道路を走る黄色いハマー。それに乗るましろ、ツバサ、あげは、エルの表情はとても楽しみな様子だった。しかし、後部座席に隣同士で座っているソラとヤクモの表情はちょっと硬い。いや、楽しみそうな様子なのは他の皆と共通なのだが、何かが気になるのかどうしても表情が硬くなってしまっていた。
「夏だねえ」
「夏といえば、やっぱ海!夏休みは海水浴でしょ!」
「ソラさんは海、初めてなんですよね?」
そんな2人の様子をミラー越しに確認し、見かねてかましろが口を開く。ましろが話を始めたのを皮切りに、あげはとツバサもそれに乗っかり話を盛り上げていき、ソラにも話を振る。
「え?あ、はい!でも……テレビで見たことあります!」
「実際に見たら驚くと思うよ」
「あれですよね?湖がちょっと大きくなった感じの……」
テレビでは見たことがあっても実際に見ると全然別物だ。きっとソラの期待にも応えてくれるだろうとヤクモが言うと、ソラも目を輝かせながら自分の見解を述べていく。こうしてちょっと話題を振ると途端に話が弾んでくれるのだが、それがないとまたすぐに堅くなってしまう。とはいえ、あげはもましろもこれは仕方のないことかと納得していたため、今の2人の様子については敢えて触れることはしなかった。
「おおお!?」
いつの間にか入ったトンネルを出ると、ソラの目に一面に広がる青い海が飛び込んでくる。
「じゃ、ない……!?全然、違います!?すっごく広いです!!」
「でしょ?」
あまりの広さに興奮気味に声を上げるソラ。その様子を見ながら楽しそうに言うヤクモ。そして車は海水浴場近くの駐車場へと駐車すると、それぞれ海に出るための準備を始める。
「じゃあ、あそこが更衣室になってるから、着替えたら合流ってことで!」
男性陣と女性陣でそれぞれ分かれて水着に着替えることにする。ツバサは上下に着用する俗にいうフィットネス水着と呼ばれるタイプの水着を着ており、ヤクモは下は海パンで上はアロハシャツを羽織るような形だ。男の着替えということもあってすぐに終わり、先に荷物の運び出しをしていたのだが、
「そういえばヤクモさん、なんであんな緊張してたんです?」
「え?まぁ……その……」
その途中でツバサから車内の様子について突っ込まれてしまう。とはいえヤクモ自身なんであんな状態になっていたのかはわかっている。わかっているのだが、あまりにも浅ましいという思いが強かったのだろう。バツが悪そうな表情を浮かべる。
「もしかして泳げないとか?」
「いや、人並みには泳げるつもりだけど……」
「……じゃあソラさんの水着が気になるんですか?」
「!!」
思わず持ってたビーチパラソルを落としてしまうヤクモ。幸い足の横に突き刺さったため、事なきを得たがそれについてヤクモが気にしている余裕はなかった。ヤクモが緊張していた理由が何を期待していたのか知ったツバサは呆れたような表情を向ける。
「そんなことですか……」
「……うん」
「別に水着なんて何着たって一緒でしょうに。濡れて良い、泳ぐための服なんですから」
「……それはそうだけども」
「……なんか言いたげですけど」
「いや、別に……俺って浅ましいなって」
図星を指されたヤクモに水着も普段着も変わらないだろうと言うツバサ。以前ファッションショーの時に楽しんでいたのは何だったのかという思いが出てくるも、もしかしたら喜ぶエルの姿と雰囲気をツバサ自身は楽しんでいたのが大きいかもしれない。
「そんな、水着1つで喜んだりしなくても……」
(でもツバサもエルちゃんが可愛い水着で来たら物凄く喜ぶんだろうな)
当然色々と状況やら受け止め方が違うのは百も承知だが、こんな対応を見せられるとそう思わずにはいられない。無論、ツバサのためにもこのことはヤクモの心の中に閉じ込めておくのだが。
「お待たせー!!」
「あ、ここですよー!」
