曇り空の夜のプリキュア   作:popoponpon

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第35話 安らぎの一時

「見つけたぞー!」

「もう逃げ場はない!投降しろ!」

 

青の護衛隊の隊員たちの声が響く。彼らの目線は屋根の上に立ったまま佇んでいるバッタモンダーに向けられていた。

 

「……はぁ」

 

鬱陶しそうに青の護衛隊を見るバッタモンダー。ランボーグを召喚して蹴散らしてやりたいところだが、今の状態では万全なランボーグの召喚は先ほど行ってしまったため、新たな召喚は難しい。それに今は別の事も考えたい。横やりを入れてくる青の護衛隊の雑魚共を潰すのは簡単だが、またプリキュアが来ても面倒くさい。

 

「そんなにやりたいならやらせてあげるよ」

 

やる気なく、アンダーグエナジーをその辺に落ちてた石ころに込めるバッタモンダー。新たに生まれたランボーグが青の護衛隊の前へと立ちはだかる。

 

「くっ……!」

「こいつ、さっきランボーグを作ってたんじゃないのか!?まだ戦えるのか!」

「バッタモンモン」

 

青の護衛隊の意識がランボーグに向けられた隙に転移するバッタモンダー。残された青の護衛隊は目の前のランボーグを前に構える。プリキュアがいないがどうにかなるのか。そんな不安を払拭するように、その場にいたアリリが声を出す。

 

「ランボーグ程度に負けるな!我々は青の護衛隊!このスカイランドを護るヒーローだ!」

「!はい!」

「覚悟しろランボーグ!」

 

アリリの鼓舞を受け、青の護衛隊がランボーグとの戦闘を開始する。それぞれの得物で切り付け、防ぎ、ランボーグを着実に追い詰めていく。ランボーグも反撃を試みようとするも、それもままならない。そして遂に、

 

「おおおおお!」

 

アリリの気合と共に振るわれた一振りがランボーグを両断する。両断されたランボーグが黒いアンダーグエナジーの靄となって消滅していく。

 

「……た、倒した……」

「ランボーグを俺達の手で倒した……」

 

プリキュア以外によるランボーグの初討伐。それを成し遂げた青の護衛隊。その姿は、戦闘が終わったのを知り、この場に集まってきたスカイランドの民達の目にもはっきりと映っていた。

 

「すげぇ!さすが青の護衛隊だ!」

「ありがとう!青の護衛隊!」

「最高よ!」

 

皆の声援を受けながら、笑顔を浮かべていく青の護衛隊。ランボーグ討伐の達成感を感じながらその場で後処理などを進めていく彼らを、野次馬に紛れた一人の男が見ていた。

 

(……これは……)

 

服装はスカイランドの人間たちが一般的に着ているようなありふれたもの。肌色も良く、髪色も深緑に変わっているが、間違いなくそれはバッタモンダーの変装だった。 アンダーグエナジーを用いて行われた簡単なものだが、身を隠す程度には十分に役立つ。このまま野次馬に紛れて消えてしまおうと考えていた彼だが、ランボーグを倒した青の護衛隊を見てあることに気付く。

 

(……成程)

 

今まではプリキュアがランボーグを倒していたために気付くことはなかった。だが今回偶然にも発見した事実は、間違いなく有用なものである。予想外の収穫に気分を良くしながら、バッタモンダーはこの場を去るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後。今日も、青の護衛隊も朝から慌ただしい一日となっていた。先日行われたアリリらのランボーグとの戦闘。それに関する情報を元に完成された対ランボーグ用の戦略が遂に施行されたのだ。それだけではなく、街中にばら撒かれたバッタモンダーの手配書は成果をきちんとあげており、バッタモンダーが出現したという報告が次々と届けられていた。

 

そして近くをパトロールしていた隊がバッタモンダーと遭遇するも、バッタモンダーはランボーグを召喚して逃げ出してしまう。しかしその強さはこれまで観測されていた個体よりも弱く、その点はソラからも確認が取れている。この点から考えられるに。

 

