「ふんふふーん♪」
5人を乗せたハマーがソラシド市を走る。あげはの鼻歌が車内に広がっていく中で、ソラは今か今かと目的地へ着くのを楽しみにしていた。
「ソラちゃん、楽しそうだね」
「はい!初めてのお店……どんなお店なのか楽しみです!」
「そこまで期待値上げる程では……」
最初はヤクモの趣味とも関連している店に行こうということになる。最初は案内が必要なのかと思ったが、店の名前を出したらあげはもピンときたようで、迷わずに目的地へ向かっているのがわかる。ヤクモが一番楽しそうにしているソラを見ると、窓の外の景色も食いつくように見ており、スカイランドの人間にとっては車に乗ること自体が未知の現象なのだとわかる。
「それにしても車って凄いですね……こんな箱がこんな速いスピードで走るなんて」
「スカイランドにはないんだったね……あれ?もの運ぶ時とかどうするの?」
「鳥に運んでもらいます!」
(馬車ならぬ鳥車……?)
「人も鳥が運んだり乗せて飛んでくれたりしてるんです!」
「ダチョウ……?」
車などといった機械の乗り物はスカイランドにはないのだろう。とはいえ自動で動く乗り物がないというだけのようだが。そして動力として使われるのは馬などではなく鳥。確かにヤクモの知識の中にも人が乗れるぐらいに大きな鳥としてダチョウが出てきたが、そもそもダチョウは飛べない。人を乗せて空を飛べる巨大な鳥、やはり異世界は凄い。
「ダチョウというのは?」
「この世界で一番でかい鳥だけど……空は飛べないけど凄く走るのが速かったはず」
「へぇ~」
感心したようにヤクモの説明に聞き入るソラ。この世界の動物や生態もやはりスカイランドとは違うのだろう。鳥の名前なども変わってくるようだ。
「……まあ、人を乗って飛べる鳥っていうのがどれくらいの大きさなのか俺には見当もつかないんだけど……いやでも異世界の鳥だからな……人になれる鳥がいるとかファンタジーなこと言われても……」
「いますよ?」
「「いるの!?」」
予想外の返答にヤクモとましろが同時にリアクションする。人に変身する鳥などもう何が何だか、といった感じだ。
「そ、そこまでいくともう想像できないんだけど……」
「そうでしょうか?彼らは……」
「あ、皆話してるところ悪いんだけどさ、着いたよ!」
その奇怪な能力を持つ鳥の事をソラが話し始めたタイミングであげはが目的地に到着したことを皆に伝える。ヤクモが窓の外を見ると、見慣れた店の入り口がヤクモの視界に飛び込んでくる。
「ここって、確か……」
「あ、テントがあります!」
車から降りて店の外装を見て、何となく見覚えがあるのか記憶の隅から引っ張り出そうとするましろ。ソラはというと店の前に組み立てられていたテントを発見する。
「そうだよ、アウトドアショップ!こっちに戻ってきたときに偶然見かけて、ちょっと興味があったから覚えてたんだ、まさか皆で来ることになるなんてね」
「あ、そうだったんですか」
「ここが趣味に関係しているってことは、もしかしてヤクモ君、キャンパー?」
「まあ……そう言われればそういうことになるんですかね?」
「そうだったの!?」
ヤクモの趣味がキャンプだと聞いてびっくりするましろ。ましろからすればヤクモにそんなアクティブなイメージがなかったため意外だった。ヤクモはというと、皆退屈しないかが心配だったが思ったより皆食いつきがよかったため、退屈させずには済みそうだと胸を撫で下ろす。
「野営とか野宿とかが趣味なんですか?」
「いやまぁ近いものではあるだろうけども……」
「多分ソラちゃんがイメージしてるキャンプって、単純に外で建物に入らずに一夜過ごすことっていう感じじゃないかな?」
「そうですね……おそらく任務とか、そういうのがあって王都に戻れないとか、現地で夜を越すことになった時にするものだと……いえ、それも楽しそうではあるんですが」
(騎士団とかでもいるのかな?)
