曇り空の夜のプリキュア   作:popoponpon

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第62話 邪悪な真実

 

 

バッタモンダーによって誘い出され、ランボーグに襲われたソラがキュアスカイへと変身し、ランボーグを迎え撃とうとする。地面から拳を突きだし出現したランボーグがその全容を地中から引き抜きスカイと相対する。

 

「……っ」

 

プリキュアよりも数周り巨大なランボーグ。その左手は不自然に膨らんでいるのが気になったが、すぐにスカイの視線がランボーグの右手に向けられる。そこにはアンダーグエナジーが集まっていき、一本の剣へと姿を変えたのだ。

 

「ランボーグ!!」

「……ランボーグの陰でこそこそと隠れて、それであなたのつまらないプライドは満たされるんですか!?」

 

シャララの幻を使ってまで振り回してきたこともあり、スカイの怒りは普段より大きい。自然と声音が荒くなると同時に、何故か頭は冷静に何かが引っかかると告げていた。だが、ランボーグを相手にそんな違和感を気にする必要などないと怒りが処理していく。

 

「ふぅん……ランボーグ」

 

スカイの言葉に対し、一瞬何かを言いたげにしていたが、今は言う時じゃないとまるで自制するかのように獰猛な笑みを浮かべて指を鳴らすバッタモンダー。それを合図としてランボーグがスカイを両断しようと剣を振り下ろす。

 

「っ!?」

 

紙一重でそれを回避し、懐に潜り込もうとしたスカイ。しかし、振り下ろされた刃のあまりの威力によって巻き上げられた風圧によって一瞬動くが止まってしまう。同時に、もしあれが直撃すれば命はないということも確信する。

 

「ラン!」

 

続けて剣を横に一閃。まるで嵐が巻き起こったかという程の衝撃が地面においてあった鉄骨をいとも簡単に巻き上げていく。

 

「この威力と速度、凄まじい剣の使い手……!?当たればただではすみませんね……」

 

ランボーグの攻撃を見て、冷静に分析するスカイ。確かに威力は目を見張るものがあり、警戒しなければならないだろう。だが、

 

「ララッ!」

「……でも!当たらなければただで済む!」

 

当たらなければどうということはない。先ほどの強風を織り込んでランボーグの剣を避けてランボーグの上半身まで飛び上がると、連撃をひたすら浴びせていく。

 

「はあああああ!!」

「……ちっ」

 

スカイの連続攻撃の直撃にランボーグも後ずさり始める。このままランボーグが素直に倒されるのをヨシとしないバッタモンダーが舌打ちしながら指を鳴らすと、スカイとランボーグの間に小さな靄が出現して破裂する。

 

「!」

 

それ自体には威力はないが、スカイがバッタモンダーの妨害を察知して攻撃を止めて退く。それを好機と言わんばかりに再びランボーグが両断しようとしてくるも、

 

「懐に潜り込んでしまえば!剣より拳の方が速いんです!!」

「ランボーグ!?」

 

それを簡単に避けて潜り込み、鋭い一撃をランボーグへと浴びせる。ランボーグの体が積み重ねられた鉄骨の山へと飛ばされ激突し、ランボーグの体が地面に転がる。

 

「バッタモンダー!」

「ふふ、お楽しみはこれからだ!まだランボーグは戦える!お前だってこんなもんで倒せるわけないって知ってるだろ!」

 

ランボーグが地に倒れたのを見て、バッタモンダーに暗に降伏するようにと言うスカイ。だがバッタモンダーはまだまだやる気だと言わんばかりにランボーグに指示を出すと、ランボーグが再び起き上がる。

 

「ランボーグ」

「……ならば!」

 

スカイが拳を構える。ここがどんな場所かわからない以上、ましろたちが辿り着くのもいつになるかわからないだろう。先にヤクモの方が来るかもしれない。それまで、1人でこのランボーグを追い詰める、いや倒さなければならないのだ。

 

「私は……立ち止まらない!これで終わらせます!ヒーローガールスカイパンチ!!」

 

だが今は迷わない。それがシャララの願いであり言葉なのだから。それを受け取ったヒーローガールとして、自分は立ち止まるわけにはいかない。その決意と共に、スカイパンチを放つスカイ。超スピードとなった青い光が、一直線にランボーグの腹部へと放たれる。

 

「……それはどうかな?」

 

だが、スカイは気付かなかった。スカイパンチの発動を見たバッタモンダーが待っていたと言わんばかりに不穏な笑みを浮かべていたことを。

 

