「えへへー」
「……ふぅ」
あげはの車の中で嬉しそうに両手に持つ玩具を振るエル。その姿を見ながら、ソラは少し残念そうに溜息を吐く。
「どうしたのソラちゃん?溜息なんてしちゃって」
「え?あー……」
ましろにその様子を聞かれたソラは慌てて誤魔化そうとする。しかし、その暗さはどうやら誤魔化しきれなかったようだ。
「折角皆で買い物しているんですからヤクモさんとツバサ君も誘いたかったなと思いまして……」
「あー……ツバサ君は朝から出て行っちゃったんだよね」
朝から家からツバサが出て行ったため、残った女性陣でこうして買い物に来たのだ。色々オシャレグッズなどを見たりエルの新しい玩具を探したりなど、あっという間に時間が過ぎてしまい、もう昼時だ。女子だけで遊ぶのも確かに楽しいが、ヤクモやツバサもいればもっと楽しかっただろうと考えると残念で仕方ない。
「ツバサ君、飛行機とかを見に行ったのかな?」
「あれ?でも朝出て行った時特に荷物とか持ってなかったように見えたけど……」
「そうなの?」
ツバサはいつものように航空力学の勉強のため、実際に飛行機を見に行ったりスケッチしに行ったのだろう。そう思っていたのだが、あげはから伝えられたのはそういう目的での外出ではないということ。ではツバサは半日も何をしに外に出て行ったのか。
「じゃあ何の用で出て行ったんだろう?」
「……もしかしてヤクモ君と一緒とか?」
「「あ」」
あげはの予想を聞いてそういえばと互いに顔を見合わせるソラとましろ。そういえば以前、ツバサとヤクモが2人で遊びに行ったことがあったのを思い出したのだろう。確かにツバサが特に用事もなく出かけるとするなら、ヤクモと一緒にいる可能性は十分に考えられる。
「じゃあさ、お昼に誘ってみたら?ヤクモ君に連絡したらツバサ君も一緒にいたりして」
「そうだね、聞いてみようっか」
そう言うと、ましろはスマホを取り出してヤクモにSNSで問いかけてみる。そして少し時間が経ち、ヤクモからメッセージが入ってくる。
「あ、来た」
「どんな返答ですか?」
「えーとね……」
興味深そうにソラが聞いてくる。そしてメッセージを一通り読んだましろは、あげはの予想通りと言わんばかりに頷く。
「あげはちゃんの言った通り、ツバサ君と一緒みたい」
「やっぱり!いやー男の子だねぇ、それでどこにいるって?」
「お昼食べに外出たところだって」
微笑ましそうに笑いながら、SNSでの話を続けるましろからの話に耳を傾けるあげは。どうやら2人とも適当に遊んでいた後、昼を食べようとしていたようだ。これは丁度いいとあげはは納得したように頷くと、
「じゃあさましろん、ヤクモ君に一緒に食事しないかって聞いてみてよ」
「わかったいあげはちゃん」
今女性陣で固まっていること、こちらもお昼にしようとしていたところだとヤクモに伝える。皆で一緒にお昼を食べないかという誘いをヤクモに送すと少しだけ間が開く。おそらくツバサと話でもしているのだろう。そして、
「オッケーだって!」
「よかったです!皆でお昼を食べに行きましょう!」
「ツバサとヤクモもいっしょ!」
ばっちり、ヤクモからのオッケーをもらえた事を報告するましろ。その成果を聞いて嬉しそうな声をあげるソラとエル。
「オッケー、それじゃどこに行けばいいって?」
「えーとね……2人とも近くのファミレスで食べようとしてたみたい。場所は……」
「ふむふむ……あー、あそこね!オッケー、そこの駐車場で集合ってことで!」
ましろから聞いた場所を把握したあげはは、男子たちが待っているファミレスへと車を走らせるのだった。
★
「2人だけだと思ってたら皆一緒になるとは思いませんでしたね」
「だね……まあ、休みだしこういうこともあるんじゃないかな?」
