曇り空の夜のプリキュア   作:popoponpon

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第22話 気付くこと

 

予想以上に長い休憩を挟んでしまったヤクモとソラは頂上を目指して再び出発していた。

 

「「……」」

 

会話はないが、ヤクモの表情は山登りを始めた時と比べ晴れ晴れとしていた。そんなヤクモの横顔をちらと見ると、ソラも嬉しくなってしまう。

 

「……あれ?」

 

このままずっと歩いていたい、なんて考え始めた矢先、ヤクモがあるものに気付く。ソラも道の先を見てみると、そこは分かれ道となっており、何故かましろとツバサがいた。

 

「……あ、ソラちゃん!ヤクモ君!」

「ましろさんとツバサ君です!でも、どうしてここに?」

 

2人の下に駆け寄り、首を傾げるソラ。ヤクモが分かれ道を見ると、片方は麓の方まで伸びる道であることが確認できた。どうやらましろ達の通ったルートとヤクモとソラが通ったルートはこのポイントで合流するようである。

 

「ここで合流するみたいだね」

「そのようですね……あれ?あげはさんとエルちゃんは?」

 

再会を喜ぼうとするソラだったが、ここでこの場にいない人物がいることに気付く。そう、ましろとツバサはあげはとエルと共に登山をしていたはずだが、なぜかこの場にいるのは2人だけ。ではあげは達はどこにいるのだろうか。

 

「……それが……」

 

バツが悪そうに顔を背けるツバサ、その姿を見て、どうしたものかと困り顔のましろ。そんな2人の姿を見て、ヤクモとソラは顔を見合わせる。

 

「えっとね……」

 

話しにくそうにするツバサに代わり、ましろが何があったのかを話し始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

時は遡り、緩やかな道を進んでいくツバサ達。ヤクモとソラがハードな道の方を選択したことで、代わりにヤクモが背負っていた荷物をツバサが背負うことになったのだが。彼らの前に巨大な看板が見えてくる。

 

「これは……」

「謎だね」

 

それにはこの先に何があるのかが暗号として書かれており、右下に動物が描かれている。その動物を見たましろはそれがヒントだと理解し、もう一度文章を見る。

 

「これって……」

「むむむ……」

「えるぅ~!」

「……おむつかな?」

 

と、ここでエルが泣き出してしまう。彼女の泣いている理由はおむつではないかと考えたあげはが視線を動かすと休憩所の小屋が目に入る。

 

「あそこならおむつ取り換えられそう!少年、ちょっと荷物もらっていいかな?」

「あ、はい」

 

ツバサの背負っているリュックを受け取り、休憩所へ向かおうとするあげは。と、ここであることに気付いたのかましろに振り向く。

 

「ごめんましろん、おむつどこにしまってるかわからないから教えてもらっていい?」

「わかった、ごめんねツバサ君、すぐ戻るから」

 

あげはと一緒に休憩所に入っていくましろ。ツバサは視線を看板に向け、謎解きをするべく頭をフル回転させる。

 

(この文章……やたらと「た」が入ってるな……それにここだけ文字が赤い……右下の動物はヒントって書かれてるけど……こんなのスカイランドにいないからこの世界の動物なんだろうけど全然わからない……でも、文字だけ赤ってことは、もしかしたらこれを飛ばしたら……あ!)

 

そしてついに正解に辿り着く。この時はまだ知らなかったがヒントとして描かれていた動物は狸であり、たを抜いて文章を読めば正解がわかるという内容になっていたのだ。

 

「わかりました!この先にあるのは……」

「アスレチック、だよね?」

「え?」

 

突然聞こえてきたあげはの声にツバサが驚いて振り向く。おむつ替えを終えて戻ってきたのだろうが、ツバサが延々悩んでいた問題の答えをさらっと答えてのけるあげは。ヒントを見れば一目でわかるのは当然なのだが、ツバサとしてはそれよりも言いたいことがあった。

 

「あげはさん!?わかってたんですか!」

「うん、休憩所に向かう途中で閃いちゃった。ましろんはどうだった?」

「あ、確かにた抜きの文章になってるね。やっぱり狸で間違いなかったんだね……」

 

よく看板を見る前に離れたせいかまだ文章全体を確認できていなかったましろは問題の答えに辿り着けていなかったようだが、あげははツバサより前に気付いていたようだ。そんな簡単に答えが出るなら自分が悩んでた時間は一体……そんな脱力感を思わず感じるツバサ。

 

「……わかってたなら早く言ってください!」

「ご、ごめんごめん、でも問題を解くのも楽しいでしょ?」

「それは……そうかもしれませんけど……」

 

