曇り空の夜のプリキュア   作:popoponpon

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第57話 繋がる知識

「……」

 

外に出て窓を掃除しているツバサの姿を家の中からじっと見つめるエル。その周りではソラやましろ、あげはが家を掃除しており、1人残されていたエルはツバサが戻ってくるのを待っているかのように見ていた。そしてツバサが窓を掃除し終えて家の中に戻ってくると、嬉しそうに声をあげる。

 

「あい!」

「窓掃除、終わりました」

「ありがとう、次は自分の部屋ね」

「はい」

 

共有スペースの掃除が終わったことを報告し、続けて自分の部屋へと戻るツバサ。飛行機の模型などを手入れし、机の上に広げられたままの本を片付けようとして手を伸ばす。

 

「……」

 

だが、それを片付けるのではなく、一冊を手に取る。今まで、自分にとってとても大切だったものだ。この世界に来て見つけた目的のため、勉強し続けてきていた毎日を、この本を見て思いだした。

 

「……そういえば、この本最近読んでなかったな」

 

だが、最近はこういった本を全く読まなくなってしまった。今でも飛行機の観察など、勉強は続けてはいるのだが、その勉強も以前より熱が入らなくなってしまったような気がする。結果、穴が空くほどに読んでいたはずの本も、今ではその数も減ってしまったのだ。

 

「……というか、もう読む必要もないのか……」

 

窓の外を見上げながら、寂しそうに呟くツバサ。勉強に熱が入らなくなり、あくまでそういうルーティーンだったから今もやっているような状態に近い理由は自分でも既にわかっていた。

 

「プリキュアになって、空を飛べるようになったから……」

 

航空力学を学んでいた理由は全て空を飛ぶという自分の夢を実現させるため。しかし、プリキュアになって空を飛べるようになり、手段を手に入れてしまった今、ツバサは夢を叶えたと言える。その結果、夢のために勉強していたはずの航空力学を学ぶ理由をツバサは失ってしまったのだ。

 

「あんなに勉強してたのに……いつか空を飛ぶんだって……」

 

この一年間勉強してきたことは決して無駄ではないはずだとは思っている。しかし、空を飛べるようになった今、自分は何のために勉強しているのだろうかという虚無感が湧いてきてしまった。

 

「……掃除、続けないと」

 

暫く本を見つめていたが、とりあえず掃除をすることで問題を先送りにする。ただの現実逃避だとわかっているが、今はそれ以外は選びたくなかった。少しでも早く掃除を終わらせてリビングに戻ろうとしたツバサの耳に、ましろ達の声が届いてくる。

 

「凄いよエルちゃん!」

「少し前まではいはいしてたのが嘘みたいです!」

 

開いている扉の隙間から何があったのかと覗いてみると、エルが雑巾を使って床を拭いている姿があった。それを見てましろとソラも喜んでいるのだ。

 

「あんなに小っちゃかったましろんも中学生だもん、エルちゃんだってすぐ大人になっちゃうよ」

「……すぐ大人に……?」

 

扉越しにあげはの言葉を復唱するツバサ。どこか寂し気なその姿を、ヨヨは静かに見つめていることをツバサは気付くことができなかったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、ツバサじゃん」

「……あ、ヤクモさん、外に出てたんですか」

 

掃除が終わった後、ツバサはヤクモの家を訪れていた。場所は以前伝書鳩を担ってくれた鳩から聞いていたため、覚えてる。ヤクモを呼ぼうと呼び鈴を鳴らそうとしたところ、庭の方からヤクモの声が聞こえたのでツバサがそっちを見ると、そこにはキャンプグッズを拭いたり整理していたりしているヤクモの姿があった。

 

「うん、いつになるかわからないけど落ち着いたらまたキャンプに行きたいって思っててね。まあ今日は定期的な掃除だけど」

「……そうですか」

 

慣れた手つきで作業を進めるヤクモ。あ、ここ穴空いてるなという呟きが聞こえ、テープのようなものを持ちだして穴を塞いだりしている。

 

「この前のキャンプでも思ったんですけど、随分手慣れてますよね」

「まあ……好きだからね」

 

ヤクモの傍に座り込むツバサ。暫く無言で作業を進めていたヤクモだったが、無言のままでいるツバサが気になって視線を向けると、ツバサはどこか落ち込んだ姿で座り込んでいた。

