「……!」
「どうしました?」
ショッピングモールから出たところでヤクモが突然立ち止まる。いつもの胸騒ぎを感じ取ったのだ。2人が何かあったのかとヤクモを見ると、ヤクモは意識を集中させてその気配のある所を探っていた。とはいえ、どうも距離がありすぎるせいか方角しかわからない。
「もしかしたら……ランボーグが出たのかも」
「え!?」
「ど、どこに!?」
ヤクモの言葉に2人が警戒して周囲を見渡す。しかしヤクモはここにはまだいないと言い、気配を感じた方角を指差す。
「あっちの方から……だけど、本当にランボーグならなんでそんな遠くにいるんだ?今までならカバトンが俺達を見つけてから召喚していたと思うんだけど……」
「何か、企んでいるのかも……」
ただの勘違いであるならそれがいい。しかし、もしそれがカバトンの仕業だとすれば何かを企んでいるのは間違いない。とにかくその場所に向かってみるべきだろう。しかし問題は、
「そんな遠いところ、どうやって行こうっか?」
移動手段である。瞬間移動といった都合のいい技なんて使えるわけがない。
「こういう時だけはカバトンの方が上手か……俺もワープできるようになれたらいいんだけど」
思い出すのはランボーグを倒されたカバトンが撤退するときに使用するワープ技だ。あれをこちらも使えれば戦闘でも移動でも大きく役に立つとは思うが、無い物は仕方ない。ソラは少し考えていたが、これしかないと自信満々に策を打ち出す。
「それは……走ります!」
「変身して走って……まあそれしかないか」
思ったより直球で捻りがないが、この状況ではそれぐらい正直な策が一番手っ取り早いだろう。そう思いながらヤクモは首元にかけていたミラージュペンを外して2人と共に物陰に隠れ、人目についてないことを確認するとペンを構えるのだった。
★
「もぐもぐ……これで……もぐもぐ……今度こそプリンセスを……もぐもぐ……そんでついでに邪魔してくるプリキュアも……もぐもぐ……倒せるのねん」
場所は打って変わって。カバトンがいたのは工事現場だった。カバトンの目の前にはショベルカーで作られた両手がバケットになっている黄色いランボーグが立っており、その目の前で痩せこけていたカバトンは次から次へと食べ物を胃袋に流し込んでいた。
「もぐもぐ……ぷはー!くくく、ちまちま日雇いなんてやってたのも全部このため……うまいもんをありったけ食べるため……!」
豪快な食べっぷりで次々と食べ物を平らげていくカバトン。途端に痩せこけていた体は段々元に戻っていき、十分なカロリーとエネルギーを補給すると、一際大きなげっぷの音を鳴らしながら、次なる重機としてブルドーザーを見据える。
「さぁ次はこいつなのねん!カモン!アンダーグエナジー!!」
「ランボーグ!!」
黄色いブルドーザーがランボーグ化され、もう一体の黄色く巨大なランボーグが出現する。ショベルカーを素体としたランボーグと異なるのはこちらは右腕に排土板、左腕が鋭い爪になっていることだ。
「くくく……俺様ってやっぱ天才、そして一気に2体もTUEEEEランボーグを作れる俺様はもっとTUEEEEE!!」
得意げにどや顔をしながらも次の食べ物を喰らい始めるカバトン。既に2体のランボーグを召喚しているというのにまだまだ足りないと言わんばかりに食事を進めていく背景には、カバトンの考案した必勝の策があった。
「これまで負け続けてきたのはランボーグが1体だけだったからなのねん!だったら強いランボーグを何体も作っちまえば解決、そいつらが全員プリキュア抑えちまえばその間にプリンセスだって奪えるのねん!」
それはとにかく数で攻めるということ。頭数だけなら過去に似たようなことをやったこともあるが、あれは本体となるランボーグから分離した弱い個体を用いたやり方。しかし今回は新たにランボーグを生み出すことで強さとしても申し分ない個体を並べることが可能となり、勝率は大きく上がる。既に2体揃えてる時点でこれまでと比べて強固な盤面といえるが、ここまで来たらより完璧な状態で徹底的に勝ちにいきたい。そのために、
