曇り空の夜のプリキュア   作:popoponpon

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第50話 キュアバタフライ誕生

「……ん?」

「あ……」

 

バッタモンダーが眉を寄せる。ランボーグの攻撃は間違いなく2人に大怪我を与えたはずだ。しかしそれが叶わなかった。となれば、その理由は1つしか考えられない。

 

「来たねプリキュア」

 

ランボーグの鼻を受け止めるクラウド。間一髪、2人への攻撃を受け止めることができたようだ。そのことに内心ほっとしつつも、クラウドはバッタモンダーを睨みつける。

 

「来たね、皆!」

「キュアウィング!」

 

一度受け止められた鼻をクラウドから離し、仕切り直すように数歩後ずさるランボーグ。先んじてランボーグの攻撃を受け止め2人を守ったクラウドの横に3人も並ぶと、憧れのウィングの姿を見つけてたけるが喜びの声をあげる。

 

「プリキュアだ!」

「本物だー!」

「すげー!」

 

プリキュアを見て喜びの声をあげているのはたけるだけではない。保育園の中にいる園児たちも、プリキュアに釘付けになっていた。

 

「たける君、お手紙ありがとう。後は任せて」

「!うん!!」

 

ウィングから話しかけられたたけるが感極まったかのようにさらに喜ぶ。自分たちを応援してくれている子供達のためにも絶対に負けるわけにはいかない。

 

「ふん、何が任せてだ!やれ、ランボーグ!」

「ランボーグ!」

 

ランボーグが鼻を振り回してクラウド達を狙う。敵が動き出したのを見て3人が構えるも、今はまだ近くに子供達がいる。バッタモンダーがこの子達を当然気にしてくれるわけもなく、かといってこちらが戦闘を開始すればその余波で被害が出てしまうかもしれない。彼らを逃がすための時間が必要。そう判断したクラウドが再びランボーグの攻撃を受け止める。

 

「クラウド!」

「俺が皆を守る、だから今のうちに避難を!」

「!はい!」

 

クラウドの意図を理解し、スカイが保育園の中の園児たちに向かって声をあげる。

 

「クラウドが皆を守っているうちに安全なところへ!」

「はい!」

 

プリキュアの言葉に従い、先生が皆を避難させる。あげはも、たけるの肩を掴むと、

 

「たける君も避難!」

「えー!?」

 

プリキュアの戦いを見たがっているたけるを無理やり連れだす。一方、バッタモンダーはランボーグの攻撃を受け止め、そのまま雲の拘束でランボーグを足止めするクラウドを見てイライラを浮かべていた。

 

「おい……観客がいなくなったら意味ないじゃないか……!逃がすな、ランボーグ!」

「ランボーグ!!」

 

体は動かないが、鼻の先端はわずかに動く。発射角度を調整したランボーグが、保育園から出ようとしている園児たちに向かって勢いよく水を放とうとする。

 

「やらせるか!」

 

その鼻の前に立ちふさがるように跳んだクラウドがアンブレランスを広げ、水を受け止める。空中で広げたため、クラウドが地面に足を着けるまでは吹き飛んでいくものの、アンブレランスの防御力も相まって、生徒達に届く前に受けきることができた。

 

「……」

「絶対に皆を守ります。早く逃げてください」

 

水が止まり、アンブレランスを閉じて水を払うように一度振ると、自身が離れたことで雲の拘束が緩んでしまい、抜け出してしまったランボーグの元へと走り出す。その光景を、ぽかんと見ていた園児たちに気付いた先生が、慌てて避難を再開するようにと声を張り上げる。

 

「皆、急いで!」

「なんてことするの!やめなさい!!」

 

子供達を攻撃しようとしたのを見て、プリズムが怒りと共に光球を投げる。それによってランボーグの視界が煙に隠れ、その間にスカイとウィングが怒涛の連続攻撃を放ち、ランボーグを追い詰めていく。

 

「やった……!」

 

たけるを避難させ、あげはは辺りを見渡す。あげはが探しているのはエルだった。3人がこの場にいるということは、今エルの傍にいることができる人物がいないということ。これまであげはがいる時はあげはがついていたが、もし一人しかいないところをバッタモンダーに狙われてしまったら。

