ヤクモとシャララが助け出された翌日。朝早くだったがもう体に問題はなかったため、学校にも通うため、一度親に姿を見せるために家に帰ることにしたヤクモ。ヨヨから既に父親には事情を説明していると聞いていたが、ヤクモも納得していた。その様子を見たヨヨと、
「ヤクモさん、疑問には思わないのかしら?」
「ええ、わかっているので。なんで言わないかはわからないけど、そのつもりならお互いに必要になるまでは聞かないでおきます」
「わかったわ。きっとあの人もそれがいいと思ってるから」
このような会話をしていたのも先程虹ヶ丘家を出るまでの話。だが、
「別にソラさんまで付き合う必要はないような……」
「いえいえ、当然のことです!」
家に帰るヤクモの隣を、動きやすい半袖のスポーツウェアを着ていたソラも歩いていた。日課のランニングを再開するついでということもあったため、ヤクモも同行自体は構わないと思ってはいたのだが、
「でも、ランニングの邪魔じゃないかな?俺といると走れないと思うけど……」
「問題ありません!……一緒に、歩きたいんです」
「そ、そっか……」
ソラの方からそれで構わないと言われるとヤクモも何か言うこともない。こうして一緒に歩くことはヤクモ自身悪い気分はしてないからだ。少しの間、無言で歩いていたが、ソラが申し訳なさそうに、辛そうに口を開く。
「……ごめんなさい」
「え?どうしたの?」
「私は……ランボーグに囚われているヤクモさんを攻撃してしまった……そのせいで、ヤクモさんは、死んでしまいそうになってしまった……私、どうしても謝らないといけないって思ってて……許してもらえないかもしれないけど、でも……」
「……ああ」
突然謝るソラを訝しむが、ソラの言葉を聞いていくにつれて、その原因に思い至るヤクモ。そういえばランボーグに囚われているときに強烈な一撃をもらった気がする。そのことをソラは言っているのだろう。だが、
「ソラさんが責任を感じることはないよ。バッタモンダーが悪いんだから」
「でも……私が……」
「俺はこうしてピンピンしてる。シャララ隊長だって助けられた。これ以上気にすることなんて……」
「ヤクモさんが許してくれても、私は気にしてるんです……それでも、一緒にいたいって、図々しく思っちゃうんです」
「……」
ヤクモとしては問題ないと流すつもりだったが、ソラは深く受け止めてしまっているようだ。ちょうど公園が見えたため、一旦歩くのをやめて、ベンチにソラを座らせる。そしてベンチの近くに置いてあった自販機からスポーツドリンクを2本買うと、1本をソラに渡す。
「はい、これ」
「え、でも……」
「ましろさん家出てから水飲めてないでしょ?」
「あ……すみません」
それを受け取ることも渋っていたが、そういえば家を出てから何も口にしてないことを思い出し、それを受け取る。ペットボトル越しにひんやりとした気持ちのいい冷たさが伝わってくる。
「……俺は、図々しいとは思ってないけどね」
「……え」
ソラの隣に座ったヤクモは、先ほどのソラの言葉に自分の言葉を返す。
「俺だって、一回皆の所から離れようとしたのに、厚かましくまた一緒に居させてくれなんて言ってたし、アンダーグエナジーなんて敵方の力なんて使ってるし……俺の方がよっぽど図々しいよ」
「そんなことありません!ヤクモさんは……」
「じゃあ、ソラさんも一緒じゃない?」
「あ……」
ヤクモの言葉にソラも完全に言い返せなくなってしまう。自分の罪悪感を言葉にしても、ヤクモには完全に言いくるめられてしまった。だがそれが、心が軽くなったような感じがしてきて嬉しかった。
「シャララ隊長には俺がアンダーグエナジーを使えるようになってるってばれちゃったからこの後がどうなるかわからないけどさ。俺は今まで通り、俺にできることをやるつもりだよ。だからさ、ソラさんも図々しいとか、失礼とか思わなくていいと思う。ソラさんがそれで救われるなら、皆もきっと協力してくれるだろうし、俺でできることなら何でもするつもりだからさ」
「ヤクモさん……」
