曇り空の夜のプリキュア   作:popoponpon

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第66話 運命の子

「……あ、こんな所まで来てしまいましたか」

 

長閑な野道を走っていた鳥の足が止まる。その上に乗っていたソラが後ろを振り返るが、ましろの姿はない。

 

「ましろさん、大丈夫でしょうか」

 

ヤクモも無事に乗れたのを確認し、それでも乗れるかどうかと不安そうなましろに良い感じにコツを教えつつ、鳥に颯爽と乗り込み、そのままスタートダッシュを決めて出てきたのは覚えてるのだが。久しぶりに乗った感覚が気持ち良かったのか、ついつい夢中になって走り込んでしまっていたようだ。とはいえ、乗るのは別に難しいわけではない、運動神経の悪い子でも乗れるはずなので、ましろならば問題ないだろうと考えていると。

 

「ソラ」

「……あ、シャララ隊長!?」

 

ソラの姿を見つけたのか、シャララがこちらに鳥を近づけてきていた。シャララの姿を見て驚くソラ。まだシャララには休養が必要なはずなのだが。

 

「少し話さないか?」

 

ソラを誘い、近くの川辺で腰を下ろす2人。落ち着いたところで、ソラはシャララに気になっていたことを問いかける。

 

「休んでいなくて大丈夫なんですか?」

「ふふっ、私を誰だと思っている?」

 

もう体は問題ないと手を軽く閉じたり開いたりしてみせるシャララ。

 

「さすがです!」

 

すっかり回復した様子のシャララを見て嬉しそうな声を上げるソラ。まだまだかつての本調子には程遠いが、この分ならすぐにシャララは取り戻してくれるだろう。そう確信させてくれた。

 

「ソラ、君は随分成長したな」

「……立ち止まるな、ヒーローガール。辛かった時も、隊長の言葉に背中を押してもらいました!」

「それは光栄だ」

 

自分の残した言葉が、ソラをここまで歩ませてくれた。それを知り、シャララも笑みが零れる。だが、ソラがここまで来れたのは、当然自分の言葉だけではないだろう。

 

「だが、君を変えたのは私だけじゃないだろう?」

 

そう言うと、シャララが視線を上げる。ソラがシャララが向いた方向を見ると、

 

「ソラちゃーん!」

 

ましろがベリィベリーが手綱を持つ鳥に乗ってこちらに歩いてきていた。その隣にはヤクモ達もおり、ヤクモを乗せた鳥を見ると、ましろを乗せた鳥を気遣うように時折視線を向けていた。

 

「ヤクモさん!ましろさん!」

「友との出会いが世界を広げ、新たな自分に出会わせてくれる。そうだろう?」

「はい!」

 

2人の姿を見て立ち上がり、手を振っていたソラにそう話す。その言葉を聞き、ソラも嬉しそうに答えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

エルと王様達は、久しぶりの家族の時間を過ごしていた。呪いが解けたのは吉報だが、眠りから目を覚ましたばかりということもあり、公務にはまだ戻れないでいた。幸い、健康状態に問題はないということでこうしてエルと共に一緒にお絵かきなどをしてゆっくりと過ごしていたのだが。

 

「失礼します、王様」

「おお、ヨヨ殿」

 

時間を見計らったようにヨヨが部屋へと入ってくる。こうして家族の時間を過ごす前に、ヨヨから話があるから落ち着いたら時間を作ってもらえないかと言われており、ヨヨの頼みならばと王様達も喜んでその時間を作ったのだ。

 

「今、お時間は大丈夫でしょうか?」

「うむ、問題ないぞ。プリンセスとの久しぶりの安らぎの一時を過ごすことができた」

「プリンセスも、すっかり喜んでいるようで」

「あい!」

 

エルも嬉しそうにヨヨにリアクションを見せる。短い言葉だったが、その言葉にはヨヨや皆への感謝が含まれていたのが伝わり、ヨヨも笑顔になってくる。しかし、それよりも今後の事も考えて、王様達に必ず伝えなければならないことがあった。

 

「ヨヨ殿。話というのは……」

「実は……」

 

ヨヨは、王様達にある話をしていた。その話を聞くにつれて、王様と王妃は驚いて目を見開くも、無言で最後まで話を聞いてくれた。そしてヨヨが話を終えると、少し考え込んでいた王様がエルに視線を向ける。ヨヨから一緒に話を聞いていたエルは、心配した様子で王様と王妃を見ていた。

 

「……ありがとう、ヨヨ殿。話してくれて。確かに複雑な話だ。まさか彼にそのような秘密があったとは……」

 

