ソラとベリィベリーの戦いはソラの勝利で幕を閉じた。崩れ落ちるベリィベリーを見て、ソラは言う。
「弱いとか、強いとか……大事なのは正しいことをしたいっていう気持ちです。そうですよね」
「……」
「あなたは間違っています」
「……!わ、私は……!!」
悔しそうに拳を握るベリィベリー。ソラに言い返そうとする。
「全く、お前ってやつは……」
「ソラちゃん!大丈夫!?」
それに気付いたのだろう、これ以上拗れては困ると思ったのだろうか、アリリが仲裁に入ろうとするも、先ほどの攻撃を見ていたましろ達がソラへ駆け寄る。
「怪我とかは……」
「皆、見に来てくれたんですね」
それに気付いたソラがベリィベリーから視線を外して3人を見る。ヤクモはソラの左手を見る。思いっきり攻撃を受けていたが大丈夫なのだろうか。
「左手、大丈夫?」
「はい、もう痺れはありませんから。でも、ありがとうございますヤクモさん。あの時……あ」
「ソラさん?やっぱり怪我とか……」
「そういうわけじゃ……すいません」
ソラは一旦3人に断りを入れると、
「すいません、テストだって言われたのにヤクモさんから指示を……あれ?」
ベリィベリーに先ほど、ヤクモから指示をもらってしまったことを謝ろうとする。この戦いは元々、ソラが青の護衛隊として相応しいかどうか、その力を検証するためのもの。なのに外野の助けをもらってしまったことは謝罪すべきだと思ったのだろう。だが、
「ベリィベリーさんは……」
「頭を冷やしに行ったんだろう」
そこにベリィベリーの姿はなかった。どこへ行ったのかと視線を動かしていると、アリリが4人にそう語る。
「まぁ、色々ごたごたしてしまったが……ソラ、君を青の護衛隊の一員として迎え入れよう。先ほどのことは気にするな、あそこを狙ったベリィベリーも人の事は言えんし、触れないであげてくれ。本人が余計に惨めになるだけだ」
「あ……はい」
そう言われるとソラとしても黙って受け入れるしかない。しかし、ここで気になってくるのは、どうしてこんなことになっているかということ。
「あの……そもそも何があったんです?王様の計らいで青の護衛隊に入ったはずじゃ……」
「確かに……それがなんで迎え入れるかどうかってことに?」
「……ううむ……ベリィベリーの傷を広げたくはないんだがな……仕方ないか……」
「そちらはアリリに任せよう。ソラ。青の護衛隊の制服を渡そう」
「は、はい!」
「わかりました……ただ、すまないが3人とも、説明は後にしてもらってもいいだろうか?少々仕事が押していてな……夕方ぐらいになってしまうが」
「俺達はそれでも構いませんが……」
その説明をアリリが後ですることになったようだ。まずは先に片づけるべき案件があるとのことなので、一足早くその場から消えていくアリリ。そして青の護衛隊の制服をもらいにソラがシャララに連れていかれ、ヤクモ達はソラを待つために宿舎の中へと他の隊員と共に向かうのだった。
★
「失礼します!」
宿舎に響くソラの声。その声に隊員たちと、ヤクモ達が振り向くと、青の護衛隊の制服に身を包んだソラが立っていた。青を基調とした清楚で格好良い制服を着ているソラを見ると、やはり青が似合うとヤクモは感じる。
「ソラ・ハレワタールです!改めてよろしくお願いします!」
「うわぁ……!」
「凄い凄い!ヒーローだよ!」
青の護衛隊の制服を着たソラを見て喜ぶツバサとましろ。ヤクモも嬉しそうな表情を見せている。
「スカイランドのために、一緒に頑張ろうぜ」
「後で、異世界のことも教えてもらっていいかな?」
「おいおい、まずは仕事だろ?山ほどあるんだから、早速始めないとな」
「ええ」
「ようし、気合入れますか!」
ソラを歓迎し、それぞれ仕事を始めるため散っていく隊員たち。その姿を見送っていたましろ達だったが、ヤクモの視線がソラから離れていないことに気付く。
「ヤクモ君?」
「え?ああ……」
ましろに声をかけられ、自分がソラを見ていたことに気付くヤクモ。その姿を見たましろは、
「もしかして、見惚れてる?」
「えっと……凄く様になってるなって」
「あ、ほ、本当ですか?」
「そりゃ当然ですよ、なんだってあの青の護衛隊の服ですから!」