 

「……ツバサ?」

「あ……」

 

ツバサも、ヤクモに声をかけられて気付いたようだ。心配そうに自分を見るヤクモの姿に申し訳なさそうに溜息を吐く。

 

「すみません……」

「何かあったの?」

「何か……そうですね……」

 

何かをヤクモに話そうとするのだが、一旦黙ってしまう。そして少しの間をおいて、

 

「……ヤクモさんって、将来何するんですか?」

「え、将来?」

 

そうヤクモへと切り出した。ツバサからとんできたまさかの質問に、思わず手が止まってしまうヤクモ。一体どうしたというのだろうか、思わず首を傾げてしまうと、

 

「あ、いや別に言いたくなかったらいいんですよ。ただ何となく気になっただけなので……ほら、ヤクモさんってなんかやりたいことあるのかなーとか全然知らないし?」

「ああそういう……」

 

慌ててツバサが何故こんなことを聞いたのか説明する。慌てて取り繕っているようにも見えるが、ツバサの真意は一旦置いといて、自分のやりたいことは何なのかと考えるように天を仰ぐ。改めて考えてみると別に自分に将来やりたいこととか夢なんてなかったなと感じるヤクモ。しかし、そのことに対して別に問題だとは思ってはいなかった。

 

「うーん……特にないかな」

「な、ないんですか?じゃあその……大人になったらどうするんですか?」

「その時には何かしらできるようになってるんじゃない?」

「え……」

 

そしてヤクモからの楽観的な回答に唖然となるツバサ。そんなことで大丈夫なのか、将来苦労するのではないかと心配になってしまうも、ヤクモは何故自分の将来についてこのようなことを考えているのかその理由について話し始める。

 

「クラスだとさ、確かに将来の夢決めてる人が多いけどさ……テレビとか見てるといろんな人いるわけだし、母さんも大学行くときになってやっと大まかに決めたみたいなこと言ってたし、実際に何やるかは就活で決めてたみたいだし」

 

これ以前授業で調べてきた親がなんでその仕事を選んだのかっていう奴。そう補足を入れるヤクモの説明に、親を参考にしていることはツバサも把握する。

 

「父さんもアルバイト片っ端からやってた時期あるみたいだし……まあ、中学だけじゃなくて高校も大学もあるんだから8年も経てばなんかできることも増えて就ける仕事だってそれなりに見つかるんじゃない?ちゃんと勉強してればさ」

「……」

 

ヤクモには確かに自分や他の皆みたいに夢や将来の目標はあるというわけではない。だが、自分の未来と向き合ってるという意味では、あげはの次に現実を見ているのではないかとツバサは思っていた。将来の夢のためにツバサは勉強していたが、将来できることを増やすためにヤクモは勉強をしているのだと。

 

「……そういうのもあるんですね」

「まあ……だいぶ楽観的って言われたらそうかもしれないけど。でもまだ中学生だし?」

「そんなことありませんよ。だって……」

「ん?」

 

何かを呟いたようだが、ツバサの声はヤクモには聞こえなかったようだ。聞き返そうとするヤクモだったが、ツバサは誤魔化すように慌てて立ち上がる。

 

「いえ、なんでもありません。そ、そうだ。それより僕も手伝いますよ!」

「そう?それじゃあ頼むよ」

「はい!」

 

話題を変えるようにヤクモの手伝いに取り組むツバサ。鳥の手を借りることができたヤクモは折角なので2人で一緒に作業を再開するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヤクモの家に行き、庭で一緒に作業を終えてから数日後。平日の昼間は3人ともそれぞれ学校や保育園にいるため、リビングにいるのはツバサ1人だけ。誰の邪魔も入らず物思いに耽ることができるのは、今はありがたかった。

 

「……」

 

鳥の姿に戻り、止まり木に立ってまたしても溜息を吐くツバサ。思い出すのは数日前のヤクモとの会話。その時のヤクモとの話ではツバサの期待に添えるものは出てこなかった。代わりにヤクモが思ったより凄い人物だったということを改めて知ることとなったのはちょっとだけ嬉しいのだが。

 

「ツバサさん、どうしたの?」

「え!?」

 

そんなツバサの様子が気になったのか、ヨヨがツバサに話しかける。1人だけだと思っていたため、ヨヨから突然話しかけられ驚くツバサにヨヨは笑いかける。

 

