曇り空の夜のプリキュア   作:popoponpon

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第26話 キュアスカイVSカバトン

決戦の時。カバトンとソラが河川敷で相対し合う。

 

「来たか……なのねん」

 

腕を組み、ソラを待っていたカバトンが静かに言う。ソラも、迷いのない目でカバトンを見る。そこから離れたところでは茂みに隠れながらヤクモ達が2人の決闘を見守っていた。

 

「びびって逃げ出さなかったことだけは褒めてやるのねん」

「約束は守ります。カバトン、あなたも約束は覚えていますね」

 

挑発するカバトンの言葉にも怖気ず、逆に質問を返すソラ。カバトンは無論と言わんばかりに頷く。

 

「ああ!もし俺が負けたら、プリンセスには手は出さねえ!これが最後の大勝負よ!」

 

そしてカバトンの手に生み出される高濃度のアンダーグエナジー。それを見たヤクモはこれまでにないほどの大きな胸騒ぎを感じ取る。

 

「まさか、あれが奥の手か……!?」

 

これほどのアンダーグエナジーを使ってランボーグを生み出そうというのか。確かに、奥の手に相応しい一手。それによって生まれるランボーグは、ヤクモ達の知る限り最大のものになる、だがその素体はヤクモ達の想像を超えていた。

 

「これが俺の奥の手だ。この3日で最高に高めた俺のアンダーグエナジーで最強の力を手に入れてやるぜ!!」

 

そのアンダーグエナジーを、カバトンはいきなり自らの体へと取り込んでいく。

 

「カモン!マックスアンダーグエナジー!!」

 

カバトンの全身を包んでいくアンダーグエナジー。まるでエナジー自体が意思を持っているかのようにカバトンを取り込み、暴走するかのように天へと噴き出していく。その衝撃によって強風が巻き起こり、ソラがその風に耐えながらアンダーグエナジーの中のカバトンを見ると、みるみるうちにカバトンの体が何倍もの大きさへと膨れ上がっていく。

 

「がーははははは!!TUEEEE……!」

 

ソラを見下ろすように、勝ち誇った笑みを浮かべるカバトン。全身に満ちる強大な力に酔いしれるカバトンを前にして、ソラは険しい表情を見せる。

 

「……!」

「まさか、自分自身をランボーグっぽくするなんて……!」

「もしかして、かなりピンチな感じ……?」

 

カバトンの奥の手に驚愕するましろ達。遠目から見ただけでもわかるカバトンのパワーアップぶりに、不安がどんどん増していく。それはヤクモも同じだ。しかし、

 

「ソラさんなら、きっと大丈夫」

「ヤクモ君……うん、そうだよね。ソラちゃん、頑張って……!」

 

ヤクモははっきりと断言する。相手が強大なことなどとっくにわかっていたことだ。だが、今のソラには不安も迷いもないようにヤクモには見えた。

 

「……いきます!」

 

ソラははっきりと、カバトンに挑むかのように宣言し、ミラージュペンを手に取る。これでカバトンとの戦いを終わらせて、エルを守る。そう意気込み、キュアスカイへと変身する。

 

「ふん!」

 

ソラが変身するのを待っていたカバトンは挑発するかのように両手の拳を打ち付けるように合わせる。そしてスカイが構えたのと同時にカバトンが走り出す。

 

「おらああああ!!」

 

俊敏な動きで走り出し、拳を上から振り下ろす。それを跳んで回避したスカイは、地面に巨大なクレーターを作り出したカバトンを目の当たりにする。

 

「……!!」

 

あまりの威力にスカイに冷や汗が流れる。もしあの威力をまともに喰らってしまったら、大ダメージは避けられないだろう。自身にアンダーグエナジーを注ぎ込み、あたかも自身を素体としたランボーグのようにするという奥の手。それによってカバトンが得たパワーはあまりにも大きい。しかもパワーだけではない、そのスピードも以前より増している。

 

「オラオラオラァ!」

 

カバトンが勢いよくラッシュを仕掛けてくる。圧倒的なフィジカルから繰り出される連続攻撃を、スカイは冷静に回避していく。ちょこまかと逃げ回るように映るスカイの姿を前に若干の苛立ちを見せるものの、

 

「俺のこのTUEEEE力なら、てめぇは一発で終わりだ!!」

 

と、自身を鼓舞するように全力を込めた拳を突き出す。その一撃を前に、スカイは意識を集中させる。そして、

 

「……今!」

 

ギリギリのところでカバトンの攻撃を回避し、懐へと潜り込む。

 