ヤクモに褒められて嬉しそうに照れるソラ。ツバサも目を輝かせてソラの着ている制服を見ており、友達が青の護衛隊に入ったという事実がとても嬉しいようである。
「青の護衛隊に入れてほしくて田舎から出てきて……どうすればいいかわからなかったけど、そうしたら攫われたエルちゃんを偶然見つけて、ソラシド市に落っこちて……そしてましろさんと偶然出会って、ヤクモさんにも偶然会えて、ツバサ君とも出会った」
「偶然ばっかりだね」
「巡り合わせがよかった、ってことなのかな」
青の護衛隊に入るまでの長い道のりを思い出すソラ。そのために異世界を訪れ、戦ってきたのだ。決して楽な道のりなどではない。しかし、そのおかげで自分は成長できたし、友達もできてここに立っている。その喜びをましろやツバサと分かち合えることが、そしてそんな今の自分をヤクモに見てもらえることが、とても嬉しいと感じていた。
「そうですね、ヨヨさんも出会いに偶然はないって言ってました。人と人が巡り合うことはいつだって必然、運命だって。出会いから物語は無限に広がっていく……皆、出会ってくれてありがとう。これからもずっと、友達でいてくれますか」
手を3人に差し出すソラ。その言葉に異論などあるわけがない。4人は手を合わせる。これからもずっと、友達でいる、そのための証明とするかのように。
「勿論だよ、ソラちゃん!」
「俺も、ずっとソラさんと友達でいたいよ」
「はい!これからもずっとですよ!」
そして4人は、笑顔で笑い合うのだった。
★
「……そんなことが」
夕方。今日の分の仕事が終わり、時間が取れたアリリからヤクモ達は朝、ベリィベリーとソラの間に起こった事を聞かされていた。そして一通りの話を聞いた後、3人は複雑な顔を浮かべていた。
「まあ……あいつも思うところがあったんだろう。どうか、悪く思わないでほしい」
「アリリ副隊長は……ソラさんの話を信じてくれたんですよね?」
「ああ、王様や隊長が信じていることだ、想像はつかんがきっと実際にあったことだと理解はしている。プリンセスも実際戻ってきたしな……ただ、やはり異世界と言われても正直ピンとは来ていないんだ。そこは許してほしい」
アリリはちゃんとソラの経験が現実のものだと信じてくれていたようだ。とはいえ異世界に対して理解が及びにくいのもましろとヤクモもソラとツバサからまた聞きした程度のふわふわしたイメージでしかなかったので理解できる。
「そこに関しては私達もスカイランドのことを似たように感じてたので……」
「……でも、どうしてそのベリィベリーという人はソラさんにそこまで突っかかってきたんですか?」
「そうですよ、ソラさんを嘘つき呼ばわりだなんて……それじゃプリンセスがどうやって戻ってきたか説明つかないじゃないですか」
「む、むぅ……これは本当は言いたくないんだがな……しかし……」
ここでヤクモがベリィベリーのことについて言及する。ツバサも追撃するように言葉を重ねていくが、アリリとしてもこれはあまり言いたくないという感情が強いようだ。
「あいつの個人的な事情にも関わってしまうから、ここで納得してほしいところなんだが……」
「またソラさんのことを目の敵にしないのなら俺は構わないんですが……」
「うーん……」
「苦戦しているようだな」
「!た、隊長!」
頭を掻きながらどのように場を凌ぐか考えていたアリリの元に、ソラを連れたシャララが現れる。
「ソラちゃん?」
「皆さん、どうしてここに?」
「アリリ副隊長から朝の事を聞いていたんですが……ソラさんは?」
「えっと、仕事が終わってシャララ隊長に挨拶をしたら、一緒に来てほしいと」
どうやらヤクモ達にも関係する話のようだ。ソラに椅子に座るように促すと、ソラは空いているヤクモの隣の席に座る。そしてシャララはアリリの隣に座ると、口を開く。
「我らはまだ、ランボーグと呼ばれる敵との交戦経験がない。暫くはプリキュアの力を当てにする可能性が高いだろう。そのために、青の護衛隊との連携を密に取れるようにする必要があると思ってな……あの子、ベリィベリーの事を皆に知ってもらうことにした」
「……」