「悩み事があると、よくそうやって枝に止まっていたから」

「……ヨヨさんは、何でもお見通しですね」

 

自分が悩んでいることを見破られていたとは。少し恥ずかしそうに顔を逸らすツバサ。

 

「あー、あー」

「あら、お腹が空いたのね。じゃあ、皆でお茶にしましょうか」

 

ツバサが悩んでいるとは露知らず、ヨヨに抱かれているエルが空腹を訴える。それを見て、ヨヨはツバサを誘ってお茶にすることにする。

 

「こういう時はリラックスできる……」

「「カモミールのハーブティー」」

 

ヨヨが何を出そうとしているのか知っていたツバサがその紅茶の銘柄を当てる。ツバサに銘柄を当てられたヨヨは嬉しそうに笑う。

 

「あら、ツバサさんもお見通しみたい」

 

ヨヨはそう言うと、ツバサと共に笑う。そしてお茶の準備ができ、エルが美味しそうにミルクを飲んでいる姿を見ながら、人の姿になって椅子に座ったツバサが、ぽつりぽつりと何故悩んでいたのかヨヨに話し始める。

 

「……僕、プリキュアになって空を飛ぶ夢が叶ったこと、凄く嬉しいんです。ただ……なんていうか……その……」

 

段々言葉に詰まり始めるツバサ。自分の中でも言葉が出てこないようだ。それもあってヤクモを頼ったのだろう。今になって午前中の自分が取った行動の意味を理解するツバサ。そんなツバサを見て、何を気にしているのか、ヨヨが推測して問いかけてくる。

 

「努力が無駄になったような気がする?」

「……はい……あ、いやでも……別にいいんです」

 

ヨヨに言われたことは図星だった。やっとその言葉が出てきたと同時に、自分の一年を否定するようでツバサ自身がそれを言語化したくないという思いがあったのだろう。とはいえ、プリキュアになって空を飛べたことは確かに嬉しかったし、新たな役目だってできた。それもまた間違いない事実だ。

 

「僕にとってはプリンセスをお守りすることが何より大切ですから……でも」

「でも?」

「……プリンセスが大人になったら、僕達がずっと傍にいることもなくなって……」

 

だが、こうしてエルのナイトとして振る舞い、皆と一緒に居られるのも今だけなのだろう。エルが大人になる頃には自分達だって大人になっているわけなのだから、それぞれの未来を歩んでいるはずだ。その頃にはソラは青の護衛隊でバリバリ活躍しているのは簡単に予想できるし、ましろも先日見つけた絵本作家の夢を叶え、日夜新たな作品を生み出していることだろう。あげはだって最強の保育士として子供達を見守っているはずだ。ヤクモだって、具体的な道は示さなかったが、将来に備えてできることをやっていた。実際にその時が来たら、ヤクモにはたくさんの道が見えているのだろう、その中から自分の未来を選べると考えると、何もないからこそちゃんと未来を見ている。そんな風に思えた。

 

「でも、僕には追いかける夢もやるべきこともなくて……ぼーっとしてるんじゃ……あ……」

 

既に夢を叶えた自分はその時どうなるのか。将来、やることも何も見つからず、ただ堕落してくだけなのではないか。そんな悲しい想像すらしてしまう。

 

「……すみません、こんな話……」

 

ヨヨの好意でこの家に拾ってもらい、彼女のおかげで勉強できていたのに、その勉強は意味がないのかもしれないと言ってしまったのだ。あまりにもヨヨに対して失礼すぎることを言ってしまったことに気付き、訂正する。だがヨヨは気にしてないと首を横に振る。

 

「いいのよ。話してもらいたくてお茶を淹れたんだから。でもそうねえ……」

 

ツバサが夢を叶えたことは喜ばしいことだ。その結果、一つの燃え尽き症候群に陥ってしまってもある意味仕方のないことと言えるだろう。しかし、いつまでもそうしているわけにはいかないだろうと薄々感じているツバサのそれも事実。今のツバサに新たな道を示すにはどうすればいいか。少し考えていたヨヨは、思いついたと言わんばかりに両手を合わせる。

 

「そうだわ。今度のお休み、皆でお出かけしましょうか」

「え?」

 

ヨヨは自分たちをどこに連れて行こうというのだろうか。突然の提案に、ツバサは呆気にとられた様子になってしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