「何!?」

 

いつまでも攻撃を回避し続けていればいずれ体力が尽きて敗北するだけだろう。だが今の速度を持つカバトンにこちらから打って出ても効果が出るかは期待が薄い。となればどうするか。相手の攻撃を利用したカウンター。それがスカイの狙いだった。

 

「ぐぬぬぬぬ……らあああああ!!」

 

しかしカバトンも負けてはいない。強化された反射速度を活かして素早く距離を取ると再びラッシュを仕掛けてくる。しかし、冷静に回避し、懐に潜り込むこの戦略に手応えを感じたスカイは、全ての攻撃を紙一重で回避していく。そして、

 

「たぁ!!」

 

カバトンへと突き刺さる鋭い一撃。無防備な腹部に受けた強烈な一撃を前にカバトンの顔が大きく歪み、痛みに苦しみながら後ずさる。

 

「ぐ、ぐぅ……!?」

「いける!!」

 

ソラの攻撃がカバトンに効いているのを見て、ツバサが歓喜の声をあげる。こちらにも勝機はあると実際に目の当たりにしたことで、ましろやあげはの表情も不安の織り交ざった先ほどの表情から一転して、喜びが現れている。

 

「うん、確かにカバトンは強くなっただろうけど……スカイだって負けてない」

「そうだね、これならきっと勝てるよ!」

「このままどんどんテンションアゲてこ!」

 

このまま有効打を打ち続けられれば当然スカイが勝てるだろう。だが、カバトンだってこのままじゃ終わらないはずだ。これが最後と自分で宣言して臨んだ決闘なのだから。しかし、それでもスカイなら、ソラならきっと。念じるようにキーホルダーを握りしめながら、ヤクモはソラにエールを送り続ける。

 

「ぐ、くそぉ……舐めやがって……!俺は最強に強ぇんだ……!!」

 

痛む腹部を抑えながら、スカイを睨みつけるカバトン。必死になり、力に縋り勝利だけを得ようとする姿。その姿はまるで、

 

「……何かに、怯えている?」

「え?」

 

ヤクモが突然発した言葉に4人が驚いてヤクモを見る。その視線には答えず、ヤクモが視線を上にあげると、何やら不思議な感覚がした。誰かがこの場を見ているかのような。そんな感覚。戦ってるスカイはもちろん、ましろ達も気付かないし、ヤクモが気にしすぎてそのように感じているだけかもしれない。しかし、

 

(もし俺と同じのをカバトンも感じているのだとしたら……それに)

 

何の根拠があってこれで最後としているのだろう。その答えも、この決闘の中に出てくる。そんな予感がしつつ、ヤクモは再び2人の真剣勝負へと目を向ける。

 

「俺は……俺はぁ……!」

 

痛みを耐え抜き、己を鼓舞するように声を張り上げるカバトン。攻撃のチャンスではあったが、不用意に近づいた結果、反撃を受ければ自分の方が一転して不利になってしまうと判断し、より確実な隙を見つけるまで待ちの選択肢を取っていたスカイだったが、

 

「負けるわけがねぇんだよぉおおお!!」

 

それが裏目に出てしまったようだ。声を張り上げながら先ほどを超える速度でスカイに迫ったカバトンは両手を左右から降り抜き、スカイを挟み込んで潰してしまおうとする。咄嗟に両手を左右に突き出してその攻撃を受け止めるスカイだったが、純粋なパワー勝負ではカバトンの方に分があるのだろう、徐々に押し込まれ始めてしまう。

 

「くぅ……!」

「どうだ!!もうこれでちょこまか逃げられねえ!このまま潰してやるのねん!!」

 

にやりと笑い、さらに強く力を押し込めていくカバトン。目に見えて力負けしているのがわかり、それを見ているツバサ達もこれから起こり得てしまう惨状を予想してしまい、動揺が見え始める。

 

「こ、このままじゃ……!」

 

ソラの表情が苦しそうに歪む。少し、また少しとカバトンの両手が自分を潰してやろうと近づいてくる。徐々に敗北が迫り、ソラの心が揺れたその時、

 

「「「「ソラさん(ちゃん)!!」」」」

「えるー!!」

 

5人が茂みから立ち上がり、大きな声を上げる。その声はスカイの耳にはっきりと聞こえてきた。皆が自分を応援してくれている。それに気付き、はっとなるスカイ。一方カバトンは勝利を確信し、同時に聞こえてきたヤクモ達の声に歓喜の表情を浮かべる。

 

