「……じゃあ、ましろん昼間からずっと絵本を作ってるの!?」
「ええ、ずっとね」
夕暮れになり、バイトが終わり家に戻ってきたあげはは、既に帰宅していたヨヨやソラ達から、ましろが昼間からずっと部屋に籠って絵本を作ろうとしていることを聞く。それを聞き、思わず驚きを露わにする。
「そっかぁ、そんなに夢中になって……」
「あんなましろさんは初めて見るわ」
そう言い、笑うヨヨ。彼女から見ても、今の1つの物事に熱中するましろの姿はとても珍しいのだろう。だが、だからこそこの一件を嬉しく思っているようで、あげはも同じ気持ちだと笑みを浮かべる。
「……おっと」
と、ヤカンが音を鳴らし始め、お湯が沸騰したことを告げる。その音を聞いたあげはが席を立って止めに行ってる間、ソラは少し落ち込んだ表情を見せる。
「ましろさん……無理してないでしょうか……」
「そんなことないと思いますよ?ヤクモさんも言ってたじゃないですか、徹夜するほどでもなければいいんじゃないかって」
「そうですけど……やっぱり心配です。ヤクモさんに聞いてみましょう」
「いやいや……」
もうすぐ夜ということもあり、既にヤクモは帰宅して虹ヶ丘家にいない。それ故、自分の心配をヤクモに相談できないことも不安なようである。そんなソラの姿を思わず呆れた表情で見てしまうツバサ。
「何でもかんでもヤクモさんって……ヤクモさんそこまで万能な人じゃありませんよ」
「それはわかってますけど……なんか相談したくてしょうがなくて……」
「……はい、これ!」
2人の会話を中断するようにあげはが紅茶や軽食を乗せたトレイをソラに持ってくる。
「あげはさん?これって」
「気になるなら直接ましろんの様子、見てきたら?」
「……わかりました!」
あげはからトレイを受け取るソラ。熱中しているところでその集中を途切れさせるような真似はしたくないし、されることがどんなことかはソラもよくわかっている。だからこそ、ましろが無理をしてないかどうかを確かめようとしても中々確かめられずもどかしそうにしていたのだが、差し入れを持っていくという建前ができるなら自然に様子を確かめに行くことが可能だ。これで集中を削いでしまったとしても、手ぶらで確認しに行くよりはまだましろの気分も害さないで済む。あげはから受け取った天啓に従うようにトレイを持ち、ましろの部屋の前に立つ。
「ましろさーん、お茶を持ってきましたー……入りますよー……?」
扉をノックするが、ましろからの反応がない。これは入っていいのかと疑問が一瞬過るも、差し入れを手渡さなければいけないと扉を開くと、そこには周りの音など聞こえないといった様子でペンを楽しそうに動かすましろの姿があった。
「……」
ましろに音が聞かれないようにおそるおそるといった様子で慎重にトレイを机の上に置く。邪魔にならないうちに部屋から退さんしようとすると、
「ありがとうソラちゃん」
「わわ!?は、はい!?」
どうやらソラのことには既に気付いていたようだった。ましろに呼ばれ、慌ててましろの方に振り向く。もしかして邪魔を既にしてしまっていたかとソラが考えていると、
「なんかね、すっごく楽しいの」
「……!」
ましろの口から零れてきたのは、心の底から彼女が絵本作りを楽しんでいることがわかる言葉だった。それを聞いた瞬間、ソラは自分が今まで抱いていた心配は全部杞憂だったことに気付く。途端に彼女のましろに抱いていた不安が全て消えていき、彼女の表情が明るくなっていくのだった。
「はい!」
★
そしてましろが絵本作りに取り組み始めて数日後。あげはに出来を確認してもらったりツバサをスケッチ材料にしたり、ヤクモと一緒に絵本製作に必要な資料を調べたりと忙しい時間を過ごした結果、机の上に重ねられた十数枚の画用紙が出来上がっていた。そこに、最後の一枚となる紙を重ねたましろは満足そうに、
「……できた!!」
遂に成し遂げたと言わんばかりに感極まった嬉しさの声を上げる。後はこの原稿を市役所の方に提出するだけなのだが、実はましろはかなり締め切りに追われていた。こうして原稿を書ききったのはいいが、結局書き終えたのが締め切り日当日だったのだ。しかも時計の針は既に15時を示しており、このままでは受付が先に閉まってしまう。