「プリキュアは3人、それならこっちも3体のランボーグを作り出すのねん!さぁて次はこの特盛カルボナーラとかいうやーつを……」
「ああ!?」
「ぶふ!?」
次の食品に手を出そうとした、まさにその時だった。聞き覚えのある女の子の声が聞こえ、カバトンが慌てて顔を上げる。工事現場の向かいに建っている建物の屋上から声が聞こえてきたため、そこを見ると、そこにはスカイ、プリズム、クラウドの3人が立っており、スカイが驚いた表情で眼下の2体のランボーグを見ていた。
「げげ、プリキュア!なんでここがわかったのねん!?」
「悪いな、どうもランボーグの気配ってのが俺はわかるらしくてな」
「な、なんだとぉ……!?」
クラウドの言葉に最初にランボーグを召喚した時点で自分の策がほぼ破綻しかけていたことを知らされるカバトン。これでは戦力を整えるまでの時間がうまく稼げない。とはいえ、
「ふ、ふん!もうちょっとランボーグを呼び出すつもりだったがこうなりゃ仕方ないのねん!それに、2体もいりゃあ本来は十分!今日こそやっちまえランボーグ共!」
「「ランボーグ!!」」
カバトンの言葉に勇ましく雄たけびを上げるランボーグ達。プリキュア達がランボーグと戦うべく目の前に降り立ち、それぞれ構えると、2体のランボーグが同時に突進し、バケットと排土板をそれぞれ振り上げて叩きつけてくる。
「ふっ……!」
それをスカイとクラウドがそれぞれ受け止めていく。お互いの腕がそれぞれ震えていくが、その中でスカイの頬を冷や汗が流れる。
「こ、このランボーグ……最初に戦った時よりも強い……!」
「ふん、あの時とはアンダーグエナジーの量が違うんだよ量が!」
どうやらカバトンは以前にも同じショベルカーを使ったランボーグを生み出していたようだ。しかし、スカイの台詞とスカイのパワーに真正面から拮抗してみせているところを見るにその能力は以前とは比べ物にならないらしい。
「はあああ!」
2人がランボーグを抑えているところにプリズムが複数の光弾を発射してランボーグを攻撃する。光弾の命中によってよろめいたランボーグの元からスカイ達が一旦下がるも、ランボーグはというと体勢を少し崩したという程度で大したダメージにはまだ繋がっていない。
「突っ込め!」
「ランボーグ!」
ショベルカー型が突っ込んでくる。今度は先ほどのように力では対抗せず、スカイとプリズムは上へと飛び、クラウドが横っ飛びでランボーグの攻撃を回避する。しかし、
「狙い撃て!」
「!」
控えていたブルドーザー型のランボーグが爪を地面に食い込ませ、巨大な土の弾丸を空中にいるスカイとプリズムへと放つ。
「しまった!?」
「だったら!」
冷静にプリズムが土に光弾を当てて相殺する。しかし、意識がブルドーザー型に持っていかれている間にショベルカー型が2人を狙い撃とうと膝を曲げる。
「やめろ!」
その様子に地上に残っていたクラウドが気付き、咄嗟にショベルカー型に足払いをかけて転倒させる。
「へっ」
「!笑って……クラウド、危ない!」
「!」
だが足払いをかけて無防備なクラウドの元にブルドーザー型が迫っており、排土板を勢いよく薙ぎ払い、クラウドを吹き飛ばしてしまう。
「「クラウド!!」」
「ランボーグ!!」
2人の意識がクラウドに割かれた一瞬。ショベルカー型ランボーグが両手を2人に向ける。直後、その両手からワイヤーに接続されたバケットが2人に向かって発射される。
「え!?」
最初に戦った時は遠距離攻撃を持ち合わせてはいなかった。その時の印象が先行しているせいか、スカイもプリズムも、今のこのランボーグが遠距離攻撃を有していることに気付くことができず、射出されたバケットに直撃してしまう。
「「きゃああああ!!」」
強烈な一撃を喰らって折り重なるように地面に落ちる2人。既に吹き飛ばしたクラウドは後回しにし、それぞれバケットと排土板を2人に向けて突進してくる。
「うぅ……!」
どうにか立ち上がろうとするも、先ほどの攻撃と勢いよく地面に叩きつけられたダメージのせいか動きが鈍く、2人が立ち上がるより前にランボーグが攻撃の体勢に入ってしまう。
「しまっ……」