ヤクモも、自分がランボーグに囚われている間にソラの身に起こっていた出来事を昨日のうちに聞いていた。だからこそ、立ち直っても思うところがあるはずだと考えていたのだ。
「……」
「そ、ソラさん?」
ぎゅっとヤクモの手を握りしめるソラ。突然の事に驚き、顔を赤くするヤクモだったが、手を握るソラの頬が赤く染まってるのを見て、言葉を呑み込む。
「「……」」
どれくらいそうしていたのか。ヤクモがふと気が付いて公園の時計を見ると、既に時刻に余裕がなくなっていた。
「……あっ、時間……」
「あ!?ご、ごごごめんなさい!」
ソラも時間のことに気付いたのだろう、慌ててヤクモの手を放して立ち上がる。ヤクモも時間に焦ったように立ち上がると、
「ごめんソラさん、俺急いで戻るから!後で学校で!」
「は、はい!私もすぐ帰ります!」
2人とも逆方向に走り出す。だが、途中で立ち止まってヤクモが見えなくなるまでソラは見送っていたが、
「……ありがとう、ヤクモさん」
そう呟くと、自分も家に走って帰るのだった。
★
キラキラポーションの作成は数日が経過していた。その間、シャララも療養生活を送ることになっていたが、バッタモンダーの手によって長い間囚われていたことにより、まだまだ衰弱が続いていた。一時はミックスパレットの効力で回復して意識も取り戻していたが、それも一時的なようだった。本格的に療養するならスカイランドに戻るべきだという話も出ていたのだが、
『私の事は大丈夫。既に峠は越えているのだろう?それなら、王様と王妃様のお二人を優先してほしい』
という彼女の意向や療養自体はこちらでも一応可能ということもあり、スカイランドに彼女だけを返すのは後にし、キラキラポーション作成のためにミラーパッドも全力稼働することになったのだ。そして遂に、その時が来た。
「これで、キラキラポーションの完成よ」
ヨヨが持つ小瓶には桃色に光る液体が満たされていた。これが、王様と王妃の呪いを解くために必要な、皆が待ち望んでいた薬だった。
「「「「やった!」」」」
リビングには、ソラ以外の面々も来ていた。キラキラポーションが完成するから一緒に来てほしいという報告を前もってヤクモも受けていたのだ。先日、帰った時に色々質問されるかと思っていたのだが、事情を知っているムラクモが色々誤魔化してくれたのか、あかりは心配してくれたようだがそれでもヤクモが帰ってきたことを喜んで待っていた。もしや母もプリキュアの事を知っているんじゃないかとも思ったが、もし知らないで伝えたとしたらどうなるかわからないと考えて言うことはできなかった。ただ、
『まあ、色々あったがお前のやりたいようにやりな』
そう言ってくれた父の言葉は今も残っていた。
「エルちゃん、これで元気なパパとママに会えるよ!」
「えーるぅ!」
両親が遂に助かるのだと知ってエルも心底嬉しそうだ。その表情を見るとこちらも嬉しくなってくる。
「ヤクモさんも大手柄ですね」
「ん?大手柄?」
「だって今回、シャララ隊長が助かったのも、あのランボーグを倒して一気にポーションの完成まで漕ぎつけたのもヤクモさんの働きが大きいじゃないですか!」
ふと、ツバサに話を振られたヤクモは疑問そうに首を傾ける。そんなヤクモにツバサはぶんぶんと両手を振ってヤクモの手柄を言う。ヤクモからしてみればできることをやっていたにすぎないのだが、ツバサはどうやら今回の活躍を元にヤクモのアンダーグエナジーの事をスカイランドに認めてもらえるかもしれないと考えているようだった。
「……まあ、その時になればわかるかな」
「きっと大丈夫ですよ」
普段通りのヤクモと、はしゃぐツバサを笑いながら見ていたましろだったが、シャララの元にいるソラの元にキラキラポーションが完成したことを報告するため席を立つ。
「ソラちゃんに教えてくるね」
「それじゃあ、薬湯を持って行ってあげて」
「うん」
ヨヨに言われ、薬湯を部屋へと運ぶましろ。そこでは眠るシャララの傍にソラが椅子に座っていた。
「ソラちゃん」
「ましろさん、ありがとうございます」
シャララを起こさないように小声で話すソラとましろ。ましろはソラに小声でキラキラポーションが完成したことを告げると、