ソラの硬い物言いから、スカイランドにおけるキャンプの意味合いを察する。外で楽しく寝泊まりという概念などはスカイランドにもあるのだろうが、この世界とは異なり野宿や野営が一般的かどうかはともかくある程度当たり前のものして存在しているのだろう。だからか、彼女からすればわざわざ野宿が趣味ですと宣言しているヤクモの言い方は違和感を感じるのかもしれない。
「この世界のキャンプは娯楽でやるものだから……テント張って景色見て料理作って焚火に当たりながら本を読んだり音楽聞いたり星見たり……後は何かしら作ったりとか……」
「そうそう!そういう感じの……って最後何?」
「この世界のキャンプ、とても楽しそうです!私もいつかやってみたいです!」
だからこそ、ただただ楽しむことだけを考えるキャンプというのは一周回って新鮮なのだろう。期待の視線を向けられるものの、興味を持ってもらえてもじゃあやろうか、などと即座に答えられるものでもない。
「それは……」
「え、えっと何か問題が……?」
「いや……始めようとしたら結構金が……」
「あ……そうですね……」
お金のことを持ち出されると、ソラとしてはもう何も言えない。元々居候の身であり、彼女の生活のあれこれにおいて資金の元手に関しては完全に虹ヶ丘家である。名残惜しそうにしょんぼりとしながらソラは諦めるような様子を見せる。
「ま、まぁ確かに一人で用意しようとしたら高くついちゃうかもしれないけどさ、皆で用意したら少しは安くなるんじゃないかな?ヤクモ君は道具は?」
「父さんが元々持ってたのを基本的に使ってます」
そうじゃないとまともにやれませんよ、というヤクモの言葉にそれはそうと納得するあげはとましろ。
「家にもしかしたらキャンプ道具あるかもね……私も知らないものとか結構あるし」
「もしそれが見つかれば皆でキャンプできるかもね。その時に備えて色々見て回ろうっか!ついでにヤクモ君のおすすめとか教えてくれると嬉しいな」
「おすすめと言われてもあまり道具は新調したりしないので……まあ、それでもよければ」
そんなことを口にしてはいるのだが、ヤクモ自身テンションが高くなってきているのを感じてはいた。他人に趣味を布教するのはこういう感覚なのかと思うと、嫌でも力が入るというものだ。無論ハードルは高いのだが、まあそれはそれ。結局やるかどうかはその人次第なのだから勝手にやればいいのであると、今どういうの売ってたかなと以前読んだ雑誌に載ってた商品などを思い出しながら、皆と一緒に店の中へと入っていくのだった。
★
「これ……凄く軽いんですけど大丈夫なんですか?重いもの乗せたりとかしたら……」
「普通に乗せるものだったら全然大丈夫だよ、軽さもだけど組み立てやすいし小さいから収納しやすいし」
「ふむふむ……こういう机は普段の生活でも使えそうだね」
「椅子だけでもいろんな椅子がありますね!どういうのがいいんですか?」
「あ、これとか可愛いんじゃない?」
「本当だね!ちなみにヤクモ君のおすすめは?」
「おすすめというより選ぶ基準は……まあ耐久性と座り心地ですかね……結局気に入ったものを使うのが一番にはなりますけど」
「この板は何に使うんですか?」
「焚火台だよ。直火は基本的にできないところが多いから、これで焚火をするんだけど……もしキャンプやるならやるやらないは置いといて用意はした方がいいかな……」
「マナーとかは大事だからね……」
「ふぅ……ちょっと疲れちゃったかも……」
「でも、とても楽しかったです!テントや机だけでもいっぱい種類がありましたし、料理の道具とかランタンとか、他にも色々あって……こういうのが使えるならこの世界のキャンプもきっと楽しいと思います!」
そして一通り店の中を見たソラ達は店の中にある飲食スペースで小休憩を挟んでいた。ましろは多少疲れを見せていたがソラはまだまだ元気なようである。あげははエルを抱きながら、今日見てきたキャンプ道具の値段などを思い出しているのか、むむむと唸っていた。
「まあ買うのはあれでも、最初の一回二回であればキャンプ道具のレンタルもあるのでそっちの方がずっと安いとは思いますよ」
「レンタルかぁ……確かに安そうなんだよねぇそっちの方が、それに何回もやるかどうかなんて正直わかんないし」