「強力なランボーグを召喚できるほどの余力が今のバッタモンダーには残されていない……」

 

執務室で資料を読みながら呟くシャララ。ランボーグを呼び出すために使うアンダーグエナジーは無限ではない。一回強力な個体を召喚してしまえばエネルギーの補充などを行わなければ次の個体を召喚できないのもソラ達から確認済み。そしてバッタモンダーが弱いランボーグを召喚して逃げているのも、体力の回復を行うため、倒される前提でランボーグをあえて弱くしている可能性が高い。これだけならばバッタモンダーの目論見通りに事が進んでいる、ように見えるのだが。

 

「……だがこの頻度で、本当にアンダーグエナジーが回復するのか?」

 

バッタモンダーが発見され、ランボーグと交戦した時間を記録した資料を見る。一日で10回近くはランボーグと青の護衛隊との戦闘が行われている。アンダーグエナジーの回復力がどれほどのものかはわからない以上、あくまでシャララの予想と勘になってしまうのだが、プリキュア達の出番が必要なほどの個体を呼べるほど回復できるかどうかというと首を傾げてしまう。だが、

 

「追い詰められたら何をするかはわからない、か……」

 

警戒するべきなのは、バッタモンダーが何かを隠している場合だ。このまま追い詰め、捕縛し、アンダーグ帝国の情報について聞き出せればそれが最善なのだが、そんなうまくいくわけがないだろうという確信があった。

 

「……となると、今必要なのは青の護衛隊ではなく……プリキュアの力、か」

 

もし、また以前のような強力なランボーグが現れたらプリキュアの力が必要となる。青の護衛隊でも対処できる今のうちに、備えておかなければならないなと考えていると、

 

「失礼します」

 

ソラが執務室へと入ってきた。今日の仕事が終わったため、上がろうとシャララに一言挨拶をしに来たのだろう。

 

「シャララ隊長、お先に失礼します」

「ああ……そうだ、ソラ」

「はい、どうしました?」

 

ソラの姿を見て、丁度よかったとシャララが引き留める。一体何を聞こうとしているのかとソラが疑問そうに聞き返す。もしかしたら何か重要なことかもしれないと考えたのか、少しだけ表情を険しくしているソラを見たシャララは、そこまで重要なことではないと笑いかけながら話し始める。

 

「明日は休むといい」

「……え?休むって……」

「今日まで、ランボーグとの戦闘では大いに活躍してくれていたからな。それに、青の護衛隊の仕事に慣れるのも大変だっただろう。休めるときに休んだ方がいいと思ってな」

 

状況が状況だったのもあり、ソラにとっても多忙な日々が続いていただろう。青の護衛隊の業務だけでも負担は大きいだろうし、そこにランボーグが現れれば数日前まではソラや他のプリキュアに任せっきりだった。今日こそ他の隊員たちでもランボーグの対処が可能だったが、当然ソラの近くに現れたランボーグに関しては今まで通りソラの手で倒されていたのだ。本人もこうして普段通りに振る舞ってこそいるが目に見えないだけで疲労も間違いなく大きいはずだ。

 

「しかし、私だけ休むのは……」

「気にするな。それに、プリキュアであるソラには休めるときに休んでもらいたいんだ。今のランボーグは我々だけで対処できると判明しているしな」

「あ……」

 

その発言に何故自分を休ませようとしているのかの意図を理解するソラ。シャララの気遣いに感謝しながら、せっかく休みをもらうなら他の皆と残り少ない時間を過ごせるかもしれないと考える。そんなソラの考えが伝わったようだ。

 

「君の友人たちも、もうすぐ元の世界に戻ってしまうのだろう?ゆっくり過ごしてくるといい」

「……はい!」

 

シャララの言葉に、ソラは嬉しそうに返事を返すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、いうわけで今日は一日お休みです!」

「そっか……シャララ隊長が気を使ってくれたんだね」

 