しかし、ランボーグと2人の間にクラウドが弾かれたように割って入る。そして一点に向かって同時に叩きつけられた強烈な一撃を、クラウドは両腕を交差させてガードする。
「ぐぅううう!?」
「クラウド!!」
クラウドの苦悶の声にスカイの悲痛な叫びが上がる。先ほど反対側に吹き飛ばされたはずのクラウドがどうやってと、プリズムが視線だけ動かすと、クラウドが叩きつけられ凹んだであろう奥の壁には雲が浮いているのが見える。どうやら、クラウドプロテクトを発動し、それをトランポリンのように用いてこっちまで飛んできたようである。
「「ラン……ボーグ!!」」
2体のランボーグのパワーを前にクラウドが耐えきれるわけもなく、勢いよく叩きつけられるクラウド。地面がひび割れる程の衝撃が発生し、一歩後ろに下がったショベルカー型ランボーグがバケットを地に倒れたクラウドへと発射、そのまま他の2人を巻き込んで壁へと叩きつけていく。
「ぐあっ!」
「「きゃああああ!!」」
「ぎゃーははは!俺様本当にTUEEEEE!!これで、プリキュアも最後なのねん!!」
カバトンの勝利を確信した高笑いを聞きながら、壁の隙間の中で自分の体を確認するクラウド。コスチュームは土に汚れており、顔などにも若干の傷跡が見えているが、まだまだ戦闘不能というわけではない。自分の体のチェックを終えると、クラウドは今の攻撃に巻き込んでしまったスカイとプリズムを確認する。
「2人とも、大丈夫?」
「な、なんとか……」
「は、はい……クラウドは大丈夫なんですか?」
「うん、今のところはね」
3人をまとめて叩きつけた衝撃で崩れ落ちた壁。それによって発生した土煙のおかげで今はまだこちらの姿はわかっていない。作戦会議をするなら今しかない。しかし、あの2体のランボーグをどう攻略するか。
「中々厄介だなあの2体……ちゃんと連携も取ってくるし、普通に強い」
「はい……それでも、アップ・ドラフト・シャイニングなら……」
勝ち筋はある。スカイとプリズムのアップ・ドラフト・シャイニング。片方だけでも仕留めることができれば一気に戦況は傾く。2体を同時に巻き込めればそれがベストだが、もし片方しか巻き込めなかった場合。そうなればもう片方は自由にさせてしまうことになるし、技の発動中はスカイとプリズムは無防備に近い。確実に仕留められるタイミングになるまでは迂闊に使うことができない。
「……それなら、俺が隙を作るよ」
「き、危険ですよ!」
「俺だけが出ていけばカバトンも多分、2人はやられたと思うはず」
「だけど!」
となれば、そのチャンスを作らなければならない。それをやるための危険な橋を渡る役を担う人が必要だ。そしてそれをやるのに一番適しているのは、3人の中だとクラウドだった。それは、2人もわかっていることだった。しかし、頭でわかっていることと心がそれを認めて良いかどうかは別の問題。
「クラウドだけそんな危険なこと、やらせるわけには……!」
「俺じゃランボーグは倒せないんだ」
そう言いながら2人に振り向き、クラウドは笑いかける。それは、2人の事を心の底から信頼しているから出てくる表情だった。
「あ……」
「だから……」
その表情を見て、何かを理解したようにぎゅっと自分の拳を握り、立ち上がったスカイはクラウドの隣まで歩く。
「私も一緒にやります」
「スカイ」
「一緒にやりたいんです。駄目ですか?」
「……わかった。やろう」
「はい!」
スカイと共に時間を稼ぐ。その場合どうすればいいかを一瞬だけ考え、クラウドはそれを承諾する。そしてクラウドは、プリズムに指示を出し、それで彼女も納得したのを確認し、スカイと共に土煙を飛びだしてランボーグの前に立つ。
「あん?まーだ立てたのねん?ま、1人はもう駄目みたいだが……となりゃ、俺様の勝ちは決まったようなものなのねん!さぁ終わりにしちまえランボーグ!」
カバトンはどうやら出てこないプリズムがもう戦えないと判断したようで、勝利は揺るがないものになったと宣言する。確かにカバトンにとって、今のランボーグを唯一浄化し得る技であるアップ・ドラフト・シャイニングを封じたのだから。
「「ランボーグ!!」」