とはいえ、問題を自力で解けたことに対する達成感は確かにあったし嬉しかった。そこは間違いない。なんか言いくるめられているような気がしてもやもやするが、そんなツバサの目の前に問題の答えであるアスレチックが見えてくる。

 

「……え、アスレチックってこんな感じなの?」

 

アスレチックといっても公園にあるような優しいものだろうと考えていたましろの目の前に飛び込んできたのは、あげはの身長より高いロープが垂らされたボルダリングのような壁。その先を見てみると、その手の体力自慢とかが挑むような番組に出てきそうなアスレチックや障害物をマイルドにしたようなものがちらほらと見えている。

 

「ましろん、やってみる?」

「無理無理!普通にバテちゃうよ!」

「じゃあ少年!アスレチックをクリアすれば、道は開けるよ!」

「は、はい!」

 

挑戦前からましろがリタイアし、あげはもエルの面倒を見ているとなれば当然ツバサがやるしかない。しかしアスレチックの内容はツバサが思っているよりもかなりハードなもの。何せ、一部の障害物は挑戦する前に必ず命綱を付けることを義務付けているようなものだ。危うく落ちかけたり、落水しかけたりと、遠くからそれを見ていたましろが、

 

(これ一般向けに出すものかな!?)

 

と、思わずツッコミを入れてしまうレベルの過酷さであった。それでも死に物狂いでゴールまでたどり着き、呼吸を荒くしながらしんどそうに肩を上下させているツバサにましろがリュックの中からペットボトルを取り出す。

 

「お疲れ様!」

「頑張ったねツバサ君……大丈夫?」

「は、はい……ありがとうございますましろさん……って、え?なんで皆ここに?」

「そりゃ、回り込んできたからね」

 

あげはの言葉に、飲み物を口に付けていたツバサの動きが止まる。そしてあげは達が通ってきた方を見てみると、確かにアスレチックを迂回するような道があった。

 

「……アスレチック関係ないじゃないですか!!」

「あはは……さぁ、次行こう次!」

「えるぅ!」

 

ご機嫌なエルちゃんのやる気に溢れた声が聞こえてくる。不服そうにしながらも、エルが喜んでいる以上、事を荒げたくないと渋々あげはから再び荷物を受け取り、進軍を再開する一行。と、先頭を歩いていたあげはの足が止まり、新たな看板と問題が目に入る。

 

「えーと、今度は何々……?隠れている綺麗なものは?」

 

何かをこの周辺に隠しているようだが、それは何なのか。3人が周囲の花畑を見渡していると、あげはの視界にロープウェイが入ってくる。

 

「ロープウェイ……成程……」

「あげはさん?」

「あれ乗ろう!」

「は!?いや、そっちはコースから外れちゃいますよ!」

「あげはちゃん、何かわかったの?」

「いいからいいから!ほら、ましろんと少年も!」

 

2人の言葉には深く答えず、自分についてくるようにと言うあげは。あげはが何かに気付いたことを察知し、ましろはその後を追おうとするのだが、

 

「もういいです!!」

「つ、ツバサ君?」

 

遂に限界を迎えたのか、ツバサが大声を上げる。

 

「ん?」

「僕はこっちを探します!!」

 

もうあげはにはついていけない、そういわんばかりにあげはが向かった方とは逆のルートを進み始めるツバサ。

 

「あ、ツバサ君!?」

「……あらら、嫌われちゃったかな?」

「あげはちゃんも、ど、どうするの?」

 

あげはに背を向け歩き出したツバサと、やらかしちゃったかなと頭を掻くあげはを交互に慌てて見るましろ。

 

「うーん……もうちょっとちゃんと話した方がよかったかな?」

「……」

 

少し申し訳なさそうに呟くあげはの声を聞いたましろは、ツバサが進んだ道を見る。

 

「あげはちゃん、私ツバサ君を追うね」

「ましろん……」

「大丈夫!きっとあげはちゃんが何をしようとしてたのか、わかってもらえると思うから!」

 

そう言い、あげはに笑いかけるましろ。その顔を見たあげはは、ましろに任せればきっと大丈夫だと思ったのだろう、満面の笑みで頷く。

 

「うん、お願いましろん」

「じゃあ行ってくるね!」

 

そう言い、ましろも速足でツバサの後を追う。そしてツバサと合流したところでタイミングが重なり、ソラとヤクモとも合流することになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして合流地点の近くにあった休憩所に腰掛けながら、ましろから経緯を聞いたソラとヤクモは、困ったように顔を見合わせる。ツバサ自身、あげはが悪い人ではないし、むしろいい人だということはわかっている。それでもこういうところはどうかと思うところがやはりあるようで、

