「ランボーグ!!」
2人のプリキュアと対峙したランボーグが勇ましく声を上げながら突進してくる。その太い両腕で先制攻撃を仕掛けてやろうと、勢いよく腕を振り上げる。その勢いのまま2人を叩き潰してやろうと殴りかかるのだが、2人の目には既にその攻撃は見切られていた。この程度の単調な攻撃など今更通用しないとばかりにクラウドがその攻撃を簡単に受け止める。そのまま簡単に受け流すと、その隙を利用してスカイが殴り飛ばす。
「ランボーグ!?」
スカイに吹き飛ばされたランボーグが地面を転がっていく。どうにか起き上がろうとするも、ランボーグの目には既にこちらに近づいてきているスカイとクラウドが映る。2人はランボーグが立ち上がる前に次の攻撃を仕掛けており、顔を上げたランボーグの顔面に2人のキックが突き刺さる。
「はあ!」
「ふっ!」
「ララ!?」
立て直す間もなく、悲鳴を上げて再び吹き飛んでいくランボーグ。地面を数回バウンドしてやっと止まったランボーグに2人が追撃を仕掛けようと迫る。さすがに2回も同じ目には遭わないというつもりなのか、ランボーグは素早く体を起こして2人の追撃を避けるようにさらに後ろに跳んで距離を取ると、その場で回転し始める。
「「!!」」
2人が警戒した様子で一旦立ち止まり、敵の動きを見る。高速で回転し始めるランボーグの両腕から無数の木の葉が放たれていき、弾幕を作り出して2人に襲い掛かる。スカイとクラウドは互いに目配せし合うと、この攻撃を耐えるためにスカイはクラウドの隣に密着するように近づいていく。幸い、木の葉の弾幕は直線状に襲い掛かってきており、この程度の攻撃なら防ぐのは簡単なことだ。そう言わんばかりにクラウドがキーホルダーを取り出す。
「アンブレランス!」
キーホルダーが変形し、アンブレランスの姿へと変わっていく。それを前方に開くと、木の葉の弾幕がアンブレランスにぶつかっていく。クラウドの腕にアンブレランスを通して衝撃が伝わってくる。しかしクラウドはその攻撃を全て受け止めてみせると、
「ラ!?」
回転を止めたランボーグは、全く攻撃が通用していないクラウドとスカイを見て驚愕する。しかしすぐに次の攻撃を仕掛けるべく、両腕を振り回してクラウド達に殴りかかる。先ほどとは異なり速度のある連続攻撃を放ってくる。だが、
「その程度でやられる私達じゃありません!」
今度はスカイがその攻撃を次々と受け止めると流れるような動きで受け流していく。そのまま徐々に距離を詰めていくスカイの様子を見て、このままではまずいとランボーグの方も判断したのか、より滅茶苦茶に腕を振り回すようになり、その速度も上がっていく。
「無駄です!」
だが、速度だけ上がっても肝心の攻撃が滅茶苦茶では有効打になどならない。むしろ見切りやすいと言わんばかりに懐に潜り込んで拳を振るうスカイ。それによってランボーグの両腕が真上に弾かれてしまい、無防備な胴体を晒すことになってしまう。
「はああああ!!」
「ラッ!?」
無防備なランボーグの腹部にスカイが踏み込み、勢いよく拳を放つ。その拳がランボーグの胴体にめり込む音と共にランボーグの体が勢いよく吹き飛んでいく。
「一気に決めよう」
「はい!」
戦闘を長引かせる必要もないと、スカイが構える。一気にランボーグを浄化するべく、踏み出そうとしたその時だった。
「ランボーグ!!」
「「!?」」
ランボーグが一際強い咆哮を放つ。まだ何か隠している手があるのか。その状態で迂闊に技を放つわけにはいけないと一旦スカイが技を使うのを止めてクラウドと共にランボーグを確認する。見れば、そのランボーグの足元や根本には何故か糸のようなものが地中に向かって伸びていた。
「あれは……?」
それを見たスカイの中で警戒心が膨れ上がる。また、クラウドは、以前ランボーグの体内に閉じ込められた時を思い出していた。あの時、ランボーグは素体となっていたシャララを縛り付けるようにこの糸を伸ばしていた。
「あの糸は確か……」
何故それと同一のものがランボーグの体内から伸びているのか。と、その糸が地面に埋まっていることにクラウドは気付く。クラウドが意識を集中すると、その糸はまるで地中からアンダーグエナジーがランボーグの方に注がれていることに気付く。
「!まずい!あの糸を引き千切るんだ!」