 

(エルちゃんは……ちゃんと隠れてくれてればいいけど……)

 

あげはが不安を募らせている中、戦いによって生じた煙と、園児たちの混乱に紛れ、子供たちの中から抜け出してきたたけるがこっそりと物陰からプリキュアの戦いを見ていた。

 

「プリキュアの強いところを見るんだ……あっ!」

 

たけるの目の前に広がっていたのは倒れているランボーグの姿。まだ浄化はされていないようだが、目をバツにして倒れてしまっており、完全にグロッキーといった様子だ。これなら、エルにも危害は加えられないだろうと安心しながら、あげははバッタモンダーを見る。

 

「見せたい現実ってこれのこと?」

「まさか。観客が君だけになったのは残念だが、今から見せてあげるよ」

 

この程度でランボーグが倒れはしないとわかっていたのだろう。ここは余裕で指を鳴らすと、ランボーグがそれを合図とするように再び起き上がる。

 

「っ!」

 

まだ決着はついてない。4人がランボーグの行動に対しいつでも動けるように警戒していたが、ここでランボーグがいきなり4人から視線を離す。

 

「「「「?」」」」

 

ランボーグの狙いはなんなのか。その鼻の先端が向いている方向を4人が見ると、そこにいたのは。

 

「あっ!?」

「プリンセス!?」

「あんまり弱い者いじめは好きじゃないんだけど……やっちゃえ」

 

なんとエルだった。戦いに巻き込まれないように十分な距離を取っているが、それを見つけたバッタモンダーはあろうことか、エルを狙って攻撃しろとランボーグに命令したのだ。

 

「「「「!?」」」」

 

4人の予想を超えたバッタモンダーの指示に、反応が遅れてしまう。アンダーグ帝国の刺客にとって、エルはアンダーグ帝国へ連れ去ろうとしている存在ではあるが、赤ん坊のエルに対して攻撃をするという行為は彼女の身にあまりにも危険すぎるが故にご法度になっていたはずではないのか。事実、バッタモンダーよりも前にカバトンがエルを狙っていた際には、エルの身には直接危害が加わらないようにと細心の注意を払っていたのだから。だが、その意識が今回のミスを生んでしまった。

 

「プリンセス!」

「「エルちゃん!」」

「今助ける!」

 

ランボーグの放水攻撃を慌てて避けるエルの元にプリキュア達が走る。それを見たランボーグが水ではなく強烈なアンダーグエナジーをエルへと向けて放つ。

 

 

「だったら!」

 

それを見たクラウドがアンダーグエナジーを受け止めるようにエルとの間に割り込む。直後、ランボーグがアンダーグエナジーの第二波が再びエルへ向かって放たれ、エルの元に駆け付けた3人が身を挺して壁となり攻撃を受け止める。

 

「皆!?」

「プリキュア!?」

「え、える……!?」

 

エルが皆が大丈夫なのか、恐る恐るといった様子でプリキュアを見る。そこには、黒い半透明のドームのようなものに閉じ込められたプリキュア達がいた。

 

「これは!?」

「閉じ込められた!?」

「アンダーグエナジーの檻か……!?」

「ははは、ご名答!正義の味方気取りの君たちならそうすると思ったよ!これで籠の中の鳥だ!」

 

完全に勝利を確信し、楽しそうに笑うバッタモンダー。このままではエルの身に更なる危険が迫ることを確信しクラウドは自分を閉じ込めるドームを殴る。それを見たスカイ達も攻撃するのだが、何故か力が入らない。

 

「な、なんで……」

「それはアンダーグエナジーを濃縮しているんだ、君たちの力は使えない、脱出は不可能だ」

「……それなら!」

 

クラウドが両手を広げる。確かにプリキュアの力が阻害されているという感覚はあるものの、深呼吸し、アンダーグエナジーとプリキュア、その2つの力をコントロールする。そして、

 

「うおおおおおおお!!」

「!!」

 