2体のランボーグがスカイとクラウドへ怒涛の連続攻撃を仕掛ける。しかし、クラウドとスカイはそれらの攻撃を捌き、回避し、時に受け止めながら立ち回っていく。当然これだけではダメージにはならないし、時間稼ぎにしかならないだろう。と、
「「!」」
移動していた2人が背中合わせになる。互いの目の前には自分たちを挟み撃ちにしたランボーグが。そしてランボーグ達が同時にそれぞれの腕を振り上げて叩きつけようとした瞬間。
「スカイ!」
「はい!」
2人で同時にジャンプ。同時に振り下ろされた一撃はお互いの腕に攻撃をぶつけ合う結果となり、その反動でランボーグが互いによろけ合うと、そこにスカイとクラウドが同時に飛び蹴りを浴びせる。
「「ランボーグ!?」」
それぞれ逆方向へと飛んで行ったランボーグ。そのうち片方に向かってスカイが走り出す。
「ヒーローガールスカイパンチ!」
「ランッボーグ!!」
慌てて体勢を整え、真正面からスカイのキメ技とぶつかり合うランボーグ。威力は互いに互角。しかし、そんなスカイを狙い、吹き飛ばされた状態から起き上がろうとしながらブルドーザー型ランボーグが爪を地面に突き立てようとする。
「これを待ってたよ」
「ランボーグ!?」
だが、ランボーグがその行動を起こすことはできなかった。何故なら、既にクラウドの両手には巨大な雲が生み出されていたからだ。
「ひろがるクラウドプロテクト!!」
クラウドの両手から生み出された白雲がランボーグを閉じ込める。ランボーグは自分を閉じ込めている雲の檻を無理やり破ろうと両手を前方へと突き出すも、ガリガリガリ!と削れ合う音と共にランボーグが弾かれてしまう。ランボーグが見れば、クラウドプロテクトは高速で回転しており、その外ではクラウドが両手を回転させてクラウドプロテクトが高速回転するように動かしていた。
「さぁ、少しは厄介じゃないか?」
「何やってるのねん!そんな弱ぇ技さっさと……」
「ヒーローガールプリズムショット!!」
激を飛ばすカバトンの耳に倒れたと思い込んでいたプリズムの声が響く。まさかとカバトンが振り向くと、スカイを抑えていたランボーグがプリズムのキメ技によって吹き飛ぶ姿があった。
「げげ!?なんで動けるのねん!?」
「最初っから動けてたよ!」
「今だ、スカイ、プリズム!」
内部からクラウドプロテクトを破ろうと必死に腕を叩きつけ、甲高い切削音が鳴り響くクラウドプロテクトを維持しながら、クラウドが声を上げる。
「これが私とクラウドが一緒に掴んだチャンスです!」
「決めるよ、スカイ!」
「はい!」
スカイとプリズムがスカイトーンを取り出し、プリズムショットによって吹き飛んだランボーグに狙いを定める。
「「プリキュア!アップ・ドラフト・シャイニング!!」」
「スミキッター……」
遂に発動された浄化技によって、倒れていたランボーグが吸い込まれ、浄化される。アンダーグエナジーを失い、素体となっていたショベルカーが地面に残されると、スカイとプリズムはクラウドの方を見る。
「クラウド!」
「もう1体を!」
「ああ!」
全身に力を入れ、クラウドプロテクトの上部をアップ・ドラフト・シャイニングへと向ける。そして上部を開くと、クラウドプロテクトの中からランボーグがアップ・ドラフト・シャイニングの方へと吸い込まれていく。
「ラッ、ランボォオオオグ!?」
空中でもがくも、アップ・ドラフト・シャイニングの吸引力には勝てず、そのまま2体目も吸い込まれて浄化される。
「スミキッター……」
そして、クラウドたちを苦しめていた2体のランボーグは完全に浄化され、先ほどまで勝利を確信していたカバトンは目に見えて狼狽え始める。
「くっそぉ覚えてやがれ!!次こそは絶対にぶっ倒してやるのねん!!カバトントン!!」
狼狽えながらも撤退を選択し、消えていくカバトン。戦いが終わり、元の工事現場に戻っていくのを見ながら、3人のプリキュアも変身を解除するため、この場を離れるのだった。
★
「じゃあ、俺はここで」
「うん、またね」
「さようならですヤクモさん!また明日会いましょう!」
夕日に照らされるソラシド市の街並み。帰路についていた3人だったが、家が違うヤクモはここで2人とは別れることになる。
