春とはいえ、夜になるとまだまだ寒さは残る。今日はそんな日であった。
「あー……サムサム……体も心も寒いのねん……」
ライトなどの明かりだけが照らす夜の街。その中にあるビルの屋上で藁を巻いて寒さを凌いでいたカバトンは憂鬱な気持ちになっていた。
「……またプリキュアに負けた……この前も折角プリンセスを手に入れられるはずだったのに……なんでこんなに負け続けるのねん……」
寒さに震えながら、カバトンが考えるのは何故か勝てないプリキュアの存在だ。決してランボーグが劣っているかというとそういうわけではないはず。実際、倒しかけるところまで何回か行ってるし、エルをアンダーグ帝国へと連れていく直前までいったことだってある。しかし最終的にはプリキュアに敗北してしまっている。このような事態がそう何度も許されるわけが当然なく、カバトンの視界が突然歪み、周囲が闇に閉ざされる。
「……ひっ!」
「……カバトン。もはや猶予はないぞ」
冷徹な女性の声。それを耳にしたカバトンは藁をすぐさま捨てて許しを請うべく土下座をする。
「それは!それはよくわかっております!ですが……!」
「役立たずに価値はない」
そんなカバトンの言い訳を一蹴する声。それを聞いたカバトンは、自分がアンダーグ帝国に切り捨てられようとしているということを否が応でも実感せざるを得ない。
「ふ、深く存じ上げております!ですが、ですがこの事実だけは貴女様の耳に入れてほしいのです!」
必死にカバトンは自分の身を守り、汚名返上の機会を得るため、女性に許しを請うように必死に宣言する。当然保身の意味合いもあるだろう。だが、それ以上に納得できないという気持ちと、この情報は大事だという確信がカバトンの中にあった。それを汲んだのだろう、女性は少しの沈黙を経て、カバトンへと語り掛ける。
「よかろう。言うがいい」
「ははっ!」
弁明のチャンスが与えられたことを内心小躍りして喜びながら、カバトンは冷や汗を流しながら慎重に言葉を選んでいく。もしもここで失敗すれば、カバトンは即座に粛清されてしまうだろうからだ。
「プリンセスエルを守る戦士、プリキュア……その中に、おそらくですが……アンダーグ帝国の裏切り者がいます」
「……何?」
女性の声音が変化する。話に食いついた。ならば可能性はある。見えてきた希望を手繰り寄せるように、カバトンは女性への報告を続ける。
「その者は、プリキュアという我らアンダーグ帝国と敵対する存在でありながら、アンダーグエナジーを使用するのです。現にランボーグの召喚も確認しました。心当たりはありませんが……ですがアンダーグエナジーを使用する時点でアンダーグ帝国と通じている可能性は高いかと」
「……」
カバトンの言葉に考え込むかのように沈黙を貫く女性。これは通ったのか、それとも通ってないのか。期待と不安がぐちゃぐちゃに混ざったような祈るような表情のカバトンに、女性がその答えを宣告する。
「……カバトン」
「はい!!」
「ここまでの失態……一時不問とする」
「はは!ありがたき幸せ!!」
首の皮一枚繋がった。その事実だけでも必死に弁明した甲斐があったとカバトンは喜びを露わにする。無論、一時不問としただけのため、まだまだ立場は危ういがチャンスが見えるだけ御の字だろう。だが、不問にされたということは当然何のペナルティもないわけではない。
「……ただし、お前に新たな任務を与えよう」
「ははっ!」
「プリンセスエルを我が元へ連れてくるため、必要とあらばプリキュアを徹底的に叩き潰し、二度と這い上がれぬようにするのならばそれもよかろう。だが、そのアンダーグエナジーを持つプリキュアだけは二度とプリキュアになれぬようにするがいい」
「は、はい!!」
どんな厳しい条件が追加されるかと思ったカバトンだったが、追加された条件はまさかのキュアクラウドが二度と変身できないようにしろという内容。どういう意図があるかはわからないが、あの御方にはきっと大事なことなのだろうと解釈し、追及は行わないこととする。そしてカバトンが意思を示したことで女性の気配が消えていき、景色も元の屋上へと戻っていく。
「……ふぅ……」