ぽつりと漏らす王様。ヨヨが話したのはヤクモがアンダーグエナジーを所持しているということだった。話すなら今の状況しかないと考えていたのだろう。その話を聞いていた2人は難しい表情を浮かべていたが、ふっと笑顔になる。

 

「確かに、伝え方は大事だ。だが、彼がスカイランドを救ってくれた恩人であり、今やスカイランド中が憧れるヒーロー、プリキュアであることは事実だ」

「私たちは彼の真実を受け入れます。それは、彼に対する誠意ですし、プリンセスもその方がいいでしょう?」

「あい!ヤクモもいっしょ!」

 

両親の言葉にエルも嬉しそうに声を上げる。3人の反応を見て、ヨヨも安心した様子を見せる。王様達ならきっと受け入れてくれるという確信があったが、可能な限り最高のタイミングでそれを伝えることができたようだ。

 

「ヨヨ殿、安心してほしい。我らは皆、彼の事を受け入れる」

「ありがとうございます」

 

王様たちに一礼すると、ヨヨは部屋を出て行く。そして残されたエルを、王妃は優しく抱きしめる。

 

「良い出会いをしましたね、プリンセス」

「える!……える?」

「「!」」

 

ふと、エルの胸元から光が漏れる。それに気付いた王妃が驚いてエルから手を離す。

 

「プリンセス、大丈夫か?」

「?あい!」

 

王様もエルの体調に変化はないか気にする。しかし、エルは特に違和感などはないのか笑って返事する。その様子を見て2人は安堵するが、

 

「今のは……あの時と同じ光……」

 

2人は心当たりがあるのか顔を見合わせる。2人の脳裏に思い浮かんだのは、過去のある日の出来事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

無事、全員が乗鳥に成功したとこで、パレードが始まるまでの時間をゆっくりと過ごしていた。草原の上でレジャーシートを広げていた。シートの上には街で買ってきたというお菓子の入った箱が置かれており、それを開くと中には美味しそうなボールドーナッツが入っていた。

 

「わあ!っこっちにもボールドーナツがあるんだね!」

「やだなぁ、ドールボーナツですよ」

「……???」

 

ボールドーナッツなのかドールボーナツなのか、ましろの頭の中がこんがらがってきてしまい、混乱してしまう。ヤクモも思わず苦笑してしまっていた。

 

「は、はは……」

「まあまあ、とにかく食べてみよう」

 

名前はおいといて、美味しそうなお菓子なのだ。早速食べようというあげはの言葉に従い、全員がドールボーナツを口に運ぶ。

 

「美味しい!……けど、いつも食べてるドーナツとなんか違う?」

「だね?」

「スカイランドの麦って小麦と違うんじゃなかった?」

 

その美味しさに感動しつつも、どこか違和感を感じるましろ。以前、ヤーキターイを作ろうとした際に、ヨヨがスカイランドでは3人の世界にあるような小麦粉は使われていないということを教えてもらったため、原材料の差などがあるのではないかと推察する。

 

「私にはいつも通りのボーナツですが……」

 

ソラの言葉にうんうんと頷くツバサ。2人には慣れ親しんだ味なのだろう。

 

「やっぱり、違う世界なんだね」

「「?」」

 

ぽつりと、ソラとツバサの反応を見て呟くましろ。

 

「ソラちゃんやツバサ君と、私とあげはちゃんとヤクモ君。見た目は変わらないのに別々の世界の人なんだなって……奇跡みたいだなって思うの」

 

本来、交わることのないであろう2つの世界。そんな世界にそれぞれ住んでるはずの自分たちがこうして出会い、プリキュアになって一緒に戦うようになった。ちょっと前の自分が聞いたら、夢物語だと笑ってしまうかもしれない。そんな奇跡が、現実のものとなっていた。

 

「絵本に出てくるようなお城があって、不思議な鳥さんに乗ったのも、不思議なドーナツを食べているのも、皆と出会えたことも……この奇跡が、ずっと続くといいな」

 

当然、楽しいことや嬉しいことばっかりではない。辛いことや大変なこともあった。しかし、それらを乗り越え、皆と一緒にいるこの掛け替えのない時間は凄く充実している。こんな日々がずっと続けばいいのに。そう思うましろの気持ちは、皆も一緒だった。

 

「そうですね……もっと一緒にいたいです。これからも……」

「「……」」

 

はぁ、と溜息を漏らしながら呟くソラ。その様子を、ぽかんと口を開けたままましろとあげはは見ていた。そんな2人の視線に気付いたソラが不思議そうに首を傾げていたが、その様子を見ていたましろとあげははすぐにピンと来たのだろう。