「ほ、本当ですか!?」
「そ、ソラちゃん……」
あまりの衝撃に大きな声を上げてしまうソラ。ひそひそ話で済ませようと耳を近づけていたのもあり、ましろは鼓膜が吹き飛んだんじゃないかと思う程の衝撃を受けて右耳を抑えながら苦笑していた。
「あ……す、すみません……」
「……ふふ」
ましろの様子を見て、慌てて謝るソラ。と、そんな2人の様子を見たのか笑い声が聞こえてくる。
「シャララ隊長!?すみません、起こしてしまって!」
「構わんさ。ありがとう」
案の定、ソラの声量はシャララも起こしてしまっていたようだ。慌てて謝るソラだったが、シャララはそんなソラの様子を気にすることはなく、ましろから薬湯を受け取る。
「ソラ、ましろさん。世話になったな」
シャララの礼に、2人もほっとした表情を浮かべる。本当に助かってよかった、そう心の底から思えたのだ。
「それで、何か嬉しいことでもあったのか?」
「あ、そうでした!」
「王様と王妃様を治すキラキラポーションができあがったんです!」
「!そうか……それは何よりだ」
そう言われて、先ほどの大声を誤魔化すので頭の中から吹き飛んでしまっていたましろが来たもう1つの理由を思い出す。ましろから告げられた待望のキラキラポーションの完成にシャララも笑顔を浮かべる。ずっとランボーグの中にいたため、実際に王様と王妃の姿を見たわけではないが、それでもずっと心配していたのだろう。安堵した様子を見せる。
「これで皆で帰れますね!」
これで、シャララもスカイランドに帰ることができる。それから、スカイランドへと向かうための準備を軽く行い、庭に全員が集まる。
「では!いざスカイランドへ!」
完成したばかりのキラキラポーションを手に、ソラ達はトンネルへと入っていくのだった。
★
「到着です!」
「シャララ隊長!よくぞご無事で!」
ソラ達がスカイランドの王城に到着したのとほぼ同時に、部屋にアリリとベリィベリーが駆け付けてくる、ヨヨから話を聞いて待っていたのだろう。シャララが無事帰ってきてくれたことを心の底から喜んでいるようだ。
「心配かけてすまなかった」
「ソラ、よくやったな」
「……」
ベリィベリーの言葉に少しだけ照れるソラ。だがすぐに皆の所に向かうと、ヤクモとましろの手を握る。
「あ……」
「私だけの力じゃありません!皆の力です!」
「……そうだな」
ソラの言葉に微笑ましい雰囲気が流れる。このまま談笑したいという気持ちはある。しかし今はそれよりも優先するべきことがあるのだ。
「皆、積もる話もあるとは思うけれど。まずは王様達の元に向かいましょう」
ヨヨの言葉も尤もだと頷き合い、寝室へと向かう。そこには、依然と変わらぬ状態で今も眠っている王様達の姿があった。
「……」
ソラはあの仮面の男が生命力を補給していたという発言を思い出していた。あの後、ヨヨにも聞く暇はなく、今の今まで流れてしまっていたが、誰なのだろうか。とはいえ、王様達を助けてくれていたのも事実、悪人ではなさそうだが。
「さあ、深い闇からお目覚めください」
ヨヨが小瓶の蓋を開けると、キラキラポーションが光となって王様と王妃に降り注ぐ。瞬間、2人に巣食っていたアンダーグエナジーが浄化されていき、解呪されていくのをヤクモは感じ取っていた。
「「……」」
完全にアンダーグエナジーから解放された2人がゆっくりと目を覚ます。その姿を見て、ソラ達も喜びを露わとする。
「これは……どういうことだ?」
「ずっと、どこかを彷徨っていたような……」
「える!」
だが、2人は現実をうまく呑み込み切れてはいないようだった。それはそうだろう、もし最後の記憶がバッタモンダーに眠らされた所だとするなら、気付けば寝室に寝かされていたのだから。しかし、そんな2人の疑問を吹き飛ばすようにエルの声が響く。
「!プリンセス!」
「無事でよかった……」
遂に目を覚ました両親の元に嬉しそうにベッドの上を這って近づいてくるエル。両親へと抱き着くエルを見て、愛おしそうに2人も彼女を抱きしめてあげる。
