曇り空の夜のプリキュア   作:popoponpon

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第69話 浸食

 

「ねえねえ、聞いた?」

「あ、聞いた聞いた、怖いよねえ」

 

朝の教室。普段と変わらない日常が広がっているはずの空間だったが、この日はある話題で生徒達は持ちきりだった。

 

「なんか肝試しにぴったりじゃね?」

「今度行ってみね?」

「面白そうだな、夏休みにでも予定建てようぜ」

 

面白おかしくその噂についてワイワイ話している生徒達。そんな中、教室の扉が開いてヤクモとソラとましろの3人が登校してくる。教室に入ってきた3人を一瞬クラスメイト達は見るが、ああこの3人かと気付くとまた自分たちの話に戻っていく。

 

「よっ、ヤクモ!ヒーローガール!」

「おはよう、あさひ」

「おはようございます!」

 

席に座ったヤクモの元にあさひ達が近づいてくる。あさひ達に軽く挨拶してヤクモがクラスを見渡す。他人の話を盗み聞きするつもりはないのだが、クラスで盛り上がってる話というのもあり、何もしてなくても耳に入ってくる。しかし途中から聞いているということもあり、あまり理解できていなかったので、

 

「あさひ、なんか盛り上がってるけど何かあったの?」

「あ、そうそう!実はさ……妖怪が出たんだよ!」

「よ、妖怪?」

 

あさひに何の話かと問いかける。そしてあさひの口から飛び出してきたのは、まさかの妖怪騒ぎ。妖怪というワードを聞いたソラが一瞬びくっとしたようにヤクモには見えたが、よくある怪談話だろうと気にしなかったのだが。

 

「妖怪って、なんでまた急に?」

「数日前から、変な生き物がものを運んでる姿が見えるんだって」

「変な生き物?それって……」

「プリキュアが戦ってるあの……ランボーグって奴じゃないの?」

 

あさひの言葉にるいとつむぎも言う。ランボーグという言葉にソラ達も反応するが、それにあさひ達は気付かないようだ。ヤクモはその話を聞いて考え込んでいたが、ヤクモの脳裏に数日前に遭遇したランボーグが思い出される。あのランボーグにも糸のようなものがついていた。もし今回のランボーグも同じ人物が召喚しているのだとしたら、

 

「「……」」

 

ソラも似たことを考えていたのだろう。ヤクモとソラは互いに顔を見合わせると無言で頷くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休み、屋上に上がったヤクモ達は、朝、クラスで聞いた噂について話していた。

 

「あの妖怪騒ぎって……やっぱりランボーグなのかな?」

「糸っていうのが引っかかるね……」

 

やはり、ヤクモとソラが引っかかっているのは糸の存在だった。ましろも、妖怪とは言われているがランボーグではないのかと考えているようだ。

 

「……もし本当にランボーグだとしたら、何が狙いなんだろう?」

「わかりません……でも、放ってはおけません!……妖怪なら……ど、どうしましょう」

 

相手がランボーグなら遠慮なく戦うだけだ。しかし、もしこれがクラスで噂されているように妖怪だとしたら。思わず不安そうな表情を浮かべてしまうソラ。その様子を見たヤクモは、朝もソラが妖怪というワードを聞いた時に反応していたのを思い出す。もしかしたらこういうオカルト話が彼女は苦手なのかもしれない。

 

「ま、まあ本当に妖怪だとしたら……とりあえずその時に何とかすることにしようか」

「そ、そうですね!」

 

思わずテンパりながら答えるソラ。その様子を苦笑しながらヤクモとましろは見ていたが、ましろはそれがランボーグかどうかわからないのかが気になり、ヤクモに問いかける。

 

「それがランボーグなら……アンダーグエナジーとかわからないのかな?」

「アンダーグエナジーの量が小さすぎてわからないのかな……場所も離れてるみたいだし」

 

普段戦うようなランボーグなら出現すればソラシド市内であれば大体わかるとヤクモは考えていた。とはいえ、基本的にランボーグはプリキュアの近くで召喚されることも多いため、索敵範囲についてはあまり強くは言えないのだが。

