っていたソラに連れられるようにリビングに引っ張られる。そしてそこでましろ達から告げられたのは、ヤクモとツバサの歓迎会をするということだった。

 

「え?大変って……」

「はい!一大事です!」

 

真剣そのものといった表情で力強く頷くソラ。どうやら大変は大変でも、危険なことが起こっているというわけではないようだった。そこは安心したヤクモはなんで自分とヤクモの歓迎会が大変なことなのかと次に首を傾げることになる。

 

「一大事って……何か足りないものでもあるの?というか……俺も?」

「うん……私たち、ヤクモ君がプリキュアになった時も歓迎会とかやれてなかったでしょ?だから、せっかくだし一緒にやろうって思って」

「本当ならあの時すぐにやらなきゃいけないことだったのに……迂闊でした……!」

 

ましろの話してる内容と悔しがるソラを見ながら、ソラにとって何が大変なのかその意味をやっと理解するヤクモ。それをやるにはもうタイミングを逃しているんじゃないかとも思うが、メインはツバサの歓迎会の方なのだろう。それに関連付けてのことなのだろう。

 

「迂闊って、そんな悔しがらなくても……」

「そうですよ」

「あはは……ま、まぁここまでオーバーではないけど……でも、こういうのって大事だと思うんだ。結束も強まるし」

「そうだね……うん、わかった。それじゃ……俺は時間まで待っていればいいのかな?」

 

それに、プリキュア達の結束を深めるためにもこういう機会はヤクモとしても良いと思ったのだろう、それに皆が楽しめるならそれが良いことだ。しかし、歓迎会をしてくれるということは、自分はその時間まで手持無沙汰になってしまうのではないか。そう考えたヤクモに、ソラが持ち掛ける。

 

「いえ、ヤクモさんも一緒に準備をしましょう!」

「え、いいの?いやまぁ全然協力はするけど……普通に内容知っちゃうのって変じゃない?」

「うーん、でもそこは問題ないかな?そこまで凝った催しとかするわけじゃないし……一緒に飾りつけして、美味しいものを食べようって感じだから」

「なるほど……」

 

確かにそれならばネタバレなどを気にするようなことでもないのかもしれないし、ソラや皆と一緒に準備をするというのも楽しそうだ。

 

「うん、俺も協力するよ」

「はい!決定ですね!」

「それじゃ、早速準備開始だよ!」

「「おー!!」」

 

女性陣の元気な声と共に、飾りつけやレイアウトなどを一緒に考え始めることにする。4人で机を囲み、スケッチブックに部屋の内装についてスケッチを始めるツバサ。そして一通り描けたのだろう、それを3人に見せる。

 

「わぁ!」

「凄いです!」

「おお……絵心あるなぁ……」

 

部屋の風景画はもちろん、その中に描かれたヤクモ、ソラ、ましろの3人の姿もとても上手に描けており、その絵心の高さに感心するヤクモ。内装についても飛行機を中心としたかっこいいデザインに仕上がっており、ソラとましろも目を輝かせて見入っていた。

 

「あはは……これでもコンクールで入賞したりしてるんで人並みにはあると思ってますよ。飛行機はスケッチも時々やってますし……でも……」

「どうしたの?」

「これだと……なんか僕の要望ばっかり通ってるって感じがして……」

 

少し悩みながらヤクモを見るツバサ。そう言われてスケッチブックを見ると、飛行機などの飾りつけの中に不自然に隙間や空間が空いているスペースがあり、そこにヤクモに関連した何かを入れたいということなのだろう。しかし、ツバサにとっての航空力学、すなわち飛行機のようなものはヤクモにはあるのだろうか。

 

「確かに……何かこういう飾りしたいっていうのある?」

「そう言われてもな……それに、飛行機と合わせられる飾りか……」

「そういうのは一旦置いといて、単純にヤクモ君の好きなものとかでいいんじゃないかな」

「好きなものか……でもこういうのは合わせたいしな……」

 

ましろに問われ、考え込むヤクモ。自分の好きなものの飾りと言われてもそうは出てこない。やはりツバサが出した飛行機に合わせたものを出したいし、その方がヤクモ自身見栄えもよくなると考えてるのだが、ぱっと出てくるほど都合のいいものではない。と、ここで妙案を思いついたと言わんばかりにソラが言う。

 

「そうです!ならヤクモさんらしい飾りつけで、雲とかどうでしょう!」

「雲……俺らしいかな?いや……クモではあるか……」

「と、トリプルミーニング……」

 

確かに飛行機と合わせて飛んでいるという感じを演出できるかもしれない。そういう意味では確かに妙案だと言えるだろう。しかしヤクモらしい飾りつけが雲、と言われると確かに納得もできてしまう。何せヤ「クモ」な上にキュア「クラウド」なのだからまごうことなき雲である。