まだアンダーグ帝国の新たな刺客は出てきていないが、それも時間の問題だろう。そして、またランボーグが現れた際に青の護衛隊がどれだけ戦えるかはまだ未知数だ。それに、ランボーグとの戦闘に関してはプリキュアの方が専門家だ。最初の方はソラ以外のプリキュアにも手を貸してもらうことも出てくるだろうとシャララは考えているようだ。
「ベリィベリーは小さい頃、腕に大きな怪我をしてな。そのせいで3年間、入隊試験に落ち続けたんだ。だが、誰よりも努力して強くなった。だから、あんなふうにこだわってしまったのだろう。強さと弱さに……」
ソラに対して突っかかってきたのも、自分はずっと苦労してきてやっとのことで入隊できたというのにという気持ちの裏返しだったのかもしれない。実際、それまでの経緯はともかくとして、ソラはいきなり鶴の一声で自分と同じ場所に現れたというふうにしか見えなかったのだろう。
「そんな事情が……」
「……」
申し訳なさそうにアリリが顔に手を当てる。同じ隊員の過去をばらしたくないという気持ちはやはり強かったのだろう。ましろ達もどう言葉を返せばいいかはわからないようで複雑な顔をしている。
「……私も酷いことを」
ベリィベリーが信じてきた信念を否定してしまった。そのことを思い出し、落ち込むソラ。そんなソラにシャララは優しく語り掛ける。
「今のベリィベリーには必要な言葉だった。彼女には明日、改めて話をする。気にしないでほしい……ただ、覚えておいてほしいんだ」
「?」
「正しいことを最後までやり抜く。それがヒーロー……ソラ、君の言う通りだ。君だけじゃない、他の3人もその気持ちでここまで来てくれたのだろう。でも、だからこそ、正しいとは何なのか、ヒーローは考え続けなければならないんだ」
「考え続ける……」
シャララの言葉を復唱するように呟くソラ。
「ベリィベリーにはベリィベリーの正しさがある……皆そうだ。難しいな、ヒーローというものは」
「……私、行ってきます!ベリィベリーさんに謝ってきます!」
ベリィベリーには自分の正しさがある。それはソラやヤクモ達も同様だ。他人にとっての正しさを否定し、自分の正しさを無理に押し付けるのは、本当に正しいことなのか。そう考えたソラは、今すぐにでも謝りに行こうと席を立つ。
「ソラちゃん!」
ましろが声をかけるも既にソラは出て行ってしまっていた。ヤクモ達もシャララ達に一礼するとソラを追って部屋を出ていく。2人残されたアリリは、深くため息を吐く。
「本当に良かったんですか、言ってしまって。確かに薬が必要だったとはいえ」
「ああ、しかし今すぐか。良い子が来てくれたな」
「それは……そうですが……しかし、アンダーグ帝国……力だけを重視する未知の勢力……」
ソラはベリィベリーの弱さを否定し、強さを肯定する姿勢にアンダーグ帝国を重ねてしまったのかもしれない。対するベリィベリーもまた、ソラの突然の入隊には好ましい感情を抱けなかった。お互いに相手のことを理解していないから起きたすれ違いに、やれやれと言ったように頭を痛めるアリリ。
「この件は、長く続きそうだな」
「ええ……」
「副隊長!大変です!!」
ひとまず明日から。そう考えた矢先に、隊員の一人が慌ててアリリの部屋へと転がり込んでくるのだった。
★
時は少し巻き戻る。夕暮れの王都。人気のない裏路地の一角、階段にベリィベリーは座り込んで泣いていた。ここまで必死に努力をしてきたのに年下の少女に負け、その上自分が拘ってきた強さを否定された。そのショックは彼女の心に深い傷を与えていた。
「……」
涙を拭う。もう夕刻、結局一日中仕事もほっぽり出してずっとここにいたままだった。いい加減泣くのをやめて、仕事をしなかったことを謝りに行った方がいいだろう。時間と共にほんの少しだけ考える余裕ができたベリィベリーが顔を上げると、1人の男がこちらに歩いてきていた。
「……?」
「ずっと、1人で頑張ってきたんだね」
見慣れない男だった。パンクなファッションに身を包んだ長身の、黄緑色の髪に紫色のメイクをした、悪くない顔つきの男は、ベリィベリーに優しい言葉をかける。しかし、その言葉とは裏腹に、明らかに邪気を内心に含んでいるのは、今のベリィベリーでもすぐにわかった。