「くくく、やっぱり近くにいたのねん。探す手間が省けたのねん!こいつをこのまま潰した後はプリンセスを……!?」

 

仮にスカイを倒しても近くにエルがいなければ探すのが面倒だったため、その手間が省けたと喜ぶカバトン。ならばこんな戦いはさっさと終わらせてやろうとスカイを圧し潰そうとより一層力を込めた、まさにその時だった。

 

「ぐ、うぅぅ……!」

 

カバトンの手が僅かにスカイに押しのけられる。全力で力を込めているはず。これは間違いだという考えが過るも、それは確かに現実のものであった。スカイは本当に、カバトンの手を押し始めている。

 

「ば、馬鹿な……!?パワーじゃ俺が圧倒的に上のはずなのねん!?どこに、こんな力が……!」

 

スカイが両腕を限界まで左右に開く。先ほどとは異なり、カバトンの手はそこから先には動かせなくなってしまっていた。カバトンが言うように、パワーはカバトンの方が確かに上だったはずだ。それなのにどうしてと、カバトンの声に困惑の色が現れる。

 

「あ、ありえねぇ……どうして……!」

「……皆の……!」

 

スカイが、静かに言う。自分を奮い立たせてくれたものがなんなのか。それが生み出す素晴らしい力が一体なんなのか。それは、

 

「皆の応援が、私に力をくれます!!」

「お、応援だぁ!?」

 

仲間たちとの絆。共に戦い、共に過ごし、共に勝利を望んでくれる掛け替えのない仲間たちの応援、それがどんなに頼もしく、そして不安を取り除いてくれるものだろうか。今のスカイの心には負の感情は何もない。あるのは1つ、

 

「そんなもん……!」

 

エルを守りきってみせる。そのためにカバトンに勝つという思いだけだった。勢いよく両手を弾かれ、狼狽えながらカバトンは額の黒い宝石と全身にアンダーグエナジーを漲らせ、拳を振り上げる。

 

「強さにゃ関係ねえええ!!」

 

この一撃でスカイを葬る。そうすればスカイの言っていることは全てまやかし。自分が最強だ。それですべてが終わると、自分の迷いを無理やり吹き飛ばすように声を張り上げるカバトン。しかし、その一撃はスカイから見れば、強者が放とうとしている必殺の一撃には到底見えなかった。

 

「頑張って、ソラちゃん!!」

「カバトンに勝つんです!」

「この調子だよソラちゃん!」

「エル!!」

「エルちゃんのために、終わらせよう!ソラさん!」

 

応援を続ける仲間たちの声は、今も聞こえてくる。スカイの全身を満たす応援の力、その素晴らしい力を胸に、戦いを終わらせるため、スカイは拳を握る。

 

「はい!はああああ!!」

 

その中でも、特にはっきりと聞こえてきたヤクモの言葉に返事を返すと、カバトンの拳を打ち返す。そのあまりの威力にカバトンの拳の方が吹き飛び、勢いよくのけ反ってしまう。

 

「な、なぁ……!?」

 

無防備な体を晒すカバトン。皆との絆がつかみ取った、最大のチャンス。それを絶対に逃すわけにはいかないと、ソラはすかさず己の最大の技を放つ。

 

「ヒーローガールスカイパンチ!!」

 

青い閃光となり、カバトンを天へと打ち上げるスカイ。その姿を、呆気にとられたように、息を呑んで見守る4人。ヤクモは、確かな手ごたえが入ったことを確信し、嬉しそうな表情を浮かべながら打ちあがったカバトンを他の皆のように見上げる。

 

「……がはっ……」

 

カバトンがそのまま地面に墜落し、大きな砂埃が巻き上がる。スカイは華麗に着地すると、倒れたカバトンを見る。

 

「や、やりました!」

「勝ったんだよね!」

「凄いよ!スカイ!!」

「えーるぅ!」

「やったね……スカイ」

 

スカイの勝利をここで呑み込み、遅れて喜びを分かち合う5人。倒れたまま呆然とした表情のカバトンは、目の前の現実を受け入れられないといった様子で震えた声を出す。

 

「俺が……負け、た……?」

 

カバトンが負けを口にしたその時。まるでそれを合図としたかのように、空に異変が起こる。

 

「「!!」」

 

最初に異変に気付いたのはヤクモとカバトンだった。突然、空に黒雲が生まれたのだ。しかもその黒雲の中では雷鳴が蠢いており、禍々しい雰囲気すら感じさせていた。

 

「なんだ、あれは……」

「あ、ああ……」

 

 

