曇り空の夜のプリキュア   作:popoponpon

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第37話 巨大ランボーグ強襲

 

 

「号外号外~!」

 

鞄に大量の新聞を詰め込んだ男が声を上げて走る。その手に掲げられている新聞には、青の護衛隊がランボーグを次々と撃破していったことが書かれていた。

 

「……なんて書いてあるの?」

「さぁ……」

 

ばら撒かれている新聞を1枚手に取り、覗き込むヤクモ。ましろも読んでみようとするが当然言葉はわからない。とはいえ、2人ともどういう内容が書かれているか、その意味は理解できた。

 

「ソラちゃん達、頑張ってるね」

「うん、もうバッタモンダーのことも大丈夫そうかな?」

 

最後にヤクモ達がランボーグと戦闘して2日が経過し、その間もバッタモンダーと青の護衛隊の小競り合いは続いた。しかし、本当にバッタモンダーも手段が残されていないのか、青の護衛隊に見つかっては苦し紛れにランボーグを召喚し、青の護衛隊が戦っている間に逃走するという有様であり、逃走のためのアンダーグエナジーも残されていないようであった。

 

「そろそろお別れかあ……おばあちゃんの方はどうなったんだろ……」

「……さすがにそろそろトンネルも使えるようになっていると思うけど……」

 

となれば、プリキュアの力も必要ないだろう。ツバサも今日はエルのお世話を行っているようであり、ソラはというとシャララと共に街の外での任務に当たっているのだという。そしてヤクモとましろが街に繰り出している目的はというと。

 

「はい、スカイジュエル!カバンいっぱいだよ!」

「「ありがとうございます」」

 

ヨヨから頼まれていたスカイジュエルを買い出していた。リュックサックいっぱいに詰め込まれたスカイジュエル。これだけあればしばらくは困らないはずだろう。そう考えながら礼を言ったヤクモがリュックサックを背負う。

 

「ど、どう?重くない?」

「……見た目よりは軽いな……」

 

見た目が見た目ということもあり、かなりの重量を予想していたヤクモ。しかしいざ背負ってみると案外重量がないことに驚く。ましろもそんなに軽いのかとヤクモが背負ったリュックの底を持ち上げてみる。

 

「確かに見た目より軽い……」

 

おー、と感心しながらリュックを持っていたが、それでも重いことには変わりないのかすぐに手を放すましろ。スカイジュエルの重みがヤクモの肩に圧し掛かってくるが、この程度なら問題はないと軽く背負い直す。

 

「とりあえず買い物は終わったし……」

「ツバサ君とエルちゃんに会いにいかない?トンネルが使えるようになったかどうか確認もしたいし」

「うん、そうしようっか」

 

そして次の目的地を決め、2人は城へと足を向けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

王都から離れた村。村長の屋敷の前に佇む、鞍を付けた2羽の鳥。その建物の中ではシャララが村長から受け取った1枚の紙を読み込んでいた。

 

「……本来は気の優しい野生動物なのですが……」

 

困った表情の村長の言葉を聞きながら、シャララは紙に描かれた生き物の絵を見る。ヤクモ達が見れば、立派な角を持つ鹿にそっくりだと思うであろうスカイランドの野生動物。シャララもその動物は確かに優しい気性だったと記憶している。

 

「急に里の者を襲い始めて……既に怪我人も……」

「放ってはおけないな……」

 

今まではバッタモンダーのことにかかりきりになってしまっていたが、余裕が出てきた今、こういう問題にも随時取り組んでいく必要があるだろう。実際に赴いてそう強く思うシャララ。

 

(しかし、急にか……野生の勘というものだろうか)

 

王都から離れた村ではあるが、動物の本能というのは時として想像を超えた事態を予測してくることもある。王都で使われたアンダーグエナジーに反応して気が立っているのか、或いは不吉の前触れか。

 

「その野生動物が現れる時間帯は」

「そろそろですが……」

「きゃああああ!お、落ち着いてええええ!」

「「!」」

 

いずれにせよ、その動物を落ち着かせてからだろうと話を進めようとしたタイミングだった。ソラの悲鳴と動物が走る足音が聞こえてきたのは。シャララと村長が窓の外に目を向けると、その問題の動物が走り回っており、その背中にソラが必死にしがみついていた。

 

「今のか?」

「ええ、今のです……」

 

