曇り空の夜のプリキュア   作:popoponpon

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第30話 思いを届けて

 

あげはが呼ばれ、そしてヤクモも無事に泊まる許可をもらい、虹ヶ丘家に全員が集まった夕食。スカイランドへのトンネルが開いたことを聞いたあげはは、名残惜しそうに口を開く。

 

「そっか……帰っちゃうんだ」

「エルちゃんをお家に帰してあげる。そのために頑張ってきたんですから!」

 

そんなあげはに元気よく返事を返すソラ。それは目的としては確かに間違いはないのだろう。しかし、あげはも思うところはやはりあるようで。

 

「それはそうだけどさ……ツバサ君も帰るんだよね?」

「そうですね……元々この世界には勉強のために残っていたようなものでしたから……プリンセスが戻る以上、僕達も戻らなければなりません」

「そっか……ある意味留学みたいなものだもんね」

 

ツバサに聞いてみるも、ツバサもやはりスカイランドに戻るという意思は固いようだ。ちらちらと、普段通りの静かな様子で食事をしているヤクモを意味ありげに見ているのを見たあげはは、ましろとヤクモに聞いてみることにする。

 

「ましろんとヤクモ君はどうするの?」

「……そうだなぁ……ひとまず親にはキャンプに行くって言ってるのでこの休み中はスカイランドに滞在することになるんじゃないかな……」

「……」

「ましろん?」

 

特に何も思うところはない。そんな風にスカイランドに行ってからの予定を語るヤクモだったが、そんなヤクモをぽかんとましろは見ており、あげはの言葉にはっと我に返る。

 

「え?あ、明日?エルちゃんを送り届けて、それからはヤクモ君の言った通りだよ。折角だししばらく観光とかしてもいいかなって。せっかくの休みだし」

 

慌てて返事を返すましろ。そんなましろの様子を、あげははじっと見つめているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕食が終わり、皆が寝静まった時間。しかし、ソラとましろは家の外で夜風にあたっていた。というのも、

 

「……やっぱり外は静かですね」

「さすがにここまではあげはちゃんのいびきは聞こえてこないよ……」

 

当然女性陣と男性陣で寝室を分けて寝ることとなったのだが、あげはのいびきがとんでもなく大きかった。毎日学校に車で通い、この前のキャンプではレポートに追われていたのも見るに、忙しい学業の中で皆のサポートも並行してやっていたのだろう。いびきをかくほどに疲れているのも当然と言える。が、あげはがいびきをかくことでましろとソラが眠れないのも事実であった。

 

「「……」」

 

夜の街を遠目に見るましろとソラ。まだ街には明かりが様々な所で点灯しており、綺麗な夜の街の風景を彩っている。それを見ながら、ソラは初めてこの世界に来た時のことを思い出していた。

 

「初めてこの世界に来た時は驚きました。魔法の世界かと……」

「ふふ、そんなことも言ってたね」

「……でも、今はなんだかここが、もう1つの故郷みたいに思えるんです。そんなに長い間、暮らしていたわけじゃないのに……」

 

プリキュアになり、いろんな仲間と出会い、友達を作り、この街で過ごした。季節が変わるほどの時間も経ってはいない。それでも、ソラの中では大切な思い出の数々であった。

 

「……ソラちゃん……」

「……あ、ご、ごめんなさい!またすぐに遊びに来ますから!」

 

と、自分をじっと見つめるましろの視線にソラも気付いたのだろう。慌てて、これが最後ではないと弁明するソラ。ましろも、今の自分の気持ちがばれてしまったのかと思ったのだろう、こちらも慌てて誤魔化しようにソラの言葉に頷いていく。

 

「うんうん!」

「そ、そうだ!明日靴を譲ってくれた人を探しにいきませんか!?トンネルが開くまで時間もありますし!」

「そうしようそうしよう!」

 

お互いに気持ちを抑え、誤魔化すように明日の予定を決めていく。そして話も落ち着いた頃、再び無言になった2人は。

 

「……もう寝よっか」

「はい、そうです……?」

「ソラちゃん……?」

 