 

「ましろさん?あげはさん?」

「ううん、何でもないよソラちゃん!」

「うんうん、そうだよね、これからもみーんな一緒にいたいよね!」

 

くすくすと笑いながら、わかっていると言わんばかりの反応をする2人。そんな2人の言葉を聞いてより嬉しそうに笑うソラを見ながら、ヤクモとツバサは女子たちは何をわかっているのかと首を傾げていたが、

 

「おーい!」

 

5人の下にアリリが鳥に乗って駆け寄ってくる。まだパレードの時間は先だったはずだが、何かあったのだろうか。

 

「アリリ副隊長?何かあったんですか?」

「王様がお呼びだ」

 

アリリから伝えられた言葉に、5人は首を傾げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「勇敢なるプリキュア達よ」

 

玉座に戻ってきた王様と王妃の前に立つヤクモ達とヨヨ。アリリから告げられた話は、一体何なのか。6人が王様の言葉を待っていると、

 

「そなた達には何度も救われた。プリンセスのこと、私たちの呪いを解いてくれたこと、心から感謝する」

「本当に、ありがとうございました」

「ありがとー」

 

改めてプリキュア達に礼を言う王様達。その感謝の言葉だけで、ソラ達も十分だった。しかし、王様の続く言葉に、ソラ達は疑問を持つことになる。

 

「そしてもう1つ、大事な願いを聞いてはもらえないか」

「大事な……?」

 

エルもアンダーグ帝国の魔の手から守り切り、無事に王様達の元に戻り、王様達の呪いも解けた。そのことに感謝する2人はさらにある願いをしようとしていた。一体、何を頼もうというのだろうか。王妃は少し寂しそうにエルを見る。そして、意を決したようにヤクモ、ましろ、あげは、ヨヨを見ると、

 

「この子を……プリンセスを再びあなた達の世界に連れ帰ってほしいのです」

「「「「「え!?」」」」」

 

まさかの提案をする。当然それを聞いたソラ達は驚愕する。やっと再会し、これからまた暮らせるようになったというのに、王様達は何故エルを親元から離し自分達に託そうというのか。

 

「どうして……?プリンセスをソラシド市に……?」

「だって、ようやくパパとママに会えたのに!」

「……我々も、可愛いプリンセスとずっと一緒にいたい。だがこの子は……運命の子なのだ」

「える?」

 

エルを自分達と共にソラシド市に帰らせる。当然ツバサとあげはも、王様が相手とは言えその願いには異を唱えようとする。しかし、王様が告げた理由、それはエルが運命の子ということだった。その言葉の意味がいまいちわからない様子を見せるエル。

 

「運命の子……?」

 

ピンと来ていないのはましろ達も同様だった。王妃はましろの声に頷くと、

 

「あれは……1年程前の事」

 

王妃は語り出す。何故エルの事を運命の子と呼ぶのか。それは1年程前に遡るという。1年前のある日、夕日も落ち夜も近い時間。バルコニーに出て、夕日が落ちるのを見ている王妃の元に歩んだ王様は空を見上げていた。その日は特に空が綺麗な日だった。その日の空には一番星が光っていた。

 

「あの日、私たちの元に光が集まり、空からプリンセスを授かったのです」

 

そして王妃が告げた言葉に、ソラ達はまたしても驚愕する。王妃達は話を続ける。光から誕生したエルを王様達が受け取った瞬間、空にオーロラがかかり、女性の声が聞こえたのだという。

 

「その子は運命の子。滅びの運命からスカイランドを救ってくれるでしょう。その声はそう告げていました」

「滅びの運命……?」

 

その声の主が何を予感していたのかはわからないが、アンダーグ帝国がその声の主が授けたエルを狙っているということは、アンダーグ帝国がその滅びの運命に関わっていることは確かだろう。

 

「声の主は、プリンセスを私達に育ててほしいと言っていた。同時に、近い将来に旅立ちの時が来る、とも……我々はその時までの仮初の親だと」

「仮初って……!?」

 

声の主のまさかの物言いにあげはは言葉を失っていた。エルは確かに2人とは血が繋がっていない本当の子供ではないのかもしれない。しかし、だからといってこのような言い方は到底許されるものではない。そう思ったのだろう、少し表情に怒りが浮かんでいるようにも見える。

 

「……いえ、その声の主は、敢えてあのような物言いをしたのでしょう。私達が親としてプリンセスといられる時間は確かに短い……そのうえで、この子を受け入れるかどうか、その選択を投げかけてきたのです」

「そして私たちはその手を取った」

 