「ランボーグ!?」

 

スカイパンチが勢いよくランボーグの腹部にめり込んでいく。プリキュアの力がアンダーグエナジーを浄化していき、それだけでランボーグの腹部を中心としてキラキラエナジーが大量に放出されていく。その衝撃が全身に伝わったのはシンプルにランボーグからしても大きなダメージなのだろう。苦痛に呻く声が漏れる。

 

「……え……?」

 

だが、スカイの口から漏れたのは、勝利の手応えを感じさせるものではなかった。ランボーグの腹部にめり込んだ自分の拳、その先にあるものを信じられないと言った様子で見ている。何故なら、自分が放った拳はランボーグの腹部ではなく、ランボーグの腹部から出てきていた人のものと思われるお腹だったからだ。

 

「何……これ……?」

 

信じられないものを見たと言わんばかりに呆然となるスカイ。目の前の現実を受け入れられないといった様子で後ずさるスカイをランボーグが痛みに呻きながら腕を上げようとするも、バッタモンダーが無言でそれを制する。だがそれは、スカイをもっと精神的に甚振りたいというだけの個人的な行動だった。

 

「あーあ、やっちゃったねぇ……」

「何を……何をやったんですか!?」

 

震える声でバッタモンダーへと問い詰めるスカイ。その声を聞いていると本当に楽しくて仕方がない、だがスカイをもっと追い詰めるにはどう返すのが正解か、必死にバッタモンダーは考えながら口を開く。

 

「何を……大体わかってるんじゃない?君の技が誰を浄化したのか。確実に浄化したはずなのになんでランボーグがピンピンだったのか……」

「……」

 

スカイの表情が蒼白になっていく。わからないわけがなかった。自分がスカイパンチを命中させてしまった相手。ランボーグの腹部に浮かび上がったその人物は腹部しか浮き出ていなかった。だがその服装を見間違えないわけがない。それは間違いなく、

 

「クラ……ウド……?」

「大、正、解!!」

 

百点満点だ!と拍手して真実に辿り着いたスカイを褒め称えるバッタモンダー。やっとたどり着いてくれた、これで自分もネタバレを気にすることなく話すことができると、堰を切ったかのように饒舌になる。

 

「今明かされる衝撃の真実!君が浄化してしまったのはなんと、昨日捕まえたキュアクラウドだったんだ!」

「な、なんで……そんなことを……」

 

スカイの体は震えていた。自分が味方を、それもクラウドを攻撃してしまったという事実を受け入れられないのだ。なんでこんな酷いことをバッタモンダーはしたというのか。自分を恨んでいるならなんでそこにクラウドが巻き込まれてしまうのか。何故、スカイパンチを使ってしまったのか。色々な考えが渦巻いてきて、気分がとにかく悪くなってくる。しかし、

 

「なんで?都合が良いからさ!俺の恨みを晴らし、お前を絶望のどん底に叩き落し、キュアクラウドを……ヤクモをぶっ殺す!そのためにお前にこいつの生命力を、アンダーグエナジーを浄化してもらったんだからな!」

「!?」

 

はっとなってスカイがランボーグを見る。ランボーグは見せてやると言わんばかりにクラウドの腹部だけでなく、上半身、そして顔も外へと出す。両腕と両足だけがランボーグに埋まった状態で外に出されたクラウドの表情は、生気を失ってしまったかのように白く、項垂れてしまっている。その周囲からはクラウドの体内から出て行くかのようにキラキラエナジーが流出してしまっており、現在進行形でクラウドは衰弱しているのは、目の前の現実を思わず背けようとしてしまうスカイでも呑み込めた。

 

「あ……あ……」

「君のおかげでキュアクラウドはもう長くない。このまま放置すれば残り少ない生命力で自らの命を維持できず、死ぬ!」

「死……ぬ……?ヤクモ……さんが……?」

「ありがとう、おかげで俺の目的の1つだったヤクモの死を達成できるよ。仲間の手で死ねて彼も本望だろうさ!」

 

嘘だ。そう言いたかった。バッタモンダーが自分を揺さぶるために、追い詰めるためだけにこんなことを言っているはずだと。だが、目の前にいるのはキュアクラウドで間違いないし、生気がなくなっていくその姿はバッタモンダーの言葉がハッタリではないという裏付けであった。そして何より、

 

「嘘だ!ヤクモさんが死ぬわけが……」

「嘘だと思いたいならそれでもいいけど……僕達だって浅い仲じゃあないんだ。僕の性格もよーくわかってるんじゃないかい?君たちを陥れるための真実なら、喜んで口にするってね!」