そこに女性陣達も合流する。あげはの水着は桃色を中心としつつもパレオやワンピースを合わせたもので凄く綺麗なファッションとなっている。ましろの水着は上下に別れており、桃色を基調としたものでその上からピンク色のシャツを羽織っている。エルはというと下は紫、上は白の2色の色で彩られた水着を着ており、その上から一枚シャツを羽織っている。
「ツバサ!みて!エルのみずぎ!」
「!すっごく可愛いですよプリンセス!!」
ツバサに自分の水着を自慢するエルを見て、ツバサも嬉しそうに声を上げる。その様子を見ながら、ほら……と声には出さずとも苦笑しながら見ていたヤクモだったが、ここでソラの姿が見えないことに気付く。
「あれ?ソラさんは?」
「え?あー……ソラちゃんは……」
「もうすぐ来るよ?ちょっと今は心の整理中かな?」
「お、お待たせしました!!」
ソラだけ着替えに手間取ってしまっているのだろうか。ヤクモがちょっと心配になっていると、ソラの声が聞こえてくる。そしてヤクモがソラの声が聞こえた方に振り向くと、そこには水着姿のソラがいた。
「……」
ソラの水着はましろのものと似ているが、色合いは水色を中心としたものでソラのイメージにも合っていると感じた。そして何よりも、普段とは違い、水着を着たソラの姿はとても可愛く、新鮮で思わずヤクモは固まってしまっていた。
「……」
固まっていたのは実はソラの方もだった。先ほどまでヤクモの背中の方しか見てなかったので、ソラからは海パンとシャツを着ている風にしか見えてなかったのだが、実際に振り向いたヤクモは半裸の上からシャツを羽織っているだけという状態なので今まで見たことのないヤクモの上半身を目の当たりにすることになっていたのだ。ヤクモの腕などは筋肉質というわけではないが見た目より引き締まっていた。それは普段服で見えない部分もそうであり、ヤクモが思っていた以上の肉体美だと気付いたソラはそれに見惚れてしまっていた。
「うみ!あそぼー!」
「「!」」
無言で互いを見ていたソラとヤクモに、3人も何かを言い出せる雰囲気ではなくなかなか口が開けなかった。だが、その空気をエルが壊したことで2人ははっとなると、
「そ、そういえばこれが海なんですね!すっごく広いです!」
「そ、そうだね」
「この世界の7割が海らしいですよ」
広大な海を見てソラがその大きさについて指摘すると、ツバサが補足する。
「だから、海の上を離着陸できる飛空艇もあって……」
「ま、待ってください!」
「?」
と、ここでソラが何か大変なことに気付いたとでも言いたげな表情で海を指差す。
「こ、この世界のほとんどが海ってことですか!?」
「そうなるけど……」
「そ、そうなんですか……」
この世界のほとんどが海という事実が余程衝撃的だったのか、それとも想像すらできないのか頭がくらくらしてくるソラ。しかし、ヤクモ、ましろ、あげはからすればあまりにも当たり前の常識だったため、ソラのその様子に苦笑してしまう。
「ま、まぁうん……そういうものだよこの世界は」
「そ、それよりもう泳ごうよ」
「……はい!」
ましろの言葉にその通りだと頷き、とりあえず海の広さは置いとくとして、泳ぐことにする。ヤクモ達は羽織っているシャツを脱ぐと、海に向かう。いの一番に海に飛び込んだソラを見て、ヤクモも早速泳ごうかと軽く腕を回しながら海面に足を付けると。
「……うぅ……」
「ソラさん!?」
海に流されてソラが砂浜に打ち上げられてしまう。海に飛び込んだ後、突然隣に流されてきたソラを見て、慌ててヤクモがソラの体を起こす。
「ど、どうしたの!?」
「もしかして、足をつった……?」
ソラの運動能力なら泳げないなんてことはないだろう。しかし、それができなかったということは足でもつったのかと考えてしまうヤクモ。もしそうなら大変だと心配そうにソラを見ていると、ソラは悲しそうにヤクモの顔を見る。
「……うぅ……無理、です……」
「……足をつったって感じではなさそうですが」
「じゃあ、もしかしてソラちゃん……」
「泳げないの!?」
ましろが驚きと共に指摘する。それを聞いたソラは申し訳なさそうに頷くのだった。
★