 

「実際にそこに行ってみないとかな……多分妖怪じゃないよ、この前の事もあるし」

「そ、そうですよね、一体誰がランボーグを出しているのか、確かめなければ!」

 

とにもかくにも現場に行ってみなければわからないだろう。そう3人は結論付けると、放課後の予定について話を始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして放課後。ヤクモ達は噂が立っていた問題の場所を訪れていた。そこは町中であり、近くにコンビニやらなんやらが建てられているようなどこにでもありそうな街の風景だった。そこに先に来ていた3人にツバサも合流したが、あげはは少々時間がかかるということで先にエルを抱えて来たツバサと5人で噂について調べることにしていた。

 

「鳥たちにも調べてもらったんですが……どうやら日中はその問題のランボーグが出てはいないようですね」

 

昼休みに一度家に電話し、ましろがツバサに説明していたようで、その話を聞いたツバサが鳥たちに頼んで先に調べてもらっていたようだ。ツバサは鳥たちからその事を教えてもらい、3人に鳥たちの話を共有する。

 

「……マンションか、あそこ」

「どうしました?」

 

考え始める4人だったが、そんな中ヤクモが近くの建物を見る。マンションであることに気付いたヤクモにソラが何か気になるのかと問いかけるのだが、

 

「いや……例の妖怪とかって、空いてる部屋に住み着いてるのかなって」

「空き部屋に住み着いてるってこと?近所の人からしたら誰もいない部屋から音や気配がするって怖いなぁ……」

「い、いやいやさすがにそんなことは……」

 

しきりに否定するソラ。こういう話にやはり弱いのか、もうこの話だけで怖いのか表情こそ平静を保っていたものの冷や汗を流しながらヤクモの傍に近づいていた。腕が触れるか触れないかの距離まで近づいていることにはましろも気付いていたが、一旦呑み込んでおくことにしたようだ。

 

「うーん……夜にならないと出てこないのか」

「ヤクモさん、何か感じ取れますか?」

「……うーん」

 

ツバサがヤクモに問いかける。それを聞いたヤクモはアンダーグエナジーを感じ取れないか気配を探り始める。しかし、成果は出てこなかったのか微妙そうな顔になる。

 

「駄目だね……全然そんな力は感じないよ。やっぱり昼間は動いていないのかな……」

「じゃあちゃんと無人なんですね……いやぁよかったよかった……」

「……える?」

 

ヤクモの方も空振りのようだ。こうして調べに来たのはいいが、手がかりゼロの状態ではどうしようかと考えていると。エルが何かの気配に気付いたのか、ある方向に振り向く。そんなエルの変化にツバサも気付いたのか、

 

「プリンセス?どうしました……?」

 

ツバサがエルの表情を覗き込む。その顔はぽかんと口を開いてある一点を見ており、エルが何に気付いたのかとツバサもそちらに視線を移すと、

 

「あら?」

「!あなたはこの前の……」

 

そこには数日前に会った少女がいた。その少女を見たソラがびっくりしたような表情を浮かべていたが、少女の方はヤクモを見つけると嬉しそうに笑いかける。

 

「また会えたわね」

「君は……どうしてここに?」

「ここら辺にいるから」

 

どうやら少女はこの辺に住んでいるようだ。それならこうして偶然会うのもあり得る話なのだろう。と、少女の視線が下に向けられる。そこにはエルが近づいてきていた。

 

「あら?あなたは?」

「エルだよ!」

「エル?そういう名前があるんだ」

「そうだよ!」

 

自己紹介したエルに笑いかける少女。少女に笑いかけられたエルも嬉しそうに顔を見上げる。その様子を見て、ツバサも少し驚いたような表情を浮かべる。

 

「プリンセス……?」

「エルちゃんが懐いてる……?」

 

相手は少なくともエルにとっては初対面のはずだ。だが、こうして見ると髪の色も同じなように見える。一見すると姉妹のようにすら見えてしまい、4人はその並びに一瞬驚いて瞬きしたり目を擦ったりして慌ててもう一度2人を見る。