俺の場合は元々あったから元手ほぼ0で始められただけで、と付け加えるヤクモ。確かに全部買い揃えたら資金など瞬く間に吹き飛んでしまいそうだが、それを抑えられるならば何となくできそうな気がしてくる。軽くレンタルサイトを調べてふむふむ、と頷くあげは。
「最初に高いものを見せつけて手が出せそうなものに切り替えるとはなかなかやるねぇ少年……」
「今思い出しただけですよ」
それはそれとして普段から使いたいものもあるからどうしようかな、とやはり悩み始めるあげは。まぁ本当にそれを買うかどうかは本人の自由。ヤクモとしても言いたいことは言い切ったと思うので、後は成り行きに身を任せよう、と水を口に含めた時だった。
「……!」
「ヤクモさん、どうしました?」
胸騒ぎを感じ取り、目を見開くヤクモ。思い出したのは先日、初めてプリキュアになった日の事。あの時はミラージュペンが出てからはそういうのを感じなくなったが、それとは無関係なのか。いや、違う。あの時胸騒ぎを感じたのは、近くにカバトンがいたからである。ということは、
「あそこだ!」
「「「あ!?」」」
「える!?」
気配を探り当て、そっちを指差す。店の出入り口の方に全員が視線を向けると、そこにはヤクモの予想通り、カバトンが不敵な笑みを浮かべながら立っていた。
「見つけたのねん、今度こそプリンセスを手に入れてやるのねん!カモン!アンダーグエナジー!!」
ソラ達がカバトンに気付いたのとほぼ同時。カバトンが手を地面へと当て、アンダーグエナジーを放出する。それは店頭に展示されていたガスバーナーへ宿っていき、両腕がバーナーとなっている巨大なランボーグとなる。
「ランボーグ!」
突然のランボーグの出現に逃げ始める人々。そしてヤクモ達はエルを奪うべく召喚されたランボーグを倒すため、ミラージュペンを手に取る。
「いきましょう!ヒーローの出番です!!」
ソラの掛け声に合わせ3人はミラージュペンを変化させ、それぞれのスカイトーンを手に取る。
「「「スカイミラージュ!トーンコネクト!!」」」
3人の体が光に包まれていき、プリキュアの姿へと変身する。
「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!!」
「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!!」
「夜空に漂いひろがる雲!キュアクラウド!!」
青と白の明るい配色のプリキュアと、紫の暗めの配色のプリキュアの3人が並び立つ。
「レディー、ゴー!」
「「「ひろがるスカイ!プリキュア!!」」」
変身を完了した3人はランボーグの前へと飛び出す。
「皆、頼んだよ!」
「出てきたのねん、プリキュア!さぁやれ、ランボーグ!!」
「ランボーグ!!」
ランボーグが両手を前へと向け、発射口から真っ赤な炎を放つ。それを3人は飛んで回避し、空中にいる状態でプリズムが光球を作るとそれをランボーグへと投げつける。
「ランボーグ!」
「あ……」
光が着弾して爆発し、ランボーグの体がよろめく。それによって両手がぶれ、炎が揺れる。その炎をかいくぐるようにスカイが懐へと潜り込み、そのまま腹部に鋭い拳を放つ。
「ランボーグ!?」
強烈な一撃を受け止めて吹き飛ぶランボーグ。そのまま大地を転がっていくも、まだまだこの程度では大きなダメージにはならないようで起き上がると、再度炎を放ち、追撃を仕掛けようと走りこんでくるスカイに向かってさらに両手を振り回して炎の鞭のような形で薙ぎ払おうとしてくる。
「そんな単調な攻撃、当たりません!」
スカイが炎を回避しようと態勢を低くする。そしてその上を通過した瞬間、背後で爆発音が響く。
「ぐっ!?」
「え!?」
「クラウド!!」
クラウドの苦しい声とプリズムの仲間を呼ぶ声がスカイの耳に届き、思わず足を止めて後ろを振り向くスカイ。そこでは炎をまともに喰らい、両腕やコスチュームを焦がしているクラウドの姿があった。物理的なダメージであれば大きな耐性を発揮する彼も、炎の熱や延焼に対してはそこそこのダメージを負うみたいであり、表情を顰めている。
「大丈夫!?」
「俺より奴を!」