あれから振り落とされてしまえば大怪我も免れないだろう。村長に一言断ると屋敷の前で待機していた鳥に乗り、ソラを追いかける。

 

「今助ける!」

 

帯刀していた剣を抜こうと柄に手をかけるシャララ。それに気付いたソラがはっとなり、

 

「待ってください隊長!この子は足に、怪我を……!そのせいで気が立っているんです!」

「!」

「悪い動物じゃない!私が止めます!だから傷つけないで―――」

「前!!」

 

シャララの警告するような声がソラの耳に飛び込んでくる。一体何が目の前にあるのかと、ソラが視線を前に向けると、そこには巨大な断崖が。

 

「!?」

 

痛みに我を忘れ、さらに背中にソラがしがみついていたことにより混乱していた動物の方も目の前に崖があることに寸前に気付いたのだろう。慌てて急ブレーキをかけて反転するが、それによってソラの体が勢いよく振り回されて宙に投げ出されてしまう。

 

「あぅう!?」

 

そして断崖にソラは勢いよく激突してしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

痛みを和らげるように濡れたタオルを目元に乗せられた状態で草原の上に寝かせられたソラの隣に、野生動物の手当てを終えたシャララが座り込む。彼女が危惧していたものとは異なり、もっと単純な理由で気が立っていたということに内心ほっとしながら、今も痛みに耐えるソラに声をかける。

 

「まだ痛むか?」

「!全然痛くありません、このくらい!……たた」

 

シャララの声に慌ててそう答えて起き上がるソラ。タオルが落ち、まだ痛みに赤く染まっている顔が覗かせるも、気丈に振る舞う。が、濡れた冷たいタオルが離れ、大気に顔が触れたことで痛みがぶり返したのか、つい痛みに声を漏らしてしまい、慌ててタオルを顔に当て直す。

 

「お手柄だったな」

「……だけど、かっこ悪かったです……」

 

そんなソラの様子を見ながら野生動物が気が立っていた理由に気付いたことを褒めるシャララ。しかしソラは、思いっきり崖にぶつかってしまったことを今も引きずっているのだろう、恰好がつかなかったことに落ち込んでいるようだった。

 

「だが、村の皆は助かった」

「……はい。見た目は恰好悪くても、誰かを助けることができた……それで喜んでくれる人がいる。それが嬉しいです」

 

しかし、それはそれだ。確かに恰好が悪いというのは個人としては少々思うところが出てきてしまう。だが、恰好が悪くても、村の皆が救われたのは事実。それは胸を張って誇れることだ。

 

「……格好良さを求めちゃうなんて、まだまだ未熟です」

「……まるで、そういう誰かを見たことがあるような口ぶりだな」

「はい……自分のことを気にせず、誰かのために一生懸命になれる、それが当たり前だと心の底から思ってる人を知っていますから」

 

シャララの言葉に嬉しそうに語るソラ。それが誰かはシャララも敢えて聞かなかったが、今日までのプリキュアの戦いなどを見ていればそれが誰のことか、そしてソラがその人物をどれほど慕っているかは容易に想像がついた。

 

「……青の護衛隊って、いろんな仕事をしているんですね」

 

そして、今回の仕事を通じて、青の護衛隊が本来やるべき職務というのをソラも実際に理解できた気がした。

 

「都を襲う敵と戦うことも大事だが、パトロールも同じくらい大事だ。辺境の地には助けを必要としている人が大勢いる」

「……あの時の私もそうでした」

 

ソラが思い出すのは、幼少期の頃に自分を助けてくれたシャララの姿。シャララに助けられ、家に戻ったソラは、彼女にあるものを渡していた。それはハートの形をしたスカイジュエル。幸運のお守りとして渡したことを今でも覚えている。あの出来事があったから、ソラはヒーローに憧れるようになったのだ。

 

「あの日……私はヒーローになるって決めたんです!……幸運のお守りって言ってもあんなスカイジュエルの欠片、どこにだってあるのに……」

 

少し照れながら言うソラ。ハートの形をしたスカイジュエル、といえば聞こえはいいが砕けたスカイジュエルの破片の中でたまたま綺麗なハートの形に見えたものがあったから持っていた、というのが真相だった。当時の幼い自分にとっては確かに宝だったのだが、今にして思えば形自体は単純なものだ。あの頃は色々と幼かったと思い出を振り返っていると、シャララが1つのペンダントを取り出す。