クラウドの両手から膨れ上がるように雲が出現し、ドームの中を埋め尽くしてしまう。それを見たバッタモンダーが一瞬焦るも、膨れ上がった雲はそれだけで内側からドームを押しているような素振りこそあるものの、ドームに一切影響が見えない。

 

「なんだよ、驚かせやがって……ま、所詮弱いやつじゃあこんなもんか」

「く……!」

 

なんとか力を使えたクラウドでも脱出ができない。もしクラウドだけでも出れたのならエルを守ることができるのに、とスカイが悔しそうに表情を歪める。それを見て溜飲が下がったと言わんばかりにバッタモンダーが愉悦の笑みを浮かべる。

 

「そうそう、それ!その顔が見たかったんだよプリキュア!どうだ外野?これで僕の強さがわかっただろう?後はプリンセスを手に入れれば完全勝利さ」

「……」

 

続けてあげはに対して完全勝利と言わんばかりに勝ち誇る。まさかこんな手段で4人を無力化してくるとは。エルが敵の攻撃に晒されることはないという甘さがこちらにあったのが最大の原因だというのだろうか。

 

「そんな……最強のプリキュアが負けるなんて……」

 

最強と信じていたはずのプリキュアが、やられてしまった。目の前でそれを見せつけられたたけるが激しく動揺してしまう。そんな素振りを、高いところから周りを見ていたバッタモンダーが見逃すわけがなかった。

 

「ああ、そういえば……他にも観客がいてくれたようで嬉しいよ」

「!?」

「たける君!?」

 

バッタモンダーの言葉で初めて、あげははたけるがここにいることに気付く。ランボーグが次の標的を見つけたとばかりにたけるの方に振り向くと、たけるは恐怖の叫び声をあげて逃げ出そうとする。

 

「逃がすな!」

 

ランボーグがいたぶるかのように放水をたけるの逃走経路上に先回りするように放つ。目の前を攻撃されて立ち止まってしまうたけるは慌てて方向転換するものの、転んでしまう。

 

「たける君!?」

「何とかしてここから出ないと……!」

「でも、私たちの力じゃ……!!」

 

その姿を見て、ウィングが焦りの声を上げる。スカイが必死にドームを叩き、プリズムが光弾を生み出そうとするも、効果はまるで出ない。ウィングは焦りの表情を浮かべながら、クラウドが閉じ込められた、雲で覆われたドームを見る。

 

「クラウド……まだですか!?」

「……!!」

 

転んでしまったたけるの前にランボーグがゆっくり恐怖を煽るように迫ってくる。ランボーグを前にたけるが目を瞑ろうとしたその時。

 

「そうはいかない!」

 

あげはがたけるとランボーグの間に立つ。そして、強い口調でランボーグに向かって声を上げる。

 

「これ以上あんたらの好きにはさせない!!」

「先生……!」

 

自分を守るために目の前に立ってくれたあげはの名を、たけるが動揺しながら呼ぶ。一方。バッタモンダーは片腹痛いと言わんばかりにあげはの行動を愚かだと笑い始める。

 

「あはははは!こりゃあいいや!外野のくせに僕をどうするって?……なら逃げきってみなよ」

 

バッタモンダーの言葉と共にランボーグが攻撃を開始する。あげははたけるを背負うとどうにか逃げ出す。あげはが距離を取ったのを見て、ランボーグは放水による攻撃に切り替える。

 

「あげはちゃん!!」

 

3人があげはのことを心配しながら見ていることしかできない中、あげはは一心不乱に走り回りながら、ある事を狙っていた。ランボーグの周囲を走り回り、攻撃を回避し続けていると、次第にランボーグの方がふらつき始める。

 

「ラン……ボーグ……」

 

いや、ランボーグの方が目を回してしまったのだ。バランスを崩し、勢いよく転倒してしまうランボーグ。まさかの事態にバッタモンダーだけでなくスカイ達も呆気に取られてしまう中、遂に体力の限界が来たのかあげはは立ち止まってしまい、たけるを降ろす。

 

「はぁ、はぁ……たける君、大丈夫?」

「う、うん……」

「よかった……」

 