家に戻ろうとしたその時だった。ソラがヤクモとツバサの姿を見つける。庭に置かれたままの椅子と机。天気のいい日はヨヨが時折使用していたものだったが、そこにヤクモとツバサが座っていたのが目に入る。

 

「「……」」

 

何となく。2人が何を話そうとしているのかが気になり、2人は物陰に隠れるようにして2人に近づいていく。

 

「……結局眠れませんね」

「だな」

 

2人の声音は普段通りなように聞こえる。

 

「……ヤクモさんは何も思わないんですか?」

 

いや、ツバサの方はやはり気落ちしているようにも聞こえる。それに対してヤクモの返答は。

 

「……まぁ、何も思わないといえばそりゃ嘘にはなるよ。もしこのまま続くんだったらソラさんやツバサ、エルちゃんとまだまだ一緒にいたいって」

「そうですよね……あ、そうだ!じゃあヤクモさんがスカイランドに留学しに来ればいいんですよ!」

「ん?」

 

突然のツバサの提案にヤクモがぴたっと止まる。スカイランドへの留学とはどういうことだろうか。確かにツバサは勉強のためにこの世界に来ているので留学と言えなくもないかもしれないが、それをヤクモにもやってもらおうということなのだろうか。

 

「いや留学って」

「当然スカイランドにはこの世界とは別の技術とか、学問とかもあります!興味ありますよね!?」

「いやあるけど」

 

名案だと言わんばかりにヤクモに詰め寄ってくるツバサ。異世界の学問と聞けば確かに興味は湧いてくるも、そういう問題じゃないだろう。

 

「それやっても俺どう説明すればいいんだか……それにヨヨさんも言ってたじゃないか。スカイランドにずっといるってことは……」

「本当に無理ですか……?」

「無理だって……」

 

はぁ、と溜息を吐くツバサ。言っても無理だということは彼だってわかっている。それでも言わずにはいられなかったのだろう。別れが惜しくて仕方がないのだ。

 

「……僕が言っても駄目ですか」

「まあ……」

「プリンセスが言ってもですか」

「そもそもエルちゃん喋れないじゃないか……」

「じゃあソラさんは?」

「……えっと」

「なんでそこで躊躇うんですかあ!?」

 

好感度の差がおかしいでしょう!とうがーっと叫びながら抗議するツバサ。そんなことはないと弁明するも、ソラを出された時に躊躇いを覚えたのは事実。いやさすがに家族や友達を捨ててまでいけるほど何もない人間ではないだろうしソラの方もそれを許そうとはしないだろうと慌てて反省しながらも、ヤクモはあることを話し出す。

 

「まぁ、その……さっきさ。帰った時にちょっとね」

「……?何があったんですか?」

 

ヤクモが何を言おうとしているのか。それが気になったツバサは、その話に耳を傾けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ただいま」

「おかえりなさーい」

 

時は遡り、一旦家に戻ってきたヤクモ。ヨヨの立てた筋書きでは明日の午後、キャンプに出ていくためそのための準備のため、荷物を取りに一旦家に帰るという運びになっているからだ。返事を返してくれた母の声を聞きながら自分の部屋に戻り、一応キャンプのためという名目で着替えなどを用意する。下着などはスカイランドでも使うだろうしそこは間違っていない。

 

「……はぁ」

「元気ないな?せっかく友達とキャンプに行くんだろう。どうした?」

「そっちは楽しみだよ」

「そうか、この前なんかあったのかと思っちまったよ」

 

荷づくりをしている間にいつの間に来たのだろう、父がヤクモの部屋を訪れていた。扉は開けっぱなしにしていたため、見られてやましいものがあるわけでもないので普段通りといった様子で返事を返す。とはいえ、行き先が行き先なのでそれを隠していることに罪悪感を覚えないかと言われればそれは嘘になってしまうが。

 

「ま、それならいいんだ……ほれ、こいつもってけ」

「ん?」

 

父から差し出されたのはお守りだった。しかし中々見慣れない黒いお守りにヤクモは怪訝な表情を浮かべてしまう。

 

「なんだその顔」

「いや、黒のお守りなんて初めて見たんだけど」

「一品ものだぞ」

「作ったんだ……まぁ、ありがとう」

 