「うわやば!?急がなきゃだよ!?」
慌てて席を立ちあがり、原稿を指定された封筒にしまう。そしてましろがリビングまで慌ただしく降りると、そこには彼女が原稿を完成させるのを待っていた5人がいた。
「ましろさん!できたんですね!」
「う、うん!でも締め切りが!」
「オッケー、それじゃ急ごうか!」
ましろが原稿を完成させたという報告を受け、5人も外出の準備をすぐに整える。締め切りに追われてはいるものの、徒歩で移動してもまだ間に合う時間。6人が市街地を少し忙しそうに歩き始めていたのだが。
「……おや?」
その道中をバッタモンダーに偶然発見されてしまった。こうして遭遇できたのならば奴らを今度こそ倒してやろう。そうバッタモンダーがランボーグを召喚しようと手を振り上げかけたのだが、妙に彼らが急いでいることに気付き、動きを止める。
「あいつら、何を急いでるんだ?慌てて……んん?」
何か用事でもあるのだろうか、それとも。バッタモンダーが6人の身なりを見ていくと、ましろが大事そうに抱えている封筒が目に入る。
「なるほど、何か大事な用事かな?」
早歩きをしながら市役所へと急ぐ6人。彼らの大事な用事を台無しにし、プリキュアを倒し、エルを手に入れる。そんな、徹底的にプリキュアの心をへし折る展開を予想し、楽しみそうな笑みを浮かべるバッタモンダー。既に自分たちがバッタモンダーに見つかってしまっていることを知らないましろ達は、運悪く赤信号に捕まってしまう。
「赤信号……」
「何時なんですか?」
「5時までに市役所に出さなきゃいけないんだけど……」
信号に足止めされたましろが顔を上げると、市街地にある時計代わりに時刻を表示している店のモニターが目に入る。そこには15:32と時間が記されており、既に1時間半を切っていることになる。
「1時間半か……」
「なら大丈夫。そこまで焦らなくても間に合うから」
今の時間と締め切りの時間を聞いて、安心するあげは。6人の目の前をトラックが通過していき、そろそろ信号が青になるかなとそれまで経過していた時間から予想していると。
「……ふっ」
「「「「「「!!」」」」」」
横断歩道の向こう側にバッタモンダーが立っていた。
「バッタモンダー!?」
「ふふ……その封筒、随分大事なものなんだね」
「あんたには関係ないし」
今は構っている暇はないからさっさと帰ってくれとでも言いたげにドスの効いた声音であげはが牽制する。しかし、バッタモンダーも戦う前からそんな言葉で我を失うことはなく、結果的にあげはの目論見は失敗した形となる。
「僕は君たちが心配なんだ。何かアクシデントに巻き込まれてその封筒を失ってしまわないかってね」
「どうせそのアクシデントは自分とかいうオチなんだろうに」
「大正解!カモン、アンダーグエナジー!!」
ヤクモの指摘に満点を出し、バッタモンダーがアンダーグエナジーを信号機へと放つ。アンダーグエナジーを吸収し、生み出されたランボーグを前に、あげはは苛立ちを隠せない。
「ランボーグ!」
「もうこんな時に!本当に嫌な奴!」
「いこう、皆!」
ましろの声と共に5人はミラージュペンをスカイミラージュへと変化させ、そこに自分のスカイトーンを装着していく。5つの光が瞬時にその姿をプリキュアへと変えていく。
「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!!」
「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!!」
「夜空に漂いひろがる雲!キュアクラウド!!」
「天高くひろがる勇気!キュアウィング!!」
「アゲてひろがるワンダホー!キュアバタフライ!!」
新たにバタフライを加え、初めて5人で同時に変身することになるプリキュア達は、新たなチームの結成を宣言するかのように声を張り上げる。
「レディー、ゴー!」
「「「「「ひろがるスカイ!プリキュア!!」」」」」
5人で名乗りを上げたプリキュア達。エルがゆりかごに乗り、ましろの大事な封筒を持って5人から離れていくのとバッタモンダーがランボーグに指示を出したのは同時だった。