たけるが無事なのを確認し、立ち上がろうとするも息が乱れふらついてしまう。それを見たたけるが心配するが、大丈夫と言うと、まずは呼吸を落ち着けようとする。そんなあげはから視線を外してランボーグの方を見ると、そこにはひっくり返ってしまったランボーグがいた。

 

「凄い……」

 

プリキュアは最強。強いから最強なのだと思っていたたけるにとって、その力がないのにランボーグを相手に立ち回り、倒してみせたあげはの姿は、彼の中の意識を変えるのに十分な効果をもたらしていた。

 

「へ、へぇ……外野の割には頑張るじゃないか……」

「……そういう外野って言うの、やめてくれる」

 

呼吸が落ち着いたあげはの口からドスの効いた声が漏れる。保育園を襲ったばかりか、たける個人を狙って執拗に攻撃してきたバッタモンダーに、彼女の怒りも限界に近かった。

 

「プリキュアや、保育園の皆は私の大切な人たちなの。だから私は……外野なんかじゃない!」

「っ……外野じゃなければなんだというんだ!おら、さっさと起き上がってやっちまえランボーグ!」

「!ランボォオグ!?」

 

あげはの声音に思わず気圧されながら、さっさと起き上がるようにとランボーグに言うバッタモンダー。ランボーグもその言葉に従い慌てて起き上がろうと体を半回転させようとその瞬間、その回転が足元から出現した雲によって増加し、遠くへと転がってしまう。

 

「なぁ!?」

「ら、ランボォオオグ……」

「!クラウド!!」

 

先程よりも深く目を回してしまうランボーグ。一体何事かとバッタモンダーがさらに困惑していると、たけるがある方向を指差す。そこにはボロボロに溶けるように散っていくドームの中から雲を伸ばしたクラウドの姿があった。

 

「げぇ!?い、いつの間に……!?くそ、なんだっていつもお前なんだよぉ!!一番弱ぇじゃねえか!一番力がないから色々手出してるだけのくせに!!」

「力がなくてもいろんなことができる、誰かを守ることも助けることもね。そういうことじゃない?」

「ぐぅううう……!!」

 

歯ぎしりするバッタモンダー。まさかクラウドが脱出するとは思ってもいなかったのだろう、明確に焦りを浮かばせた表情のバッタモンダーに追い打ちするように、あげはの声が響く。

 

「あんたの話し相手は私よ、ちゃんとこっちを見なさい!」

「は、はいぃ!?」

 

動揺もあってか情けなく声をあげてしまい思わずあげはの方を振り向いてしまうバッタモンダー。

 

「外野じゃなければなんだって言ったよね、じゃあ答えてあげる。私は保育士」

「……はぁ?」

 

素っ頓狂な答えを返されたと思ったのか、呆然となるバッタモンダー。しかし、あげはは大真面目に答えている。それは、バッタモンダー以外の全員が理解していた。

 

「そして最強の保育士も、最強のヒーローも、目指すところは一緒。それは大切な人たちを守ること!」

「!」

 

あげはの言葉にはっとなるたける。自分が見たウィングの姿。先ほどのあげはの姿。そして、自分と母親を助け、今も2人を守ってくれたクラウドの姿。何故母がウィングよりもクラウドの方がいいと言ったのか、その理由がたけるはやっと理解できた気がした。

 

「はっ……プリキュアですらない無力な君に何ができる!?」

「だったら私は!!」

 

次の瞬間、桃色の閃光があげはの中から放たれる。その光が何なのかまるで見当がつかず、あげはの身に起こった異変に狼狽え、困惑するしかないバッタモンダー。しかし、その光が何を生み出しているのか、スカイ達にはすぐにわかった。

 

「あの輝きは!?」

「ミラージュペン……」

「何!?ま、まさか……」

 

笑みを浮かべるクラウドの呟きに、バッタモンダーがさらに動揺を強める。光の中から生み出されたミラージュペンを手に取ったあげはは、たけるに言う。

 

「これで、先生も最強になるよ」

「……!あげは先生は、もう最強だよ!」

「!ありがとう……エルちゃん!」

「える!?」

 

