曇り空の夜のプリキュア   作:popoponpon

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第89話 撮影会

「昔々、ある所に……」

 

絵本を一緒に見ながらましろが今回のお話をエルに語る。村娘のような恰好をした女の子が買い物に行くと、空からヒーローガールが現れる、という話を聞き、

 

「ソラ!」

「正解!」

 

と、空から現れた青髪の少女の絵を指差すエル。ましろから正解だと言われ、エルも嬉しそうに声を上げる。と、

 

「ましろさーん?」

「はーい!」

 

ソラから呼ばれ、ましろが部屋から出て行く。と、残されたエルの目にましろが使っている色鉛筆が目に入る。そして紫色のクレヨンを手に取ると、ましろが描いた絵の上から自分の絵をでかでかと描いてしまう。他にも色々描いていると、ソラに呼ばれた用事が終わったのもあってか一緒に戻ると、エルが足した絵を一緒に目撃する。

 

「みてみて!エルだよ!」

「あはは……エルちゃんはこの後、お花の中から生まれる予定だったんだけどね……」

「めっ、ですよ」

 

ましろの考えていたストーリーに介入してきたエルの姿に思わず苦笑してしまうましろ。ソラはそんなエルの姿を見て、絵を描くのはともかく、既にましろが描いていた絵を台無しにしてしまうのは駄目だと注意する。

 

「……むぅ」

「いいよいいよ!手が届くところに置いていた私が悪いんだし!」

「駄目です」

 

しかしソラの言葉にエルは不満そうに頬を膨らませる。ましろもエルがやりたいと思ってやったことだからとソラを宥めようとするも、ソラは毅然とした態度で首を横に振る。

 

「ここはちゃんと言っておかないとエルちゃんのためになりません!私の弟なんて甘やかされたせいで家の中で遊んで植木鉢を壊したりして怒られてもすぐ逃げたりするんです!だからエルちゃん、もうましろさんの絵に勝手に触ってはいけませんよ。約束しましょう」

 

自分の弟のことを引き合いにだし、エルにこれはやってはいけないことだと約束しようと小指を出す。その手を見たエルはすっと立ち上がるとソラに背を向けてましろの方へと歩いていく。そしてましろに抱き着きながらソラの方を見ると、

 

「ソラ、きらい」

「!!?」

 

ぶっきらぼうにそう言ってしまう。それを聞いたソラはあまりのショックに呆然となってしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ひぐ」

「そ、そっか……それはまぁ……色々あったね……」

 

リビングでヤクモに顔を埋める絶賛傷心中のソラ。それだけ、エルに拒絶されたことがショックのようだった。ヤクモは一通り話を聞きながらソラの頭を撫でていたが、エルの方を見るといまだにエルは不機嫌そうに頬を膨らませたままソファを1人で占領していた。

 

「プチイヤイヤ期かもしれないね」

「プチイヤイヤ期?」

「こうしたい、ああしたい。自分の意思が通らないと拗ねたり泣いたり、大きくなる中でどんな子も通る道。だからソラちゃんが落ち込むことはないよ」

「わかってますけど……」

 

そんなエルの姿を見てあげはもソラに対してフォローを入れる。ヤクモに顔を埋めたまま涙声で返すソラを見ながら、あげはは動きを見せる。

 

「まあ、見てて。小さい子の扱いはちょっとコツがいるんだよ」

 

そうソラに語るとエルに近づいていき、しゃがんでエルと目線の高さを合わせる。

 

「エルちゃんの事も描いてほしかったんだよね?」

「……うん」

 

むすっとしていたエルだったが、あげはの言葉を聞いて頷く。やはり、エルも一緒の絵に描いてほしかったのだろう。だがましろがいなくなってしまったため、自分で自分を描いていたようだった。

 

「でも勝手に描いたら、ましろんがえーんしちゃうよ?だからだーめ。わかった?」

「……」

 

優しく諭すあげは。しかしエルから見たら自分の事をわかってくれたと思ったらやっぱりそうじゃなかったと思ってしまったのだろう。ソファから降りると今度はツバサに抱き着き、むすっとした顔であげはを見ると、

 

「あげは、きらい」

「!!?」

 

またしてもぶっきらぼうにそう言ってしまう。そのショックによって完全に意気消沈してしまったあげははふらふらとソファに座るとそのまま項垂れてしまう。

 

「……どうしようか」

「どうしましょう……とりあえず機嫌を治してもらわないと」

 

エルに機嫌を治してもらおうとツバサが脚に抱き着いてきたエルを抱っこする。ツバサに抱っこされているとちょっとだけ落ち着くのか、先ほどの冷ややかな目線はなくなったようだが、依然として不機嫌そうなのに変わりはない。と、リビングの扉が開き、ヨヨが入ってくる。

 

「それなら、このチラシが役に立つと思うわ」

 

そう言いながらヨヨが見せたのはソラシド写真館のチラシだった。

 