 

「ああいう強引な人……僕はちょっと苦手です」

「うーん……」

 

ヤクモにとっては困惑することも少々あれどいい意味で距離感の詰め方が上手な女性という印象があったが、やはり受け取る人によってはあげはの接し方は見方を変えれば強引なようにも見えるかもしれない。

 

「あのね、ツバサ君……」

 

ツバサの言ってることも、心当たりがないというわけではない。しかし、あげはもあげはなりにツバサと仲良くしたかったのだと理解しているましろは、その誤解を解こうとする。

 

「あげはちゃんはわかってくれると思ってたんだよ。ツバサ君のこと、信じてたから」

「僕のことを?」

 

首を傾げるツバサに頷き返すましろ。

 

「この前、エルちゃんを守った時……カバトンに凄く怒ってたでしょ?」

「それは……あいつがプリンセスを馬鹿にするからですよ」

「あげはちゃんもすっごく怒ってたんだよ」

「え……」

 

思い出すのは円盤型ランボーグとの戦い。初めて自分がプリキュアに変身した日であり、あの時出会ったあげはは、自分がプリキュアになったことを喜んでいたようにも見えたが、その裏には確かにカバトンへの怒りがあったのだ。そしてそれは、何もあげはに限った話ではない。あの場にいた全員がそうだろう。

 

「ちょっと強引な所もあるけど、エルちゃんを想う気持ちはツバサ君もあげはちゃんも同じだよ」

「あげはさん、そんなツバサ君なら言葉にしなくても気付いてくれると思ったのかもしれませんね」

「言葉にしなくても……」

 

 

ソラに言われ、考え込むツバサを見て、ヤクモもツバサの背中を少しでも後押しできるように自分の意見を口にしていく。

 

「まあ、何でもかんでも無言で気付いてくれ、ってのは難しいと思うけどさ……案外、言葉は少なくても何となく気付けることもあるかもね」

「そうですね」

 

ヤクモの言葉にうんうんと頷くソラ。見れば、ちょっと前とは異なり、ヤクモが憑き物が落ちたような表情をしていることにツバサも気付く。ソラと2人で歩いているときにきっと、何かあったのだろう、彼の悩みを解決するような出来事が。それを見ていると、尚の事このままでいいのかという思いが出てくる。

 

(……あ)

 

ふと、あげはの様子を思い出してあることに気付く。その反応を見て、ましろもツバサがあげはが何かに気付いたことをわかってくれたのだと感じとる。

 

「……ロープウェイの、行き先……」

「ん?」

「もしかしたら、山を登った先に何かあるのかも!僕、山頂へ向かいます!ヤクモさんこれお願いします!」

 

その気付きの正体を確かめるため、ツバサはヤクモに荷物を渡すと、そのまま山頂へ向かって走り出していく。

 

「行っちゃったな……」

「私達も頂上に……でも……」

 

山頂の方を見上げるましろ。その顔にはそこまで体力が持つのかという不安が浮かんでいる。一方ソラは山頂まで歩く気満々といった様子である。とはいえ、

 

「ましろさんはロープウェイで向かった方がいいんじゃないかな。ソラさんもましろさんに付き合ってもらった方がいいと思うんだ」

「え、いいんですか?」

「ツバサ、走って行っちゃったし……俺が追いかけるよ」

「じゃあ、お願いしてもいいかな……」

 

ましろとしても異論はない。山頂に向かうヤクモにツバサを任せ、ましろはソラと共にロープウェイの所に戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして山頂までたどり着いたツバサ。とにかくがむしゃらに全力疾走してしたせいか、アスレチックをクリアした時よりも疲労が溜まっている。膝が重くなってくるが構わず走ってきたツバサを待っていたのは、

 

「頑張ったね、少年!」

「あ、あげはさん……はぁ、はぁ……どうしてここに……」

 

ロープウェイで一足早く山頂についていたあげはだった。息を切らしながら、何故山頂に来たのかと問いかけるツバサに、あげははツバサの後ろを指差す。その手の動きに釣られるようにツバサが後ろを振り向くと、そこには虹色の羽が地面に描かれていた。

 

「あ……虹……?もしかして、あれが謎の答え……?」

 

七色の花畑と道。それらを合わせて山頂から見下ろすと綺麗な虹色の羽になるというのがこの謎の答えだったようだ。

 

