曇り空の夜のプリキュア   作:popoponpon

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第88話 結ばれる思い

 

海で一通り遊んだ6人。そして砂浜の方に戻ると、スイカ割りをすることになる。スイカを割る役をソラがすることになり、タオルで目隠しされ、硬い棒を握る。

 

「えっと……このままスイカを割ればいいんですか?」

「そうだよ!……あ、そのまま3回回って!」

「は、はい!」

 

ましろにスイカ割りのやり方を教えてもらい、その場で回るソラ。皆から応援されながらスイカ割りに臨むも、回転したことで今自分がどこにいるかどうかわからなくなってしまったようだ。そんなソラに、

 

「右ですよー!」

「もっと前だよー!」

「落ち着いてー」

 

皆がスイカの位置を教えていく。最初はソラもふらふらと動いていたが、

 

「!!」

 

何かを感じ取ったのかぴたりとその場に静止したと思った瞬間にスイカの方に体を向けると、思い切り棒を振り上げる。

 

「そこです!!やあああ!」

 

気合と共に棒を振り下ろす。それはスイカの中心を見事に捉えており、ソラの必殺の攻撃を受けたスイカは見事真っ二つに割れる。

 

「「「「「おお!?」」」」」

 

あまりに見事なスイカ割りに驚きと感動の声が漏れる。

 

「迷わずに割った!?」

「どうしてわかったの?」

「スイカの気配を感じ取りました!」

 

ましろの疑問に答えながらタオルを外すソラ。それを聞いて、ましろ達は納得しつつも、そうやるかぁと苦笑してしまう。エルは素直に喜んでいたようだが、

 

「……企画倒れかな?」

「言っちゃいけません」

「……ま、とりあえず割れたスイカを食べようっか!」

 

ぽつりと呟いたヤクモにツバサはツッコミをいれる。気を取り直して半分に割れたスイカをシートの方まで運んで切り分けていき、皆で食べ始める。

 

「美味しいです!」

「夏だねぇ」

「……ヤクモさん、何かけてるんです?」

「塩」

「塩!?」

 

美味しくスイカを食べ始める中、ヤクモがいきなりスイカに塩を振り始めたのを見て驚くソラ。

 

「でも、塩ってしょっぱいですよね……?」

「あはは、スイカに塩をかけると美味しくなるんだよ」

「そ、そうなんですか?じゃ、じゃあ私も……」

 

ソラやツバサにはなじみのないことなのだろう、だがあげはの方からもおすすめされたのもあり、ソラとツバサも試しにと塩を振ってスイカを口に入れてみる。

 

「……甘い!」

「本当です!さっきより甘くなりました!しょっぱい塩をかけたのにどうしてでしょうか?」

「なんか反対の味を組み合わせると逆に片方が強くなるみたいな話は聞いたことあるけど……」

「へえ~……やっぱりヤクモさんは詳しいですね!」

「あはは……ありがと」

 

談笑しながらスイカを食べ進めていくと、すぐに丸々あったスイカも全部食べ終えてしまう。そして今度は海の家でかき氷を買ってきて、それを皆で食べることになる。

 

「美味しい!……けど、痛いです……」

「ううん、夏だねぇ……」

「かき氷って感じがするね……」

 

頭をキーンとさせながらかき氷を堪能していくソラ達。ひとしきり食べ物を堪能した後、ましろは荷物の中からビーチバレーを行うためのボールを取り出す。

 

「よし、ビーチバレーをしようっか!」

「はい!……ビーチバレーとは?普通のバレーとは違うんですか?」

「うーん……場所やボールが違うのかな?……まあネットとかコートとか厳密にあるわけじゃないんだけどね」

「トスをし合うだけでも十分じゃないかな?それでも楽しいだろうし」

 

慣れてきたら試合形式でやるのもよさそうだが、ひとまずはボールを回し合うのがいいんじゃないかというヤクモの提案を呑む形で、ソラに説明するとあげはとエルが見学する中、4人がボールを打ち合い始める。

 

「それじゃあいくよー!はい!」

「よっと」

 

ましろが打ち上げたボールをヤクモが両手でうまく形を作ってツバサへと回す。ツバサも見様見真似で手の形を作ってボールを弾こうとするが、不慣れなのか変な所にボールが当たってしまい変な方向へと飛んでいってしまう。