「ソラシド写真館?そういえば七五三の時の写真そこで撮ったような」

「そうなの?」

「家に七五三の写真が残ってたからそうだと思うよ。でもレンタル衣装100種類ってそんなにあるのか……」

「おしゃれキッズ……かぁ」

 

チラシの謳い文句はなんと、100種類もの衣装を取り揃えてるという文面。そこまであったのかとヤクモとましろとあげはが驚く中、いろんな服を着れると知ったエルが楽しみそうに目を輝かせる。

 

「えーるぅ!」

「「「「「!おしゃれキッズ発見!?」」」」」

 

エルが食いついたのを見て、5人はこれだと言わんばかりにエルを指差す。皆から指を指されたエルは、たくさんの衣装を着れることが楽しみそうに満面の笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トレーニングジムで黙々とベンチプレスを行う、トレーニングウェアに身を包んだミノトンがいた。普段の和服であれば目立ってしまっていただろうが服装だけならこの場に適したものということもあり、特に不審に思われる様子はなかった。だが、そのトレーニングの様子を、2人の男が感心したように、だがどこか引き気味に見ていた。

 

「ミノさんやっべぇ……」

「ミノさん?」

「ここんとこ毎日来てるよ。ベンチプレス500キロとかマジやばい。人間越えてるっしょ」

「……それよくシャフトが持つな。つーかそもそも人間なの?」

 

1人の男がミノトンの偉業を若干興奮気味に話すと、冷静なもう1人の男がそれはおかしいだろうと指摘する。それを聞き、改めて考えてみると色々おかしい点があると気付いたようだ。

 

「そういえば、確かに……?」

 

と、ミノトンの常人離れした行動を見て不思議そうに首を傾げる男たち。そんな2人の目など一切気にしていないでただただ集中してベンチプレスをしていたミノトンだったが、ふとミノトンの視界が急にぶれ始め、ミノトンは途端にあることを確信する。

 

「!この気配は!」

「何をしている?ミノトン」

 

途端に周囲の景色が禍々しいものへと変わっていき、闇の空間の中にミノトンは移動させられていた。そこで冷たい女性の声をかけられたミノトンは即座に持っていたバーベルをベンチプレスへと投げ捨てると、ベンチプレスの方が破壊される。そしてミノトンは姿の見えない声の主に向かって膝をつく。

 

「筋肉を鍛えております!プリキュアを倒すために!」

「私はプリンセスエルを連れて来いと命じたはず」

「恐れ入りますが」

 

その声の主から授かった任は確かに理解している。しかし、それでもミノトンには譲れない一線があった。そのため、彼女の命にそぐわないということを理解しつつも、プリキュアと戦いたいと言う自分の意思を口にする。

 

「目の前の強敵を見逃すわけにはまいりません」

「私の言うことが聞けないのか?」

「我は陛下の忠実な駒。ですが同時に強さを追い求めずにはいられぬ、愚かな武人故」

 

ミノトンが女性に対し、確固たる自分の意思を述べる。瞬間、彼女の怒りに触れたのか雷鳴が落ちミノトンを焦がしていく。

 

「ぐうううう!?」

 

その威力にはさすがのミノトンも耐え難かったのだろう、そのまま倒れてしまう。そのミノトンに、黒ローブの男が近づいてくる。その人物を見たミノトンは、その人物を知っているのだろう。驚いたような表情を見せる。

 

「お、お前は!」

「開け」

「!?うおおおおお!?」

 

男が手を翳して呟くと、アンダーグエナジーの穴が開かれる。その中へと沈んでいくミノトン。先ほどの雷鳴のダメージもあってか抜け出すほどの力は残っておらず、もがきながらも沈んでいってしまう。ミノトンが完全に沈んだのを確認して穴を閉じる男。中々成果を出さないミノトンを処理した男を見て、女性も安心したような声を漏らす。

 

「頼れるのはお前だけ。行け、プリンセスを私の元に。そして……可能ならばあの男を連れてこい。ミノトンの要らぬ思慮ではあったが……思わぬものも見れた」

「……仰せのままに」

 

女性の命を受け、ローブの男は頭を下げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

一報その頃。写真館に到着したエル達は、スタッフから衣装についての説明を受けていた。タッチパネルを使い、着用したい衣装を選んでほしいという。その衣装の数々を見たましろ達は、

 

「夢みたいな可愛さだよ!」

「これ!私、これにします!」

「……お2人のために来たんじゃないんですけど」

 

とにやけ顔になりながら可愛い衣装の数々に大盛り上がり。そんな2人を呆れたように見ながら、ツバサが呟く。そしてあげはがタッチパネルを操作しながらエルにいろんな衣装を見せていく。

 

「どれにする?エルちゃん……うぇ!?」

 

画面を食い入るように見ているエルはどんな衣装なら気に入るか。そんなことを考えながらパネルを操作していたあげはだったが、ページを切り替えた時に見えた衣装を見て唖然となってしまう。

 

「ちょっ、これ……!?」

「?一体何が……って、え!?」

 