ほっと溜息を漏すカバトン。ひとまずは凌げたようだが、こうして直々に警告をされた以上、失敗はもう許されないといっていい。本来の目的はエルを連れてくること。しかし、わざわざ言葉にして言及されたということは、
「プリキュアを全員ぶっ潰し……キュアクラウドを二度とプリキュアにできないように叩きのめす……そしてプリンセスエルを……今度こそ!」
それらすべてをこなせということ。今までの失態のせいで難易度がさらに増してしまった任務を必ず終えるため、カバトンは決死の覚悟を決める。
★
「今日は曇りか……」
曇り空を見て、ヤクモはスマホで今日の天気を調べる。今日は曇りが続くが雨は降らないと判明して小さく頷くと、出かける準備をして一階へと降りると、リビングから外を見つめている父の姿があった。
「……ん?ああヤクモか。出かけるのか?」
「うん、どうしたの」
特に変なところは見えないが外に何かがあったのだろうか。ヤクモにそう問われた父ムラクモは少し笑う。
「いや、何もないんだがな……ちょいと胸騒ぎがしてな」
「ふぅーん……」
「ふーんってお前なぁ……気になったりしないのか?」
「いやあんま……」
息子のどうでもよさそうな反応を見て、苦笑するムラクモ。良くも悪くも親子の間に遠慮はあまりないのだろう、それにしたってこの反応は正直すぎる気もするが。そうぼやきながらムラクモは頭を掻く。
「ったく……少しは父親を尊敬したり敬ったりしろっての」
「してるよ」
「ほんとかねぇ……俺は父う……親父のことはめちゃくちゃ尊敬してたぜ?」
「じいちゃんの顔なんて知らないし話も全然聞いたことないし……」
「まぁする話じゃないからな」
言葉はともかく息子にちゃんと慕われていることはわかっているからか、ぼやきながらも別に悪感情を抱くとかそういうことは一切ない。とはいえ自分と息子はやはり違うのだという世の理を噛み締めながら、一度も話したこともないし、今後話すつもりも多分ないであろうヤクモにとって祖父の話を切り上げることにする。
「まぁただ……嫌な予感がする。出かけるなら変なことに巻き込まれないように気を付けろよ」
「わかった」
父の言う嫌な予感は3割当たる。ヤクモの中ではそんな認識だが、そう言うということは頭の片隅に入れておいて損はないだろう。精々その予感が当たっても今日は雨が降るとか、そんなレベルだろうが。
「じゃあ行ってくるね」
「おう」
まあもしも降ったらその時はその時だと家を出ていくヤクモ。そしてムラクモはリビングに出て曇り空を見上げると。
「……?」
まだ昼時の空で雲に覆われているのに、星のようなものが一瞬見えたような気ががして、ムラクモは首を傾げるのだった。
★
そして、嫌な予感というのは、間違いなく父の考えている現実のものとなった。
「!!」
アンダーグエナジーを感じ取り、立ち止まるヤクモ。アンダーグエナジーが発生した方角を見ると、そこにはドラム缶のような寸胴ボディのランボーグが建物の屋上に立っていた。その隣にはカバトンもいる。
「あれは……ランボーグか!」
ランボーグが出現したことをましろに連絡すると、ヤクモはランボーグを見上げる。ここからでは声は聞こえないが、ランボーグを呼び出したカバトンが短く指示を出したようで、ランボーグが屋上から地面へと降り立つ。大地が揺れるほどの衝撃と共に現れたランボーグを見た人々が我先にと逃げ出していく。人の気配がしなくなっていく町中を我が物顔で歩くランボーグ。
「さぁ……出てくるのねん、プリキュア!今日こそてめえらの最期だ!」
「ランボーグ!!」
ガンガンとドラミングのように体を叩き、甲高い金属音を鳴り響かせ、自らの存在を主張してくるランボーグ。その目の前にキュアクラウドが現れる。
「そこまでだ!」
「へっ、いきなり来やがったか、こいつは丁度いい!」
「!」
クラウドを見て、にやりと笑うカバトン。その言葉の真意は理解しきれてなかったが、クラウドを名指ししているかのような対応から察するに、攻撃力の低いクラウドが1人だけで来てくれたのは相手する分には倒される心配がなく、丁度よかったということなのだろう。
「やれ、ランボーグ!」
「ランボーグ!!」