「でも!」
「ランボーグ!!」
クラウドの身を案じるように2人が近づいてくる。これをチャンスといわんばかりに集中砲火を仕掛けてくるランボーグ。即座にスカイとプリズムが反応する。
「回避です!」
「うん!」
「っ!」
火炎放射がプリキュア達を狙うも、スカイとプリズムが即座に飛んで回避する。しかし、クラウドは微動だにせず、その炎を両手を交差させたまま前へと突き出し、再び真正面から受け止める。
「クラウド!?」
「なんで避けないんですか!?」
「スカイ、プリズム、早くランボーグの炎を止めるかここから離れさせて!!」
何故クラウドが移動しないのか。前回の戦いを見るに、これぐらいの攻撃を回避できないわけがない。なのにわざわざ攻撃を喰らうのは、どういう意図があるのか。それを理解していたのは、第三者の目線で戦いを見ていたあげはだけだった。
「車が!!」
「え!?……あ!!」
車と言われ、プリズムは気付く。ここは店前に駐車場が広がっている。火炎放射が発射された直線上には駐車されている車があったのだ。乗っている人は車を放置して逃げたせいでそのまま放置されていたのだろう。クラウドは、炎から車を守るために我が身を呈していたのだ。
「炎は……ダメ!車が爆発しちゃうよ!」
「え!?」
「あん?」
プリズムの言葉にスカイも事態を理解する。カバトンはほとんど今の話を理解していないようなので本人も知らないでこのランボーグを生み出していたのだろう。ともかく、このままランボーグに好きにさせていたら更なる被害が出てしまう。ここに停まっている車は一台二台ではなく、長期休暇ということもあってそれなりの台数が停まっているのだ。それらがもし全て爆発しようものなら、どうなるかわからない。
「今はクラウドのおかげで何とかなってるけど……」
「そういうことだったんですか……それでこんな危険なことを……!」
「まずは、ランボーグを怯ませないと!ヒーローガールプリズムショット!!」
ましろが両手を掲げ、一際巨大な光球を生みだし、ランボーグへとぶつける。クラウドに意識を向けていたせいで無防備にそれを受けてしまったランボーグはその威力に思わず炎を止め、痛みに呻く。
「ランボォーグ!?」
「今だ!」
弾かれたようにクラウドが飛び出す。コスチュームの焦げは酷くなっており、ダメージもそこそこ蓄積されてはいるが、まだまだ体の方は五体満足、こうして動けるのならば問題ないと、プリズムが作り出してくれたチャンスを活かすべくランボーグの眼前まで迫る。
「お前なんかの攻撃が通用するわけが……」
「それはどうかな!ひろがるクラウドプロテクト!!」
クラウドの手から生み出された巨大な雲が、ランボーグの両手にまとわりつく。それはバーナーの発射口を埋めてしまい、それを確認したクラウドがすかさずその場から退避、ほぼ同時にクラウドに向かって炎を放とうとしたランボーグの両手が爆発する。
「ランボーグ!?」
「何やってるのねん!?」
「今だ、スカイ!プリズム!」
「!は、はい!!」
「わかった!」
自爆してしまい、大きくよろめくランボーグ。ボロボロになってしまった両手からはもうまともに炎を放つこともできず、先ほどのプリズムショットのダメージも合わせて既に満身創痍に近い。そんな状態のランボーグを確実に浄化するべく、スカイとプリズムは共に技を放つ。
「「プリキュア!アップ・ドラフト・シャイニング!!」」
空に出現した円盤にランボーグが吸い込まれ、巨大な風圧と共に叩きつけられる。その浄化の一撃を受け、ランボーグの全身からアンダーグエナジーがキラキラと光に変わっていき、消滅していく。
「スミキッター……」
「ぐぬぬ……カバトントン!」
ランボーグが消えると共に素体となっていたバーナーがそこに置かれる。そして駐車場の地面などに広がっていた焦げ跡なども無事治り、ランボーグが倒されたことでカバトンも再び呪文と共に消えてしまう。それを確認し、変身を解くプリキュア達。特にヤクモは変身を解いた後、暖かい日はよく着ている黒を基調としたジャケットの腕を捲り、その下にある腕を確認する。
「ヤクモさん、大丈夫ですか!?」
「ああ、火傷とかは残ってないみたいだから大丈夫だよ」