「……スカイランドの湖では、ガッツとハートで乗り切ってました……泳げなくても、湖の底を歩いて……」
「そ、そうだったんだ……」
一旦泳ぐのをやめて、パラソルを差して、シートを敷いたうえで休むことにしたソラは、スカイランドでの水泳事情を語り始める。しかし、水の底を歩くのは逆に超人技であり、ましろとツバサは驚いたようにその話を聞いていた。
「……海も行けると思ってたんですが……」
「あ、歩く気だったんだ……」
「海水で重りもなしに沈むのは……」
お茶を飲みながら、ソラがぽつりと呟く。スカイランドの湖はどうなっているのかという疑問も浮かぶが、スカイランドの水が特殊だったとしても、こっちの世界の海水で海底を歩くなど普通は不可能だ。
「……このままではいけません!何としても克服しなければ!地上のほとんどが海なのに、今まで戦いの場にならなかったのはただラッキーが続いただけです!ヒーロー足るもの、泳げなければなりません!!」
ソラとしてもこのままではいけないと思ってはいるのだろう。今までは水底を歩くことでどうにか乗り越えてきたが、海水でそれは無理だということは先ほどわかってしまった。となれば、後は自分が泳げるようになることで解決するしかない。
「皆さん、私に泳ぎ方を教えてください!!」
幸い、自分以外の皆が泳ぐことができる。スカイランドの時とは違い、泳ぎを教えてくれる友達がいるのだ。ならばきっと、習得できるはずだと考えたソラ。その決意を聞き、ヤクモ達も喜んで頷く。
「わかった。泳げるようになろう!」
「なら、僕に任せてください!」
と、ここでツバサが一番に名乗り出る。どうやら泳ぎ方のコツを知っているようだ。そして、念のために人気のないところまで移動すると、突然ツバサは鳥の姿に戻り、海へと飛び込んでいく。
「とおー!!」
綺麗に海面に飛び込んだツバサはそのまま、水の中に入っては海上に飛び出し、また潜ると言ういわゆるイルカ泳法を見せてくれる。
「「「「おおー!?」」」」
「おお……って」
凄い泳ぎだったが、それを見たヤクモはあることに気付く。ツバサは一通り泳ぎ戻ってくると、羽についた水を払うように体を震わせる。
「凄いです!どこでこのような泳ぎを?」
「スカイランドで泳ぎがうまい友人に教わったので。泳ぎなんてコツを掴めば簡単ですよ」
「本当ですか!?」
自分もあんな泳ぎ方ができるようになるのかと目を輝かせるソラ。しかしそこでヤクモがある事実を指摘する。
「……ツバサがやってるのは人の泳ぎ方じゃなくてペンギンの泳ぎ方だよ」
「えっ」
「あっ」
ヤクモの指摘に唖然となるツバサ。あげはも改めて言われると既視感があると気付いたのだろう。
「ペンギンって……あのペンギン、ですか?」
「うん……ツバサがやろうとしていた泳ぎ方をやろうとしたら……近いのはバタフライじゃないかな」
「「バタフライ?」」
「……いやいや、私とは無関係だから」
ソラとツバサの視線があげはへ向けられる。確かにキュアバタフライだが、それと泳ぎ方のバタフライとは別だと笑いながら言うあげは。
「ヤクモ君、できるの?」
「上手ではないけど一応形だけなら?でも……泳ぐならやっぱり一番最初はクロールじゃないかな?基本だし」
「それなら任せて!」
と、ここでましろが名乗りを上げる。クロールに自信があるようなので、ヤクモもましろに任せる事にする。ましろは海の中に入ると、綺麗なフォームでクロールを始める。
「おおー!?凄いですましろさん!!」
ましろの泳ぎを見て驚いたような声を上げるソラ。確かにこれができるようになれば、すぐに泳げるようになるだろう。海から上がったましろは、得意げに言う。
「まあね!小学生の時、スイミングスクールに通ってて、水泳8級なの!」
「おお!」
「8級?」
「うんうん、凄さも程よいね!」
「水泳の級って高い方が凄いんだっけ、低い方が凄いんだっけ……」
「……どっちだっけ」