「さあ行くんだランボーグ!」
「ランボーグ!!」
ランボーグがプリキュア達を攻撃するため突進してくる。だが、クラウドが雲を生み出してそれを前方へと発射すると、ランボーグが雲の壁に阻まれ、その体が一瞬雲から弾かれる。
「はあああ!」
雲によってランボーグが怯んだ隙を狙い、スカイが前に出てきてランボーグの懐へと潜り込もうとする。それを見たランボーグが慌てて乱打によってスカイを近づけさせまいとするも、
「信号は皆を守るためのもの!乱暴なんて許されません!!」
的確にランボーグの拳を捌きながら懐に潜り込み、強烈なアッパーを放つとランボーグが空中に打ち上げられていく。
「やあ!!」
そこに追撃とばかりにウィングが上から拳を振り下ろすとランボーグの背中を打ち付ける。今度は勢いよく地面に落下するランボーグ。しかしその先にはプリズムが待ち構えており、回し蹴りを放つとランボーグが今度は真横に吹き飛んで地面に叩きつけられる。
「ら、ランボーグ!」
「ひろがるバタフライプレス!!」
これでトドメと言わんばかりに連携攻撃の締めとしてバタフライが技を放つ。4人の連携によって小さくないダメージを受け、横に伸びている無防備な体をこれで押し潰してやろうとバタフライが迫る。だが、
「ラン!」
ずっと青く点灯していたランボーグの信号の胴体が突然赤色になる。その瞬間、バタフライプレスが空中で停止してしまったのだ。
「「「「「!?」」」」」
突然の事態に驚くプリキュア達。とくに、技を途中で止められたバタフライは自分の体諸共空中に止まっている状態であり、自分の身に何が起こったのかわからず混乱していた。
「ちょっ、なんで!?体、動かせないんだけど!?」
口だけは動くようであり、時間を止められているというよりは体がこれ以上の動きをしようとしているのを止められているような感覚に近い。そしてその感覚は、他のプリキュア達も赤いオーラに覆われており、同様に感じていた。
「僕達もです!!」
「って、ランボーグも止まってる!?」
だが、動きが止まっているのはどうやらランボーグも同様のようだ。これなら、自分たちもランボーグを倒すことはできないものの、逆にランボーグの方もこちらを攻撃することはできない。膠着状態に陥るための能力のようだ。と、ランボーグの赤い光が青い光に変化する。それと同時に全員の自由が戻るも、先に動き出したランボーグがバタフライプレスを回避、そのまま跳躍して空中に飛び出しバタフライに体当たりを放つ。
「きゃあっ!!」
「バタフライ!」
技を放った直後の無防備な状態ではシールドを作り出すこともできず、そのまま吹き飛ばされてしまう。ならばとスカイが今度は仕掛ける。
「ヒーローガールスカイパンチ!!」
だが、今度はスカイの放とうとした一撃も命中する直前に赤い光へと変わる。まるで青信号が赤信号に変わるように。それによってまたしてもプリキュアはそのまま動きを封じられてしまう。
「赤信号になると動きが止まっちゃう……!」
「青信号の時は動けるけど、そのタイミングが分からないからランボーグに先に動かれてしまう……!」
完全に敵のペースにされてしまい、プリキュア達も自由に動けない現状に悔しそうに表情を揺らす。そしてランボーグが青信号に変わるのと同時にスカイパンチの軌道から外れ、スカイはスカイパンチを敵のいない方向へと放つこととなってしまう。しかしすぐにランボーグの反撃を予想して振り向くも、再びランボーグが赤信号となり動きを止めてしまう。
「一体どうしたらいいわけ……!?」
「……このままじゃ絵本の締め切りが……」
この厄介な能力、それ以上に問題なのは赤信号による遅延能力の方だ。これでは、絵本の締め切りに間に合わなくなってしまう。バッタモンダーの目的はこちらの用事を潰すことも含まれている、それを達成させるわけにはかないのだ。
「それはいいの、でもそれよりランボーグを……」
「どうでもよくありません!!」
だが、絵本よりもまずランボーグをどうにかしないと始まらない。それで絵本の締め切りが間に合わないのなら、もう仕方がないとプリズムは割り切ろうとしていた。だがそれに待ったをかけたのはスカイだった。