 

「あっ!」

「っと!」

 

それを見たヤクモが走り出し、寸での所でボールを手で勢いよく打ち上げる。トスというにはかなり高いが、それがソラの上に来ると、

 

「バレー……つまりこういうことですね!」

 

バレー自体は授業でやっていたこともあってか、ついソラは高く上がったボールを前に高く跳んでしまい、そのままスマッシュを叩き込んでしまう。

 

「きゃっ!?」

「あ!?ましろさん大丈夫ですか!?」

 

幸い、ボールはましろの近くへと叩き込まれたようでましろには当たらなかったが、ましろは思わず尻もちを付いてしまう。慌てて駆け寄る3人。ましろはボールが当たらなかったことにほっとしながらも冷や汗を流していた。

 

「平気平気……夏だねぇ」

「とりあえず夏で流そうとしないで……どうする?続ける?」

「そうですね……」

「それなんだけどさ、皆で一緒に砂遊びもいいんじゃない?」

「みんな、あそぼ!」

 

と、ここであげはが4人を砂遊びに誘う。見れば、エルがスコップで楽しそうに砂を掘ったり山を作ったりして遊んでいた。エルは皆で砂遊びをしたいと持ち掛け、それを聞いたソラ達もエルと一緒に遊ぶことにする。と、あげはの視線がふと、ツバサに向けられる。

 

「……そうだ!」

「な、なんですか?」

「少年、砂風呂って知ってる?」

「はい?」

「すなぶろ!すなぶろ!」

 

何か嫌な予感がしたツバサだったが、エルの喜んでいる様子を見ていると逃げることはできそうにない。プリンセスが喜ぶならばと受け入れてあげはにされるがままに人が1人入れそうなぐらいに掘られた穴の中にツバサが寝転がると、その上にあげはとエルが砂をかけていく。

 

「だ、大丈夫なんですか!?」

「か、体が埋まっていくんですけど!?これ出れるんですか!?」

「大丈夫だから落ち着いて」

 

ソラとツバサが驚くもどんどん砂が欠けられてツバサの体は顔以外完全に埋まってしまう。ソラが心配そうにツバサを見ているが、ヤクモに大丈夫と言われて落ち着いたからか、改めて砂の感触を感じてみると意外と心地よいと感じ取っていた。

 

「……そして……」

「「「「ん?」」」」

 

一通り砂風呂の準備ができたと思ったが、どうやらまだあげはのやりたいことは終わってないようだ。そのままツバサの上に砂をかけていき、何かを作り始める。その砂の形が人の体になっているとヤクモ達が気付いたのは、

 

「うお……すご」

「!?……ぷ、プリンセス、そ、その辺で……」

 

見事なまでのマッチョな体格がほぼほぼ作られたタイミングだった。ツバサの首に繋がるように作られた砂の体を見て、ツバサも困り顔で止めようとするも、

 

「ツバサ君、かっこいいよ」

「はい、強そうです!」

「えー!?ヤクモさん!」

「まあ……エルちゃんは楽しんでるみたいだし」

 

ましろとソラも面白そうだと思ったのかどんどん2人を煽っていく。たまらずヤクモにツバサは助けを求めるも、エルが楽しんでいるところに水を差すのも悪いと思ったのか、ヤクモからも投げられてしまう。

 

「……夏だねぇ」

 

そんな様子を見て、ましろがまたしてもそう総括しようとする。もうヤクモも突っ込まず、ソラと顔を見合わせて苦笑いする。

 

「でも、スカイランドの湖とは全然違いますね、海」

「そうだね。家族としか海に行ったことはなかったけど、今年は皆と来られてよかったよ」

「はい!……あ!?」

 

海で泳がなくたって楽しみ方はたくさんある。それだけで今日は十分な気がするし、ソラもヤクモや皆と過ごせてたしこれで良かったと思い始めてみたが根本的な問題は何も解決してなかったことをソラは思い出してしまう。

 

「泳ぎの練習をすっかり忘れてしまいました!」

「まあ……海で泳げなくても、プールとかだってあるし、泳ぎの練習はどこでもできるよ」

「そ、そうでしょうか……?」

 