「お二人はバッタモンダーの呪いにかかり、深く長い眠りについていたのです。ですが、もう心配いりません」
「……そうだったのか」
ヨヨの説明を聞き、自分たちの身に起こっていた状況を理解する王様。呪いをかけられた自分達をプリキュアやヨヨが目覚めさせてくれたのだろうと。そんな2人の顔を見上げながら、エルが2人の名を呼ぶ。
「ぱーぱ!まーま!」
「「!」」
エルが、自分たちの名前を呼んでくれた。それを知った2人の目が潤み始める、エルには苦労をたくさんかけてしまったというのに、エルはちゃんと成長していた。その事実が親としてたまらなく嬉しいのだろう。
「おしゃべりができるなんて……!」
「もう一度、呼んでごらん」
「ぱぱ!まま!」
もう一度、両親の名を嬉しそうに呼ぶエル。その姿を前に感動のあまり言葉を失ってしまい、頷くことしかできない両親。遂に取り戻せた親子の会話を見て、
「プリンセス……よかった」
「やっぱ……パパとママだよね」
「うん、家族一緒が一番だよね」
皆も嬉しそうにその光景を見つめていたのだった。
★
すぐに街は歓喜の渦に包まれていた。号外が王都中に広がり、王都だけでなくスカイランド中にその号外は広がっていた。その盛り上がりようは、昼間なのに祝福の花火が打ち上がるレベルであり、号外の新聞を1枚もらってきたツバサとソラは食い入るようにそれを読み込んでいた。
「ねえ、なんて書いてあるの?」
「えっとですね……王様と王妃様の呪いを解き、青の護衛隊のシャララ隊長を救い出したヒーロー、プリキュア!」
プリキュアの活躍について事細かに書き込まれているのだろう。その見出しになんて書いてあるのか、それを知ったましろとあげはは目を輝かせる。
「やっば!有名人じゃん私達!!」
「ええ。さっき連絡したら父さんも母さんも大騒ぎでしたよ」
「ソラちゃんの家族も、きっと喜ぶよ」
「はい!ようやく、パパとママにも安心してもらえます!……あ、そうだ!次は来れてない人も一緒に連れてきてって言ってました!なのでヤクモさんとましろさんも含めて次は皆で一緒に行きましょう!」
当然、ソラとツバサの家族も喜んでいるだろう。ソラの誘いもヤクモとましろは喜んで受け入れる。皆で遊びに行けば家族も喜んでくれるだろう、そんなことを話していると、5人のいる部屋がノックされ、ベリィベリーとアリリが入ってくる。
「いやあ、スカイランド中が大喜びだ。ぜひ一目、プリキュアを見たいと声があがってな」
「照れますねぇ」
「そこで、広場でパレードを行うことになった」
「!それって凱旋パレード的な!?」
パレードなんて大型テーマパークやらテレビやらでしか見たことがないものだ。まさかそれの、しかもする側に回るとは。そんな初めての経験にあげははテンションが上がりっぱなしだった。
「青の護衛隊の先導で、皆あの子達に乗ってもらうから、よろしくね」
「あの子達ですね!」
「……あの子?」
ソラもわかっているということは、青の護衛隊に関係しているのだろう。しかしヤクモやましろにはいまいちピンと来てないようであり、早速顔を合わせようということでソラ達は青の護衛隊の宿場へと向かう。そこにいたのは、
「……」
見上げないと顔が見えないぐらいの鳥だった。鞍などがついているのを見るに、人を乗せてくれるようで、背中の位置を見るにそこは馬などと似た高さだと予想できる。パレードというのはこの子達に乗ってやるということなのだろう。しかし、過去にスカイランドを訪れた際も当然乗馬ならぬ乗鳥なんてやったことのないましろは冷や汗を流していた。
「凄い!!」
「わ、私乗れるかな……?」
「鳥どころか馬にすら乗ったことないんだけど……」
初めて見るスカイランドの鳥に興奮しっぱなしのあげはに対し、ましろとヤクモは本当に大丈夫なのかどうか不安そうだった。とはいえ、一度も乗ったことがないのかもしれないという反応はベリィベリーも予想していたのだろう、
「大丈夫。スカイランドじゃ小さい子も乗ってる」
「……」
「はいはーい!あげはさん乗ってみまーす!よろしくね!」
「グワー!」