愛おし気にエルを見る王様と王妃。2人は、全てを承知したうえで、エルの事を受け入れたのだ。遠い夜空に煌く星のような子。運命の子であったとしても、この子は間違いなく2人の娘なのだと。

 

「あの日、空から授かった運命の子であり、私たちの娘。それがプリンセス……エルなのです」

「エルちゃんが、空から……」

 

2人が話したエルが2人の元へとやってきた経緯。それは、プリキュアとなって色々な経験をしたソラ達であっても現実味がない出来事だったのだ。

 

「そして、プリンセスに再び運命の光が宿った。無常にも、旅立ちの時を告げたのだ……本当は、ここで共に暮らしたい……エル」

 

立ち上がると、エルの元へと向かう王様。一緒に暮らしたいというのは王様だって山々なのだろう。しかし、それを状況が許してくれない。そして2人とも、それを1年前から既に覚悟していたのだ。

 

「える……?」

 

それでも、別れるのは辛い。運命の子であるエルはこの後、滅びの運命と対峙することになる。それはいつ終わることになるのかわからない戦いだ。もしかしたらこれが永遠の別れになるかもしれない。そんな思いからか、2人の目からは涙が止まらない。2人が涙を流し、悲しみを堪えている姿を見たエルは、2人の顔に手を伸ばす。

 

「なーで、なーで……えーん、ちないよ……いいこ、いいこー……」

「エル……」

「こんなにも優しい子になっていたのね……」

 

2人に泣き止んでほしいと思ったのだろう。エルが2人に笑いかける。エルからの優しい気遣いに、2人はさらに涙が込み上げてくるのを堪えると、皆の顔を見ると、涙を拭う。

 

「そうね……きっと大丈夫。ここを離れても、貴女には守ってくれる暖かな家、新しい家族がいるんだもの」

「えーるぅ!」

「家族……私たちが……」

 

ましろ達の脳裏に、皆で過ごした日々が思い出される。エルにとっては、皆もまた家族なのだ。

 

「アンダーグ帝国はこれからもスカイランドやそなた達の元へ刺客を差し向けるに違いない……危険を背負わせてすまない。だがどうか、プリンセスエルを守ってほしい……」

「王様、王妃様……」

 

王様の願いに無言で頷く王妃。ここまでくれば、当然断る選択肢などない。自分たちにエルのことを任せてほしいと言わんばかりに、ソラは一歩前に出る。

 

「これまでに増して、必ずやエルちゃんをお守りします!!」

「僕も、任せてください」

「頼んだぞ……プリキュア」

 

続くようにツバサも宣言する。同意見だと、ヤクモ達も頷く。5人がエルを受け入れてくれるという答えを出してくれたのを聞き、王様も嬉しそうに、そして安心するように言葉を口にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

城の前に続く市街には多くの市民が集まっていた。王城から出てくるプリキュア達を一目見ようと、そして王様達が眠りから覚めた喜びを分かち合おうとしているのだろう。そして、城門の前にはソラ達とソラ達を乗せる鳥たちが待機していた。

 

「ソラ、君たちの先導を務めるぞ」

「ありがとうございます!」

「だが、私に続くのはこれが最後だ。君は君のヒーローを目指せ、大切な仲間と共に」

 

今回のパレードはシャララが先導してくれることになっていた。それならばパレードも安心だろう。しかし、シャララはソラにこれが最後だといった。ソラにとって憧れだったシャララ。しかし、ソラにはソラのヒーロー像がある。それはシャララの姿ではなく、ソラが自分で模索していくものだ。それを見つけるのは、ソラ一人だけでは難しい、だが仲間たちとなら。シャララの言葉をしっかりと受け止めたソラもまた、はっきりと返す。

 

「はい!」

 

ソラの言葉を聞き、シャララも微笑む。今のソラなら、何が起こってもきっと大丈夫。そうシャララは確信していた。

 

「……そうだ。これがなくても……また、会えますよね」

「ああ」

 

ソラはシャララの手に、シャララから託されたペンダントを渡す。2人の再会を誓い、ソラへと渡されていたペンダント。だが、今ならば再会するのにこのペンダントは必要ない。ならばこれは、本来の持ち主の元へと戻るべきだとソラは考えていたのだろう。そんなソラの気持ちを理解したシャララは、短く頷くとソラから再び送られたペンダントを受け取る。

 

「スカイランドは、私が守る。そして、いつでも君たちを支えよう」

「はい!」

 

もうスカイランドは大丈夫。シャララの頼もしい言葉にはそう思わせるだけの強い力があった。そして、遂にパレードが始まる時間が来る。シャララが先導し、鳥たちが行進を始める。もうすぐ、パレードの入口に入ろうとした、まさにその時だった。急に視界が薄暗くなり、全員が空を見上げる。