だが、今日一日で泳げなくても問題ないとヤクモに言われるとそんな気がしてくる。だが泳ぐことに対して不安がまだ拭えないソラの様子を見かねたのかましろからも助け船が出される。

 

「……あはは、大丈夫だよ。きっと泳げるようになると思う」

「で、でも、遊んでただけですよ?」

「だからだよ。ソラちゃん、力入りすぎてたから」

「……」

「ヤクモ君と沖に出て行ったとき、力抜けてていい感じだったでしょ?」

「それは……」

 

足を動かそうとして失敗してしまったが、確かにヤクモと一緒に沖の方に出て行ったときが一番惜しかった気がする。

 

「越えなければいけない壁とかじゃないんだよ。海、楽しかったでしょ?」

「はい……」

「だったら、もう大丈夫だと思うよ。ヤクモ君もそう思うでしょ?」

「そうだね。俺もソラさんなら大丈夫だと思う」

「そうでしょうか……?」

 

2人に言われ、もしかしたらそうかもしれないと思い始めるソラ。と、

 

「できたー!」

「わお、すっごいマッチョマン!」

 

あげはとエルの声と共に完成されたツバサの肉体美に目を向ける。ここまで来たらもうされるがままだと覚悟を決めたようなツバサの首から先には見事なまでの砂の体が構築されていた。

 

「おお!凄い筋肉です!」

「立派なものができたね」

「頑張ったねエルちゃん」

「がんばった!」

 

それを見て喜ぶエルとあげは。ヤクモ達も嬉しそうにその光景を見ていると、

 

「呑気なものだな」

「!?」

 

聞き慣れた男の声が6人の耳に飛び込んでくる。ヤクモ達がすぐに反応するように振り向くと、そこにはミノトンの姿が。どこかイライラした様子のミノトンを見るに、どうやら自分達が遊んでいるところを少し前から見られていたのだろうか。

 

「ミノトン!」

 

ミノトンの姿を見たツバサが慌てて砂の中から起き上がり、ミノトンを見据える。ミノトンが1人だけ砂の中に埋まってたツバサが外に出たのを確認すると、

 

「海とは心身を鍛える神聖な場!にも拘わらず修行もせずに遊び惚けておるとは!プリキュア!我が修行の成果、見せてくれるわ!来たれ、アンダーグエナジー!!」

 

ミノトンが怒りと共にアンダーグエナジーを放つと、浮き輪を素体としたランボーグが生み出される。平和な砂浜に出現したランボーグを前に、砂浜にいた人々がすぐさま逃げ出す中、ヤクモ達はプリキュアへと変身してランボーグに立ち向かう。

 

「がんばえー!」

「ラーンボーグ!!」

 

早速先制攻撃を仕掛けるランボーグ。それを回避するのだが、スカイだけが海の方へと跳んでしまう。

 

「スカイ!?そっちは……」

「え!?……あ……うわわわ!?しまったあ!?」

 

自分の真下が海になっていき、しかも沖の方へと向かっているのに気付いて血の気が引いていくスカイ。そのままあわあわと手を振るが、当然そんなことで落下を防げるわけもない。

 

「危ない!!」

「ララララ!!」

 

咄嗟にウィングが空に飛び出し、スカイの手を握る。そのまま近くの岩場へとスカイを下ろすも、ランボーグは海面を泳いでスカイとウィングを攻撃する。

 

「やあっ!」

 

スカイは岩場を乗り継ぎながら攻撃を回避していき、隙を突いてランボーグを蹴り飛ばす。蹴り飛ばされたランボーグは一旦は海の中に落ちるも浮き輪の浮力のせいかランボーグは特に大きなダメージもなく、むしろ水中から押し出された勢いで飛び出してスカイへと再び迫ってくる。このままでは埒が明かないとスカイが悔しそうに歯噛みしていると、ランボーグの横っ腹をクラウドが蹴り飛ばす。

 

「このっ!」

「クラウド!」

「やらせないよ!」

「とりゃ!」

 

雲の足場を砂浜から岩場まで伸ばし救援に現れたクラウドの攻撃でのけ反るランボーグ。プリズムとバタフライも雲の足場を乗り継いでいき、さらにランボーグに遠距離攻撃を放ち倒してしまう。

 

「これで……」

「ランボーグ!!」

 