「!!」

 

こんなことを嬉々として言うことそのものが、真実という証明だったのだ。

 

「はっきり認めなよ、君が仲間に致命傷を与えたってね……それともその感触は偽物だったとでもいう気かな?」

「……」

 

震える右手を見てしまうスカイ。そうだ、自分は間違いなくこの拳をクラウドに放ってしまったのだ。その時の感触も衝撃も、全部覚えている。覚えてしまっている。

 

「い……いや……」

 

耐えきれず、悲鳴が零れる。後一押し、そう判断したバッタモンダーは、

 

「……ところで、このランボーグにはもう1つ秘密があるんだ。見せてやれ」

「ランボーグ!」

 

一旦クラウドを体内に取り込み直すと、スカイにわかりやすい様に背中を向けるランボーグ。その背中にアンダーグエナジーが集まっていったかと思うと、青いマントが作り出される。

 

「……嘘」

「おっ、今回はすぐに気付けたね、偉い偉い!」

 

完全に言葉も出てこなかった。そうだ、違和感は最初からあったのだ。このランボーグが持っている武器も、見覚えがあったはずなのだから。だが、このマントで完全に悟ってしまった。このランボーグの素材になっているのは、

 

「まさか……」

「そう!そのまさかだよ!君の大切なシャララ隊長にアンダーグエナジーを注ぎ込んだんだ!クラウドもそれに気付いてからすっかり大人しくなっちゃってねぇ。後は簡単に意識を奪って取り込めたってわけさ。そうすれば、盾になるだろ?」

 

そう。バッタモンダーはシャララを素材にランボーグを生み出していたのだ。しかもそこにクラウドまで取り込んで。自分が今まで攻撃していたのはあのシャララであり、そのシャララから生み出されたランボーグを倒そうとしてクラウドを。それを思い知らされたスカイの息が乱れていき、視界が揺れていくのを感じる。今、自分が何を思っているのかもわからない程に意識がぐちゃぐちゃになっていく。そんな中でも、バッタモンダーの言葉だけは自分の心に突き刺さるように響いてきた。

 

「酷いことをするよねぇ、ランボーグへの攻撃は全部隊長へのダメージになるっていうのに!……ま、それよりもやばいのはクラウドへの致命傷なんだけど」

「あ……あ……」

「ランボーグ……いや、シャララボーグ!」

「ランボーグ」

 

溜飲もすっかり下がったところで、スカイを倒してやろうと指を鳴らすバッタモンダー。剣を構えるランボーグを前にしても、スカイはもう動けない。構えも取れず、完全に戦意を喪失し立ち尽くしているスカイを前に、ランボーグが無情にも剣を振り下ろす。しかし、その風圧が不幸中の幸いか踏ん張ることもしないスカイを吹き飛ばしてしまったことでランボーグの攻撃は命中することがなかった。だが、吹き飛ばされたスカイは無防備な状態のまま地面に叩きつけられてしまい、横たわってしまう。

 

(シャララ隊長……ヤクモさん……)

 

声にもならず、ただ心の中でそう呟くことしかできないスカイ。2人との思い出が脳内で蘇る度に、自分はあのランボーグを、クラウドを攻撃してしまったという後悔が圧し掛かってくる。完全に動く気力も失ったスカイを、今度こそちゃんと仕留めるべく気を付けるようにランボーグが再び剣を振り上げる。

 

「ラン……」

「はあああ!!」

 

しかしその剣が振り下ろされることはなかった。ランボーグの背後から無数の光弾が浴びせられ、不意を打たれた衝撃でランボーグは思わず剣を手放してしまう。

 

「ラ、ラ……?」

 

後ろを振り向いたランボーグの前にはプリズムがいた。いや、プリズムだけではない、ウィングもバタフライもエルもいた。

 

「「「スカイ!!」」」

 

皆が声を上げるも、倒れたスカイは動かない。まさか、それだけの怪我をしてしまったのか。だが、そういう風には見えない。

 

「ランボーグ……」

 

スカイはもう動けない。まずは邪魔をしてくる3人から潰してやろうと、左手を突き出す。

 

「させない!」

 

当然、バタフライがそれはさせまいとシールドを重ねる。拳がシールドにぶつかり、シールドを通してバタフライに大きな衝撃が伝わってくる。その予想以上の威力の高さにバタフライの頬を冷や汗を流れる。と、ランボーグの左手が膨れ上がったかと思うと、膨れ上がったところから鋭い槍が発射されシールドを一瞬で貫いてしまう。