「うん、上から見ないとわからないようになってたみたい。本当に綺麗……」

「えるぅ」

 

エルも、いい景色が見れたことにご満悦なようである。しかし、ツバサは少し気になることがあった。

 

「あの……なんで僕が山頂に来るって……」

「……ふふ、ロープウェイから走ってくるのが見えたよ。走るの速いんだね!」

「……え」

 

まさか山頂へ向かってアタックしている姿をばっちり見られていたとは。自分が来ると信じて待っていたとか、そういうものでも何でもないという現実にちょっとだけ期待を抱いてしまったツバサはわなわなと腕を震わせながら抗議する。

 

「わかってたなら先に言ってください!」

「あはは……ちなみに少年の後ろからのんびり歩いてきてるヤクモ君も見えたよ」

「ヤクモさんも……っ?」

 

ふと、話の最中に不快な耳鳴りを感じるツバサ。それはどうやらあげはとエルも同様のようで、その耳鳴りを感じた先、ロープウェイの方角を見る。するとそこから、

 

「ランボーグ!!」

「え!?」

 

ロープウェイのゴンドラが変化したと思われるランボーグが現れる。ランボーグは驚くツバサ達の下に素早く降り立つとそのままエルを抱えているあげはごと連れ去ってしまう。

 

「えるぅ!?」

「しまった!?プリンセス!あげはさん!?」

「アー、テステス……プリンセス、ゲットさせていただきましたぁ!ついでに脇役ガールBもゲットなのねん!……ま、こっちはいらないけど」

 

ランボーグを通してカバトンの声がスピーカーから流れる。まさかこうもすんなりエルをまた捕まえることができたとは。再び巡ってきたチャンスに嬉しそうな声音のカバトンとランボーグを前に、ツバサはミラージュペンを取り出す。

 

「ツバサ!ランボーグが!!」

「ヤクモさん!」

 

そしてランボーグの出現を感知し、急いで山頂まで走ってきたヤクモがツバサの後ろから現れる。走りながら首元からミラージュペンを取り出していたヤクモがツバサとお互いに目配せして頷き合いプリキュアへと変身すると、先陣を切るようにウィングが飛び出す。

 

「ランボーグ!」

 

周囲を飛ぶウィングから目を離さないように視線を動かすランボーグ。攻撃を仕掛けようとするも、ランボーグがあげは達を盾にしてしまうことでその攻撃は中断されてしまう。それによって生まれた隙を利用し、ウィングを攻撃しようとするランボーグ。

 

「はぁ!」

 

しかしその一撃はクラウドによって阻まれる。こちらの攻撃が受け止められるところに関しては予想通り、そういわんばかりにカバトンはランボーグに指示を出す。

 

「ランボーグ!そいつらは置いといてプリンセスを連れて戻ってくるのねん!」

「ランボーグ!」

 

ロープウェイのロープを掴み、滑るように下山していくランボーグ。空からランボーグを追うウィングと、ランボーグが掴んでいない方のロープの上を走って追うクラウド。ウィングはクラウドの近くまで寄ると、苦々しくランボーグを見る。

 

「どうすれば……今なら攻撃する絶好のチャンスですが……ここでもし、プリンセスとあげはさんを離されたら……」

「……いや、逆に……」

「え?」

 

クラウドが呟いた言葉を聞き、困惑するウィング。まさかクラウドは2人を地上へと落とそうと考えているのだろうか。クラウドは少し前に先行しようと手で合図を送り、ロープを蹴ってジャンプし、ランボーグの前の方に出るようにロープに着地し、自分が跳ぶのを見ていたあげはと顔を合わせる。

 

「……うん」

 

あげはも、クラウドの顔を見て何か策があるのだと悟ったのだろう。自分たちのことは気にせずやってほしいと頷く。それを受けてクラウドは、ウィングに言いながら両手をランボーグの方へと向ける。

 

「ウィング、俺達なら2人を助けられる」

「!」

 

その言葉を聞き、ウィングはクラウドが何を使おうとしているのかに気付く。ランボーグの手前、表立った相談は確かにできないが、それでもクラウドの行動とその仕草で狙いを理解する。そしてウィングは改めてあげはの顔を見ると、あげははそれを許可するように頷くのだった。

 

「はい!お願いします!」

「ひろがるクラウドプロテクト!!」

 

そのままランボーグが乗っているロープに飛び乗ると、ランボーグごと包み込むクラウドプロテクトを展開する。その中に閉じ込められたランボーグは一瞬困惑したようにクラウドプロテクトの内部を見ていたが、その雲の壁の中を一つの影が駆け巡っているのが確認できた。