まさかの自作のようだ。試しにそれを持ってみると、なんか不思議な感じがする。心が落ち着くような、そんな感じだ。父親がこのために作ってくれたものだということもあるのだろう。それを受け取ったヤクモは、お守りにひもがついているのを見て、それを首にかける。

 

「まぁなんだ、不安になることもあるかもしれんが、心の持ちよう1つで案外なんとかなるもんさ」

「……」

 

心の持ちようとはいうが、それをどう持てばいいのかこっちはわからないんだけどな、と内心呟くヤクモ。3人がスカイランドに帰れば離れ離れになるのだ。その初めての経験に、どうしてももやもやとしたものを感じてしまう。無論、頭では仕方のないことだとわかってはいるのだが。

 

「……ったく、しゃーねーな。いつになく弱々しくなっちまって。いいかヤクモ」

 

そんなヤクモを見て、何かを悟ったのだろうか。ムラクモは頭を搔きながらヤクモに語りかける。

 

「俺はな、理由あって実家を飛び出してきたんだ。父の墓前にも何も言えてねえし、身内にも別れの挨拶すら言ってねえ」

「!」

 

ほとんど身の上話をすることのない父の話に驚くヤクモ。しかし、自分の身の上のことを話したいわけじゃないとムラクモは早速本題に入ることにする。

 

「でもな、お前は一旦会えなくなってもまた会えるだろ?永遠じゃない」

「……」

「だったら、割り切っちまえばいいんじゃないか?今日は一旦さようなら、でもまたいつか会おうってな」

「……なんでわかったの?」

「そりゃ親だからな。子供がわからなさそうなことだって知ってるもんさ」

 

そしてどや顔を決めるムラクモ。さすがにプリキュアのことに気付いてるわけではないだろうしスカイランドのことなんて知らないだろうが、それでもヤクモが別れを惜しんでいることは見抜かれていたようだ。それを聞いたヤクモはふぅと深くため息を吐くと、親には敵わないなとどこか吹っ切れたように苦笑するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな、少し前に起こった出来事を語るヤクモ。それを静かに聞いていたツバサ。ヤクモは一通りの事を話し終えると、

 

「だからさ。父さんほどすっぱりとはいけないだろうけど……俺も受け入れることにした。別れて寂しいのは当たり前だから、その時は誤魔化したりとかしないでそのままの思いを大事にしようって。でも、その後また会える時を楽しみにして、再会したらその時はもっと喜ぼうって」

 

そう言うのだった。その言葉を聞いていたツバサは暫く無言のままでいたが、

 

「……ふぅ。なんか凄いですね、ヤクモさんのお父さんは」

「うん、こういうところは尊敬する」

「そんなの頭ではわかってるんですけどね……頭では」

 

溜息を吐き、椅子から足を浮かせてぶらぶらと揺する。が、ヤクモの伝えたいことも理解したのだろう。ゆっくりと立ち上がると、

 

「でも、ヤクモさんのおかげでちょっとは吹っ切れました。そうですよね……いくら考えたりしたって時間は来るんですから、受け入れないといけないんです。でも……これは最後じゃない」

「うん、また会えるさ。それに、離れ離れになるっていってもまだ数日あるわけだし。その間できるだけ充実した日を過ごして、それからちゃんとお別れして……また休みになったらましろさんとスカイランドに行くよ」

「はい、待ってます」

 

そうしてお互いに顔を見合わせて笑い合うと、ヤクモもツバサと共に部屋に戻ろうと立ち上がる。

 

「そういえば普段から人の姿で寝てるの?」

「……別に今日くらいいいじゃないですか」

 

お互いに軽く話し合いながら、家の中へと入っていく2人。その後ろ姿を隠れて見ていたソラとましろが出てくる。

 

「……2人とも、凄いですね」

「うん。男の子って感じ」

 