 

「!?きゃあああ!」

「きゃああああ!」

「うわあああ!」

 

シールドを破壊され、衝撃が一気に襲い掛かり3人が吹き飛ばされてしまう。エルはバタフライがシールドで受け止めていた間に距離を取っていたため巻き込まれなかったのは不幸中の幸いだが、吹き飛ばされたバタフライは悔しそうにランボーグの左手を見る。

 

「何あれ……!」

「へぇ……小さいと思ってたけど意外とやるじゃんあれ。ついでに再現してみるかと付け加えてみたけどこりゃ面白い」

「……ヤクモさん……」

 

どうやらバッタモンダーもこの機能は最初から付けていたわけではないようだ。つまり、これはヤクモが作り出したランボーグの能力のようなものなのだろう。だが、それを知っているのはこの場ではまだバッタモンダーとスカイだけ。

 

「こいつ……ヤクモさんみたいなことを……!」

「スカイ!」

「!!」

 

エルの言葉にはっとなったウィングがスカイの方を見ると、3人を吹き飛ばしたランボーグが改めてスカイを葬ろうと再び剣を握る姿があった。それが振り下ろされる前にウィングがどうにかスカイを助け出したのを確認し、バタフライがミックスパレットを取り出す。

 

「ナイスウィング!2つの色を1つに!イエロー!ブルー!癒しの力、アゲてこ!」

「大丈夫ですか!?」

 

ミックスパレットから放たれた緑の光がスカイを包み込み、傷を癒していく。朦朧としていたスカイだったが、体力が戻ったことでうっすらと目を開く。

 

「スカイ……」

「!」

 

ウィングの姿を見たスカイは、皆が駆け付けてくれたことを知る。それによってはっきりと意識が戻る。だがそれは、何も知らない3人がランボーグと戦おうとしているという最悪の現実を示していたことに気付いたのだ。

 

「はあああ!」

 

バタフライがランボーグを引き付けている。ランボーグも、バタフライに夢中であり、後ろにいるプリズムの動きに気づけていない。そのバタフライの手には光球が生成されており、普段より強力にチャージしたプリズムショットを今にも放とうとしていた。

 

「!?だ、駄目!!」

「スカイ!?」

「やめて!!」

 

突然暴れ出し、ウィングの腕からすり抜けていくスカイ。何事かとウィングが困惑する間もなく、プリズムの前に立ち両手を横に広げる。その時には、既にプリズムショットを放とうとしていたプリズムと、プリズムの攻撃を受け止めるように無防備に腹部を晒しているランボーグの姿があった。

 

「撃たないで!!」

「えっ!?」

 

まさかのスカイの言葉に困惑するプリズム。集中が途切れてしまったからか集めていた光が霧散してしまう。

 

「攻撃したら……隊長とヤクモさんが!!」

「「「え!?」」」

「あれは……あのランボーグは……シャララ隊長なんです!!」

 

スカイの悲痛な叫び。それを聞いた4人も、真実を知ってしまい、思わず固まってしまう。

 

「アンダーグエナジーのせいで……シャララ隊長が……ランボーグに……うっ」

「そんな……嘘……!」

 

泣き出しながら、ランボーグとシャララの事を訴えるスカイ。と、力なくスカイが崩れ落ち、膝をついてしまう。だが、ランボーグはお構いなしにウィングを攻撃し続けており、反撃することもできずウィングは回避することしかできない。プリズムも、こんな状況でどうすればいいのか、全く思いつかない。

 

「……助けて……ましろさん……」

 

力なく、涙を流しながらプリズムに縋るスカイ。しかし、どうすればいいのか。と、ここでプリズムもある光を見出す。

 

「大丈夫だよ!クラウドが……ヤクモ君が来れば!!アンダーグエナジーが原因なんでしょ!?だったらヤクモ君の力があればきっと!!」

「無理なの……駄目なの……だって、私……」

 

スカイを抱きしめながら、そう言い宥めるプリズム。このまま攻撃するわけにいかないのなら、ヤクモの力なら何かできるはずだ。何しろアンダーグエナジーを扱うことができるのだから。こういう状況だって、きっと何か解決策を見つけてくれるはずだ。だがスカイから返ってきたのは、プリズムの希望を打ち砕く無慈悲な言葉だった。

 