だがランボーグは全く無傷。それどころか海に落ちたのに沈みすらしない理由に、5人ともランボーグの素材が浮き輪だからということに気付く。

 

「そうか、浮き輪だから……」

「だから水面もこんなに動けるんだ!」

「プリキュア……海上ではランボーグにバタ足も出まい」

「……だったら!」

 

浮き輪を元としているためか物理攻撃も通じにくい。余裕な振る舞いを見せるランボーグを前に。それならばと名案を思い付いたスカイがランボーグへと飛びつく。そしてスカイはランボーグの空気の栓を掴むと、それを外してします。

 

「空気を抜いてしまえば!!」

「ララララ!?」

 

ランボーグの体内から空気が一気に抜けていく。ランボーグが悲鳴を上げながら吹き飛んでしまうも、その動きが激しくスカイもランボーグにしがみつくのが精いっぱいなようだ。しかし、ランボーグの動きが止まればすぐにでも反撃に転じる。その時を待ち続けていたスカイの体をランボーグは両足で挟み込んでしまう。

 

「っ!?」

「「あ!?」」

「スカイ!」

 

皆が驚く間もなく、ランボーグはスカイを足で挟んだまま海の中へと沈んでいってしまう。それを見たクラウドがすぐさま雲を乗り継いでランボーグとスカイが沈んだ場所へと向かうが、既にランボーグとスカイは海の底の方へと沈んでいってしまった。

 

「空気を抜いたことが仇となり共に海にドボンとは。策士策に溺れるとはまさにこの事」

「っ!」

「「「クラウド!!」」」

 

スカイは泳げない。このまま海の中に放り出されてしまってはスカイはそのまま溺死してしまう。クラウドも海の中に飛び込んでいってしまう。

 

「……!」

 

水中の中ではスカイも必死にランボーグの拘束を解こうともがいていた。しかし、水の中ではうまく力が入らず、ランボーグの拘束も解けない。それにこのまま沈んでいってしまえば自分では海面に戻ることもできなくなる。と、

 

「……?」

 

もがくスカイの前で、ランボーグが何故か膨らみ始めたことに気付く。だがそれに気付いた次の瞬間、沈む速度が落ちていく。スカイが海面の方を見ると、ランボーグの端をクラウドが掴み、雲を使った浮袋で沈むことを阻止していた。さらにプリズム、バタフライ、ウィングも次々と飛び込んできて、スカイの救出に動く。

 

(皆……!)

「ラララララ!ランボーグ!!」

「「「「「!?」」」」」

 

3人がランボーグの方に取り付こうとしたその瞬間。ランボーグは膨らんだ体から勢いよく水を放出し始め、3人を吹き飛ばしてしまう。

 

「「きゃあああ!?」」

「うわああああ!?」

「皆!?……ごぼっ!?」

 

空中へと打ち上げられてしまう3人。たまらず声を出してしまったスカイだったが、それによって肺の中の空気が漏れてしまい、慌てて口を閉じる。その水流の放出によってクラウドの手から離れ、さらにそこまで沈んでしまったランボーグは、スカイの口から空気が漏れたのを見て、握りこぶしを構える。

 

「がぼっ!?」

 

それにスカイが気付くも、両腕は足に挟まれてるせいでまともに動かせない。結果、スカイの腹部に勢いよくランボーグの拳が突き刺さる。その痛みを感じるよりも前に肺の中から大量の息が流れ出してしまい、その空気の量がほぼほぼなくなったのを確認したランボーグはスカイをその場に捨てて海面の方に戻っていく。

 

(あ……)

 

一気に呼吸ができなくなり、酸素もなくなっていき、力も意識も徐々になくなっていってしまう。

 

(みん……な……ヤクモ、さん……)

 

海面へと戻っていくランボーグになんとか手を伸ばそうとするも、その手も力が抜けていき下へと降ろされてしまう。そしてスカイは意識を完全に手放してしまう。

 

(……スカイ)

 

そしてスカイが海底に落ちたところで、彼女の元に浮袋を手放してまだ1人海中に残っていたクラウドが辿り着く。クラウドはスカイを抱え、意識が残っているかどうか確かめようとするも、

 

(まずいな……)

 

開かれたスカイの口からは空気が漏れていない。だらんと力なく垂れた腕などから意識も既に残っていないだろう。このままではスカイが溺死してしまうのではないか。そう考えたクラウドはある行動を思い付く。思いついたのだが躊躇してしまう。仕方のない状況とはいえこんなことをしていいのか。だが、躊躇したのは一瞬だった。

 

(スカイが……ソラさんが助かるなら……やってやる!)