そうクラウドは解釈する。実際には別の目的がカバトンにはあるのだが、それを推測することはクラウドには酷だろう。それに、その事を考えるよりも前に動き出したランボーグが、その強固なボディを活かしてクラウドへと突進してくる。
「っ!」
それを跳んで避けるクラウド。この一帯にもう人はいない。ならば他のプリキュアが来るまではこうして時間を稼ぎつつ立ち回ればいい。が、そうは問屋が卸さない。カバトンはクラウドに狙いをつけると、
「カバトントン」
そう呪文を唱える。次の瞬間、クラウドの視界を黒い靄が覆っていき、クラウドの視界が埋まってしまう。
「!」
「ランボーグ!!」
突然視界が塞がり、身動きが止まったクラウドにランボーグが殴りかかる。視界を塞がれたクラウドは瞬時にアンダーグエナジーの気配を感じ取り、ランボーグの接近には気付くものの、回避は難しく、両腕を交差して攻撃を受け止める。
「くっ!」
勢いは完全に殺せず、壁を突き抜ける勢いで吹き飛ばされ、建物の中に転がるクラウド。しかし今の衝撃で靄は晴れたようで、戦線にもう一度復帰しようとしたまさにその瞬間。クラウドは粘液のようなものを全身に浴びせられる。
「うおっ!?」
感触としてはさらさらしているが、重さのある液体。それをランボーグがかけてきたことに即座に気付き、自分の体に出る悪影響をすぐに調べようとする。だが、異変はクラウドが対策を取ろうとするよりも前に起こってしまう。
「……な!?」
ピタッと立ち上がろうとしたままの体勢で身動きが止まってしまうクラウド。どうにかして動かそうとするものの、それすらままならない。そこで初めて、クラウドは目の前のランボーグが何を素材にして生まれたランボーグなのかに気付く。
(こいつ……接着剤!?)
口が開いたままの状態で顔も固まってしまうクラウド。呼吸はそのままできるため窒息の危険はないのが不幸中の幸いだが、即死を免れただけというだけの話。身動きが取れず、防御すらできない今の状態では格好のサンドバッグであり、ただただ倒されるのを待つだけになってしまう。
「よーし、トドメを刺してやれ、ランボーグ!」
「ランボーォグ!?」
建物の外にいるランボーグがトドメを刺そうとした次の瞬間。その横からスカイがランボーグの胴体を吹き飛ばす。
「ちぃ!」
カバトンの舌打ちが聞こえてくる。建物の外ではクラウドからの知らせを受け、全力で駆けつけてきた3人がランボーグと相対していた。
「お待たせしました!クラウド!」
「立て、ランボーグ!奴らを押し潰しちまえ!」
「ランボーグ!!」
しかし吹き飛ばされてもあまりダメージを受けてないのか、何事もなく立ち上がると、その場からジャンプして3人にのしかかろうとする。
「させないよ!」
プリズムの光弾が命中するも、ランボーグ自体に重量があるせいか、あまり重心がずれることはなく、そのまま軌道を変えることなく、落下してくる。
「うわわ?!」
攻撃が無駄だと悟り、その場から退避する3人。しかしランボーグは再び跳躍して攻撃してくる。
「攻撃は単調……なら今のところは大丈夫なはず」
その攻撃は地上にいるスカイとプリズムに対して行われている。あの巨体ならば他にも効率的な攻撃手段はいくらでもあるはずなのにこんな非効率的な攻撃を行うことにウィングは疑問を抱くも、このままであれば何の問題もない。それよりも、吹き飛ばされたまま動かないクラウドがどうなっているのかの方が心配だ。建物の中から出てこないということは自分たちが来る前に受けたダメージがかなり大きくなっている可能性が大きい。
「2人とも、ここはお願いします!」
「わかった!」
「ウィングはクラウドをお願いします!」
2人に任せて建物の中へと入っていくウィング。そしてウィングがそこで見たのは、
「なっ!?クラウド!?」
時間が先程より経過し、完全に固まってしまったクラウドの姿だった。接着剤は完全に固まったことで透明になっており、一見わかりにくいが、そのコスチュームは完全に固まってしまっているのがわかる。クラウドは目だけを動かしてウィングを見るも、口が動かない。
「これ……固まってるのか!?」
顔についている接着剤に気付き、指を顔と接着剤の間に入れるとまず口元と首周りの接着剤を引っぺがすウィング。どうやら接着は強力な分、一度とっかかりができればまとめて剥がしやすくなっているようで、すぐに顔は動かせるようになる。