そして週末。ヨヨ達はレンタカーを借りてとある場所へ向かっていた。あげはの愛車であるハマーは5人乗りであり、これではヨヨを含めた7人が全員乗ることはできない。6人であればツバサを誰かが抱えることで0人分としてカウントする抜け道があるのだが、今回はそうはいかない。そのため、7人乗りのレンタカーを借りることになったのだ。

 

「……」

「える?」

 

車の中でそわそわするツバサ。自分が人の姿で車に乗る機会がほとんどなかったことに気が付いたのだ。

 

「少年、どう?人の姿で車に乗るのも中々乙なものでしょ?」

「そ、そうですけど……なんか違和感が……」

「あはは、今までずっとヤクモ君の膝の上だったからねー」

 

その様子をミラー越しに気付かれたのか、あげはにからかわれてしまい、少し拗ねた様子で窓の外に目を向けるツバサ。

 

「あげはさん、そこを右に曲がってくれるかしら」

「わかりました!」

 

ヨヨは助手席に座ってあげはのナビゲートをしていた。既に車は自然の豊富な山の中を走っており、地図よりもヨヨの指示の方が信頼できると判断したあげはは彼女に案内を頼んでいた。

 

「えーるぅ!」

 

木々が流れていく光景を楽しそうに見るエル。ツバサも窓と同じ目線で木々が流れていく光景を見るのは新鮮なようで普段とは異なる景色をじっと見ていた。2人が真ん中の席を占領している中、後部座席の真ん中に座っていたソラは隣に座るヤクモを見る。

 

「楽しみですね、ヤクモさん」

「うん、でも晴れてよかったね。ちょっと前に週末は雨みたいな予報だったの見てたから」

「そういえばそうだったような……」

 

数日前の天気予報を思い出すヤクモとましろ。とはいえ、数日前の雲の流れなど素人には予想もできない。そんなものは地球の気まぐれでいくらでも変わるもので、今日はちゃんと晴れだったというだけで十分だろう。

 

「でも、今日は一日晴れって言ってたし、よかったね」

「それはそう」

「野菜の収穫、楽しみです!」

 

わくわくした様子でヤクモの手を握りぶんぶんと振り回すソラ。今回の行き先は、畑だという。ヨヨは、皆を野菜の収穫に誘ったようであり、野菜の収穫をしたことのないヤクモも面白そうで楽しみにしていた。

 

「うん、俺もそういうのやったことないから楽しみなんだ。失敗しなきゃいいけど」

「きっとヤクモさんなら上手にできますよ!ね!」

「一生懸命やってみるよ」

 

楽しそうに横で会話するソラとヤクモ。その様子を楽しそうに見ながら、ましろはヨヨに話をする。

 

「そういえばおばあちゃん、いつの間に野菜なんて育ててたの?ハーブを育ててたのは前聞いてたけど……」

「ふふ、野菜畑を始めたのは今年からなの。だから私も楽しみなのよ」

「そうだったんだ……でも、お昼は採れ立ての野菜……どんな味がするんだろう」

 

ヨヨが育てた採れたての野菜の味を想像し、わくわくするましろ。皆が楽しみにしている野菜の収穫を行うため、車が畑の近くの駐車場に停まる。そして全員が降りて畑に向かうと、

 

「「「わあ……!」」」

「うわすっごい……」

 

テレビでしか見たことのないような大きな畑が広がっていた。畑と聞いてはいたが家庭菜園やそれより一回り大きいぐらいをイメージしていたヤクモはまさか農家がやってるような広さの畑だとは思っておらず、驚きに目を丸くしていた。

 

「凄い……」

「今年から始めてこれって……ヨヨさん凄すぎなんですけど!?」

 

たった1年でこれほどの広さの畑を作り出すヨヨの手腕の凄さにあげはもただただ驚くばかり。皆が目を丸くしている姿を見て、見せた甲斐があったとヨヨは微笑む。

 

「!とりさーん!」

 

そんな中、エルが何かを見つけたのかその方角を指差す。そこにはワシの作り物が竿にぶら下げられ、風に揺れていた。

 

「あの鳥さんはね、他の鳥さんが野菜を食べてしまわないように畑を見守っているの」

「かかしみたいなものかな?」

「この世界の鳥さんは私達とお話できませんからね。来ないでくださいって言っても来てしまうんでしょうね」

「それにしても鳥、か……」

「……なんか知ってるの?ヤクモ君」

「え?いや……言わない方がいいかなって」

 