 

「……あ」

 

そこについていた青いハートの結晶。それは間違いなく、あの時渡したスカイジュエルだった。

 

「君とこうして再び出会えたのは、このジュエルの導きかもしれない」

 

そう語り、笑いかけるシャララ。ずっと、これをアクセサリーに加工して持っていてくれた。その事実にソラは嬉しそうに笑うのだった。

 

「……はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「よかったね、ヤクモ君。おばあちゃんの方も無事に作業が終わって」

「うん、これで帰りは問題なさそうだ」

 

城の中の通路を歩いていたヤクモとましろ。先にトンネルのことについて確認してもらい、そちらは問題なく利用できることが判明したため、2人は次にツバサに会いに行こうとツバサとエルがいる部屋に向かっていた。と、そんな2人の視線の先に、夫婦だろうか、2人の男女が視界に入り込む。

 

「「……?」」

 

その姿に既視感を覚える2人。2人の髪色や髪型、目つきなどに見覚えがあったのだ。と、ここまで考えて2人はある事実に辿り着く。

 

「……もしかして」

 

2人の目の前を横切っていく夫婦。その横顔も見て、ヤクモとましろはやはりそうなのかもしれないと確信する。

 

「う、うん……ツバサ君の、家族……?」

「城に何の用事なんだろう……?」

 

迷いなく、だが早足で城の中を歩く2人。その進む先にある部屋は確か、ツバサのいる部屋のはずだ。

 

「ツバサに会いに来たのかな……」

「そうかも?」

 

2人の後を追いかけるように歩き始める2人。そして2人がツバサ達がいる部屋の扉をノックしたのを見て、少し間を置こうと顔を見合わせて無言で頷き合う。そんな2人には気付かないのか、それとも中にいるであろうツバサを見たことで色々感情が湧き上がってきたのだろう。暫く固まっていたが、

 

「「!?」」

 

突然2人が鳥の姿になると、部屋の中へと走り始める。何故鳥の姿に戻ったのかと2人が中にいる人たちにばれないようにこっそりと扉から顔を出して中を覗き込んでみると、

 

「ツバサ……ツバサ……!」

「ツバサちゃん……!」

「父さん!?母さん!?なんでここに!?」

 

こちらも鳥の姿に戻ったツバサと3人で抱き合っていた。その会話から察するに、やはり2人の予想通りの関係だったようだ。そんな3人の家族の再会を見て、エルは嬉しそうに喜んでいる。と、ここでエルのことに気付いたのだろう、鳥の姿のままツバサの両親が一旦ツバサから羽を離してエルの方に向く。

 

「おお、プリンセス。申し遅れました……私、ツバサの父で……」

「って、なんで来たの!?」

 

父の挨拶を遮り、驚きの表情を浮かべたまま質問するツバサ。それを聞いたツバサの父は、少し困ったような表情を浮かべる。

 

「王様から連絡が来たんだ……全く、お前から一報入れるべきじゃなかったのか?」

「う……」

「それに、帰ってきたのなら真っ先に親に顔を見せるのが当たり前だろう?どれだけ心配したと思ってるんだ」

 

完全に忘れてたと言わんばかりに目を泳がせるツバサ。親の言うこととしてはただただ正論でしかなく、何も言うことができないツバサ。それを聞いていたヤクモとましろも聞かなきゃよかったと気まずそうな表情を浮かべていた。

 

「た、確かに連絡しなかったのは悪いけど……でも、僕はナイトなのでプリンセスの傍にいないと……」

「ツバサちゃんはずーっとイヤイヤ期なのね……」

「赤ちゃん扱い!?とにかく離してよ……」

 

そんなツバサを愛おしそうに抱きしめる母に、まさかの赤ん坊扱いされていることに異議を唱えるツバサ。それと同時に、エルの手前こんな姿をずっと見せたくはないという恥ずかしさもあったのだろう、母に早く離れてほしいと口にする。エルにはもう見られてしまったが相手は赤ちゃん。しかしこの光景をヤクモとましろに見られたら。

 

「こんなところ誰かに見られたら恰好悪いじゃないか……」

(もう手遅れだよ!!)