 

「はい!やっぱりヤクモさんに似合うと思います!」

「いやまぁ本人だからね……」

「確かに雲はありですね……ついでに背景もこうやって青くして青空っぽくして……」

「太陽とかがあるとそれっぽいかな?」

「そうですね、それでいきましょう」

 

雲を入れてみたらどうかというアドバイスを受けてツバサがどんどん描き加えていく。結果、青空を飛ぶ飛行機といったスケッチになり、こうしてみると中々良い仕上がりになっているように見える。

 

「こんな感じでどうでしょうか」

「「おお~!」」

 

完成図を見てソラとましろが感動の声を上げる。この空間の中で食事ができたらどれほど楽しいか。ひとまずデザインの方が決まったところで、次は何を食べるかを考えることにする。

 

「それじゃあ、次は料理の方を決めようっか。2人とも食べたいものとかある?」

「食べたいもの、か……それを全員でってなると……何があるんだろうな……」

 

再びヤクモは考え込んでしまう。好きなものを挙げてもよかった飾りつけとは異なり、料理に関しては1人だけで食べるものを挙げるわけにもいかない。加えて祝い事の場で普通のご飯みたいなラインナップを挙げるのもあまりよくないだろう。となればお菓子とかスイーツとかになるのだが、

 

「スイーツ系あんまり詳しくないんだよな……まああんまり手間かけるのも悪いし……ツバサはなんかある?」

「そうですね……やっぱり、パーティといえばヤーキターイですかね」

「「……ヤーキターイ?」」

「おお、あのヤーキターイですか!」

 

出てきた聞きなれない言葉にましろとヤクモが疑問を浮かべる。ソラの方はピンと来ている辺り、これはこの世界のではなくスカイランドの食べ物なのだろう。

 

「ソラちゃん知ってるの?」

「はい、確かプニバード族がお祝い事の時に食べる料理ですね。ただ、私も名前ぐらいで詳しくは……」

「外はふわふわ、中はしっとり甘くて……凄く美味しいんですよ!」

 

ヤーキターイという料理のことを思い出したのだろう。うっとりとしながらその料理について語るツバサ。しかしその食感と味だけ語られても、ヤクモとましろにはあまりピンとこない。

 

「うーん……全体像が分からないから何とも……」

「だね……」

「最後に食べたのはここに来る少し前だったんですよ。僕の絵がコンクールに入選して、父さんと母さんが凄く喜んでくれて!あの時皆で食べたヤーキターイはとっても美味しかったなぁ……」

 

最後に食べた時の事を思い出したのだろう。一年以上経ってもなお記憶に残る味とはどんなものなのか、3人も興味が湧いてくる。

 

「そういえばツバサ君はずっとこの世界にいるんですよね」

「……あ、別にホームシックってわけじゃないですよ。両親とは、ヨヨさんのミラーパッドで連絡も取れてますし」

「……ねぇ、作ってみようよヤーキターイ!」

「え?」

 

そのような料理ならぜひ作ってみようと提案するましろ。しかし、ツバサはヤーキターイが作れるわけがないと考えていたのだろう。驚きの声を上げる。

 

「でもどうやって?僕も作り方はわからないし、何よりここではスカイランドの材料がありませんし」

「それは……えっと……」

 

そう、ツバサが無理だと考えていた理由はこの2つであった。その中でも大前提として作り方をツバサが知らないというのが大きかった。それに材料についても問題がある。ツバサが言ったように、そのヤーキターイを作るための食材は全てスカイランドにあるのだ。スカイランドからものがこちらに落ちてくることがあるといっても、まさか食べ物が落ちてくるなどということはないだろう。となると、作るのは一見絶望的なようにも見える。

 

「……でもなーんか、今の食感とかだけ聞いてるとたい焼きとか今川焼っぽいんだよな……」

「そうだよ!もし粉ものだったら小麦粉とかで代用できないかな?どう?」

「え?確かにヤーキターイは粉ものですけど……」

「じゃあ何とかなるかもしれない!おばあちゃんに聞いてみよう!」

 

ヤクモがぽろっとこぼした言葉を聞き、ましろももしかしたらいけるかもしれないと考える。同じ粉ものなら向こうで言うヤーキターイに近い食べ物がこの世界にあればそれが糸口になるかもしれない。その事を確かめるべく、4人はヨヨに聞いてみることにするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが、ヤーキターイね」

 

ミラーパッドを使い、ヤーキターイについて調べてくれたヨヨ。そのような使い方もこのミラーパッドは使えるのかとヤクモが驚いていると、ヨヨはその画像を見せてくれる。

 