 

「あなたはだれ?」

「私?私は……」

 

ふと、悲しそうに視線を得るから逸らす少女。どこか羨ましそうにエルの頭を撫でると、

 

「名前がないの。だからあなたには名乗れない……ごめんね」

「える……?」

 

少女が呟いた言葉に、エルは疑問そうに首を傾げてしまう。名前がないという発言が理解できなかったのだろう。いや、言葉の意味は理解できているのかもしれないが、どうしてそうなっているのかわからないと言った様子だろう。その発言が聞こえてきていたヤクモ達も困惑した表情を浮かべていた。だが、その表情はすぐに変わることになる。

 

「ランボーグ!!」

「「「「!!」」」」

 

4人の背後から聞き慣れてしまったランボーグの声が聞こえてくる。慌てて4人が振り向くと、そこにはランボーグが立っていた。ヤクモが視線を動かすと、近くの店に展示されていたマネキンが1体消えているのに気付く。どうやらこのランボーグの素体はそのマネキンだったようで、見れば巨大化させたマネキンにランボーグの目がついたような姿をしていた。

 

「ランボーグ!?」

 

いきなりのランボーグの出現に驚きながらも、ヤクモとソラが少女の方を見る。ここは危険だから速くここから逃げた方がいいといいと言おうとしたのだが、既に少女はいなくなっていた。どうやら、ランボーグを見て慌てて逃げ出してしまったようだ。だが、危険な所から逃げてくれたことはありがたい。少女がいなくなったからか、エルもゆりかごに乗って浮かび上がると、4人はミラージュペンを使い、プリキュアへと変身する。

 

「ウィング」

「はい!」

 

クラウドの声にウィングは一旦その場から離れ、近くにいた鳥たちに話しかけていた。ランボーグがいるということは、近くにランボーグを召喚した人物がいるはずだ。その人物を鳥たちに探してもらおうと考えたのだ。ウィングは鳥たちに頼むと、下で繰り広げられているランボーグとプリキュアの戦いを見下ろす。ランボーグを相手に3人は苦戦することはなく戦いを進めていた。

 

「はぁ!」

 

ランボーグの攻撃を防ぐクラウド。反撃に転じるスカイ。ランボーグに牽制や仲間の援護を行うプリズム。ランボーグの体には徐々にダメージが蓄積していったのか、膝をついてしまう。

 

「今なら!ヒーローガールプリズムショット!」

 

そのチャンスを逃さず、プリズムショットを放つプリズム。ランボーグの体が吹き飛んでいく。しかしランボーグはまだまだ戦えると言わんばかりに立ち上がると、

 

「ランボーグ!」

 

と果敢に拳を構える。素体がマネキンな影響なのか妙に軽快な動きでジャブやストレートを放ってくるランボーグの攻撃を両足を踏み込んで受け止めるクラウド。一発一発の威力はあるが、受け止められない威力ではない。それにクラウドが攻撃を受け止めれば、

 

「はあ!」

 

ここで空からウィングがランボーグへと攻撃を仕掛けてくる。地上に意識を向けていたランボーグはウィングの攻撃に全く気付いておらず、頭に思い切り攻撃を叩き込まれてしまい、

 

「ランボーグ!?」

「「「ウィング!」」」

 

そのまま前に倒れ込んでしまう。ウィングの的確な一撃に歓喜の声を上げる3人。勢いよく顔面を地面にぶつけられたランボーグが痛そうな声を上げる。

 

「ら……ランボーグ!!」

 

地に頭を埋め込んだ状態から飛び上がる。頭を引き抜きながら後ろに下がり、距離を取ったランボーグ。だが、ランボーグが跳んだ時に足の裏から糸のようなものが伸びているのをクラウドとスカイは目撃する。

 

「あれは!」

「あの糸だ!」

「「!!」」

 

2人の言葉にプリズムとウィングもランボーグから伸びている糸に気付く。直後、ランボーグへと糸を通してアンダーグエナジーが注がれていく。アンダーグエナジーを注がれたランボーグの全身にヒビが入っていくと、ランボーグの体が二回り大きいサイズへと変化していく。