目的地のファミレスの駐車場へ向かう途中の街道。その脇に移動し、立ち止まっていたヤクモ達。その理由は、ヤクモがましろからメッセージを受け取ったためだ。それから少しの間やり取りをしていたヤクモだったが、会話が終わったことでスマホをしまう。
「終わりました?」
「うん、俺達は先に行って駐車場で待っていようか」
足を止めていた2人が歩き出す。今日は休みの日とあって車も普段より多く、歩道も家族連れなどがちらほらと見えている。これはファミレスも混んでるだろうなと考え始める。もしそうなら先に席だけ取ることを考えてもいいかもなと思いながら、ヤクモはツバサとの話を再開する。
「でも、あげはさん達もあげはさん達で出かけていたとは……まあそりゃそうか」
「俺達も好きにやってるわけだしね」
女性陣は買い物を楽しんでいて男性陣は家でなんかかっこいいキーホルダーだの漫画だので盛り上がっているという差異はあるのだが。第三者が見たらだいぶ差があると思うんだろうなとついつい考えていると。
「……あ!」
「どうかした?」
ここでツバサが慌てた様子で声を上げる。驚くヤクモを尻目に、ツバサは頭を抱えてしまう。
「なんてことだ……皆が来たら意味ないじゃないですか!」
「どういうこと?」
「僕がヤクモさんに会いに来た目的ですよ!格好いいキーホルダーをもらうためでも漫画を読みに来たわけでもありません!」
「え?」
そういえば何か目的があったのだった。あまり重要なことじゃないんだろうとヤクモもすっかり流してしまっていたが、とうとうツバサもその目的を思い出したようだ。ヤクモの肩を掴むと、
「僕たちは、新たな必殺技を編み出そうとしていたんですよ!?」
「あっ」
そういえばそうだったと当初の目的を思い出すヤクモ。元々そのためにツバサを家に連れてきて、参考になりそうな創作を一緒に見ようとしていたのだった。しかし結局見た目だけ恰好いいキーホルダーで盛り上がったり漫画を読んだりして時間が過ぎていき、ツバサが読んでいた漫画も結局合体技に繋がるような内容ではなかった。つまり、午前中を2人は完全に無駄に過ごしてしまったのだ。
「こんな大事なことをなんで僕は忘れてしまっていたんだ……!」
「ま、まぁまぁ時間はまだあるし……」
「この後皆と会うじゃないですか!その後じゃあまた2人でどこかに行きますね、なんて言えないですよ!」
「それはそうだけど……ごめん」
「別にヤクモさんが悪いわけではありませんよ……」
頭を抱えるツバサを見て、思わず謝ってしまうヤクモ。無論、ヤクモが悪いというわけではないのだが、こうなってしまっては仕方ないとヤクモも髪を掻きながら代案を上げることにする。
「じゃあ……来週とか次の休みにする?」
「そうですね……そうするしかなさそうです」
がっくりと項垂れるツバサを宥めるように軽く肩を叩く。はぁ、と溜息を吐きながら肩を竦めながらも一応は納得したツバサを見て、別の事に興味を持ってもらおうとする。
「まあ、とりあえずお昼に行こうよ。お腹が膨れれば気分も良くなるって」
「そうですね……何食べようかな……」
「ハンバーグだけでも結構種類あったし、トッピングも自由だったから何でも食べれるよ」
「いいですね!チーズとかエビフライとか色々ありましたね……」
何を食べようかと家を出る前にヤクモのスマホで見たメニューで確認したメニューの数々を思い出し、どれを食べようかと期待に胸を膨らませ楽しみにしているツバサを見守りながら、再び歩き出す。と、
「……!?」
「ヤクモさん?」
再び立ち止まり、表情を険しくするヤクモ。不穏な気配を感じたヤクモは、そのまま気配を感じた方角へと振り向く。そこには、
「ランボーグ!!」
「!」
「あれは!?」
ランボーグが町中に現れていた姿があったのだった。