「「……ん?」」

「魚みたいな形をしていますね……こんな料理初めて見ました!」

「スカイランドでもプニバード族だけに伝わる特別な料理ですからね」

 

実際にヤーキターイを見て、そのユニークな姿に面白そうな声を上げるソラ。ツバサは懐かしむようにその画像を見ていたが、ヤクモとましろはぽかんと驚いてヤーキターイを見ていた。その理由は、

 

「「……これってたい焼きだよね……」」

「「え?」」

 

突然の2人の呟きに目を丸くするソラとツバサ。ヤクモはたい焼きの画像を調べて2人に見せてみる。確かに、モデルとなっている魚は違うが、見た目に関してはほぼほぼたい焼きとヤーキターイは同一に近い存在といえる。

 

「た、確かにヤーキターイに似ている……!」

「でも、材料はスカイランドのものを使うからちょっと味が違うわ」

「そっか……でも、たい焼きに似てるなら何とかなるかも!一回たい焼きを作ってみて、ツバサ君に食べてもらってそこから近づけてみよう!」

「はい!」

 

場所をキッチンに移動し、早速たい焼き作りを始める4人。とはいえたい焼きの作り方を知っているのはヤクモとましろだけのため、最初は2人が作ることになる。

 

「ヤクモさん、料理上手ですね……」

「といっても生地作ったのましろさんだし……俺だったらホットケーキミックスで多分終わらせて粉の配分とか全然気にしないだろうから……俺がやったの型に流し込んで焼いてるところだけだし」

「でも、それも普通に美味しいよ?ホットケーキミックスだったら失敗もないからね」

 

ただホットケーキミックスだと微調整とかがやりにくいだろうから……と付け加えるましろ。そして完成したたい焼きをホットサンドメーカーから取り出す。

 

「確かに見た目はヤーキターイとほとんど同じですね……」

「あとは味ですね」

「ツバサ君、食べてみて」

 

2人の言葉に頷き、たい焼きを手に取るツバサ。ヤーキターイに似ているというたい焼き。一体どんな味がするのだろうか。興味半分、不安半分といった様子でたい焼きを手に取り、食べようとする。と、食べづらさを感じてしまい顔を上げると、ましろとソラがじっとツバサを見ていた。

 

「……」

 

感想を求められているのだからそれはそうなのだろうが、こうして見られると嫌でも緊張してしまう。しかし食べなければ始まらないと意を決してたい焼きを口に入れる。

 

「……美味しいです!でも……ヤーキターイとはちょっと……」

「あ……そっか……」

「やっぱり違いましたか……」

 

そして出てきたのは美味しいという感想。しかしそれはたい焼きとして美味しいというだけであって今回求めているヤーキターイの味ではない。そのことを残念がるソラとましろに気付き、ツバサは慌てて訂正する。

 

「ご、ごめんなさい!でも、すっごく美味しかったです!これで十分ですよ!」

「じゃあ、あんこ以外にもカスタードとか抹茶とかも……」

「え?そういうのも……」

「いや!ここはもっとヤーキターイを求めるべきだよ!」

「その通りです!ツバサ君、このたい焼きとヤーキターイの違いを教えてください!そこを直していけばきっと、ヤーキターイになれるはずです!」

 

だが、ヤーキターイを作りたいという欲求が女性陣にはあるのか、火がついてしまったようである。たい焼きとヤーキターイの違いを求められたツバサは少し考えながら自分が感じた違いについて口にしていく。

 

「えっと……生地はほとんど同じなんですけど餡が違う感じが……」

「じゃあ、いろんなものを混ぜたりして試してみようっか!」

「はい!私も手伝います!」

 

ツバサが指摘したのは中身。とはいえ中身の配合などを考えれば無数に種類が出てくるだろう。その中からツバサの知る味に近づけていくのは簡単なことではない。だが障害が大きければ大きいほど燃えるものだと言わんばかりに次のヤーキターイ作りのために2人は動き出す。

 

「冷蔵庫にあるやつは好きに使っていいから遠慮しないで!ヤクモ君も!」

「他人の家の冷蔵庫を開けるのきついって……」

「ヤクモさんも一緒に作りましょう!色々ありますよ!ヤクモさんの食べたいヤーキターイを作りましょう!」

「その言い方は趣旨がずれてない?」

 

ソラとましろは冷蔵庫の中からカボチャだのカレーだのピーナッツだの様々な材料を取り出していく。その量を見ながらヤクモはこれを全部やるのかと女子の熱量に目を丸くする。

 

「凄い量……でも、この中にヤーキターイがあったらいいね」

「はい!僕たちも行きましょう」

 

ツバサの言葉に頷くと、2人も女子の待つキッチンの方へと向かうのだった。

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