 

「ランボーグが大きく……!?」

「ランボーグ!!」

 

ランボーグが再び拳を振り上げる。体が大きくなっただけではなく、威力と速度も跳ね上がっているようで、先ほどまでの攻撃に慣れ始めていた4人も一瞬反応が遅れてしまい、どうにか寸前でその拳を回避する。

 

「速い……それに威力も!?」

「少し厄介だな……それなら」

 

冷や汗がウィングの頬を流れる。今のランボーグの攻撃を防ぐべく、クラウドが雲をランボーグの両手へと投げつける。雲を拳で吹き飛ばそうとしたランボーグだったが、その雲が両こぶしを包み込んでしまい、ランボーグの攻撃の威力が軽減してしまう。攻撃の威力を下げられたランボーグは、最初は気にしないと言わんばかりに拳を放つも、スカイは雲によって威力が軽減した拳を軽く受け止める。そのまま返しの一撃でランボーグが吹き飛ばされてしまう。しかし、そこからの復帰力も上昇していたのか空中で一回転するとそのまま姿勢を整える。

 

「煌け!」

 

しかし、ランボーグの目の前にプリズムの放った光弾が迫り、閃光弾となって弾ける。それによって視界が潰され、ランボーグが驚きの声をあげる。

 

「ランボーグ!?」

 

突然視界を潰されたランボーグが困惑した様子を見せる。まず視界を回復してから動こうとでもしたのだろうか、その場で待ちの姿勢を取るように拳を構える。

 

「今だ!」

 

クラウドが手を突き出す。そこには普段とは違う先端が膨れている手袋のようなものが付けられていた。そこからチェーンのようなものが生き物のように伸びてマネキン型のランボーグを縛り付ける。

 

「ら、ララ!?」

 

ランボーグを縛り付けたクラウドはそれを引っ張ってランボーグを転ばせると、そのままさらに拘束を強めていく。クラウドの意思に従って動くそのチェーンが伸びている手袋の甲に2つの目が開かれ、クラウドをちらと見る。クラウドが使用しているキーホルダーについているチェーンの方をランボーグに変えたのだ。こちらは攻撃能力こそないものの、このように対象を縛り付けることには便利だ。

 

「プリズム!」

「うん!」

「「プリキュア!アップ・ドラフト・シャイニング!!」」

「スミキッター……」

 

そのチャンスを逃さないと言わんばかりにスカイとプリズムがランボーグを浄化する。ランボーグが元のマネキンへと戻っていき、周囲の破壊の痕も修復される。しかし、戦いはまだ終わっていない。ランボーグの召喚者を見逃さないと言わんばかりにアップ・ドラフト・シャイニングの発動を確認した瞬間からウィングが空に上がっていた。

 

「どこにランボーグを召喚した奴が……!」

「私達も!」

「はい!」

「うん!」

 

スカイ達もその場で散開し、ランボーグの召喚者を探す。それぞれ分かれて探している中、クラウドは突然アンダーグエナジーの気配を感じ取る。

 

「!そこか!?」

 

クラウドが裏路地へと入り込む。そこには誰もいなかったが、確かにアンダーグエナジーの気配が満ちていた。ここで転移でもしたのだろうか。クラウドが中に踏み込むと、足元からアンダーグエナジーの糸が伸び、クラウドの体内へと絡みついていく。

 

「っ!?」

「捕まえた。キュアクラウド……ヤクモって呼ばれていたよね」

 

クラウドの身動きが封じられると共に、壁の一部から糸がほつれていき、その中から少女が現れる。どうやらアンダーグエナジーの糸を壁と同じ模様に擬態して隠れていたようだ。この場全体にアンダーグエナジーが満ちていたせいでクラウドも少女の位置を割り出すことができなかったようだ。

 

「……お前は……お前がランボーグを」

「ばれてた?」

「2回とも遭遇した後にランボーグが出れば嫌でも考える」

「そっか」

 