「え!?」
アンブレランスにアンダーグエナジーを注ぎ込み、ランボーグを作り出すことで糸を切断しようと試みるクラウド。しかし、クラウドがランボーグを生み出そうとしたその時には既に、ランボーグはどこかからアンダーグエナジーを供給されてしまっており、
「ランボーグ!!」
大樹が巨大化したようなランボーグの体が弾け飛ぶ。幹がまるで弾丸のように周囲へと放たれていき、2人はそれを回避しながらランボーグの身に起こった変化を目撃する。
「こ、これは……!?」
先程までの生命力に満ち溢れた大樹だった姿から一転し、やせ細った枯れ木のような姿になるランボーグ。しかし、その体内に満ちるアンダーグエナジーは先ほどよりも強力なものとなっており、そのおどろおどろしい雰囲気も相まって2人は嫌なものを感じて冷や汗を流していた。
「あのランボーグ……何をする気なんだ」
「先ほどよりも体は小さくなっていますが……邪悪な気配が強まった気がします」
枯れ木となった葉が散っていく。だが、それが宙に舞うと共に人間の大人程度の大きさに膨れ上がり、手足が生えるとランボーグの軍勢となって2人の前に揃う。
「「!?」」
まさかのランボーグの量産能力に驚く2人。根元を見ると、これ以上のアンダーグエナジーはもういらないと言わんばかりにぶちっと糸を引き千切る。
「さて、どう切り抜けるのかな?」
その光景を遠くから見ていた少女の手に、地中へと伸ばしていた糸が戻っていく。ランボーグを召喚し、2人へと差し向けた彼女は、プリキュアがどれほどの実力を秘めているのか、この状況をどうやって打開するのか、気になる様子で2人を見る。
「まさかこんな能力を持っているなんてね……」
「どうしますか?」
まさかこのような隠し玉を持っているとは。相手が大群であればこちらも人数を揃えたいが、この状況では連絡もままならないだろう。いずれ気が付いて駆けつけてくれるだろうが、それまでは2人で対処するしかない。それならばと、
「あの本体に気を付けながら1体ずつ片づけるしかない」
「はい!」
短く作戦会議を終えると、スカイとクラウドがランボーグ達に向かって走り出す。ランボーグ達も、2人の動きに反応するように木の葉のランボーグ達が走り出す。その背後に立つ枯れ木のランボーグはその場から動く様子を見せておらず、ひとまずは配下に任せるようだ。
「やあ!」
「うおおお!」
ランボーグ1体の攻撃を避けて懐に潜り込んで別の個体へと蹴り飛ばすスカイ。そのまま左右から同時に襲い掛かってきた2体の攻撃を一歩下がって回避すると、一体を吹き飛ばし、そのまま振り返ってもう1体を殴り飛ばしていく。クラウドも、アンブレランスを使って1体を吹き飛ばすと、周囲から拳を、足を叩きつけようとするランボーグの攻撃に合わせて雲を作り出して受け止めると、その反動でランボーグ達の攻撃を弾く。そしてバランスを崩したところを回り込み、1体ずつ確実にアンブレランスで吹き飛ばしていき、スカイと共に一ヶ所にランボーグ達を集めていく。
「ヒーローガール……!?」
「ランボーグ!!」
スカイが一ヶ所に集められたランボーグをまとめて浄化しようと試みる。しかし、枯れ木のランボーグの咆哮と共に風が巻き起こり、木の葉のランボーグ達が次々と大空を舞っていく。
「な!?」
「これじゃ浄化ができない……!」
クラウドプロテクトで抑えようとも考えるが、ランボーグ達はクラウド達の周囲を取り囲むように宙を舞っている。これではランボーグ達をまとめて抑えることができず、取り残した個体からの反撃を許してしまうことになる。何か使えるものはないのかとクラウドが視線を動かそうとしたその時だった。
「やあああああ!!」
少女の声と共に無数の光弾がばら撒かれる。それはランボーグ達を次々と撃ち落としていく。その中には取り残した個体も何体かいるものの、
「このっ!」
ウィングがそこに現れ、ランボーグ達を次々と叩き落としていく。そしてプリズムとバタフライがスカイとクラウドの元へと駆け寄ってくる。
「プリズム!皆!」
「スカイ、クラウド、大丈夫!?」
「俺達は大丈夫」
鳥たちから騒ぎを聞きつけて急いで駆け付けてきてくれたのだろう。援軍の到着に2人は感謝しながら嬉しそうな表情を浮かべると、地に落ちたランボーグ達へとすぐ視線を移す。ランボーグ達は地面に落とされるもすぐに立ち上がると、