「はぁ、はぁ……ありがと、ウィング。やっと喋れるようになった……」
「大丈夫ですか!?」
やっと顔をまともに動かせるようになり、安心したような声を漏らすクラウド。まさか、あのランボーグにこんな能力があったとは。これをまともに喰らってしまえば、他のプリキュアとてクラウドのように動きを完全に止められてしまうだろう。
「俺よりスカイ達にこの事を」
「はい、もう少しだけ待って……」
この情報は手遅れになる前にスカイ達に伝えなければならない。その重要さを即座に理解し、クラウドを動けるようにするより前に皆の元に戻ろうと入り口の方へと振り向いたウィング。そのまま出入口へと差し掛かったその時だった。
「悪いがそうはさせねえ」
「!?カバト……がっ!?」
建物の中で身を隠していたカバトンが姿を現し、ウィングの脇腹を勢いよく殴りつける。そのまま建物の中を吹き飛んでいき、壁へと叩きつけられるウィング。強く痛むわき腹を押さえながら、どうにか立ち上がるも、目の前に立つカバトンは必至そうな形相でウィングを睨みつける。
「ここまでは順調に来てんだ……余計な邪魔はさせねぇ……!」
「く……」
狭い建物の中では最大の武器である飛行能力と速度は活かしにくい。それでも、ウィングをこの場で止めようとするということはそれだけランボーグの拘束能力をカバトンは重視しているということ。ならば、何としてでもこの場を脱出しなければならない。そのための隙をウィングが探る中、建物の外でも戦いは依然として続いていた。
「ランボーグ!」
「そんなワンパターンな攻撃!」
「私達には通用しません!」
ランボーグはというと馬鹿の一つ覚えのようにジャンプ攻撃だけを繰り返していた。その合間を縫って攻撃を着実に刻んでいく2人だったが、それが成果を上げられていないということは2人も理解していた。やはりアップ・ドラフト・シャイニングしかない。そうは思うが、体力もほぼ万全の状態の相手を捉えきれるかというとそれは難しい。
「……スカイ!タイミングを合わせて一気に仕掛けよう!」
「はい!」
「ランボーグ!!」
もう相手の攻撃など見てなくても回避できる。それほどまでに擦りつくしたといっても過言ではなくなりつつある攻撃。当然タイミングを合わせることも造作なく、プリズムが強烈な一撃を放つ。
「ヒーローガールプリズムショット!!」
プリズムの放つ巨大な光弾がランボーグに命中し、回転しながら大きく吹き飛んでいく。さらにその反対側から全力疾走するスカイが、ランボーグの真下から上へと突き上げるように攻撃を放つ。
「ヒーローガールスカイパンチ!!」
真下から叩き込まれた強烈な一撃が、ランボーグを打ち上げる。曇り空を突き抜け一瞬見えなくなるほどの高さまで打ち上げられるランボーグ。胴体が凹むほどのダメージを受けたランボーグが再び落下し地面に叩きつけられる
「ラ……ランボーグ……!」
気付けば雨が降り始めていた。ランボーグが叩きつけられるほどの巨大な音を聞いたカバトンは、にやりと笑う。
「へへ、どうやらうまくいったようなのねん」
「!まずい!!」
外で何が起こってるかわからないが、カバトンの予想通りに事が進んでいるのは確かなようだ。すぐにでも警告しなければならない。カバトンが外に気を取られた一瞬を突くように建物の外へと飛び出していくウィング。その姿をカバトンは横目で追っていたが、手を出すことはできなかったようだ。
「……飛んで火にいるお馬鹿さんなのねん」
いや違う。カバトンはわざとウィングを素通りさせたのだ。それに気付いたクラウドだが、既にウィングはクラウドの声が届く場所にはいない。
「スカイ!プリズム!このランボーグには……!」
雨の中、外に飛び出したウィングがスカイとプリズムに警告しようとする。だが、既に戦いはランボーグがやられるところにまで来ており、2人はアップ・ドラフト・シャイニングを放つタイミングに入っていた。
「スカイブルー……!?あ、あれ!?」
「プリズムホワイト……え!?な、なにこれ!?」