 

「ランボーグッ!?」

 

突然背中に突き刺さるウィングの拳。それに慌てて後ろを振り向いた時には既にウィングは存在せず、再び死角となっている箇所にウィングの攻撃が命中する。

 

「ラ、ラン!?」

「うわ、すっご……」

 

あげはの口から感嘆の声が漏れる。高速で回転するクラウドプロテクト。その回転する雲の動きに乗り、飛行速度を上昇させたウィングがランボーグの反応できない速さで連続攻撃を仕掛けているのだ。そして、

 

「言葉にしなくたって……信じてれば伝わるんだ!」

「ランボーグ!?」

 

遂にウィングの攻撃によってランボーグの手が緩む。自分の拘束が解けかかっていることに気付いたあげはは、

 

「よし!」

 

そう言うと、そのまま手から抜け出すと、そのまま飛び降りてしまう。

 

「!」

 

瞬時にその真下に回り込み、あげはをキャッチするとそのままクラウドプロテクトから脱出するウィング。白雲から飛び出し、あげはとエルの身に怪我がないことを確認してほっと溜息を漏らす。

 

「ナイスキャッチ!ありがと!」

「いくらなんでもあれは無茶しすぎですよ!まさか本当に自分から飛び降りるなんて……」

「あ、はは……でも、ツバサ君達なら作戦に気付いてくれると思ってたから。それに、私も皆のためにできること、やりたかったから」

 

2人を助けるつもりだったがあげはの方から飛び降りるというのは当初の想定にはなかった。とはいえ、それに気付くことができたおかげで大事にはならずに済んだようだ。

 

「全く……とにかく安全な所に移動しますよ!」

 

ランボーグをクラウドに任せるように頷き合うとツバサは一旦山頂の方へと2人を運んでいく。その間、クラウドプロテクトの内部を暴れまわるランボーグを抑え込むクラウド。内部から甲高い音がどんどん鳴り響くも、技を止めることはせず、そのまま維持し続ける。

 

「悪いな……今はもう吹っ切れてんだ。俺にできることぐらい、ちゃんとやらせてもらうさ!」

 

あまりにも技が破れないことに苛立ちを覚えているのか、ランボーグの勢いはどんどん増していく。腕に力を込めるクラウドだが、もう一つ注意しなきゃいけないこともある。それは足元のロープだ。足に入れる力はうまく調節しないといけないのだが、一際大きくランボーグが暴れたことで足がずれてしまう。

 

「うわっ!?」

 

ロープから滑り落ちるクラウド。咄嗟に両ひざを曲げてロープに引っ掛け逆さまになる形でどうにか維持するも、この状態でランボーグを抑えるのは少々厳しいか。そう思われた瞬間だった。

 

「「「クラウド!!」」」

 

下からスカイとプリズムが、そして上からウィングが来てくれたのは。それを確認し、クラウドはクラウドプロテクトを解除する。

 

「皆!!」

「はい!」

 

クラウドプロテクトを解除し、ロープを掴んでぶら下がるとそのまま上へと跳んでもう一度ロープに飛び乗るクラウド。クラウドプロテクトの内部からは息を荒くして疲弊したランボーグが姿を見せるも、その眼前に迫っていたスカイとプリズムのダブルキックを受けて地上へと落下してしまう。

 

「ランボーグ!!」

「今です!ウィング!!」

「はい!」

「こいつを使え、ウィング!ひろがるクラウドプロテクト!!」

 

先程の連携をもう一度行うため、もう一度クラウドプロテクトを展開するクラウド。高速回転し、先端を細くするように調節された白雲の中を光をまとったウィングが突入する。

 

「ひろがるウィングアタック!!」

「スミキッター……」

 

光と雲をまとい、速度を跳ね上げたウィングの一撃が、ランボーグを一撃で浄化する。その光景を見ていたカバトンはランボーグの敗北を受け、またしてもと悔しそうに消えてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あげはさん、エルちゃん、大丈夫ですか?」

 

その後。山頂に向かった4人はあげは達の無事を確認していた。

 

「うん、少年たちが助けてくれたからね」

「それは……」

 

ツバサに感謝するあげは。少し気恥ずかしそうに顔を逸らしたツバサの目の前に山に描かれた七色の羽が広がる。

 

「いい景色ですね」

「うん」

「さっきは急いで山頂に向かってたから余裕なかったけど……こんな感じだったんだ」

 

この景色を前にすれば登山の苦労も報われるといったものだろう。6人は夕暮れの中に広がる綺麗な景色を焼き付けることにするのだった。

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