「明日?まぁ何も予定ないから問題はないけど……」
「じゃあまた一緒にお出かけしましょう!」
「は、はは……」
明日の予定も埋まったなぁと苦笑しながらソラの誘いを受けるヤクモ。ヤクモの言葉を聞いたソラも嬉しそうにはしゃいでいる。
「あはは、じゃあ明日までに今日はゆっくり休んでおかないとね」
「うん、そうさせてもらうよ。それじゃあ、さようなら」
2人に手を振り、分かれ道に入っていく。ある程度ヤクモが歩いたところでましろも歩き出そうとするも、ずっとソラは立ち止まったままだと気付く。結局、ヤクモがさらに道を曲がり、その後ろ姿が見えなくなるまでソラはずっとヤクモを見ており、視界から完全に消えたのを確認して初めてましろと同じ方向を名残惜しそうに向く。
「もっと一緒にいろんなところに行けたらよかったね」
「はい、もう夕方なのが残念です。でも、明日もまた3人で一緒ですよ!」
一日の中では行ける場所も過ごせる時間も限られている。まして今日は途中でランボーグとの戦闘もあったのだ。仕方のないことだろう。だが楽しい時間はまだまだある。明日もそうなのだから。
「ヤクモさんも私やエルちゃんみたいにましろさんの家に来れればいいんですけど……」
「そ、それは無理じゃないかなぁ……」
「あはは、わかってますよ。ヤクモさんのお父さんとお母さんも心配するでしょうし……そういえばヤクモさんのご両親ってどんな人なんですか?」
ふと、話の流れでヤクモの両親の話題になる。ヤクモの事を知りたがっている今のソラからすれば、一度も会ったことのないヤクモの両親についても同様なのだろう。うーんとヤクモの両親を見た時の事を思い出すましろ。
「さぁ……私は会ったことないから……一応、授業参観の時にヤクモ君のお父さんが来てた時はあったけど……結構気さくな感じっぽい人、だったかなぁ……?」
「授業参観……?えっと、良い人なんですね?」
「それは間違いないと思うよ、確かヤクモ君と休み時間に喋ってたけど結構仲良さそうだったし」
周囲の大人たちと比較しても結構大柄な男性で、髪の色もヤクモと同じ銀色だったと思う。とはいえましろ自身正直そこまでこの記憶は自信がない。
「いつか会ってみたいです!」
「そうだね……機会があったらヤクモ君の家に遊びに行ってみようか」
「はい!」
談笑もここで一区切りし、少しの沈黙がお互いの間を流れる。と、ここでソラが再び口を開く。
「今日の戦いで、ちょっとわかった気がします」
「何が?」
「私が、ヤクモさんと一緒にいたいっていう気持ちが、なんでましろさんのとは違うのか……」
ぎゅっと手を握るソラ。自分の中のヤクモへの思いを、今なら前よりはわかってきた。だからこそ、少しは見えてきたものもあるのだと。
「ヤクモさんと一緒に何かをやっていると……ドキドキして、夢中になっちゃうんです。そして、凄く心強いんです。ヤクモさんがずっと、寄り添ってくれてる……そんな感じがして、安心するんです……」
「うんうん!」
満面の笑みを浮かべながらソラの言葉を聞いていくましろ。と、ここで自分がどうも恥ずかしいことを口にしていることに気付いたのか、ソラの顔が何度目になるかわからない真っ赤な色に染まる。
「……その、そういうことで……だからその……ましろさんは、大切な友達なんですけど、いやヤクモさんもそうなんですけど、その……」
「じゃあもっと一緒に過ごせばもっとわかるね!」
「え……」
「私、応援してるから!!」
「え?」
どこか興奮した様子でましろはソラにサムズアップして宣言する。いきなりの応援宣言に戸惑ってしまうソラだったが、そんなソラを置いてましろは走り出してしまう。
「ま、ましろさん!?」
「あはは、じゃあ早く帰ろうっか!明日もお出かけするなら今日の内に学校の準備とかしておいた方がいいでしょ?」
「そ、そうですけど!それより応援って何のことですかー!?」
そんなましろを慌てて追いかけるソラ。しかしその後、すぐにましろはソラに追いつかれてしまい、勢いのまま走ったけどやっぱり運動できないなぁとぼやきながら帰宅することになるのだった。