★
少し時は遡る。工事現場に組まれた鉄骨の上に立っていたバッタモンダーは、街を無言で見下ろしていた。
「……新しいプリキュアが生まれてしまった。人数が少ないところを狙ったのに何故かパワーアップした……」
バッタモンダーが考えていたのはこれまでの戦いの内容だった。他のプリキュア達を封じ、適当に残りをいたぶってエルを連れ去れば完全勝利だったのに新たな戦士、キュアバタフライの登場によって形勢を逆転されてしまった戦い。その次の、クラウドとスカイとプリズムがいないタイミングを狙って仕掛けた戦いで、確実に有利だったはずなのにエルが新たに生み出した新アイテム、ミックスパレットによって惨敗を喫した戦い。ここまで負けが込み始めると、さすがのバッタモンダーも次はどうするべきかと手詰まりが出始めてしまう。
「……さて、どうするか……」
とはいえ、こうして1人で考えている分にはまだ余裕が、いや心が安定していた。実際に戦い負ければ心が穏やかではいられない性分なだけだなのだが。
「……待てよ?そもそもの話、新しいプリキュアが出てきたのもパワーアップしたのも全部プリンセスの力じゃないか?」
そしてバッタモンダーはある真理に気が付く。全てのプリキュアがエルの力によって誕生しており、パワーアップアイテムも全てエルから授けられているのだ。確かにエルを攫おうとするアンダーグ帝国に対し、エルが自身を守るための力としてプリキュアを生み出したということはあまりにも自然な流れだ。ランボーグを召喚し、それとプリキュアが戦うという流れを途中から引き継ぐ形になったバッタモンダー自身もうっかり見落としてしまっていたが、こうして思い出してみるとエルが全ての鍵になっているのだ。
「となると……一旦プリンセスはおいといて、奴らが分断されてるところを狙うか……できれば……」
アップ・ドラフト・シャイニングが使えるスカイとプリズム、タイタニック・レインボーアタックを使えるウィングとバタフライは論外。それ以外の組み合わせな上、エルがいないという条件をクリアしなければならない。
「……ん?あれは……」
そんな都合のいい状況は果たしてくるのだろうか。とりあえず奴らを見つけて待つかとバッタモンダーが考えていると、その視線に見覚えのある2人が歩いていた。そこにいたのはヤクモとツバサだった。
「……あったじゃないか」
それを見て、バッタモンダーは不敵に笑みを浮かべるのだった。
★
そして現在、バッタモンダーによって召喚されたランボーグが街の中に現れる。それを見て、逃げ惑う人々を避けるようにヤクモとツバサが脇の方に逸れ、皆が逃げる邪魔にならないようにしながら、それぞれミラージュペンとスマホを取り出す。
「こんな時にランボーグが出てくるなんて……」
「皆が来るまで時間がかかるな……とにかく俺達で戦おう」
ましろにランボーグが出現したことをメッセージで送ると、ツバサと共にプリキュアに変身し、ランボーグの前に現れる。
「ランボーグ!」
プリキュアを見つけ、ランボーグが声を上げる。巨大な車の姿をしているランボーグは声を上げると共にプリキュアへと勢いよく突進してくる。
「「!」」
速度だけならウィングの方が上であるが、車相手に正面衝突すればどうなるかわからない。2人ともまずはランボーグの先制攻撃を回避するも、ランボーグはドリフトを決めながら方向を修正し、地上にいるクラウドに突進してくる。クラウドが地面を蹴ってランボーグの上に手を当てて空中に跳びだす。
「ランボーグ!!」
クラウドが地面に着地するところを狙おうとするランボーグ。しかし、空中に雲の足場を作り出してそれを乗り継ぐことで地面に着地せず空中に居座るようにしてランボーグの攻撃範囲から逃れる。
「ラ、ランボーグ……!」