技を発動するためのスカイトーンを取り出そうと懐に手を入れるスカイとプリズム。しかし、そこから出そうとした手が、コスチュームから離れない。まるで固められてしまったかのように手袋とコスチュームがくっついてしまったのだ。さらに異変は起こる。体が動かしにくくなっていき、足裏に至っては完全に地面とくっついてしまっている。
「か。体が!?」
「な、なんで!?」
これではスカイトーンが装着できず、アップ・ドラフト・シャイニングが使えない。その姿を見て、既に2人がランボーグの特殊能力の餌食になってしまっていることにウィングは気付く。
「しまった……でも、なんで……」
しかし、一体何故2人の体が。雨で絶えず濡れている今の状態で体が固まるとはとても思えないが……そう考えたウィングは雨の勢いが急に弱まっていること、そしてたまたま視線が遠くに向けられた際に、何故か自分たちのいる場所だけしか雨が降ってないということに気付く。
「!?……まさか……うわ!?」
ウィングが真実に辿り着いたのもつかの間、ウィング自身の体の動きが鈍くなり、動かなくなってしまう。それによって空中でバランスが取れなくなり、地面に追突してしまう。
「ウィング!?」
「この、雨が……こいつの接着剤だったのか……!」
「ランボーグ!」
ウィングの指摘に正解だと言わんばかりに両腕を上げるランボーグ。そう、スカイによって空高く打ち上げられた際にランボーグは接着剤をばらまき、雨のように降らしたのだ。クラウドのように直接かけられたわけではないため、固める力が弱く体の方は動きが硬くなる程度に済んでいるが接着剤がよく染み込んでしまったコスチュームはそうもいかない。
「接着剤!?」
「じゃ、じゃあこのランボーグはわざとあんなことを!?」
「だーはっは!その通りなのねん!」
建物の中から現れたカバトンが得意げに笑う。まさかこのような方法で自分たちを無力化してこようとは。
「こいつらはちょいと固定が弱いからまだ動けるかもしれないのねん、まずはこいつからだ!」
「ランボーグ!」
覚悟しろと言わんばかりに怒号を張り上げ、先ほどと異なりまともな攻撃手段として突進攻撃を選択するランボーグ。スカイとウィングはどうにかして受け止めたいが、思うように体が動いてくれない。これでは攻撃を受け止めても間違いなく押し負けるだろう。
「どうすれば……」
「……まだだよ!」
と、突然プリズムの左手が小さな爆発を起こす。
「「プリズム!?」」
「これで……両手が使える!」
くっついたままの左手から威力を最小限に抑えた光弾を生成し、手袋だけを焼き切る程度の爆発を起こして無理やり接着剤の固定を解いたプリズムが両手を前にし、光弾を連続でランボーグに放つ。それを喰らったランボーグが、先ほどよりも簡単に吹き飛んでいく。
「この音……あいつ、もう中身がないんだ!」
「ちっ、面倒くさいことをするのねん」
重量が軽くなったランボーグ。さらに今の状態では再び接着剤を放つことも難しい。それを悟ったカバトンは、確実に勝つためにある選択を取る。
「ランボーグ!一旦撤退だ!……だが!」
建物の中に入り、まだ体が固まったままのクラウドを床ごとぶっこぬくと、それをランボーグへと投げ渡すカバトン。
「うおっ!?」
「「「クラウド!?」」」
「一番ギッタンギッタンにしなきゃいけねぇこいつだけは連れていく!ランボーグの補給と、こいつの始末が終わるまで、お前らはここで大人しく突っ立ってるのねん!!カバトントン!!」
そう呟くと、カバトンはランボーグ、クラウドと共に消えてしまう。2人が消えてしまった場所を、呆然と見ていることしかできない3人。
「く、クラウドが……ヤクモさんが、カバトンに……!」
震える手で、先ほどまでクラウドがいた場所に手を伸ばすスカイ。しかし、そこに当然クラウドはいない。どこに連れ去られたのかもわからない。どうすればいいのか、どうやって探せばいいのか。スカイの頭の中にぐるぐると様々な感情と思考が渦巻き始め、訳がわからなくなってしまう。
「ど、どうすれば……」
「それは……」
「っ……!」
それは、プリズムとウィングも同様。早く見つけなければ、クラウドは本当にやられてしまうかもしれない。そんな、嫌な予感を感じる3人を、雲の切れ間から指し込んできた陽の光がまるで暗示のように照らしてくるのだった。