「ランボーグ!!」
再び木の葉たちが舞い上がり、空中を支配する。それを見たウィングはランボーグ達を厄介そうに見る。
「こいつら、また……」
「ええ、またやるの!?」
「全く……落ち葉の掃除は結構大変なのに!」
プリズムからも困惑した声が漏れる。先ほどは不意打ちだったためうまく叩き落せたが、今度はそうもいかないだろう。ランボーグ達は風に乗りながらこちらを攻撃してきており、一体一体の攻撃を捌き、受け止めても反撃する前に再び風に乗ってその場を離れてしまう。
「……いや、葉っぱなら手はあるな……バタフライ、ミックスパレットを!」
「!」
ランボーグを避けながらクラウドが両手を上げると、空に白雲が広がっていく。それを見たバタフライはクラウドが何をしようとしているのかに気付き、ミックスパレットを取り出す。
「温度の力、サゲてこ!」
クラウドの生み出した雲にバタフライが水色の光を注ぎ込んでいく。雲が鮮やかな水色に変わっていくと、徐々に雨が降り始める。
「雨……?」
クラウドとバタフライがこの雨を使って何をしようとしているのか。スカイは最初疑問に思っていたが、その変化はすぐにランボーグに起こる。
「ら、ララ!?」
雨に打たれたランボーグ達が次々と空を舞えなくなり、地面に落ちていく。それを見た枯れ木のランボーグも驚いたように目を見開き、風を巻き起こしていた腕を止める。
「そうか、雨で体が重くなったから!」
「そういうこと!」
プリズムの言葉にサムズアップするバタフライ。ランボーグ達は空を飛べないだけでなく、水を含んだ体が予想以上に重いのか動くのにも一苦労といった様子だった。そういえば先ほど吹き飛ばしたときにやたら手応えが軽かったと思い出したクラウドは彼らの性質に納得したように両腕を前に突き出す。
「ひろがるクラウドプロテクト!!」
クラウドプロテクトが展開され、地面に落ちていくランボーグ達を次々と吸い込んでいく。そして全てのランボーグをクラウドが集めきると、
「今です!」
「うん!」
スカイとプリズムが待ってましたと言わんばかりにスカイミラージュを取り出す。
「「プリキュア!アップ・ドラフト・シャイニング!!」」
「「「「スミキッター……」」」」
白い積乱雲から円盤へとランボーグ達がどんどん吸い込まれていく。浄化されたランボーグ達がただの緑色の葉っぱとなっていき、円盤の中から噴き出していく。それを見た枯れ木のランボーグは自分の兵隊たちをまとめて処理されたのを見て驚愕する。
「ラ、ランボーグ!?」
「後はお前だけだ!ひろがるウィングアタック!!」
ランボーグ達の親玉が何かをする前に、ウィングが行動を起こす。ウィングアタックの突進がランボーグの腕とぶつかると、こちらの方は耐久力があまりないのか腕が砕け散ってしまう。
「ラァアアン!?」
ウィングアタックによって体の右半分を吹き飛ばされるランボーグ。しかし、それだけでは終わらない。体が脆すぎたせいで仕留めきれなかったランボーグに、バタフライの攻撃が迫っていた。
「ひろがるバタフライプレス!!」
「スミキッター……」
バタフライプレスによって残る半身を圧し潰されたランボーグが浄化されていく。浄化されたランボーグが元の大樹へと戻っていったのを確認すると、周囲を見渡していく。
「……このランボーグ、一体誰が召喚を……」
「わからない。俺達も気付いたらランボーグが現れていたんだ……」
しかし、周囲に人の影はない。ウィングが空に上がって周辺一帯を見るも、それらしい影は見えない。既にランボーグがやられてしまった後のため、いなくなってしまったのかもしれないようだ。
「やっぱり見つかりませんね……既に逃げられてしまったのかも」
「新しいアンダーグ帝国の刺客がもう来るなんて……」
既に敵がいなくなってしまったことを確認し、変身を解く5人。新たなアンダーグ帝国からの敵が出てくることは予想していたが、スカイランドから戻って間もないというのにもう仕掛けてくるとは。しかも今回は、以前までのように最初の戦闘の時から敵の正体がわかっていたわけではない。その正体がわかるまで、より強く警戒する必要があるだろう。