「ふむ……」
悔しそうな声を漏らすランボーグをバッタモンダーは冷静に見下ろしていた。確かに地上だけを走っていては空中の敵を捉えられない。これは今回ランボーグを作るための素体とした車の特性故か。しかし、こいつは車ではなくランボーグなのだ。その程度の無茶はどうとでもなる。
「ランボーグ、お前の力を見せてやれ」
「!ランボーグ!」
「「!」」
ランボーグが壁に向かって走り出す。このままでは壁に激突する、そう2人が思った次の瞬間、ランボーグが壁を垂直に走り始め、そのまま壁を蹴るように空中に回転しながら飛び出してくる。
「はぁあ!?」
「危ない!」
ここから跳んでも間に合わない。そう判断したクラウドは雲のクッションを作り出して驚きのあまり固まってしまったウィングとランボーグの間に割り込ませる。ランボーグの突撃が雲を挟んでウィングへと叩きつけられてしまい、ウィングが墜落してしまう。
「うわあああ!」
「ウィング!大丈夫!?」
「っ、なんとか……うわっ!」
間に雲を挟んだことで衝撃は幾分か和らいだものの、地面に激突した衝撃はそのまま与えられる。さらにウィングを圧し潰そうと上から落ちてくるランボーグを慌てて転がって回避し、そのまま空中へと一旦逃げるウィング。
「危な……」
「まさかあんな挙動してくるとは……守勢に回るのは悪手か」
「だったら、こちらから攻めるまでです!」
再び空中に飛び出して攻撃してくるランボーグを回避すると、ウィング自身も速度を上げていき、拳を突き出す。
「ひろがるウィングアタック!!」
「ランボーグ!!」
しかしランボーグもまた急旋回すると、フルスロットルで走り出し、ウィングに真正面から激突する。あまりの速さにランボーグの表面を風の膜のようなものが覆っているかのようにすら2人の視界に映り、ウィングの拳とランボーグの顔が激突する。そして、
「う……ぐ……!?」
ウィングとランボーグが止まったのは一瞬。ランボーグの馬力の方が上なのか、ウィングが一瞬押し返されてしまう。なんとか抵抗しようとするも、拳が震え、そのまま一気に、
「ランボーグ!!」
「うわあああ!?」
ウィングの体が吹き飛ばされてしまい、壁に叩きつけられてしまう。さらにランボーグは壁に叩きつけられたウィングを潰してやろうと再び加速を始めており、その眼前にクラウドが降りてランボーグを受け止める。
「ぐう!?」
しかしクラウドもそのままランボーグに壁へと押し込まれてしまい、壁と自身の間に雲を生み出してどうにかダメージを少しでも防ごうと試みる。
「クラウド!!」
「くく……そのまま潰してしまえ!」
ミシミシと腕と体が悲鳴を上げ始めるも、必死にランボーグに抵抗するクラウド。そんなクラウドの抵抗を嘲笑うかのようにバッタモンダーが声を上げるも、クラウドが抑えていた僅かな時間でどうにか離脱していたウィングがランボーグの横から攻撃して吹き飛ばす。
「クラウドを離せ!!」
「ランボーグ!」
横に回転しながら地面を滑り転がっていくランボーグ。しかし、この程度ではまだ大きなダメージにはならないようで、次第に回転が止まったランボーグが何事もなかったかのように2人を見る。
「く……こうなったら……あの連携でランボーグを倒すしか!」
有効打にならない攻撃に悔しそうにしながら、ウィングは次の手を打ちだす。クラウドもウィングの意図を理解すると、両手を天に突き出す。
「ひろがるクラウドプロテクト!!」
クラウドの手から出現したクラウドプロテクト。天高くそびえるクラウドプロテクトが高速で回転を始め、それを見たウィングがクラウドプロテクトの中にウィングアタックのポーズで入る。
「くらえ!ひろがる……」
「おっと、止めろランボーグ!」
「ランボーグ!!」