そして翌日。普段着に着替えたソラはヤクモ達と共に朝食を食べていた。この数日でスカイランドでの調理にも慣れたましろとヤクモが一緒に作った食事を久しぶりに4人で揃って食べながら、昨日あったことを話すソラ。その話を聞いて、ましろも嬉しそうに返す。

 

「でも、やっぱり青の護衛隊は凄いです!ランボーグを倒してしまうんですから!」

「一応私たちも倒してるんだけどね……」

「凄いのは事実だから……」

 

ソラの話を聞いてまたしても目をキラキラと輝かせるツバサ。それは同意するがヤクモが気になったのは、シャララがソラを休ませようとした意図。4人でゆっくり過ごしてもらいたいというのはもちろんあるだろうが、今が嵐の前の静けさだと予想したシャララの判断もまた、ヤクモにとってはあり得る話だと感じていた。

 

「バッタモンダーが何かをするかもしれない、か」

「はい……私も、そう思います。現にカバトンも、段々追い詰められていましたから」

 

ソラが思い出したのはカバトンとの決闘。あの決闘も、カバトンにとってはまさに生きるか死ぬかの瀬戸際。このまま、バッタモンダーのランボーグを倒し続ければ、バッタモンダーもまたカバトンのように徐々に立場を脅かされていくだろう。そうなれば、バッタモンダーも何をしでかすかは予想がつかない。

 

「ですが、どんな手段を取ろうと負けません!プリキュアとして、そして青の護衛隊としてこのスカイランドを、そしてエルちゃんを守ってみせます!」

 

ぐっと拳を突き上げて高らかに宣言するソラ。青の護衛隊としての数日を経て、雰囲気も以前より頼り甲斐が出てきた。そして、その宣言を成し遂げるための意思も実力も今の彼女には備わっているだろう。そんなソラの宣言に拍手をする3人。

 

「……あ、はは、まぁそういうわけで。なのでそのためにも今日は全力で休もう、というわけです」

 

その拍手がちょっと恥ずかしかったのか照れながら話を締めくくるソラ。4人で一緒に出掛けたり遊んだりしてもきっと楽しいのだろうが、せっかくソラが今日は自由なのだからソラが一番安らげるようなことも考えたいとましろは悩み始める。

 

「……ましろさん?」

「あ、そうだ」

 

と、何かを思いついたましろが、ヤクモとソラを交互に見る。一体何を思いついたのだろうかと2人が首を傾げていたが、ツバサは何か変なことでも思いついたんだろうと言いたげな表情になる。

 

「2人でゆっくりしたらどうかな?」

「「え?」」

 

声がハモり、お互いに顔を見合わせるヤクモとソラ。その顔には驚きというよりも困惑の色の方が大きい。

 

「2人って……どうしたのましろさん。4人の方がいいと思うんだけど……」

「そうですよ、この4人で集まれるのって……もうあまりありませんし……」

「だからだよ」

 

数少ない時間でわざわざ2人になるのを優先する理由はあまりないように思える。ヤクモとソラの考えは一緒のようだが、ましろには別の意図があるようだ。

 

「私もヤクモ君ももうすぐソラシド市に帰っちゃうけど、別に会えないってわけじゃないでしょ?トンネルは繋がったままだからいつでも来れるし……でも、来るとしたらやっぱり、2人一緒になっちゃうでしょ?」

「確かにそうですけど……?」

 

ヤクモが別でミラーパッドを持っていたり、トンネルを自力で作れるみたいな特殊な能力があるのであれば話は変わってくるが、ミラーパッドを持っているのはヨヨだ。スカイランドにソラシド市から向かうとなればヨヨに頼む必要があるし、場合によってはましろだけ来るということもあるかもしれないが、基本的にヤクモがスカイランドに行くにはましろと同行する形になるのだ。となると、

 

「だからさ、2人でのんびりしてきなよ。4人でならちょくちょく集まれるけど、2人で遊びに行くってのはあんまりできないでしょ?」

 

ましろと一緒に来たのにそのましろを置いて2人で遊びに、というわけにもいかないだろう。数少ない機会で集まったのなら、その時間を全員で分かち合いたいという方向に思いが寄っていってしまう。そう考えると、2人でのんびりできるのはこの時しかないのだ。