ましろの言う水泳8級が何となくすごいことはわかったが、そういえば級はどういうものだったかとヤクモが疑問を口にしたことでましろとあげはもぱっと思い出せず考え込んでしまう。
「あの……」
「!っと、そうだった!さあ、練習を開始しようっか!」
「はい!」
今はそういう場合ではないとましろがソラに練習をするように促す。そのためにソラはましろと共に海の中へと入っていく。
「まずは浮く練習から始めようか!……力を抜いて……すーっ……ふわりって……空に浮いてるような感じで……」
ゆっくりと力を抜いてぷかぷかと海に浮かぶましろ。その様子だけでもソラにとってはかなり凄いことであり、ましろの姿をじっと見続けている。お手本を一通りましろは実践すると、ソラに向き直る。
「じゃあ、やってみて!」
「はい……!」
「大丈夫だよ」
肩肘に力が入ってしまうソラの姿を見て、そこまで力む必要はないと言うましろ。しかし、いきなり1人で浮かんでみて、と言われても難しいのは百も承知。ましろは砂浜の方で休んでるヤクモに目を向けると、
「ヤクモ君、ソラちゃんを支えてくれない?」
「え?ああ、いいけど……」
ヤクモにも特訓の手伝いを求める。ヤクモが支えていれば、ましろも様々な角度からソラのフォームを見ることができて、より特訓が捗るのはあるかもしれない。ヤクモもそう納得すると、海に入りソラの傍に近づく。
「じゃあソラさん、俺が支えるから、ゆっくり体を倒してみて」
「は、はい!よろしくお願いします!!」
緊張しながら、ソラはヤクモへともたれかかる。そのまま、
「力を……力を抜いて……!すーっ、はーっ!!」
ましろが水に浮く前にやっていたように息を思い切り吸い込むと、水の中へと入っていく。ヤクモがその背中に手を添えてあげるのだが、
「ひゃうっ!?」
ヤクモがソラの背中に触れた瞬間、ソラが全身に余計に力を入れてしまい、そのまま沈んでいってしまう。それを慌てて引き上げるヤクモ。
「大丈夫?」
「は、はい……」
「力、入りすぎてるよ……」
「す、すみません……」
ましろの指摘に申し訳なさそうに水の中に口まで沈んで凹むソラ。本人も頭ではわかってはいるのだが、今度は少し恥ずかしそうに、
「……つ、つい……」
「……あー……」
「それに……緊張してしまいます……」
ヤクモに手伝わせたのは失敗だったかもしれないということにましろも気付く。ソラのヤクモへの意識のせいで嫌でも体が固まってしまったのだ。しかし、今更ヤクモにやっぱり戻って、というのも申し訳ないし、これはこれでいいだろうと結論付けたましろは、とりあえずこのまま続行することにする。
「海に身を委ねればいいんだよ。ふわーって……」
「は、はい!はりきって海に身を委ねてみます!」
ましろのふわーっとというジェスチャーに従うように、できるだけ体を滑らかに動かそうとするソラ。しかし、どうしてもカチコチになってしまい、とても海に身を委ねゆったりと泳ぐどころか波に攫われてしまいそうな動きになってしまう。意を決して飛び込むも、やはり泳ぐことはできず、すぐに水面に顔を出してしまう。
「うぅ……やっぱり駄目です……でも、なんとしても泳げるようにならなければ……!この壁を越えなければ……!」
「うーん……ヤクモ君は何かいい案はないかな?」
「案っていうか……うーん……とりあえず無理に泳いだりとか考えないでいいんじゃないかな」
「え?というと……?」
ヤクモは少し沖の方まで移動する。ヤクモの肩程の胸程の水深まで行くと、
「とりあえず慣れ始めてからでいいと思うんだ。だから、水の中に足がつかない感覚に慣れるところから始めてみたらどうかなって思って」
「成程!それは良い考えです!!」
ヤクモの提案に乗り、ソラも沖の方へと向かう。そしてヤクモの傍まで行くと、
「それで……これからどうするんですか?」
「俺が手を握るからさ、ちょっとずつ足を離してみて。軽くジャンプするだけでいいからさ」
「は、はい!」