「っ!だ、誰だ!」
素早く階段から跳び上がり、距離を取って構える。臨戦態勢に入ったベリィベリーだが、男は気にする素振りを見せることなく、優しく言葉をかけていく。
「苦しかったね……寂しかったよね……もう頑張らなくていいんだよ。君を傷つけるこんな世界、僕が壊してあげるから」
「何を言って……」
「カモン、アンダーグエナジー!」
男が右手にアンダーグエナジーを込めて地面へとつける。瞬間、地面から噴き出したアンダーグエナジーがベリィベリーへと向かう。それを慌てて手袋で受け止めるベリィベリーだったが、男の目的は最初からこの手袋。アンダーグエナジーが注がれた手袋がベリィベリーの手から離れ、質量を増していく。その急激な膨張に弾かれ、ベリィベリーが吹き飛ばされる。
「きゃあああああ!?」
「ランボーグ!!」
生まれたのは青い鉱石のような体を持つ人型のランボーグ。その右手は巨大な籠手のようなものが取り付けられており、それを一度振るえば凄まじい威力が出るだろうということは容易に予想できる。
「あ……ぐ……」
吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた衝撃で意識を失ってしまうベリィベリー。だが、ベリィベリーの悲鳴は、偶然にも彼女を探しに来ていたソラ達の耳に届いていたようで、すぐにこの場に4人が現れる。
「ランボーグ!?でも……」
「ああ……何も感じなかった!」
「嘘……なんで!?」
そこにいたランボーグを見て驚くヤクモ達。だが、ランボーグが出現したことよりも、何故かヤクモはランボーグの出現に気付けなかったことに困惑する。一体どうしてなのか、自分の中のアンダーグエナジーを探ろうとする、そして気付く。
(!?俺の中のアンダーグエナジーが感じ取れない……?スカイランドだから……?)
アンダーグエナジーが探れない、そして使えない。自分の中にあることは確かにわかるのだが、それの使用が一切できなくなってしまったのだ。しかし、その代わりに別の力が満ちているようにも感じる。と、ヤクモが自分の身に起こった変化に困惑している中、ソラがランボーグの足元で気絶しているベリィベリーを発見し駆け寄ろうとする。と、
「大丈夫、気絶しているだけだよ」
「!」
「弱い者には手を出さない。そう決めてるんだ」
聞こえてきた男の声に4人が顔を上げるとランボーグの肩にベリィベリーが遭遇した男が乗っていた。
「だってほら、僕って優しいからわかっちゃうんだよね。弱い者の悲しみ、怒りが……なんかそういうの」
「アンダーグ帝国の敵か!?誰だ!」
「バッタモンダー」
そう名乗ると、バッタモンダーは指パッチンと共にランボーグの上から消える。だが、バッタモンダーが消えるのと同時に、ヤクモ達もミラージュペンを取り出していた。
「「「「スカイミラージュ!トーンコネクト!」」」」
ミラージュペンが変形し、ヤクモがスカイトーンを装着する。瞬間、ヤクモの全身を以前よりも強いエネルギーが包み込んでいく。
「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!!」
「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!!」
「夜空に漂いひろがる雲!キュアクラウド!!」
「天高くひろがる勇気!キュアウィング!!」
変身を終えた4人が並び立つ。しかし、そこに現れたキュアクラウドの姿は以前とは異なっていた。全体的な服装はそのままだったが、コートの襟やグローブ、ブーツの裾などに白い雲を連想させるふわふわとした綿が追加されている。さらに髪にも雲の形をした髪留めが付けられており、以前よりもより華々しい姿へと変化していた。
「レディー、ゴー!」
「「「「ひろがるスカイ!プリキュア!!」」」」
スカイランドでの初陣を決めるかのように4人は名乗りを上げる。と、3人の視線がクラウドへと向けられる。
「クラウド、その姿は!?」
「わからない、だけど……スカイランドに来たからか、ランボーグは気付けなくなったけど、前より力が出てる気がするんだ」