クラウドとウィングの意図を理解したのか、バッタモンダーの言葉を合図とするかのようにランボーグが自身へと向けられたクラウドプロテクトへと高速のスピンを行いながら突っ込んでくる。
「っ、うわあああ!?」
「ぐっ!?」
瞬間、クラウドプロテクトの内部の回転がめちゃくちゃになってしまい、その回転に乗っていたウィングもまたまともに飛行が困難になってしまい、遂にクラウドプロテクトの内部から弾かれてしまう。ランボーグもまたクラウドプロテクトの内部でガリガリとアンダーグエナジーが削られる音を響かせながら突破し、クラウドを吹き飛ばしてしまう。
「ぐあっ!」
「クラウド!!」
地面を転がっていくクラウドに近づき、その体を受け止めて一旦空へと上がる。その後、雲の足場を展開しその上に着地したクラウドは、今の自分たちができる最大の攻撃をいとも簡単に攻略してきたランボーグを険しい表情で見下ろす。
「……まさか、あの攻撃が破られちゃうなんてね」
「こういう時合体技があれば……!」
「無理無理、所詮お前たちのやってることなんて付け焼刃なんだよ!それに、プリンセスもいないのに合体技なんか都合よくできるわけねーだろバーカ!!」
2人の連携攻撃を打ち崩したのがたまらなく爽快だったのだろう、心底嬉しそうにプリキュアを馬鹿にしてくるバッタモンダー。そんなバッタモンダーの煽りを気にしている余裕など2人にはない。
「もっと追い詰めろランボーグ!!」
「ランボーグ!」
「クラウド、もっと高度を!」
ウィングの指示を受け、ランボーグが壁を蹴っても届かない位置まで上昇するクラウド。ここならば攻撃もされないだろう。そう思っていたが、ランボーグは横の回転を強くすると、それは巨大な竜巻へと変化して2人に襲い掛かる。
「何!?」
「危ない!」
竜巻に巻き込まれる直前に雲を蹴り、ウィングの手を掴むクラウド。どうにか竜巻を回避して近くのビルの屋上に降り立つも、回転を止めて壁を駆け上がり、屋上に立つ2人を追いかけてきたランボーグが姿を現す。
「!」
「落ちろ!」
咄嗟に屋上に前輪を置こうとするランボーグの目の前に雲の壁を垂直に作り出す。ランボーグが前輪で壁を押すとクッションのように弾かれてしまい、空中に投げ出されたランボーグがそのまま真っ逆さまに落ちていく。
「ランボーグ!?」
クラウドとウィングが互いに頷き合うと、落下するランボーグをさらに真下へと蹴りつけ地面に激突させる。地面がひび割れ砕ける音と共にランボーグから高い悲鳴が響く。
「よし……これは効いたぞ!」
「やっぱり重いんだな……待てよ」
着地しながらクラウドはあることを思いつく。今の一連の流れと、自分たちのできることを加味すれば、可能性はまだあると気付いたのだ。
「ウィング」
「……?」
ウィングに耳打ちをするクラウド。クラウドの話を聞いていたウィングは、その手があったかと言わんばかりに目を見開くと、笑顔でクラウドにサムズアップをする。
「……なんか思いついたみたいだけど、そんな思い付きの小細工でどうにかなるわけないだろ!やれ、ランボーグ!」
「ランボーグ!!」
今度こそ2人を仕留めようと、ランボーグが突進してくる。だがクラウドはそれを待っていたと言わんばかりにその手にアンブレランスを持ちだすと、それを地面に斜めに突き刺す。
「……ん!?」
アンブレランスを覆うように雲の板が出現し、雲の坂が生み出される。それは段々角度がつく構造になっており、ランボーグはその上を走っていき、一瞬で2人の真上に勢いよく飛び出してしまう。
「ラン!?」
「今だ!ひろがるクラウドプロテクト!」
クラウドの頭上に広げられたクラウドプロテクトが高速回転する。さらにその中に入り込んだウィングは、クラウドプロテクトの回転に合わせるように高速で回り始める。