 

「やだなあ……いじわる雲か……」

「何それ?」

 

ツバサが説明する。いじわる雲というのはスカイランドで起こる、晴れているときに突然1つだけ現れる雲の事だという。薄暗くなってきてしまったのはタイミングが悪くて残念だが、パレードを続ければ皆も笑顔になってくれるだろうと6人は皆の元へと向かっていく。しかし、皆の表情はいじわる雲の出現によって暗くなっているようだった。

 

「折角の幸せ気分が台無しだよ……」

 

1人がぽつりと呟く。皆口にはしないが、内心同じ意見だったのだろう。そんな言葉が5人の耳に届く。それを聞いたましろは、

 

「私たちでどうにかできないかな?スカイランドの晴れた空、エルちゃんに見せてあげたい」

 

と、皆の様子を見てそう言う。このパレードは、再びソラシド市に行くことになるエルが最後に見る空だ。再びスカイランドに戻るときのために、彼女の記憶に晴れ晴れとした大空を見せてあげたいというましろの言葉に、5人も当然というように頷くと、ミラージュペンを取り出す。

 

「いきますよ!」

 

ソラの掛け声と共に、5人はプリキュアへと変身し、人々の前に現れる。

 

「「「おおおおおお!!」」」

 

プリキュア達の登場に、いじわる雲の存在も忘れて大盛り上がりを見せる人々。彼らの喜びをさらに大きなものにするべく、スカイとプリズムが目を合わせると、

 

「「プリキュア!アップ・ドラフト・シャイニング!!」」

 

2人の力によっていたずら雲が消えていく。それによってスカイランドに元の青空が広がっていく。太陽の光が降り注ぐと、その眩しさに人々の顔に笑顔が戻っていく。

 

「……クラウド、僕に雲を」

「!」

 

それが、さながら青いキャンパスに見えたのだろう。クラウドに提案するウィングのやりたいことに気付き、クラウドがウィングと手を繋ぐ。それからウィングが空に飛びあがると、白い雲が飛行機雲のように伸びていき、空に絵を描いていく。それはまるで、

 

「あれって……」

「プリンセスだ!」

 

エルの似顔絵だった。それを見た市民たちもすぐにその似顔絵の正体に気付く。

 

「いたずら雲は気分をどんよりさせちゃうけど……プリキュアの作る雲は凄くきれい!」

「やっぱりプリンセスは笑顔が似合うね!」

「ふふん、それじゃあ……これにもう一つトッピング!」

 

その似顔絵を見て、何かを思い付いたバタフライがミックスパレットを取り出す。

 

「2つの色を1つに!レッド!ブルー!ワンダホーにアゲてこ!」

 

ミックスパレットから放たれた紫の光がエルの似顔絵雲を紫色に染めていく。さらに花火が打ち上がり、似顔絵を華々しく彩っていく。

 

「「「ワンダホー!!」」」

 

スカイランドの人々も、バタフライのワンダホーという言葉を復唱し、プリキュア達のサプライズを喜んでくれた。そんな彼らの行動をお城のバルコニーから見ていたエルも、上機嫌で拍手していた。

 

「わんだほー!」

「……プリンセスよ」

 

喜ぶエルに、2人が優しく語り掛ける。

 

「運命が一回りしたら、パパとママの元に帰ってくるんだよ」

「ずっと待っていますよ、エル」

「ぱぱ、まま」

 

2人の声を聞いて、嬉しそうに笑うエル。市街地に戻ってきた大空に描かれたエル。それを見上げる5人の顔は、微笑ましい笑顔が浮かんでいた。

 

「同じ空の下、奇跡のような出会いでも、運命で繋がって私達、家族みたいに同じ時を過ごしている。それが今、凄く嬉しい……」

「今だけじゃありません!」

 

この晴れ晴れとした空を見ていて気分が清々しくなったのもあるのだろう。プリズムの言葉にスカイも同意するように言うと、クラウドに腕を絡めると、

 

「ス、スカイ?」

「これからも、ですよ!」

 

そう言い、クラウドに、そして皆に笑いかける。一瞬クラウドは驚いた様子を見せたが、すぐにスカイの言葉に頷くと微笑み返す。そんな2人の様子を見て3人も笑う。空に煌くエルの微笑む似顔絵をお城から見上げながら、ヨヨもこれからの素晴らしい未来を予感していたのだった。

 

(……物語を紡いで、運命を切り開く。そうすればきっと……)

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