それを見て、警戒心を跳ね上げるヤクモに対し、見るからに怯えた表情になるカバトン。そしてカバトンは、ある決断をする。

 

「……?」

 

倒れたカバトンの体が大きいためか、スカイからはカバトンの表情の変化は確認できない。だからカバトンが負けたショックで倒れたままだと思ったのだろう。もう決着はついたと、その後の話を始めようとする。

 

「カバトン。約束通り、もう二度とエルちゃんには……」

「そんな約束、忘れちまったのねん……!」

「!」

「どんな手を使っても……!」

 

勢いよく起き上がり、冷や汗をだらだらに流しながら、悔しそうに言うカバトン。敗北という屈辱を彼は受け入れている。そのうえで、生き残るための道を模索するため、そのためならどんなに汚くなっても構わない。それほどまでに追い詰められた表情を前に、スカイは思わず固まってしまう。

 

「最後に勝つ奴がつえぇんだよぉ!」

「える!?」

 

カバトンの手に収束したアンダーグエナジーが黒いエネルギーの手となってエルに向かって直接伸ばされる。勝負を放棄し、直接エルを奪おうとするカバトンの姿に驚くエル。その突然の行動にスカイはそれに反応しきれなかったが、エルの危機を即座に理解し、それを絶対に止めてくれると信頼する仲間の名を呼ぶ。

 

「!!ヤクモさん!」

「ああ!」

 

スカイの言葉に返事を返すのとほぼ同時にクラウドへと変身するヤクモ。さらに傘のマークが刻まれたキーホルダーを手に取ると、光と共にアンブレランスへと変化する。最初はアンダーグエナジーを帯びていたこの傘だが、最初の使用でロックのようなものの役目を果たしていたのがそうだったのか、二度目の使用となる今回はそういった気配は感じられない。

 

「はぁ!」

「んな!?」

 

広げたアンブレランスで手を受け止めるヤクモ。強固な盾に弾かれ、アンダーグエナジーの手が宙に舞うと、

 

「今だ、プリズム!」

「オッケー!ヒーローガールプリズムショット!!」

 

同じく変身していたプリズムの光弾によって消滅させられる。その間にウィングがエルとあげはを抱えてカバトンの元から離れるように移動する。

 

「ウィング、ナイス!」

「プリンセス、もう大丈夫ですよ」

「あい!」

 

ウィングに助けられて嬉しそうにするエル。そしてカバトンの前に立つスカイの隣にプリズムが、そしてその後ろにクラウドが立つ。

 

「ななな……ま、まだまだぁ!」

「お前の負けだ、カバトン!エルちゃんを諦めろ!ひろがるクラウドプロテクト!」

 

尚も足掻こうとするカバトンの全身が巨大な雲に捕らえられる。こんなもの、一瞬で。カバトンがクラウドプロテクトを破壊しようと腕を振りぬこうとする。しかしその一瞬だけで充分だった。

 

「スカイブルー!」

「プリズムホワイト!」

「……な!?」

 

クラウドプロテクトを破壊することに成功するカバトン。しかし雲が消えると同時にカバトンの体は虹色の光に包まれ、天高く昇っていく。

 

「「プリキュア!アップ・ドラフト・シャイニング!!」」

 

カバトンの抵抗を許すことなく、浄化の光を浴びせる。その光の中、自身が取り込んだアンダーグエナジーを浄化されながらも、カバトンは安らかな笑顔を浮かべていた。

 

「スミキッタ……のねん……」

 

光とアップ・ドラフト・シャイニングの発動に伴い生成される円盤が消滅する。光の中から元の大きさに戻ったカバトンが落下し、再び地面へと叩きつけられる。

 

「ぐへぇ!?」

 

受け身すら取れずに叩きつけられ悲鳴を上げるカバトン。意識が混濁し始める彼の前に、スカイ達が立つ。

 

「カバトン、あなたの負けです」

「……はっ!?」

 

負け。その言葉を聞いたカバトンの意識がはっきりと覚醒する。しかし、自分でももうわかっていた。アンダーグエナジーは完全に消え去ってしまい、体はボロボロ。今の自分ではランボーグを呼ぶことすらままならないということを。それでも、負けを認めてしまえばどうなるか。最悪の未来が頭をよぎり、まるで命乞いをするかのように悲痛な声を上げ始める。

 

「い、嫌だ!まだ、まだ負けてねえ!負けるなんて、絶対に嫌なのね」

 

カバトンの見苦しい言葉をかき消すように、空に暗雲が急激に広がっていく。

 

「「!」」

 