ソラの手を引き、ヤクモはゆっくりと海の中を歩き始める。それに身を任せるように海底から足を話し始める。溺れそうだとすぐにソラが判断すると共にすぐに足をつく。その繰り返しで、泳ぐことや浮くことはまだできなくても、徐々にそれっぽい感じにはなる。
「……結構いい感じじゃない?」
「そうですね。全然泳げてはいませんけど、最初よりは進歩してると思いますよ」
あげはとツバサもエルと共に砂浜から沖を見る。ソラだけでは足を離してもそのまま沈んでいってしまうが、ヤクモが手を引いていることでその場で溺れることなく移動することができていた。
「どう?ソラさん?」
「は、はい……なんか、水の中をすーって流れてるような気がします!」
「よかった、もし失敗したらどうしようかって思ってたから」
これが泳ぐという感覚なのかと、嬉しそうにソラが言う。その様子を見て、ヤクモも嬉しそうにソラの顔を見る。
「ふふ……このままなら泳げそうな気がします!」
「じゃあ、バタ足でいいからちょっと足を動かしてみようか。大丈夫、俺が手を握ってるから」
「は、はい!……きゃあ!?」
「うわ!?」
ヤクモに言われるがままに足を動かしていく。しかし、またしても動きが堅くなってしまい、ソラの体勢が崩れてしまう。咄嗟にヤクモが腕を引っ張ってソラの体を抱きしめる形でソラを助ける。
「ひゃっ……あ、ありがとう、ございます……」
「あ、う、うん……大丈夫そうでよかった……」
ソラの身に何もないようで安心する。しかし、ここで失敗するとそれなりに深いのもあってソラの身が危ないことにヤクモはやっと気づく。
「……ここで溺れるとちょっとまずいかもしれないから、戻ろうか……」
「は、はい……え、えっと……溺れちゃうかもしれないから……その、このまま……」
「う、うんそうだね……溺れたら大変だもんね……」
ヤクモの言葉にソラも静かに頷くと、そのままの状態でソラを抱っこしたまま、ヤクモは皆の元へと戻っていく。その光景をましろ達はにやにやと見ていたが、2人の雰囲気のために敢えて何も見ていないフリをするのだった。
★
「とほほ……結局泳げませんでした……」
「ど、どんまい……練習すればきっといつかできるようになるよ」
「うぅ……どうすれば沈まないで済むんでしょうか……」
「ソラちゃん!」
浅瀬の方に戻ってきたソラは、結局泳げなかった事実に悲しそうに落ち込んでしまう。ヤクモがソラを慰めていると、あげはの声が聞こえてくる。
「はい?」
「これ!」
あげはの声が聞こえ、ソラが声のした方に振り向くとあげはが輪っかのようなものを持っていた。ソラが自分の方を見たのを確認してからあげはがそれをソラへと投げる。ソラが慌ててそれを受け取ると、中には空気が入っているからか随分と軽い。
「これは……?」
「浮き輪?持ってきてたんだ?」
「いや、持ってきてなかったんだけど……海の家でレンタルしてきたんだ」
どうやら、ヤクモ達が沖の方で四苦八苦していた間にあげはが泳げないソラのために気を利かせて浮き輪を借りてきてくれたようだ。
「……えっと、随分軽いですけど……何に使うんですか?」
「ああ、浮き輪は海に浮くための道具だよ」
ソラにヤクモが浮き輪の使い方を教える。とはいえ浮き輪の使い方らしい使い方は説明するようなことでもなく、すぐに使い方を理解したソラが浮き輪に体を通すと、浮き輪の浮力を利用して海に浮かべることができるようになった。
「沈まない!?浮いてますよ!?一体どういうことですか!?」
驚愕した様子で理由を問いかけるソラ。それを聞いたツバサがその理屈について説明し始める。
「浮き輪には空気をため込んでいるので水に浮くんです」
「成程……」
「これで、泳げなくても海を楽しめそうだね」
「はい!」
海に沈まずに動けることがよっぽど嬉しいのか、その場で浮き輪を回転させながら楽しそうに笑うソラ。
「浮き輪のおかげでソラちゃんも楽しめるようになったし、もっと海を楽しもうよ!」
「はい!」
ましろの言葉と共にソラも元気よく頷く。そして皆で一通り海で遊ぶことにするのだった。