「シャララ隊長を攻撃するわけにはいかない……どうすれば」

「ウィング!切り札はまだこっちにあるよ!!」

 

その頃、ランボーグを攻撃できず、シャララを助けることができない。どうすればいいのかと手詰まりに陥っているウィングにバタフライが激を飛ばす。

 

「要するにアンダーグエナジーが悪いんでしょ!?じゃあいいじゃん、それを浄化しちゃえば!」

「!そうか……僕達にはまだタイタニックレインボーがある!」

「いくよ、ウィング!」

 

再びミックスパレットを取り出すバタフライ。ランボーグは大技を放とうとする2人を前に静かに佇む。迎え撃とうとでもいうのだろうか。それならこちらとしても好都合だと言わんばかりにミックスパレットに全ての絵の具を混ぜていく。

 

「……ふふ」

「!?」

 

だが、その光景を見たバッタモンダーは狼狽えるどころかむしろ楽しそうに笑みを浮かべていた。その顔を見てしまい、プリズムは何かを企んでいることに気付く。

 

(何かがおかしい……でも、何が!?それに……なんで戦ってるのにヤクモ君は……クラウドは現れないの!?)

 

この戦い、そもそもがおかしい。あのランボーグがシャララだというのはわかった。それでスカイが戦意喪失しているのもわからなくもない。だが、完全に戦闘を放棄してしまう程だというのか。それだけなら、2人がやろうとしているように浄化して解放してあげればいいだけの話なのだ。

 

「……まさ、か」

 

だがその疑問は、何故ここまで戦いにクラウドが現れないのか。その疑問を合わせると1つ、繋がってしまう答えが出てくる。そして、その疑問はエルもはっきり感じていたようだ。

 

「だ……」

「駄目!!」

「!?」

 

プリズムの腕をいきなりスカイが振り切る。瞬間、虹色の光を放ち、ウィングが浴びようとしていたところに飛び込んでウィングを突き飛ばしてしまい、タイタニック・レインボーアタックの発動が失敗してしまう。

 

「スカイ!?何をするんですか!?」

 

いきなりの妨害にウィングも驚いて目を見開く。そんなウィングの肩を震える手で掴むスカイ。掠れた声を震えさせながら、彼女は必死に訴える。

 

「攻撃したら……クラウドが……ヤクモさんが、死んじゃう……!」

「「「「!?」」」」

「……ちぇっ、このままやってくれたら楽しいことになったのに」

 

白けたと言わんばかりに詰まらなさそうに言うバッタモンダー。スカイが何を言っているのか、一瞬理解できないでいる4人。ランボーグは何故スカイが止めたのか、その答えを示すかのように、クラウドの姿を出す。

 

「クラウド!?」

「なんでクラウドが……!?」

 

ウィングとバタフライの悲痛な叫びが上がる。もしあのまま攻撃していたらクラウドがどうなっていたか。2人の脳裏に、かつてヨヨが言っていた、ヤクモを浄化しようとしたら何が起こるかわからないという言葉を思い出す。

 

「……ま、こうなったらこっちも隠す意味はあんまないか……どうせ浄化したら2人とも死んじゃうし」

「どういうこと!?」

「簡単なことさ……死にかけていたシャララ隊長を助けたのが僕だった……アンダーグ帝国には、ある人物が遺していたアンダーグエナジーで傷を塞ぎ、血肉の代わりとする技術があってねぇ……力こそ至高というアンダーグ帝国の気風にそぐわないということであんまり使う奴がいなかったんだが、僕はちょいと縁があって覚えてたのさ。ま、そのおかげで君たちのシャララ隊長は何とか生きながらえてるんだがね」

 

バッタモンダーの説明は、残酷なものであった。シャララを救っているのはなんと、アンダーグエナジーだというのだ。しかし、そのアンダーグエナジーによってシャララはランボーグとなり、暴れている。しかもそこには、ヤクモの姿もある。

 

「だったらクラウドが死ぬってどういうこと!?浄化する前にクラウドを引き抜けばいいだけの話じゃ……」

「そうだねぇ。ちょっと前なら確かにそれでクラウドは助かったかもねぇ……でも、今やこいつは体内のアンダーグエナジーを浄化されてしまい、生命力がどんどん抜けているんだ。そうだろう、スカイ?」

「!!」

 

びくん、とウィングの腕の中でスカイが震える。その反応を見て、スカイに何をやらせたのかに気付いてしまったバタフライは怒りの形相でバッタモンダーを睨みつける。

 