ヤクモとツバサの話を盗み聞きするような形になってしまったことは申し訳ないと思いつつも、ちゃんと別れに向き合う2人の姿はどこかさっぱりしていて、いいなと2人は内心思いながら、2人から少し遅れて寝室へと戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして迎えた翌日。ソラとましろは昨日女性から譲ってもらったファーストシューズを持って再び靴屋を訪れていた。ヤクモとツバサも同行しようとしていたのだが、ここには2人の姿しかない。その理由は、

 

「ヤクモさんとツバサ君に任せる形になってしまいましたね……」

「うん……でもしょうがないよ、エルちゃん物凄く気に入ってたから」

 

ファーストシューズがないことに気付き、騒ぐエルを宥めるためだ。最初はツバサだけが残る予定だったのだが、エルの騒ぎようが大きく、ヤクモも残ったことでようやく多少は収まったのだ。しかし、今も駄々をこねているであろうエルを2人は全力で相手しており、結果として女子だけで来ることとなったのだ。

 

「……2人にはちょっと損な役回りをさせちゃったね」

「そうですね……では、私たちも早速、あの人を探しましょう!」

「うん!まず昨日の靴屋さんに行って、心当たりがないかどうか聞いてみよう!」

 

2人に苦労をかけている分、自分たちも何としてもその女性を探し出さねば。そう決意し、早速聞き込みを始めるソラとましろ。しかし昨日の店の店員に聞いても当然わからず。では別の靴を買おうとしている可能性はと、2人はソラシド市にある様々な靴屋を巡っていたのだが。

 

「……中々見つかりませんね……別の靴を買いに来ていないのかと思っていたのですが……」

「ここが駄目だともう……手がかりもないし……」

 

最後の候補として2人が向かったのはショッピングモールの中にある靴屋だった。天に祈るようにここに来たが、やはり振り出しか。そう考えた2人の耳に、聞き覚えのある声が届く。

 

「悪いけど……急用が入ってしもうて」

「「!」」

 

その声の方角を見ると、確かにその女性がいた。誰かと電話していたようだが、やがて通話が終わったのかスマホをしまう。そこを見計らい、ソラ達は声をかける。

 

「あの!」

「ん……?あ、あなたたちは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

立ち話も何だということで近くの喫茶店に入り、ソラ達の話を聞いた女性。机の上にはましろ達が譲ってもらったファーストシューズが箱に入った状態で置いてあり、それを一目見ると、

 

「それは……ご苦労さんやったなあ。でも、お金払ったのはそっちやし……それにあの赤ちゃん、この靴えらい気に入ってたやんか。そっちこそ大丈夫なん?」

 

と、むしろこちらの方を気にしてくれていた。その親切心はとてもありがたい。ありがたいのだが、やはりそれはこちらの事情だ。元々この靴を買おうとしていた女性の事情を蔑ろにしたくない、そう思いながら申し訳なさそうに2人が口を開く。

 

「大丈夫……では、ないんですけど……正直なところ……」

「でも、これでよかったって……何だか気になって……」

「心の声が漏れてもうたかあ、おばちゃん恥ずかしいわぁ」

 

まさかあの呟きを聞かれていたとは。苦笑しつつも、こうなってしまっては話さないと2人も納得しそうにないと理解したのだろう。

 

「……あんな、この靴、孫に買うてやろうと思ったんやけど……子供ってな……ほんまに可愛くてな。未来しかない。そんな子がこの前初めて立って……」

 

その孫との思い出を思い出しながら語る女性。それを聞いてソラとましろも気付く。この靴はその子のファーストシューズとして買おうとしていたのだと。

 

「でもな、仕事の都合で海外に引っ越してしまうことになってなぁ。空港まで見送りに行って、そこで渡そうと思ってたんや……」

 

箱を撫で、フィルム越しのファーストシューズを複雑な心境で見つめる女性。

 

「でも、こんなん渡したら……私、絶対泣いてまう。そしたら、おばちゃんの息子も皆、しんどい気持ちになるやろ。そんなん誰も得せえへん。別れは涙で汚さん方がええ、ニコニコ笑って明るくお別れした方がええ。そんで外国でバリバリ仕事してもろて、家族で楽しく過ごしてくれた方がええねん」

「……」

 