そうは言われても不安なものは不安なのだ。そう言いたげなましろの表情を見たあげはが、先に乗ろうとする。あげはに挨拶された鳥は一言鳴くと、あげはを乗せるためしゃがみ込む。
「やっさしー!ありがとー!」
「行きましょうか、あげはさん」
「オッケー」
あげはが慎重に跨る。その隣では慣れた様子でもう一羽に乗っていたツバサが、乗る感覚に慣れてもらおうとあげはと共に軽く走り始める。これを見るに、普通にハードルは低そうだ。
「……うぅん……」
「まだパレードまで時間はあります、練習しましょう、ましろさん」
「う、うん……」
「……次、俺がやってみるよ」
自信なさげなましろの参考になればいいと考え、次はヤクモが乗ってみようとする。待機してた一羽がしゃがみ込み、ヤクモを乗せようとするのだが、ヤクモが跨ろうとした次の瞬間。
「グワッ!?」
「おあっ!?」
鳥の方が突然立ち上がりその場から飛びのいてしまった。それによって吹き飛ばされたヤクモが尻もちを着く。
「ヤクモさん!?」
「ヤクモ君!?」
「だ、大丈夫!?な、何してるの!?」
まさかの乗鳥失敗したヤクモに慌てて駆け寄るソラとましろ。ましろの顔はヤクモが失敗したのを見て、もし失敗したら自分もこうなってしまうのかとぞっと血の気が引いている。
「どうしちゃったんでしょう……」
「なんか怖がってるみたい……何かやばいもの持ってるってわけじゃないよね……?」
「いやそんな危険なものは……」
そこまで考えて、ヤクモはあることに気付く。この鳥は本能で自分のアンダーグエナジーに気付いたのではないかと。鳥たちにとっても先日のランボーグ騒ぎは記憶に新しいはずだ。反応からするに本人たちもわからないまま避けているようだが、これでは仕方ない。
「……でもしょうがないか。乗れないなら俺は見学の方に……」
「ま、待って!?えーと、えーと他の子呼んでくるから……」
「グワーッ!!」
「「「「!?」」」」
突然聞こえてきた大きな鳴き声。4人とも驚いていたが、特にソラとベリィベリーはそれがどういう鳥なのか知っているのか、驚いたように鳥たちが普段過ごしている小屋を見ていた。
「今の鳴き声って……」
「うん、あの子だけど……もしかして……」
少し迷ったが、その鳥を連れてくるベリィベリー。それを見てましろは先ほどよりも冷や汗が止まらない。何故ならその鳥は、ヤクモを乗せるのを拒否した鳥よりも鋭く怖い目つきをしていたからだ。
「……」
鳥はヤクモの目をじっと見ていたが、やがて背中を落とすと、乗るようにと嘴を動かして無言で伝える。ヤクモがソラとベリィベリーを見ると、2人ともとりあえず乗ってみてほしいと言うかのように頷く。それを受けて、ええいままよとヤクモがその鳥の背に乗ると、一瞬鳥がぞわっと震えるも、
「グワー!!」
ヤクモを振り払うことはせずに立ち上がる。ヤクモも軽くバランスを取りながら手綱を握る。また振り払われるかもしれないと思っていたが、その心配はなさそうで安心する。
「凄いですよヤクモさん!この子が乗せてくれるなんて!」
「本当に驚いたよ……」
「うおっ」
鳥はソラとベリィベリーの言葉を聞いていないかのようにヤクモを乗せて走り出す。とはいえ、ヤクモを振り下ろすとか自分勝手に走らせるという様子は少なくともヤクモには感じられず、ヤクモを乗せた鳥もそこを走り始める。
「……よかった、大丈夫そうですね」
「えっ、そんなに大変な鳥さんなの?」
「大変、っていうか気難しいっていうか……認めた奴しか乗せない子なんだ」
少し言いにくそうにしながらヤクモのを乗せている鳥がどういう性分なのか話すベリィベリー。乗せる人を選ぶというのは、そういうのを好む一定の層もいるのだろう。色々な鳥がいるのだなとましろも思っていると、
「……もしかしたら、他の鳥さんがヤクモさんを乗せられないのを見て、自分がと立ち上がってくれたのかもしれませんね」
「?何か知ってるの?」
「ま、まぁ……ちょっと?」
「あはは……」
ヤクモの性質を鳥たちが察知してしまったのだろうと推測するソラ。どういうことなのかと聞くベリィベリーだったが、2人に誤魔化されてしまい首を傾げてしまうのだった。