「プリズム!次に青に変わったら構わず行ってください!」
「そうですよ!あんなに頑張ったんだから!」
「でも、こんなにピンチなんだし……!」
「いいから行く!!」
「大丈夫、なんとかするよこっちは」
「皆……」
スカイの言葉に同意するように、皆がプリズムに先に行くように促す。
「私達、いっつもプリズムの優しさに支えてもらってる。だから今日くらい思いっきり応援させてよ!」
「……」
プリズムは少しの間無言でいたが、皆の意思を聞き、この場から離脱することを決める。だが、
「美しい……なんて尊い友情なんだ。でも、もう悩まなくて大丈夫……不毛な譲り合いを止められるように……ランボーグの赤信号はこのままにしておいてあげるよ」
「「「「!?」」」」
バッタモンダーはあろうことかここでランボーグの赤信号を維持すると言い出した。ランボーグの能力はどうやらバッタモンダーにもかかっているようで、ランボーグが赤信号でいる間、バッタモンダーがエルを連れ去るということはなさそうだが、このまま長時間拘束させられてしまえば、市役所には辿り着けない。
「なんて卑怯な……!」
「へっへーん、悔しかったら動いてみせろよ!まぁ無理だろうけど」
「無理じゃないんだよ!」
次の瞬間、クラウドが大地を蹴った。
「何!?」
なんとランボーグの赤信号の中でもクラウドは動いていた。いや、赤いオーラから一人だけ解放されており、ランボーグへとアンブレランスを構えて走り出す。
「「「「クラウド!!」」」」
「なんで動けるんだよ!?避けろ、ランボーグ!」
「ら、ランボーグ!?」
槍のようにアンブレランスを突き出そうとするクラウド。それが命中する寸前に青信号へと変わり、どうにか攻撃を回避するランボーグ。そして動きを取り戻したプリズムの元にエルが原稿を持って近づいてくる。
「赤信号で止める能力っていっても大元がアンダーグエナジーならどうにかなる……崩したぜバッタモンダー。お前の小細工!」
「ぐ、ぐぐぐぐ……!?」
「今です、プリズム!」
「うん!行ってきます!」
エルから原稿を受け取り、プリズムはエルと共に走り出す。これで原稿の方はもう大丈夫。後は、ランボーグを倒すだけだ。
「くそ、止めろ!」
「ら、ラン……」
ランボーグが再び赤信号に変えようとする。クラウドだけが動いて自由に攻撃できるというリスクよりも、他の全員を少しでも停止させられるメリットを取ったということか。だが、既に動けるようになっていたバタフライが次の一手を打っていた。
「2つの色を1つに!レッド!イエロー!守りの力、アゲてこ!」
赤と黄色、2つの色を混ぜて生まれた光がスカイの体をオレンジ色に包み込む。直後、ランボーグが赤信号に変わり、バタフライとウィングの動きが停止する。だが既にプリズムは効果範囲外に出て行ってしまっているようで動きは拘束されない。クラウドも一瞬動きが赤いオーラに包まれて止まるも、すぐにオーラがクラウドの中に吸収されてしまい、自由を取り戻す。だが、今回解放されたのはクラウドだけではない。
「はあああ!」
「げ!?なんであいつまで動けるんだよ!?」
自由に動けるのはスカイも同様。バタフライのミックスパレットによって付与された守りの力は、どうやらランボーグの仕掛けてくる状態異常攻撃を防ぐ役割を担っているようだ。
「赤信号が起点になるのなら、それを潰せばいい!スカイ!」
「はい!!」
ランボーグが赤信号から青信号に切り替わる前にアンブレランスを槍のように構えるとそれをレンズへと思い切り突き刺す。それによってひびが広がっていき、2人の体を覆う赤いオーラが若干薄くなっていく。
「ランボーグ!?」
「はあああ!!」
さらにその上からスカイがクラウドと共にアンブレランスを握ると、2人は勢いよくランスを押し込んでいく。バキバキとアンブレランスがめり込み、レンズが割れていく音と共に赤い光が完全に消滅し、ランボーグの最大の特徴だった停止能力が完全に無力化されてしまう。
「よし、これでもう赤信号にできない!」
「今だよ!ウィング、バタフライ!」
「アゲてくよ!」