「鳥たちにも調べてもらいましょう。そうすれば姿もすぐにわかりますよ」
「うん、お願いするよ」
ヤクモの言葉にツバサも頷く。どれくらい時間がかかるかはわからないが、鳥たちの目は意外と広い。これまでも、ランボーグの事をすぐに報告してきてくれたりといった実績もあるため、今回も然程時間をかけずに情報を持ってきてくれるだろうとツバサとヤクモも考えていた。
「……それで、これからどうするの?」
「え?どうするって……」
「2人でお出かけしてたのに、皆で一緒になっちゃったし……」
ましろの言葉に首を傾げるソラ。しかしましろの言葉でましろが言いたいことを理解する。それについて少し考えていたが、
「皆揃ってますし、ここからは皆でお出かけしましょう!」
「ありゃ、いいの?ソラちゃん」
「はい!ヤクモさんと一緒に凄く楽しめましたから!ね?」
「うん、俺も凄く楽しかったよ」
ニコニコと笑いながらヤクモに問いかけるソラ。ソラの楽しそうな様子を見て、ヤクモも満足げに頷くと、その反応を見てソラももっと嬉しそうに笑う。
「そっかそっか……それじゃ、カフェでゆっくりしちゃおうっか?」
「確かに涼しいところに行きたいかも……」
あげはの言葉には誰も文句はない。戦いを終えた5人はその足でカフェに行き、午後の時間を過ごすことにするのだった。
★
ソラシド市に夜が訪れていた。昼間よりは多少涼しく過ごしやすくなっている中、明かりのついていない部屋の中に人の気配があった。
「凄かったなぁ、プリキュア」
そこはソラシド市にあるマンションの中にある空き家。その中で少女は我が物顔で寝そべっていた。今日行われたランボーグとプリキュアの戦いを思い出しながら、プリキュアの強さに面白そうな声を漏らしていた。当然この空き家は彼女のものでもない。どうせこの世界でやることが終わったらアンダーグ帝国に戻るのだからと、本人の中では仮宿のような認識なのだろうが。
「戦いたいって言うだけの事はあるし、そういえばカバトンとバッタモンダーも負けたんだっけ……」
元々自分とは縁がないと思ってたが、プリキュアは自分の出番が来る前に2人の刺客と戦っていたことを思い出す。自分のランボーグも今はそれなりに戦える存在になっていたという自負があったが、それでもプリキュアに攻略されてしまっていたようだ。次に仕掛けるときはそこも改善点になるだろう。だが、エルを連れていくことももちろんだが、それだけでなくプリキュアにも勝ちたい。今日の戦いを見てそう思い始めていた。
「もしプリキュアに勝てたら私も皆認めてくれる……あの人も私の事を……」
少し寂しそうに呟く少女。そんな彼女の元に、数体の小さな小人のようなランボーグが近づいてくる。その体からは糸が伸びており、少女の体と繋がっている。そのランボーグ達の手には果物などの食べ物が握られており、少女はそれを手に取ると口に運んでいく。
「……でも、本当に倒しちゃっていいのかな」
お腹を膨らませながら、少女はふと、そんなことを考えていた。彼女が思い出していたのは、今日自分を助けてくれた2人の少年と少女。その中でも特に少年の方。名前は結局聞けていなかったが、戦いの中ではキュアクラウドと呼ばれていた。彼にはアンダーグエナジーが流れている。そのことに少女は気付いていた。
「アンダーグエナジーがあるのにプリキュア、か……ふふ」
クラウドの姿を思い出すと、ついつい笑みが零れる。おそらく向こうは今日の反応からして覚えていないようだが、少女の方はずっと覚えていたのだ。暗い闇の中で一つの光が差し込んだような気分だった。
「……やっぱり、私の事を見てくれたんだ……そうだ!」
起き上がると、良いことを思い付いたと言わんばかりに両手を合わせる。そして少女は、自分とランボーグしかいない部屋で、満面の笑みを浮かべるとランボーグへと語る。
「彼にはプリキュアを止めて、私と一緒にアンダーグ帝国に来てもらいましょう!」
「?」
ランボーグ達も少女の言葉の意味がわからないのか首を傾げてしまう。しかし少女は嬉しそうに夜空を見上げながら、ランボーグ達に伸びていた糸を戻していく。それと共にランボーグ達の体からアンダーグエナジーが抜けていき、素体となっていたであろう枝や小石などがその場に落ちていくのだった。
「ふふ、次に会うのが楽しみ」