「あんた……最低だよ!」

「まあ、安心しなよ。ヤクモもこのまま放置すれば死んでいく命……君たちが手を下す必要はない。まぁアンダーグエナジーの中に居れば多少は死までの時間も伸びるだろうけどね。でも、アンダーグエナジーで生かされている2人をランボーグを浄化して助け出したら……どうなるだろうねぇ」

「「「「!」」」」

 

敢えて、皆に想像の余地を持たせるようにニタニタと笑いながら問いかけるバッタモンダー。2人が死んでしまう、最悪の事態を想像してしまい、その表情が暗くなる。

 

「そう、ご自慢のタイタニック・レインボーもアップ・ドラフト・シャイニングもトドメになるやべー技に過ぎないってこと……あははははは!!」

 

心底面白そうに笑うバッタモンダーに、スカイ達は完全に言葉を失ってしまっていた。

 

「本当は2人を君たちの手で殺してもらって心をぐちゃぐちゃにしたかったんだ。それは最高の絶望になるだろうからねぇ……でもいいや、好きな方を選べよ。ここでお前たちがランボーグを浄化しなきゃシャララ隊長だけは生き延びられるからなぁ」

 

ランボーグを倒してシャララを殺すか、それともランボーグに殺されるか。最低の二択を突きつけるバッタモンダー。そのタイムリミットを告げるように、剣を振り上げるランボーグ。と、ここで異変が起こる。

 

「ランボー……グ!?」

 

ランボーグの腹部から突然アンダーグエナジーが噴出し、ランボーグの身動きが止まる。外に噴き出したアンダーグエナジーはそのまま再び体内に吸い込まれていくものの、調子を悪くするランボーグを見てバッタモンダーも舌打ちする。

 

「ったく、良いところだってのに……やっぱ人間にアンダーグエナジーを注ぎ込むのはそもそも無理があるんだよなぁ……これでも仕上げたつもりだったんだが。ま、いくらでも遊ぶ機会はあるさ。君たちの心がずたずたになるまで続けようじゃないか……バッタモンモン」

 

だが今までにないほど上機嫌でランボーグと共に消えていくバッタモンダー。彼らが消えるところを、バタフライ達は悔しそうに見ていることしかできないのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

変身を解いた後も、無言でその場に立ち尽くしていた。気付けば時間は夕方になってしまっており、それでもソラは、ぎゅっとミラージュペンを握りながら膝をつき崩れ落ちたままだった。

 

「ソラ……」

「2人を助ける方法、きっとあるよ、ね?」

「どんな方法があるっていうんですか……?」

「!パレットなら……」

 

悲しそうに呟くソラ。その方法は、ましろとツバサにも思いつかない。だがそれ以上に、ソラからこんな言葉が出てきたことの方が驚きだった。そんな中、頭をフル回転させていたあげははあることを思いつく。

 

「ミックスパレットで、引っこ抜いた傍から回復する!そうすれば……」

「駄目だったら……シャララ隊長は、ヤクモさんはどうなるんですか!?」

「それは……」

「それに……ヤクモさんは……それじゃ助からない……」

「ソラさん、信じてやるしかありません!それに、ヤクモさんが助からないわけが……」

 

もし失敗したら。ソラの言葉に詰まってしまうあげは。しかしこれしか方法はないのだと説得しようとするツバサだが、ソラは理解してしまっていた。ミックスパレットの癒しの力は、傷を治すことはできるかもしれない。しかし、

 

「ミックスパレットでは……生命力を回復できません……ヤクモさんの怪我を治しても、助からないんです……」

 

その癒しの力で回復したからこそ、ソラはわかってしまった。これではヤクモを治せないと。

 

「だけど!信じるしかないんです!ヒーローは諦めては……」

「やめてください!!」

 

もうこれ以上聞きたくない。そう言うかのように叫ぶソラ。もう今にも泣きだしそうな表情で、

 

「もう……私に資格なんてない……シャララ隊長も、ヤクモさんも、私なんかが助ける資格なんてない……ヒーローなんて……私もう、戦いたくない!!」

 

ソラの心は完全に折れてしまった。まるでその心境を表すかのように、ミラージュペンがくすみ、そして消えていく。

 

「!?ミラージュペンが!?」

 

その手からミラージュペンが消えた。それだけではない。ソラが手を開くと、そこにあったはずの自分のスカイトーンが灰色の石へと変わっていく。プリキュアになるためのアイテム、それが消失してしまったという現実を前に、全員が言葉を失ってしまうのだった。

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