これで自分もプリキュアになる。そして、たけるの言う最強の戦士、プリキュアとして戦う。そう告げたあげはに、たけるが返した言葉を聞き。あげはも嬉しそうに笑う。そしてエルに、さらなる力を求める。

 

「アゲアゲでいこう!」

「!アゲ!!」

 

あげはの言葉とミラージュペンを見て、エルはあげはが求めているものを理解する。今のあげはに必要な力を授けるためにも、エルは自らの力をあげはへと放つ。

 

「ぷいきゅあー!!」

 

エルの放つ光があげはの手に収まる。それは、新たなスカイトーンとなる。

 

「最強の保育士の力、見せてあげる!」

 

エルからスカイトーンを受け取ったあげはの声と共にミラージュペンがスカイミラージュへと変化する。それを確認したあげはが、スカイトーンを装着する。

 

「スカイミラージュ、トーンコネクト!ひろがるチェンジ……バタフライ!!」

 

あげはの体が光に包まれていき、髪が金色に変わる。服装もまた桃色を基調としたものとなっていく。どこかギャルっぽさを見せつつも、アグレッシブに動き回るのに支障を来たさないプリキュアとしての姿となる。

 

「アゲてひろがるワンダホー!キュアバタフライ!!」

 

キュアバタフライへと変身を完了したあげはが名乗りを上げる。それを見たスカイ達はあげはが新たなプリキュアとなった事実を前に大興奮で喜びを露わとする。

 

「キュア……」

「「バタフライ!!」」

「あげはさんが……!」

「あげは先生が……プリキュア……!キュアバタフライ、頑張れー!!」

 

あげはが変身した姿を見て、嬉しそうにたけるが拳を突き出して応援する。たけるの応援を聞いたあげはが頼もしそうにウィンクする。

 

「了解!」

「くそったれ!お前も閉じ込めてやる!!」

 

ここで新しいプリキュアが生まれようと、やることは変わらない。もう一度他の皆のように閉じ込めてしまえば、動けるのはクラウドだけなのだから。しかし、ランボーグの放つアンダーグエナジーは、バタフライが目の前に出現させた蝶の形をした光の盾によって阻まれ、弾かれてしまう。

 

「なっ!?」

「アゲアゲな私には効かないよ」

「凄い!」

 

キュアバタフライの力に歓喜の声を上げるウィング。この守りの力があれば、自分たちを無力化したランボーグの能力も問題ない。

 

「だったら……もっとだランボーグ!」

「!」

 

ランボーグが次々とアンダーグエナジーを放つ。それらは全てバタフライのシールドを突破できず、弾かれてしまう。その攻撃を受け止めながら、バタフライはちらと、エルをたけるを傍に寄せるように移動したクラウドを見る。クラウドはバタフライの目を見ると頷き返す。

 

「何度やっても変わんないから!」

「はたしてそうかな?アンダーグ……!?」

 

バッタモンダーが手を上げる。しかし、何の反応も起こらない。バッタモンダーが慌ててクラウドを見ると、クラウドもまた手を上げていて、そこにアンダーグエナジーが集まり、一つの黒雲を生み出していたのだ。アンダーグエナジーを取り込んだ雲は次第に白くなっていき、クラウドの体内に吸収されていく。

 

「またてめぇかよぉおおおお!!」

「小細工と小手先の技はどうも相性がいいみたいだぜ、バッタモンダー!!」

「ナイス!後は任せて2人をお願い!」

 

散らばったアンダーグエナジーを使用し、バタフライを倒す策を考えていたのだろう。その目論見を崩されたランボーグに向かいバタフライが走り出す。

 

「調子に乗るな!」

 

今度は水鉄砲を鼻から放ち、バタフライを攻撃する。それらを華麗に回避すると、蝶の光をランボーグへと放つ。それが命中すると同時に爆発し、その衝撃でランボーグが転倒、その間に保育園の建物の隣で行われていた工事現場全体に張られていたメッシュシートを拝借すると、それを使って倒れたランボーグの前足と頭部を含めて丸め込んでしまい、身動きが取れないようにしてしまう。