 

「それに……ね、ヤクモ君」

「ん?……あ」

 

ちらとましろが部屋の隅にいつの間に移動させていたのか、リュックをちらと見る。ヤクモもその視線に釣られていたが、リュックを見たことでましろが何をやろうとしているのかにやっと気づく。そのためのサプライズをソラに仕掛けたいがために一旦ソラを外に出したいのだろうと。

 

「ヤクモさん……?」

「あー、うん……そうだね。ましろさんの言う通りだし、確かに今後そういう機会はないだろうから……ソラさんと出かけたいなって思ったんだけど……」

「そ、そうですか……?」

 

ソラと2人で一緒に過ごせるのなら嬉しさはあるが、それは自分だけの話。ソラからすれば自分と一緒にいるよりも4人であれこれした方がもっと充実していると考えてもおかしくない。そう思っており、もっと食い下がるかと考えていたのだが。ヤクモにそれを持ち掛けられたソラは意外と肯定に近いような反応を見せていた。

 

「でも……ましろさんは本当にいいんですか?ツバサ君も……」

「2人がいいのならいんじゃないですか?僕はソラさんとはいつでも会えますし……」

「気にしないでいいんだよ、ソラちゃんがやりたいって思うことをやればいいんだから」

 

しかし、気がかりなのはましろやツバサのこと。とはいえツバサは特に気にしていないといった様子であり、ましろもソラの自由に任せたいと言うだけだった。それを受け、自分はどうしようかと考えるソラ。4人で一緒に過ごしたっていい、しかし、ヤクモと2人きりになれる機会がましろの言うように極端に少なくなってしまうかもしれないと考えると。

 

「……じゃあヤクモさん、一緒に出掛けましょう!」

「いいの?」

「はい!」

 

何故か4人よりも2人で無性に一緒に過ごしたくなった。そう考えてからのソラの行動は早かった。即座にヤクモの提案を承諾して立ち上がると、ヤクモの腕を握る。

 

「早速出かけましょう!」

「え?あ、ちょっと」

「時間は限りがあるんですよ!さぁ行きましょう!」

 

ソラに引っ張られるように立ち上がったヤクモを連れてソラが外へと出ていく。その姿を見送ると、

 

「じゃ、私たちも準備しよっか」

「……何を企んでるんです?」

「それはね……」

 

ましろがリュックから一つのケースを取り出す。それを見たツバサは、まさかそんなものが入っているとは思っていなかったのか驚いた表情を浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ヤクモと共に外に出て行ったソラ。そして2人は一通り町中を歩いたりもしていたのだが、この数日である程度はヤクモも慣れ、ソラも青の護衛隊のパトロールなどで歩いたりもしており、お互いある程度把握していて思ったことがある。それは、

 

「……スカイランドって、娯楽施設少なかったりする……?」

「えっと……そ、そうですね……ソラシド市と比べるとその……」

 

仕方のないことだがソラシド市とスカイランドでは娯楽の豊富さに圧倒的な差があるということだ。科学を筆頭とした技術が発達していることがやはり大きいのだろう。ソラシド市でソラがやったようなボウリング、ソラも名前だけ聞いたことのあるカラオケやゲームセンターなどといった施設はスカイランドにはない。それに施設だけに目を向けなくてもスマホでいくらでも調べられるしゲームや小説なども読める。それと比較してしまえばやはり、娯楽という観点では少ないと感じても仕方がないと言える。

 

「で、でもスカイランドにも魅力はたくさんありますよ!」

「うん、のどかで良いところだよね」

 

だが、それなら別の楽しみ方を見出せばいいだけの話だ。ヤクモが顔を上げると、空を鳥たちが飛んでいる。今、2人がいるのは王都へとやってきた鳥たちが休む小屋のような場所からちょっと離れた、湖がある広場だった。ここまでは来たことがなかったなとぼんやり思いながら湖のほとりでソラと共に座ってると、耳に鳥たちが飛ぶ音や、水の跳ねる音などが聞こえてくる。