手の甲なども確認し、怪我は残ってないことをちゃんと確認してそう答えるヤクモ。しかし、ソラの表情は晴れない。
「でも……あんなに攻撃を喰らって本当に大丈夫なんですか?痛いところとか、やっぱりあるんじゃ……」
「まあ多少は……でもこれぐらいなら全然」
「……本当にそうですか?」
疑いの視線を向けるソラ。完全に無傷とはいえないのはヤクモ自身もわかっているが、変身を解除したときに一番危惧していた火傷がないのであれば問題はないと考えていたので、本当に問題ないと返答する。ソラは心配そうな表情が崩れないが、一応は納得したようだ。
「怪我とかしてなかったらいいんだけど……ごめんね、全然気づけなくて」
「いや、大丈夫だよ。それに、誰かがああしてないといけないし、それなら俺がやった方が適任だった」
ましろも心配して駆け寄ってくる。確かにヤクモの言い分はその通りではあるのだが、はいそうですと正直にも頷きにくいぐらいには攻撃を喰らっていたという印象はやはり拭えない。それでもこの程度で済んでいるのだからやはりキュアクラウドは耐久力に優れたプリキュアではあるのだろう。
「それに、2人ならどうにかしてくれるだろうなって思ってたから」
「え……」
「2人ならランボーグを倒してくれる、だから俺にできることをやろうとしていただけだよ。俺、1人じゃきっとランボーグを倒せないぐらい弱いからさ」
「でも、あんなにランボーグを追い詰めてたよ?今回も前回も……」
ましろの指摘は確かにその通りだ。しかしヤクモは首を横に振る。これはただ丁度良く相手と噛み合っただけに過ぎないのだから。自分の力が本当はどの程度なのかどうかは自分がよくわかっている。
「1人じゃランボーグは倒せないけど、誰かを守ることならできる。そして2人なら倒せる。だったら俺は、2人を守るためにこの力を使いたい」
「ヤクモさん……」
他意も何もない、自分が傷つくことを恐れず、誰かが傷つかないように体を張る。迷いを一切感じさせない、ただただヤクモの本心なのだとわかるその言葉に、ソラも言葉を失う。だが、面と向かって言われたその言葉にどことなく頬が赤くなっていくのを感じていた。
「良いこと言うじゃん!」
「おわっ……」
と、ヤクモの背中をあげはが突然叩く。不意打ちの衝撃に苦悶と驚きが入り混じった声がヤクモの口から漏れる。
「体を張って守ろうとする姿、かっこよかったよ!2人もそう思うでしょ?」
「それは……確かにかっこよかったですけど……それに、守るために力を使いたいって言ってるヤクモさんが凄く輝いて見えましたし……」
「でしょでしょ!」
あげはにそう言われ、少し気恥ずかしそうに呟くソラ。そんなソラの肩をポンポンと軽く叩きながらも、あげははヤクモに向き直る。
「だけどね、2人が心配しちゃうのも当たり前だと思うんだ。言ってることは確かにわかるけど、私なんてすっごいハラハラしてたんだよ?」
「それはまぁ……はい」
決して見栄えのいい戦い方ではないのは自覚しているので、申し訳なく肩を竦める。実際キュアクラウドとしての自分の戦い方は前回カバトンに酷評されてた通り、第三者から見て危うく見えるのはあるかもしれない。
「だけど、3人はチーム、でしょ?」
「うん、ヤクモ君に無茶させないように、私達も頑張るよ!」
「そっ!よく言うでしょ?1人は皆のため、皆は1人のために!」
「……はい!その通りです!」
だからこそ、先ほどヤクモも言ったように、2人の存在が必要なのだ。ヤクモが傷つきすぎて不安になるならば自分たちがヤクモを助ければいい。ヤクモが自分たちを戦いの中で助けてくれたように。あげはの言葉にソラもましろも納得したようで、ましろがヤクモの手を握るとソラも倣ってヤクモの空いた手を握る。そして2人で手を繋ぎ、3人で手を繋ぎ合う形になる。
「えっ?」
「3人で助け合いながら頑張っていこう!ヤクモ君!ソラちゃん!」
「はい!エルちゃんをスカイランドに帰すため、もっと頑張っていきましょう!」
「お……オー」
両手を女子に握られたことにドキっとしてしまったせいかいまいち乗り切れないながらも、どうにか声を出す。
「いやぁ、青春だね」
「える!」
そんな3人の姿を、あげはは笑いながら見ていたのだった。