 

そうヤクモが決意して行動を起こす。そしてそれから少しして。

 

「……ん……」

 

スカイがうっすらと海中で目を開く。意識は朧気だし、息も苦しい。酸素が薄いのか苦しい気がする。それに口も何かで塞がっている気がするが、どうして自分は呼吸ができているのだろうか。今も海の中にいるのに、と段々視界がはっきりし始めて、

 

「んん!?」

 

自分の口をクラウドが塞いでいることをはっきりと視認してしまい、驚いたような声を上げてしまう。スカイが自分を見たことに気付いて貴重な空気を水中に放出しないように、思わず離れようとするスカイの背中と首に手を回して口が離れないようにする。スカイも初めてのキスだったとか、嬉しさとか恥ずかしさとか、とにかく様々な感情がごちゃ混ぜになりながらも今が戦闘中で溺れた自分にクラウドが空気を送っていることを理解し、この状況を受け入れる。

 

(……クラウド!?)

 

先程まで呼吸できてなかったからか、スカイの呼吸は荒い。だがそのせいだろうか。クラウドの方が苦しそうになっていき、スカイを寄せていた腕から力が抜けていき、段々口が離れてしまう。慌ててスカイがクラウドに手を伸ばそうとするが、クラウドの体が沈むどころか浮き始める。

 

(浮い……てる……?)

 

その姿を見て、ましろに言われた泳ぐコツを思い出す。それに続けて今日皆と過ごしてきた楽しい日々を思い出す。今日は凄く楽しかったことをこんな状況なのに思いながら、力を抜いて水に浮くというましろのアドバイスを今のクラウドは、まさに実践しているといえるだろう。そして自分も、気付けば海底ではなく少し浮いたところにいることに気付く。

 

「……」

 

自分を助けたことで苦しそうになってしまっているクラウドに水を蹴って近寄ると、その体を抱きしめながらクラウドに一呼吸させる。その一呼吸で意識を無理やり覚醒させたクラウドは、スカイが抱きしめているのを確認すると雲の浮袋を作り出す。その浮袋に引っ張られる形で2人の体は急浮上していく。そして、

 

「む!?」

「ラン!?」

 

水中から勢いよく浮上してきたスカイとクラウドの体が空中に投げ出される。空に飛び出した2人は新鮮な空気を吸い込みながら戦況をすぐに確認する。スカイとクラウドを欠いたことで3人はランボーグに苦戦し追い詰められてきており、3人とも拘束されてしまっていた。

 

「「「スカイ!クラウド!!」」」

 

ランボーグに締め付けられ、苦痛に顔を歪めながらも2人の姿を見て嬉しそうな声を上げる3人。だが、そのまま2人は水面へと落ちていく。

 

「後は、任せてください!!」

 

そしてスカイはそう言うと、なんとクロールを行い、ランボーグへと向かい泳ぎ出す。

 

「!スカイ……泳げるようになったんだ!」

 

完全にコツを掴んだのか、完璧な泳ぎを見せるスカイ。ランボーグの方は両腕と空気の抜けた胴体で3人を拘束していることもあってその場から動くことができない。クラウドは雲の足場を使って再び海上へと上がると、スカイが使うための足場を先回りするように投げ配置する。

 

「皆を離しなさい!!はあああああ!!」

 

その雲の足場へと水中から飛び乗り、身動きの取れないランボーグに強烈な拳を放つ。拳を叩きつけられたランボーグがその衝撃で3人を空中へと投げ出してしまうも、落ちるプリズムとバタフライを雲のクッションでクラウドが受け止めていく。

 

「どりゃあああああ!!」

「ラララ!?」

 

仲間の救出をクラウドに任せ、スカイはランボーグの胴体を掴むと勢いよく投げ飛ばす。海の中に落とされたランボーグは尚の事飛び出して足掻こうとするのだが、

 

「クラウド!お願いします!!」

「ああ!ひろがるクラウドプロテクト!!」

 