他の皆もその異変に気付く。雷鳴が鳴る音が聞こえてくるが、これは間違いなく自然発生したものではない。それぐらいはスカイ達も理解できたが、一体何なのか。

 

「……あの雲からアンダーグエナジーを感じる。カバトン、あれはなんだ」

「……アンダーグ帝国じゃ、弱ぇ奴に価値はねぇ……!だから俺は必死に、強ぇ奴になろうと……!」

「アンダーグ帝国……?」

 

カバトンの口から零れた、カバトンが来たであろう国の名前。それを初めて耳にし、心当たりのないスカイとプリズムが訝し気な表情を浮かべる。ウィングは、以前クラウドが初めてアンダーグエナジーを発現させた時にカバトンが口走っていたのを思い出す。一方、そんなカバトンの言葉を聞きながら、クラウドの表情はより険しくなっていく。みっともないカバトンの姿により怒りを露わとするように黒雲の中を駆け巡る稲妻はどんどん大きくなっていくのだから。

 

「ひっ……ひぃ!?」

 

そしてついに、黒雲の先にいるであろう謎の存在がカバトンに対しある行動を起こす。カバトンの体がアンダーグエナジーによって包まれ、浮上し始めたのだ。

 

「や、やめてくれ!ま、まだ俺は、役に立ちます!どうか、どうかお許しをぉぉぉ……!」

 

何が起こってるのかわからず、呆然とそれを見ていることしかできないプリキュア達。と、空から雷が次々と落ち始める。

 

「!」

 

どうやらプリキュア達を狙うつもりはないようで、無差別に落ちている。それでも万が一当たったら危ういとどこに落ちてくるか注意しながら4人が周囲を見ていると、怯えるカバトンの姿が目に入る。

 

「まさか、この雷……カバトンを狙ってるんじゃ」

「!」

「それって……粛清、ってこと……!?」

 

そう考えれば、あの暗雲が何故決闘中から現れていたのか、その理由も理解できる。これからカバトンに起こる悲惨な末路を予測する4人。怯え、命乞いを繰り返すカバトンを見上げるスカイ。そしてある決断をし、表情を引き締めたスカイの前に、クラウドがアンブレランスを差し出す。

 

「!」

「スカイ!?」

 

それに頷くと、クラウドの手によって開かれた状態のアンブレランスを手にスカイが走り出す。突然の行動に驚くプリズム。

 

「カバトン!今助けます!」

「!」

 

アンブレランスを前面に構え、勢いよくスカイがジャンプするのと同時に、稲妻が一点に集まっていく。自分を助けに来たスカイを見て、カバトンが困惑の表情になる。

 

「お、俺はお前の敵なのねん!?な、何故!?」

「わかりません!」

「え……?」

「でも……こうすることが正しいと思ったからです!」

 

理屈や理由ではない。困っている他人を助けるのに理由なんて必要ないし、それは別に特別なことではない。ただ、助けたいと思ったからスカイはこうしてカバトンを助けに来たし、クラウドも彼女に自らの得物を託したのだ。

 

「たああああ!!」

(これが……本当の強さ……?)

 

そんなスカイの姿を、そしてプリキュア達の姿を見てカバトンの中に強さに対する別の思いが浮かび上がる。だが現実は非情であると、そのカバトンを焼き尽くすかのように一際巨大な雷が落ちてしまう。それがカバトンに命中する寸前。スカイの体当たりがカバトンを弾き飛ばし、そのままアンブレランスを頭上に向ける。雷を受けたアンブレランスから甲高い音と衝撃がスカイの手に伝わるものの、雷は完全に防がれ霧散する。

 

「スカイ!」

 

真上から叩きつけられた衝撃によって地面に向かうスカイ。そのスカイを受け止めたクラウドに、スカイは自分は無事だと笑いかける。その顔を見て、クラウドも嬉しそうに笑みを向ける。

 

(……俺の負けだ……お前は強ぇ……俺なんかよりずっとな……って、えぇえええええ!?)

 

スカイに助けられた現実を前に、ついにカバトンも敗北を認めたのだが、その体は川に落ちてしまい、流されていく。

 

「……黒雲が晴れていく」

 

スカイとクラウドが空を見上げるも、カバトンを仕留めそこなったのを受けてか、あるいはこれ以上はやる気がないのか、元の明るい空へと戻っていく。再び降り注いだ陽の光を浴びながら、変身を解いたヤクモとソラは、駆け寄ってくるましろ達と共にカバトンとの戦いを制したことを喜び合うのだった。

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