 

「ら、ランボーグ!?」

「はーい、すっきりしたね!」

 

身動きを封じられ、混乱しているランボーグを前に、バタフライが高く跳ぶ。瞬間、巨大な蝶の光のシールドが生み出され、バタフライが勢いよくそれを蹴りつけ、シールドと共にランボーグへと降下していく。

 

「ひろがるバタフライプレス!!」

「スミキッター……」

 

バタフライの技を受け、浄化されていくランボーグ。ランボーグが消えたことでスカイ達を閉じ込めていたドームも消失し、即座にスカイがミラーパッドを取り出し、キラキラエナジーを回収する。

 

「い、いい気になるなよ……!僕がさらに本気を出せば……」

「いつでも相手になるよ」

「っ!」

 

いつものように負け惜しみを言おうとするバッタモンダー。しかし、これまでのように、また取り繕うといった余裕すらもうできないようである。

 

「でも、もしまた私の大切な人たちに手を出したら……許さない!」

「いぎぎ……バッタモンモン!」

 

怒りのバタフライの顔を見て、怯えながら消えていくバッタモンダー。これでエルとたけるの2人も安全になったことを確認でき、クラウドも溜息を吐く。と、その横をたけるが走り、バタフライへと抱き着く。

 

「やったー!バタフライかっこいー!」

「ふふ、先生のことは、皆に内緒ね」

「うん!僕、大切な人を守る最強になるよ!」

「うん!」

 

たけるの新たな決意を聞き、バタフライも嬉しそうに頷く。そして、外に出れたスカイ達の方を振り向く。

 

「バタフライ!これからは!」

「一緒に戦えるんですね!」

「凄く凄く嬉しいです!」

「あげ!あげ!!」

「あ……アゲ?」

 

すると、スカイ達がいつもの両手の人差し指を上げるあげはのアゲアゲのポーズの真似をしながら喜びを表していた。クラウドは戸惑っていたがエルがクラウドにも同じポーズを皆の所に一緒に行ってやるようにと持ち掛けていたようで、いまいち乗り切れないながらも皆と同じ仕草を恥ずかしそうにしていた。しかし、その表情は他の皆と同じように嬉しそうであり、バタフライの事を歓迎しているということはよく伝わってきた。

 

「皆、ありがとう!これからは、保育士とプリキュア、両方頑張っちゃうからよろしくね!!」

 

そう言い、バタフライはポーズを決めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あれ?」

 

翌日。保育園で園児たちが来るのをあげはは、何故か子供たちが皆傘を持ってきていることに気付く。今日は雨の予報などないはずだったが、と首を傾げていると、

 

「あげは先生!おはよう!」

「あ、たける君!おはよう!」

 

たけるが保育園にやってきた。たけるはあげはの姿を見ると嬉しそうに挨拶し、そして一枚の絵を出す。

 

「これ、先生にあげる!」

「!ありがとう!」

 

渡された絵には、クレヨンで描かれたキュアバタフライとキュアウィングの姿があった。どうやら、たけるはバタフライのファン一号になってくれたようだ。大事なことを知ったたけるなら、もう心配はいらない。園の中に入っていくたけると別れたあげはの元に、他の先生がやってくる。

 

「あ……すみません、そういえば今日って雨降ります?朝ニュース見た時はそんなことはなかったような……」

「あー……多分、昨日のだと……」

「昨日?昨日……あっ」

 

丁度よかったので傘について質問してみる。今日は雨が降るとは考えずに来ていたため、そこが気になっていたのだが、傘と昨日の戦闘に何が関係あるのか。昨日の出来事を一通り振り返ってみたあげはは、キュアクラウドの存在に思い至る。

 

「キュアクラウドの……」

「昨日、守ってくれたプリキュアに皆夢中で……傘があれば真似できるって、園に入る前から遊んだりしてる男の子たちがいっぱいいて」

「あ、はは……」

 

真似しやすい道具があるというのは、どういえば子供達の受けがかなりいいのだろう。そうか、あれそういえば傘だったかぁ……と遠い目をしながらあげはは苦笑するのだった。

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