 

「こういう静かなのも結構好きだよ」

「そうですか?ならよかったです」

 

ソラも、ヤクモが満足げな表情を浮かべているのを見て気分がいいようだ。尤も、2人で一緒にいられることが嬉しいのだが、それは本人もあまり気付いていない。

 

「……ふぅ」

 

ふと、溜息が漏れてしまったソラ。それを聞いたヤクモが心配そうにソラの顔を覗き込む。

 

「……や、ヤクモさん?どうしました?」

「いや、やっぱり疲れてるんじゃないかなって……」

「いえいえ、そんなことはありませんよ!毎日がすっごい充実してますし!」

 

慌ててそれを否定するソラ。彼女の言っていることは確かに本当の事なのだろう。しかし、だからこそ見えない疲労が溜まっていてもおかしくはないのではないかとヤクモは考える。夢中になってるときは気付かないが後になってみるとどっと疲れが出てくる、あんな感じだ。

 

「そうかもしれないけどさ。なんかそう見えちゃったから……」

「そ、そうでしょうか……」

 

とはいえソラも若干の心当たりがあるのだろうか、少々複雑な表情を浮かべる。

 

「少し横になって考えてみたりとかしてもいいんじゃないかな」

「そうですね……」

 

ヤクモの言葉に従うように芝生に横たわるソラ。緑色の芝生は柔らかく、暖かい陽の光が降り注いでくるのも相まって、自然と眠気が湧き上がってくる。

 

「……」

 

次第に意識がぼんやりとしていくソラ。気付けば凄く疲れが出てきたような感じがする。

 

「なんか……凄く疲れてきた気がします……」

「やっぱり疲れてたんだね……体を動かしてたから?」

「多分違うかも……書類仕事とか、全然最初はわからなくて……」

 

ずっと体を鍛えてきたソラにとっては単純な肉体労働はむしろ得意な方だ。疲れもそこまで引きずるようなことでもないのだろう。しかし、初めてとなる書類仕事などは負担や疲労が大きいようだった。

 

「おかしいですね……昨日ちゃんと寝たのに……今日が楽しみで眠れなかったのかな……」

「じゃあ少し寝たらいいんじゃないかな?」

「でも……寝たくないです」

「仮眠だよ、少ししたら起こすからさ。それなら問題ないんじゃない?」

 

こういうときは仮眠でも取って眠気を吹き飛ばすに限る。眠りたくないと駄々を捏ねるような甘い声音を突然出してきたソラにドキっとしつつも、自分が起こすからと説得すると、じゃあいいかと納得したのか、段々ソラの瞼が重くなっていく。

 

「……あ……」

 

そして完全に瞼が閉じた、と思ったらまたぼんやりと瞼が開かれる。何かあったのかとヤクモがソラを見ていると。

 

「……枕……」

「!?」

 

完全に寝ぼけているのか、枕を求めて少しだけ頭を上げたソラはなんと、ヤクモの膝に頭を乗せてきたのだ。突然の行動に驚くも、ソラが寝かけているのを見て慌てて出かけた声を呑み込む。

 

「……」

 

ソラの寝顔や寝ている仕草を見ていると、可愛くて見惚れてしまう。まさか、膝枕するような形になるとは思っておらず、心臓がバクバク鳴っているし、顔も熱い。おそらく周りから見たら顔も真っ赤になっているかもしれない。だというのに、それに比例するように今の状況にドキドキしており、嬉しさを感じている自分がいる。

 

(落ち着け……落ち着こう……)

 

少ししたら起こす、といったが、もうちょっと長くとってもいいんじゃないか。そう考え始めた自分の思考に喝を入れるように首を横に振って深呼吸をすると、ソラの睡眠の邪魔にならないように自分も背中を倒してのんびりと空を見上げる。幸い、自分の方はそこまで疲労が溜まっておらず、よく眠れていたようで眠気が襲ってくることはない。流れる雲を見ながら、この心地の良い時間をヤクモも過ごすことにするのだった。

 

 

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