「……わかりました、頼りにしてますよ!」
「ランボーグ!」
ランボーグが堅い右手を4人が立つ塀に叩き込む。それが命中する直前に回避した4人だったが、空に跳び上がったスカイの目に倒れたままのベリィベリーが映る。
「!ベリィベリーさん!」
「このままじゃ攻められないな……ウィング!」
「はい!」
クラウドの意図を理解したのだろう、ランボーグの周囲を残像が残るほどの速度で駆け巡りながら攻撃を叩き込んでいくウィング。ここがスカイランドだからか、十分な気合を含んだその動きはソラシド市の頃よりもより洗練されているように見える。
「ランボーグ!」
「くっ!」
しかしランボーグもただでやられるつもりはない。右手を勢いよく振るうとその風圧でウィングを吹き飛ばす。どうにかバランスを取り直そうとしているウィングに向かい、右手から電撃を放とうとしたランボーグだったが、プリズムが周囲に大量の光球を生み出すとそれらをランボーグへと次々放ち、怯ませる。
「たあああ!」
そこにスカイが拳を放つ。だがそれを籠手で受け止めたランボーグはそのままスカイを勢いよく吹き飛ばしてしまう。
「きゃっ!?」
「スカイ!」
だが、吹き飛ばされたスカイをクラウドがキャッチする。クラウドに受け止められたスカイがほっとしながらクラウドへと笑いかけると、クラウドも笑みを返す。
「右手の堅さと威力、後電撃か……」
「……さっき、ベリィベリーさんの姿を見た時、手袋が消えていました。多分あのランボーグは……」
「う……」
ランボーグの元となったのはベリィベリーの武器。それを確信したプリキュア達。と、ここで戦闘の音が耳に入ったからかベリィベリーが意識を取り戻す。そしてベリィベリーの視界に映ったのはランボーグ。それを見て、自分の手袋がランボーグにされた光景を思い出す。
「!や、やめろ!」
「「「「!」」」」
自分の武器を怪物にされて暴れてほしくない。だが、ベリィベリーの言葉ではランボーグを止めることは当然できず、むしろベリィベリーの存在に気付いたランボーグが標的をプリキュアからベリィベリーへと移してしまう。
「いけない!」
プリズムとウィングが慌ててベリィベリーへと攻撃しようとするランボーグを止めようとするも遅い。ランボーグの拳は無情にもベリィベリーを潰してしまう。
「あーあ……悲しいね、弱いって」
目の前で起こった光景を見て、そう呟くバッタモンダー。しかし、
「ベリィベリーさんは、弱くなんか……ない!」
「……ん?」
「ラン……!?」
ランボーグの拳の下からスカイの声が聞こえてくる。クラウドと一緒に居たはずだが。バッタモンダーがクラウドに視線を移すと、クラウドはバレーボールを打ち出すような形で手を組んでおり、その手には雲のような物体が浮かんでいた。それを見てクラウドが何をしたのか気付いたバッタモンダーが次にランボーグの拳の方に視線を移す。震えるランボーグの拳。その下には、スカイがベリィベリーを守るように潜り込んでおり、拳を受け止めていたのだ。
「……ごめんなさい」
「え……」
ランボーグの攻撃を受け止めながら、ベリィベリーに謝罪するスカイ。そこでベリィベリーも気付く。目の前にいるのがソラなのだと。
「1人で苦しんでいたこと……ずっと頑張ってたこと……私、何にも知らないのに……間違っていますなんて……!」
「っ……」
ベリィベリーの瞳に涙が浮かぶ。それはどんな思いだったのか。ベリィベリーの顔が見れないスカイからはわからない。
「はぁ!!」
足腰に力を入れ、ランボーグの拳を押し返すスカイ。それによってのけ反り、尻もちをついてしまうランボーグ。あまりのパワーに驚きながらもランボーグがスカイとベリィベリーに向かって電撃を放つ。
「!」
「スカイ!プリズム!」
「はい!」
「うん!」
だが、スカイ達とランボーグの間にクラウドが割って入る。その手に浮かんでいたのは、先ほどスカイをベリィベリーの下へと射出するために生み出した雲。それを大きくして盾のようにし、電撃を受け止める。
(スカイランドに来たからなのかもしれない……今なら、前よりいろんなことができる!)