「「うおおおおおお!!」」
「な、なんだあっ!?」
2つの回転が一つになった瞬間、クラウドプロテクトがさらに巨大な竜巻となり、ランボーグが天高く巻き上げられる。
「ラ、ラ!?」
「あれは!?」
そして、それほどまでに高く伸びていく竜巻とランボーグの姿は、騒ぎを聞きつけて向かっていたスカイ達にもばっちりと映っていた。
「な、何が起こってるの!?」
「もしかして……ウィングとクラウドがあれを!?」
「エル!」
4人は顔を見合わせると、ランボーグと2人がいるであろう場所へと急ぐ。そして4人がその場に駆け付けるのと同時に、ランボーグは再び地面に叩きつけられ、苦しそうに悲鳴を上げる姿を目撃する。
「ら、ランボーグ……」
「これが……僕たちの新しい技だ!」
「大体その場の勢いで技なんて作っちゃえば案外できるもんさ……ウィング!裏からなら!」
「はい!!」
無防備に腹を曝け出すランボーグ。ウィングは勢いよく飛び上がると、三度目の正直とばかりにウィングアタックを放つ。回避すらままならないランボーグは抵抗することもできないまま、ウィングの攻撃をまともに喰らってしまう。
「ひろがるウィングアタック!!」
「スミキッター……」
遂にランボーグが浄化されてしまい、元の車に戻ってしまう。
「くそっ、これで駄目なのかよなんでだよ!一番弱い組み合わせだっただろうが!!」
終盤で皆が合流してきたとはいえ、実質ウィングとクラウドに倒されたも同然。プリキュアで一番弱い組み合わせを選出しようとすれば間違いなくこの2人になるであろうウィングとクラウドのペアにすら負けたという事実を受け入れられず怒り狂うバッタモンダーを、スカイがちゃんとキラキラエナジーを回収している様子から目を離して見上げると、
「一番弱いかもしれないけど、一番何するかわからない組み合わせかもよ?弱い奴ほど何するかわからない、ってね」
「ぐ、ぐぐ……!覚えてやがれ、バッタモンモン!!」
実際にしてやられたからだろうか、それともバッタモンダー自身思うところがあるからだろうか、クラウドの言葉を忌々しいと思いつつも言い返せないまま撤退してしまう。バッタモンダーが消え、戦いを制したクラウドとウィングは互いに喜びを露わにするかのように拳をぶつけ合う。
「やりましたねクラウド!」
「新しい技、できたね」
「はい!」
「……?」
ほとんど成り行きに近かったが、自裁にやってみればウィングとしても満足のいくものだったようだ。そんな2人の様子を見たバタフライが、2人が何故午前中一緒にいたのか、何となくその理由に気付く。そして全員が変身を解除した瞬間、
「……あ」
ツバサの腹の虫が鳴る。全員の視線がツバサに集まり、恥ずかしそうに咳払いをする。
「も、もうこんな時間ですから仕方ありませんよ」
「そういえば、お昼食べようとしてたんだったっけ
「そうです!2人とも一緒に何をしていたんですか?」
「え?それは……」
ソラに少し詰め寄られるヤクモとツバサ。別に話してもいいのだがとヤクモがツバサをちらと見ると、ツバサは機嫌が良さそうにポケットに手を入れて軽く金属音を鳴らしながら、
「内緒ですよ」
「ええ!?どうしてですか!?」
「男同士の話ですから」
「な……なんかずるいです!」
「ま、まぁまぁ」
このように返答し、ソラは不機嫌になってしまいヤクモに宥めてもらってしまう。
「あはは、なんか凄く嬉しいことがあったのかな?」
「そうみたいだね、ま、少年のために聞かないでおいてあげよっか」
「える?……ごはん!」
エルもツバサの過ごした時間に興味津々なようだがそれよりも空腹の方が今は大事なようだ。そんなエルを笑いながら見た一行は、戦勝ムードの中お昼を食べに移動を始めるのだった。