クラウドプロテクトの中に閉じ込められてしまうランボーグ。空気が抜け軽くなった今のランボーグでは回転する雲の流れに抵抗できず、振り回されてしまう。

 

「「「やった!!」」」

「ほう……やるではないかプリキュア」

「皆が海の素晴らしさを教えてくれたから!皆とのチームの輪のおかげです!チームの輪があれば……もう浮き輪は必要ありません!」

 

身動きの取れないランボーグを前に声を上げ、スカイはプリズムを見る。プリズムもスカイの意図を理解して頷き返すとみスカイミラージュを手に取る。

 

「「プリキュア!アップ・ドラフト・シャイニング!!」」

「スミキッター……」

「ぐぬぬぬ……修行がまだ足りなかったか……どこかで我が筋肉を鍛え直すとしよう……ミノトントン」

 

そしてクラウドによって拘束されたランボーグが浄化され、元の浮き輪へと戻っていく。ランボーグを倒されたミノトンは悔しそうな声を漏らしながら消えていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦いが終わり、時刻は夕暮れ。人の姿はランボーグの戦いがあって逃げた人々が多かったこともありほとんど残っていない。そんな中、ましろ達は後片付けをしながら、砂浜で海を見ながら座り込んでるヤクモとソラの姿を見ていた。

 

「……あの2人、どうしたんです?」

「える……」

「……海の中で何かあったのかな?」

 

どこか緊張したような、そわそわしたような雰囲気の2人を心配そうに見るツバサとエル。4人とも2人の間に何があったかは知らないが、あげはが心当たりを口にする。ましろも少し考えていたが、何があったかまではまだわからなかったようで、

 

「……今は2人にしてあげようっか?」

「そうだね。先に着替えて車に戻っちゃおうっか」

 

さすがに何も言わずに戻るのもまずいので、敢えて2人に聞こえる程度の声量でそう言うと、あげは達は駐車場の方へと戻っていく。そして2人取り残されたヤクモとソラは無言のまま海を見ていた。聞こえる音は波の音だけ。

 

「……私、初めてのキスでした……」

「……ごめん」

「そんな……嫌じゃありませんから……」

 

そんな空気に耐えかねたソラが口を開く。それを聞いてヤクモは思わず謝る。仕方のない状況だったとはいえ、あんな形でソラのファーストキスを奪ってしまったことに対して申し訳ないと言う気持ちがずっとあったのだろう。

 

「……でも、あんな形で……だから……」

「……ヤクモさん……?」

 

戦いが終わってたから考えていた。こんなことをやってしまった自分はソラに対してどうすればいいのかと。ヤクモはソラの目をじっと見る。ソラも、ヤクモが何を言うのか、じっと待つようにその目を見る。

 

「責任、取るよ」

「!」

「俺……ソラさんのこと、好きだ」

 

こうなったら男として責任を取るしかない。今までは言えずにいたこの好意も、全部含めて伝える。それがヤクモの決断だった。そしてソラの方はヤクモから告げられた告白に、一瞬頭が真っ白になってしまう。だがそれは、

 

「……凄く、嬉しいです……!」

 

あまりの嬉しさからくるものだった。ヤクモの告白を聞いた自分の顔は凄く嬉しそうにしているんだろう。それとおそらくにやけてもいるだろう。顔も凄く真っ赤になっていると思う。夕日がなければきっとヤクモにもばれているだろう。いや、夕日があってもなくても関係ないかもしれない。

 

「私も、ヤクモさんのこと好きだったから……」

「……よかった」

 

ソラの言葉を聞いてヤクモもほっとしたように、嬉しそうに微笑む。そんなヤクモの顔も赤くなっていた。お互いそうなのだと思うと、それも嬉しいと思えた。ソラはヤクモに身を委ねる。

 

「……今日、海に来てよかったです」

「うん、俺もそう思うよ」

 

ぎゅっと、ソラとヤクモの手が繋がれる。やっと、自分の気持ちを相手に伝えることができ、その想いが結ばれたのだ。それは、2人にとって大きな意味を持っていた。

 

「……忘れられない夏になったね」

「……はい」

 

2人で海と夕日を見る。目の前に広がる景色が、自分達を祝福しているように見えて、2人はじっと、新たな関係に進んだという事実を実感するのだった。

 

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