アンブレランスを引き抜く、ランボーグを蹴り飛ばすと、スカイとクラウドがその場を離脱する。それを合図として、バタフライはミックスパレットに全ての色を織り交ぜていき、その力をウィングへと宿らせる。
「プリキュア・タイタニック・レインボーアタック!!」
「スミキッター……」
巨大な鳥となったウィングがランボーグを瞬時に押し潰していく。その一撃に耐えきれず、浄化されてしまうランボーグ。
「なんでだ……なんでこんな弱ぇ奴らにこの俺が何度も負けるんだ!?」
「嫌がらせばかりするあなたのような人にはヒーローは決して負けないんです!!」
とうとう逆鱗に触れられたのか、スカイはバッタモンダーに言い放つ。エルを狙うばかりか何度も意識的に嫌がらせじみた行為を仕掛けられもすればこうも言いたくなるものだろう。
「きー!!……まぁいい……君たちを叩きのめす楽しみは近いうちに取っておこう……余裕こいていられるのも今の内だ……バッタモンモン」
いつものように負け惜しみを口にして消えていくバッタモンダー。そんな聞き飽きた台詞は今の4人にとってはどうでもいい。顔を見合わせて頷き合うと、変身を解いて市役所を目指して急ぐのだった。
★
17時。4人が市役所に辿り着いた時には時計がその時刻を示していた。もしもましろが最後まで戦闘に参加していたら、締め切りに間に合わせることはできなかったのかもしれない。そういう意味では先に向かわせたのは英断だったと考えながら、17時になったことを告げるチャイムを聞く。
「……あ、あれ!」
市役所の入口を指差すツバサ。そこには市役所から出てくるましろとエルの姿があった。
「ましろさん!」
「皆!大丈夫だった!?」
「もちろん!」
「ヤクモさんのおかげですよ!」
「ソラさんや皆がいたからだよ」
ましろも皆の姿を見つけて駆け寄ってくる。自分が抜けてランボーグは大丈夫だったのか不安だったのだろう、4人の話を聞いて安心する。
「ましろんは?」
「ギリギリセーフ!なんとか応募できたよ!」
「えーるぅ!」
そしてましろの方もどうやら何とかなったようだ。その報告を聞いて4人の方も安心するのだった。
★
後日。ましろが絵本を応募したコンテストが開催され、展示されてる絵本を見に行った6人。そこで大賞に飾られている絵本が菜摘が応募したものだということに気付く。
「これって、プリティホリックの……」
「菜摘さんのじゃん!凄すぎ……!」
「綺麗……!」
圧倒的な画力が人の目を引き付ける一冊。これならば大賞に選ばれるのも納得の出来だろう。ましろ達が見入っていると、
「ありがとう」
「あ、菜摘さん!」
同じく展示場に来ていた菜摘と出会う。
「ましろんさんの絵本も素敵だったよ。私もいつか、あんなふうに優しい世界が描けるようになりたいな」
「菜摘さん!」
菜摘は、ましろが描いてくれた絵本を読んでくれていたようだ。その感想を聞いて、ましろも嬉しい気持ちになる。そしてその頃、ましろ、あげは、ツバサと離れ、ましろの作った絵本を探していたソラとヤクモ、エルは、展示スペースに置かれていたましろの絵本を見つける。
「あ、これましろさんの!」
「そうだね、読んでみようか」
「える!」
ましろの作った絵本がどんな内容なのか。場所が場所なので大きな声では読めないが、ソラとヤクモは1ページずつじっくりと読み込んでいく。ブランコというタイトルから繰り広げられるその物語は、森の中にある大きなブランコに乗っていた女の子が、男の子や森の動物たちと一緒にブランコを仲良く漕いでいく物語。全員で一つの物事を取り組み、楽しみ、絆を深めるという優しい世界がそこにはあった。
「あーい!なかよちー!」
周りの人の迷惑にならないように、だがエルに聞こえるようにと行われた朗読。それを聞き終えたエルは楽しそうに手を叩く。
「エルちゃん、嬉しそうだね、よかった」
いつの間にか合流していたましろ達も嬉しそうにエルを見る。笑顔で喜ぶエルを見て、ソラはましろへと笑いかける。
「やっぱり、ましろさんは凄いです」
「コンテストには落選しちゃったけど……私、これからももっと描いてみたい!エルちゃんや、誰かの心に届くような絵本を」
ソラの言葉を聞き、瞳を潤ませながらましろは、やっと見つけた自分の夢に向かって歩いていきたい、そう改めて思うのだった。