ぶら下がってる鳥を見て何かを思い出すヤクモ。しかしこの場で、特にツバサがいるのに言ってはいけないだろうと敢えて誤魔化すも、その様子に気付いたあげはが面白がって近づいてくる。

 

「ほらほら、皆には内緒にしておくから言ってみなよ」

「……絶対言わないでよ」

 

渋々といった様子でヤクモは思い出したネットで見た知識をあげはに囁く。鳥の死骸を吊るしておくと他の鳥が寄り付かなくなる効果があるため、鳥の模型をぶら下げるみたいな話を。

 

「……」

「あの……ヤクモさんは何を?」

「な、何でもない何でもない!知っちゃいけないこの世界の文化だから!スカイランド人にはカルチャーショックやばいから!!」

「?はぁ……」

 

さすがにこれはアウトど真ん中をぶち抜いてるとあげはも納得したのだろう。ヤクモも思い出さなければよかったと後悔している様子であり、ソラもあまり触れないであげた方がいいのだと判断する。と、ワシの模型を見ていたツバサはそれが以前、空を飛ぶ仕組みを勉強するために作ったこの世界の鳥たちの模型の内の1匹であることに気付く。

 

「あ、あの模型……畑に使うなら言ってくれればもっとちゃんと作ったのに……」

「十分凄いわよ、おかげで野菜がちゃんと育ってくれたわ」

 

大量に作りすぎたそれを保管しておく場所がなくなってしまい、仕方なく処分しようとしていたところ、それがヨヨの目に留まり、彼女に渡した結果、鳥たちは畑を見守る役目を担っていたようだ。目線を遠くに向けると、ワシの他にもツバサが作ったと思われる何匹かの鳥の模型が間隔を空けてぶら下げられている姿が見える。

 

「では、ツバサ君の鳥さんが守ってくれたお野菜を収穫しましょう!」

 

ソラの掛け声と共に、野菜の収穫を始めるソラ達。トマトやトウモロコシ、ピーマンなどいろいろな野菜を収穫しつつ、ヨヨとましろの語る野菜のうんちくに感心するソラやツバサ。一通り収穫を終えた後は、新しく種を植えることになるのだが、そこでツバサはヨヨが持ってきた土を目にする。

 

「これは……新しい土ですか?」

「おばあちゃんが作った肥料だよ」

「肥料も自分で!?」

「ええ、生ごみと土を混ぜて、しばらく置いておくの。自然の力で栄養満点になるのよ」

「ヨヨさんって凄い……どうしてそんなに物知りなんですか?」

 

まさか野菜を育てるための肥料も自作していたとは。自分であれば航空力学以外の知識はそこまで深いとはいえず、ましろやヤクモの方が詳しいことも多い。ヨヨはどうやってこれだけの知識を得ているのか気になったツバサが質問する。

 

「気になったことを調べ始めると、また新しく気になるものが見つかるの。例えばハーブについて調べていると、ハーブを使ったお料理の事が気になってレシピが気になって調べてみたの。そうしたら実際に作りたくなるわよね?それでお料理をすると、どうしても生ごみが出ちゃうでしょ?どうにか使えないか調べてみたら、自分で肥料を作れるということを知ったの。せっかく肥料があることだし、と思って畑を始めたら野菜について勉強するようになって」

「……全部繋がってるんですね」

 

関係ないと思われたことでも、全てがどこかしらで繋がり、知識を得るためのきっかけになる。ヨヨが様々なことを知っているのもそのためだったのだ。

 

「ええ、知りたいという気持ちは繋がって広がっていくものだと私は思うわ」

「繋がって広がる……」

 

ヨヨの言葉にツバサも雲が晴れたかのようなそんな不思議な感覚になる。と、そんな時だった。誰かのお腹の音が聞こえてくる。

 

「え?」

「……あ、あはは……お腹がぺこぺこです」

「ソラさん、動きまくってたからね」

「いやぁ……あんまり聞かないでください」

「ごめんごめん」

「じゃあ、そろそろご飯にしよっか」

 

どうやら腹の虫が鳴ったのはソラだったようだ。誤魔化すように照れるソラを見て、ましろもそろそろお昼にしようと提案するのだった。

 

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