女性の言葉を聞きながら、ましろはぎゅっと手を握っていた。いろんな感情が湧き上がってくる。女性の言葉に理解を示す気持ちもあれば同情する気持ちもある。でもやっぱり、一番大きいのは。

 

「「そんなの駄目です!!……あ」」

「きゅ、急にどうしたん?」

 

テーブルを叩きながら、大声を張り上げる2人。ここでましろとソラは互いに同じことを感じていたことに気付く。女性は、いきなり声を荒げた2人の反応に驚いているようだが、2人は互いに顔を見合わせたままだった。が、やがてましろが女性へと振り向く。

 

「本当の気持ちを言わないと駄目です!」

「イヤだって、寂しいって、ずっと一緒に暮らしたいって!自分の気持ちを誤魔化しちゃいけないんです!」

 

気持ちを誤魔化す。それを口にし、聞きながら、気持ちを誤魔化していたのは果たしてどちらなのかという思いが心の奥底で生まれる。でも今、こうして言葉にして初めてわかった。自分達が押し留めていた、相手を悲しませないためにと見て見ぬふりをしようとしていたものは何なのか。まるで、自分たちのことのように、2人の言葉は止まらない。

 

「泣いたっていい!」

「駄々を捏ねたって……」

「そしたら……きっと」

「きっと、その後は本当に笑ってお別れできる……そう思うんです」

「……」

 

2人の思いが詰まった言葉。それを聞いた女性は、それは決して間違いではないと寂しそうに、だけどどこか嬉しそうに笑いながら、

 

「かもしれへんな……でも、もう遅いねん」

「それって……」

 

飛行機の発つ時間。もうそれはすぐそこだ。今から空港に行き、孫にシューズを渡そうとしたところで絶対に間に合うわけがないのだ。だからこそ、諦めを含ませた表情で女性はシューズを見て、2人を見る。

 

「せやからその靴、やっぱりお嬢ちゃん家の赤ちゃんにあげといて。ほんま……ありがとう」

 

そうお礼を言うと、会計に立つ女性。確かに、普通なら今からではどうしようもないだろう。女性がその孫にシューズを届けるのは時間的に不可能だ。しかし、ソラとましろにはそれを可能にする方法が一つだけある。ましろがスマホの地図を開き、空港の位置を検索する。そして2人は顔を見合わせて頷くと、人気のないショッピングモールの屋上まで急いで移動し、ミラージュペンを手に取る。

 

「「スカイミラージュ、トーンコネクト!!」」

 

女性を助けるため。家族との最後の別れができるようにプリキュアへと変身する。そして屋上から身を乗り出して女性を探すと、まだ見える範囲に彼女はいた。

 

「いた!」

「はい!」

 

2人は屋上から飛び出すと、女性の前に着地する。

 

「わっ!?だ、誰!?」

 

突然空から女の子たちが現れた。それを前に驚きのあまり腰を抜かしてしまう女性。確かにいきなり現れてしまえばそうなるのも仕方のないこと。しかし今は時間がないのだ。説明不足なのは百も承知で、スカイとプリズムは手を差し出す。

 

「通りすがりのヒーローガールです!」

「時間がありません、行きましょう!」

「え!?どこに!?」

 

困惑する女性。彼女たちは自分を一体どこへ連れて行こうというのか。混乱する女性に、2人は告げる。

 

「「空港に!」」

「え……あ、あんたら……?」

 

空港。そしてスカイから手渡されたプレゼントケース。それを見て、女性の中で点と点が繋がっていく。目の前に現れた2人の正体と、彼女たちの目的。そして、このソラシド市である噂が流れるようになったことを思い出す。町中に突如として現れる怪物と戦うヒーロー。その名は、

 

「……プリキュア」

 

プリキュアの力なら、もしかしたら今からでも空港に行けるのかもしれない。そうすれば、あの2人が言ったように、本当の別れができるのかもしれない。そう思った女性は、プレゼントを受け取り、大事そうに抱える。

 

「……お願い」

 

女性の願いを聞いた2人は、女性を連れて空港へと目指す。プリキュアの身体能力であれば道路などの制限に囚われず一直線に空港まで向かうことが可能となる。そして空港に到着し、すぐに女性が時間を確認する。