(……一旦引き返すか……)

 

それをガッツリ見てしまったましろは思わず内心でそう突っ込んでしまう。この光景を見られたとばれればツバサの心に大きなダメージが入ってしまうだろうと考え、無言でゆっくり扉から離れようとするヤクモ。と、扉から顔だけを出して覗き込むような姿勢を取っていたせいだろうか、斜めになっていたリュックの隙間からスカイジュエルが落下してしまい、それが地面にぶつかる音が鳴る。

 

「わあああ!?」

 

瞬間、ツバサの悲鳴が上がり、後ろを振り返る。そこでツバサの両親も、ヤクモとましろの姿に気付いたようだった。

 

「や、ややヤクモさん!?ましろさん!?なんでここに!?」

「え、えっと……ツバサとエルちゃんに会いに来たんだけど……」

「ごめんね、聞くつもりはなかったんだけど……」

 

ばれてしまったら仕方ない。観念するように部屋の中へと入っていく2人。

 

「えっと、初めまして」

「……はぁ。嵐堂ヤクモさんと虹ヶ丘ましろさん。向こうの世界の友達です」

 

まさか本当に見られてしまうとは、そう言いたげな苦々しい表情を浮かべながら両親に2人を紹介するツバサ。

 

「そうでしたか……ツバサがお世話になったようで」

「いえ、こちらこそツバサには助けてもらいましたから」

 

異世界でできたという友を紹介され、2人の表情に笑顔が浮かぶ。村での経緯を知っているだけに、こうして新たな友ができている姿を見ると嬉しくて仕方がないのだろう。

 

「そうですか……別の世界でのツバサのことも聞きたいのだけれど……」

「実はすぐに出なければいけなくて……」

「え、そうなの?」

「お前が無事に帰ってきたって聞いて顔だけでもと見に来たんだ」

 

てっきりこのまま滞在していくものとツバサは考えていたのだろう。まさかのとんぼ返りをするという親の言葉に驚く。ヤクモ達は、それだけツバサのことを心配していたのだろうと納得しつつ、3人に別れの挨拶をして部屋を出ていくツバサの両親を見送る。

 

「……はぁ、びっくりしました。まさか2人が来るなんて」

「良い人……人?両親だったね」

「ツバサ君の故郷から遥々来てくれるぐらいだもんね」

 

ツバサの両親が消えた部屋で、ツバサは溜息を漏らす。意外な出会いにヤクモとましろも思い思いの感想を述べていると、ツバサの視線がヤクモのリュックに向けられる。

 

「ヤクモさん、それって」

「ああ、持ち帰る用のスカイジュエルだよ」

「うん、そろそろソラシド市に帰る準備をしようかなって。トンネルも使えるようになったし……明日でこっちは休みも終わっちゃうし」

 

2人が帰る。それを聞いたツバサとエルは呆然とした表情になっていた。頭では当然、ツバサも理解していた。もう時間は残ってないということを。しかし、こうして実際に聞かされると、もうお別れになってしまうのかと様々な感情が出てきてしまう。

 

「学校もあるしね」

「そう……ですよね……うん」

 

本音を言えばいつまでも一緒に居たい。2人にはスカイランドにいてほしい。でもそれは不可能なのだ。であれば、受け入れるしかない。スカイランドに戻る前の最後の夜、ヤクモとも話したのだ。その時が来たら受け入れるしかない。しかしそれは、

 

「でも、これが最後じゃありませんよね」

 

永遠に会えないというわけではないのだ。次に会えるのを楽しみに待っている。そう言うかのように吹っ切れた爽やかな表情で言うツバサにヤクモとましろも元気よく頷く。

 

「もちろん。絶対にまた会いに来るよ、2人一緒に」

「うん!そうだ、あげはちゃんも今度は誘ってみようかな?」

「あ、それ面白そうですね。良い反応しそうです……あ、でもそうか。学校があるってことは昼間にランボーグとの戦いがあっても2人は来れなさそうですね……」

 

今後のことを話してるところでその事実に気付き、悩むツバサ。そんな彼の様子を見たましろは、その心配はないと口を開く。

 

「確かにそうだけど……でも、ランボーグとの戦いはもう問題ないと思うよ?私とヤクモ君がいなくても、もうスカイランドは大丈夫だってわかったから」

「うん、このままならプリキュアの力がなくても青の護衛隊がランボーグを倒して皆を助けてくれるだろうし、もし強めの敵が出てきても、今の状況なら2人でもなんとかなると思うんだ」