電撃を受け止めた雲が帯電し、雷雲となる。それをランボーグへと投げ返し、逆に電撃を自ら浴びてランボーグが麻痺してしまう。そのチャンスを、スカイとプリズムは逃さない。
「「プリキュア!アップ・ドラフト・シャイニング!!」」
「スミキッター……」
自らの力を逆に利用され身動きを封じられ、スカイとプリズムの技によって浄化されてしまうランボーグ。戦闘の痕が修復され元通りの街並みに戻っていく中、バッタモンダーは自分のランボーグが倒されたことに苛立ちを覚える。
「あぁ……?ざけんなよ!」
思わず口をついた怒りの声。それに気付き、慌てて平静を取り繕うと、
「……おめでとう、お互いいい戦いだったよ、また会おう……バッタモンモン」
そう言い残して消えていく。バッタモンダーが消えるところを見ていることしかできなかったが、やはりクラウドはそのアンダーグエナジーを感じ取ることはできないままだった。
(代わりにできるようになったことも増えたけど……ま、今できることでどうにかするしかないか)
今の自分のことをそう結論づけ、変身を解くヤクモ。同じく変身を解いたソラ達と共に、元に戻ったベリィベリーの手袋を拾う。
「……」
手袋を手にしたソラ達が顔を上げると、そこには他の青の護衛隊のメンバーたちがいた。どうやら、4人が戦っている間、人々の避難などを裏でやってくれていたようで、アリリが後処理の指示を忙しなく出している。そしてベリィベリーの肩にはシャララの手が置かれ、慰めてもらいながら話をしていた。それを見て、思わず駆け寄ろうとするソラ。しかしその肩をましろが掴む。
「ソラちゃん……今は、そっとしておいてあげよう」
「でも……」
青の護衛隊として、皆を守るために自分が使っていたはずの武器をランボーグにされ、街を破壊する兵器にされてしまった。その屈辱がどれほどのものかはわからない。だが、顔は見えずとも今も肩を震わせて泣いているベリィベリーの姿は4人にもわかる。果たして今の彼女に声をかけていいのか。ましろの考えることも、間違ってはいないのだろう。
「ヤクモさん……」
「うん……ソラさんの気持ちもわかるけど……自分の大切なものがランボーグにされたんだ、それを受け入れる時間は必要だと思う」
「……はい」
これが正解かはわからない。だが、ヤクモも間を置いたほうがいいといったことでソラも渋々といった様子で受け入れる。そしてその場を去ろうとした時だった。
「……ソラ」
「!」
ベリィベリーに名を呼ばれ、ソラがすぐさま振り向く。まだ涙を浮かべたままの状態だったが、ベリィベリーがそこにはいた。ベリィベリーは、ソラを見ると笑う。
「ありがとう……ごめんね……ソラ」
そしてベリィベリーの口から零れる謝罪の言葉。実際にプリキュアとして戦うソラの姿と、おそらく先ほどシャララからプリキュアについての話を聞いたのだろう。自分の非を認め、仲直りしたい。そう思って出てきた言葉に、ソラも嬉しそうに涙を浮かべるとベリィベリーに抱き着き、2人は笑い合う。その姿を、皆が微笑ましく見ていたのだった。