どこか嬉しそうに返答する少女。クラウドは彼女が一切の敵意を向けてきていないことに違和感を感じていた。そういえば彼女は今日会った時にエルを攫おうという素振りを一切見せていなかったし、それどころか仲良くしようとすらしていた。そしてプリキュアである自分達にも敵意を向けていない。一体何が狙いだというのか。それはわからないが、

 

「敵意がなくて戦うつもりがないなら投降するんだ。そうすれば俺達も戦いはしない」

 

この敵意のなさを利用できるなら、それに越したことはない。そう考え、少女に降参するように言う。少女はきょとんとした表情になると、

 

「そんなことしないわ。だって私、プリキュアに勝たないと認めてもらえないもの」

「……?」

 

当然のようにそう答える。その回答にクラウドも引っかかるものを感じながらも、両腕に力を込めていく。

 

「でも、あなたは一緒にアンダーグ帝国に行きましょう?キュアクラウド」

「断る、君と一緒にアンダーグ帝国に行くことは絶対にしない」

 

少女のまさかのスカウト。クラウドが持つアンダーグエナジーに目を付けたのだろうか、しかしクラウドがその提案を呑むことはあり得ない。クラウドはプリキュアであり、エルを他の皆と共に守る戦士なのだ。アンダーグ帝国に寝返ることなど絶対にしないしあり得ない。そう言わんばかりに拒否すると、糸に含まれているアンダーグエナジーを取り込み、脆くすることで引き千切ろうとする。

 

「あら」

 

少女も糸のアンダーグエナジーを吸収されていることに気付いたのだろう。糸に注ぎ込むアンダーグエナジーを絶やさないようにして糸の強度を維持、さらに糸を増やしていき、クラウドの全身を包み込んでいく。

 

「っ!?」

「プリキュアの力なのかな?でも、もっといっぱい注ぎ込んじゃえば問題ないよね」

 

アンダーグエナジーを注がれても時間をかけて吸収してしまえば問題ない。そうクラウドが思ったその時だった。

 

「っ!?」

 

何かが突き刺さる嫌な感覚がした。それが、糸が耳の穴から頭の中へと入ってきた感覚だとクラウドが気付いた次の瞬間、

 

「ぐああああああああ!?」

 

クラウドの絶叫が響き渡る。それは、散開していた他の3人にすら聞こえるほどの絶叫であり、3人とも慌ててクラウドの声が聞こえた方角を向く。

 

「ヤクモさん!!」

 

クラウドの身に何かが起こったのだ。スカイが全力で走り出し、声が聞こえてきた路地裏へと飛び込む。そこには、繭のように折り重なった糸の塊と、その隣に立つ少女がいた。

 

「あなたは……!?」

「あら、他のプリキュアも来ちゃった」

「クラウドは……ヤクモさんをどこにやったんですか!?」

 

その少女がランボーグを召喚し、クラウドに危害を加えた存在だとすぐに気付いたスカイが、怒りを滲ませながら問う。しかし少女は自分が作った繭に目を向ける。

 

「大丈夫、もうすぐ姿が見えるよ」

「何を言って……!?」

 

次の瞬間、繭が解けていき、その中から1人の少年が姿を現す。それはキュアクラウドの服装に見えたが、微妙に違う。色合いは完全に黒を基調としたものに変わっており、どこか気品を感じさせる高貴な服装となっている。背中からは黒い左翼だけが生えている。また、紫色の髪は暗い赤色へと染まっており、ゆっくりと開かれた瞳は、金色に染まっていた。

 

「……ヤクモ、さん……!?」

「ねえ、ヤクモ。あなたはプリキュア?それとも……」

「……俺は……」

 

変わり果てた姿となったクラウドだったが、その声はスカイも良く知るクラウドのものだった。だが、姿を変えたクラウドは以前とは異なる低い声音で、静かに宣言する。

 

「アンダーグ帝国のために戦う、新たな戦士だ」

「……え……?」

 

その言葉を聞いたスカイは、信じられないものを見るかのように、目の前のクラウドを見ることしかできないのだった。

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