「ソラちゃんや隊長さん、護衛隊、それにツバサ君がスカイランドを守ってくれる……もう、心配ないと思うんだ」

 

2人の言うように、今のスカイランドの情勢を見ればもう問題ないと言えるだろう。2人とも、心配する必要なく、元の世界に帰ることができるのだから、むしろツバサとしても喜ぶべきことなのだろう。

 

「学校はあるけど、それでもトンネルもあるし、いつでも会えるよ、友達なんだから」

「えるぅ……」

 

ツバサの方はある程度割り切ることができた様子だったが、エルの方はそうでもないのだろう。悲しそうな声を漏らすエルの頭を2人は撫でる。

 

「エルちゃん、元気でね。あんまりツバサ君のこと困らせちゃだめだよ。それと……私たちのこと、忘れないでね」

「えぅ……」

 

エルの悲しい声にましろも表情が暗くなる。ヤクモとツバサも、やりきれないといった表情だ。そんな空気を変えるかのように、ヤクモはある提案をする。

 

「……じゃあさ、最後に皆でご飯でも食べようよ。ソラさんも昼頃には戻ってくるって話だったし」

「あ、いいですね!皆で御馳走をいっぱい食べましょう!実は王都にはヤーキターイを売ってる専門店があるんです!」

「……うん!いいね!!」

 

ヤクモの提案にツバサも乗っかる。最後ぐらい豪勢な食事をとっていい思い出作りをするのもきっといいだろう。ましろとしても異論はない。そうと決まれば、ソラが帰ってくるのを皆で待とうと、そう3人が思った瞬間だった。

 

「「「「!?」」」」

 

街の至る所からアンダーグエナジーが何本もの柱となって噴出したのは。

 

「な、何あれ!?」

「あれは……アンダーグエナジー!?」

「なんでこんな大量に……しかも町中から!?」

 

突然の出来事に4人が驚く。それも無理もないだろう。バッタモンダーにこれほどのアンダーグエナジーを使うことはもうできないはず。しかもバッタモンダーは1人しかいないのに、こうして複数の箇所からアンダーグエナジーが発生することそのものがおかしいのだ。だが、4人の目の前でアンダーグエナジーは確かに発生しており、それが1つとなって今まで見たことがないほどの巨大な球体のランボーグとなって空に浮かび上がる。

 

「ランボーグ……」

「ありえない!?ランボーグは全て青の護衛隊が倒したはず!なんで……」

「!!もしかしたら……それかもしれない……!」

「え!?」

 

ツバサの疑問に、ヤクモはある事実に気付く。確かにランボーグが倒された際、アンダーグエナジーは浄化される。しかし、そのランボーグをスカイランドで倒していたのはプリキュアだけではない。

 

「青の護衛隊にランボーグを倒すことはできても……ランボーグの浄化はできなかったんだ……」

「「!」」

 

ヤクモの指摘にはっとなる2人。そしてその指摘と目の前の現実が、バッタモンダーが密かに企んでいたある思惑を浮かび上がらせる。

 

「まさか、バッタモンダーは……」

「わざとランボーグを倒させていたんだ……倒されたランボーグのアンダーグエナジーは都に残る……あの強力なランボーグを召喚するために必要なアンダーグエナジーが溜まるまで、ずっとそれを繰り返してきていたんだ!」

 

ツバサの語った通りなのだろう。3人は顔を見合わせると、エルを王様達に預け、戦いの準備をするために部屋を出る。その頃、都では巨大なランボーグの召喚を終えたバッタモンダーが塔の上から地上を見下ろして、楽しそうな表情を浮かべていた。

 

「ふふ……僕の作戦も理解できない弱い者たちの精一杯の頑張りが全部無駄になってしまった。この世界はなんて残酷だ……なんて悲しいんだろう……でもね」

 

バッタモンダーの視線が城へと向けられる。そこにはアンダーグ帝国へと連れていくべきプリンセス、エルがいる。しかし、それだけではない。

 

「今日、スカイランドが、そしてプリキュアが滅ぶのは……君のせいだよ、キュアクラウド……いや、ヤクモ」

 

そう呟き、バッタモンダーはにやりと笑うのだった。

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