 

「……まだ、間に合う」

 

その言葉にスカイとプリズムが嬉しそうに顔を見合わせる。女性が孫たちの元へと急いで走り出し、スカイとプリズムも変身を解いてその後を追いかけていく。そして、

 

「……あ」

 

いた。空港のロビーに取り付けられた椅子に、孫たちが嬉しそうに飛行機を待っていた。孫が笑い、それを見て両親が笑っている。それを見て、プレゼントを持つ手が震えてくる。だが、後を追いかけてきてくれたソラとましろの顔を見て、勇気づけられる。そして、

 

「?お母さん?」

「え……あ!?どうしたん!?急用が入ったって……」

「!ばあば!」

 

家族の元へと歩いていくと、彼らの方も女性に気付いたようだ。会えないと思っていた相手が空港に現れたことに驚いている中、孫は嬉しそうに手を伸ばしている。女性は孫に笑いかけると、息子にプレゼントを差し出す。

 

「これ、プレゼント。ファーストシューズ……」

 

堪えていたつもりだったが、やはり涙が出てきてしまう。そんな女性に息子が寄り添い抱きしめてあげる。そして、その様子を遠目で見ていたましろとソラもまた、知らずの内に涙を流していた。それは、ソラとましろが出会い、あげはやヤクモ、ツバサらといった様々な人と出会い、共に過ごしてきた日々を思い出してきたからだった。

 

「「……」」

 

2人は手を繋ぐ。後僅かであろう一緒にいられる時間。それを大切に過ごせるように。そして、その先に来る別れの日を、皆で心の底から笑顔で迎えられるように。そんな願いを、この手に込めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あいあーい!」

 

そして。エルの足には返したはずのものと同じシューズが履かされていた。

 

「お似合いですよ、プリンセス!」

「ふぅ……どうにかなってよかった……」

 

ご機嫌なエルを見て嬉しそうに語り掛けるツバサ。それに対しヤクモは多少疲れた様子でそれを見ていた。その手には充電器に繋がったスマホがあり、地図の画面が開かれている。

 

「よく見つかりましたね、同じ靴……」

「空港から帰る途中の靴屋さんを全部チェックして、やっと見つけたんです……」

「けど、ヤクモ君がレシートに載ってたシューズの品名を送ってくれたおかげだよ……多分、それがなかったらこっちも間に合ってなかったかも……」

「街の靴屋なんて知らないよ普通……」

 

ましろとソラもさすがに疲労困憊といった様子だった。既に時間は夕方。もうすぐヨヨが王様達に伝えた時間だ。その前にヤクモのアシストもあり、無事にシューズを手に入れたソラ達を、見送りのために来てくれたあげはも労う。

 

「それはお疲れ様だったね」

「皆、いいかしら」

 

と、ヨヨから声がかかる。ミラーパッドの調整が終わったということなのだろう。4人は出発のための最後の準備を行うと、ヨヨがトンネルを作っていた部屋へと向かう。

 

「ヨヨさん、本当にお世話になりました」

「ありがとうございました」

 

ソラとツバサがヨヨに頭を下げる。それにヨヨは笑顔を浮かべると、

 

「ボタンはあなたが押すといいわ」

 

ミラーパッドのボタンを押し、トンネルを開くようにとソラに言う。それを受け、ソラがボタンを押すと、昨日見たのと同じ、スカイランドへと繋がるトンネルが開く。

 

「2人とも、お土産よろしく!」

「はーい!」

「こっちの世界でも怪しまれなさそうなものは探してみるよ」

 

普段通り、調子よくお土産を頼むあげはにこちらも普段通りといった様子で返すましろとヤクモ。あげはとしても心のどこかでは一緒に行きたいという気持ちだってあったのかもしれない。しかしプリキュアではない彼女ではスカイランドに来ても何もできないだろう。それを理解しているからこそ、こうやって見送りに来てくれたのだ。それは、4人にも理解できた。

 

「気を付けて行ってらっしゃい」

「「「「はい!」」」」

 

ヨヨの言葉に4人は元気に返事を返すと、トンネルの先へと歩き出すのだった。

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