あげはがそんな表情を見せるような衣装とは一体何なのか。ヤクモも気になって覗いてみると、そこにはなんと、5人のプリキュアの衣装が載っていた。

 

「こちら当館オリジナルの衣装となっております。街で噂の謎のヒーロー、その名は」

「プリキュア!!」

「あら知ってるのね!」

 

その衣装を見たエルが興奮気味に声を上げる。しかし、まさか自分たちの衣装を元に子供用のレンタル服を作っていたといは。全く予想していなかった事実にあげはも驚きが隠せない。

 

「子供に人気なのは知ってたけど……」

「わー!」

「どのプリキュアが一番好き?」

「あえ?」

 

店員さんからすれば何気ない一言のつもりなのだろう。実際、質問としては何もおかしくはない。しかし、店員は知らない。あげは達がそのプリキュア本人だということを。

 

「「「「「……」」」」」

 

エルと店員は気付いていないが、5人の仲に奇妙な雰囲気が流れる。この答えで、エルの一番好きなプリキュアが決まってしまう。自分の名前を呼んでくれるのかどうか、そわそわしてしまう。エルは店員の質問に考え込むが、やがて答えが出たのだろう。満面の笑みで、

 

「みんなすき!!」

 

そう答える。それを聞いた5人はほっとして、その光景を見て店員は不思議そうに首を傾げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

プリキュアの衣装をレンタルして行われた撮影会が終わったのは夕方だった。それぞれの衣装を来て、一緒に撮ったツーショット。そして最後に、プリキュア以外の衣装でエルが一番気に入った明るい紫のドレスの衣装を着たエルと一緒に皆で撮った集合写真。それを手に、6人は充実した様子で虹ヶ丘家へと戻ろうとしていた。

 

「プリンセスの為に行ったのに、なんだかこっちの方が楽しんじゃったな……」

「ふふ、ヤクモ君、エルちゃんはどう?」

「ああ、寝ちゃってるよ」

「はしゃぎすぎちゃったんですね」

 

トランクの巣箱の中から楽しそうに苦笑してしまうツバサ。元々エルに機嫌を治してもらうために来たのにいざ撮影会が始まってしまったら自分達の方がノリノリになってしまった気がする。そんなツバサの言葉に同意するように笑いながら、エルの隣に座るヤクモにエルの様子を問いかける。ヤクモがソラと共にエルの方を見ると、エルはすっかり満足してしまったのか眠ってしまっていた。

 

「……やくも?そら?」

「はい」

「どうしたの?」

「……だいすき」

 

ヤクモがエルの頭を優しく撫でてあげると、どうやら起こしてしまったようで、寝ぼけた様子で隣を見てヤクモとソラの名を呼ぶ。ソラとヤクモが優しくエルに声をかけると、エルは嬉しそうに言いながらヤクモの指を握ったまま眠ってしまう。その様子を愛おし気にヤクモとソラも見つめる。

 

「私も、大好きですよ」

「俺もだよ」

 

そう言いながら、エルに手を伸ばすためにもヤクモに体を預けるソラ。そしてヤクモが握るエルの手をソラも優しく一緒に握る。その様子をましろも嬉しそうに見つめていた。だが、ソラの顔が段々寂しそうな表情へと変わっていく。

 

「……アンダーグ帝国との戦いが終わって、世界に平和が訪れて、もうプリキュアがいらなくなった時……エルちゃんはスカイランドに帰って、私たちのプリンセスから皆のプリンセスになる。それがエルちゃんのためです……なのに、エルちゃんが大きくなるの、ずっと傍で見ていたい……今、そう思ってしまいました……未熟です」

 

戦いが終わった後の事を考えたソラ。エルは自分たちの元ではなく、本当の親である王様と王妃の元に戻るだろう。そうすれば、エルはスカイランドのプリンセスとして本当の姿を取り戻すのだ。そうなったら、エルは自分たちの手から離れてしまう。それが、とても寂しいと感じてしまったのだろう。他の皆も、同じような寂しさを感じており、ヤクモもその寂しさを紛らわせるように空いた左手でソラの左手を握る。するとソラの方もヤクモの手を握り返す。

 

「……いつか、離れ離れになる日が来る。でもそれは、今日じゃないよ」

「……はい」

「その日が来るまで、僕達のプリンセスを、エルちゃんを一緒に守っていきましょう」

「……はい!」

 

そんなソラの様子を見て、助手席からましろが声をかける。その言葉に頷くソラに、ツバサも後ろから声をかける。ヤクモも、その通りだとソラの顔を見て頷くと、ソラも元の表情に戻って頷く。

 

「ふふ……っ!?」

 

落ち込んでいた皆が立ち直ったところを聞いてよかったとあげはが思ったのもつかの間、目の前に人が現れ慌ててブレーキを踏み込む。

 

「「うわっ!?」」

「「きゃあ!?」」

 

突然の急ブレーキに4人の体が引っ張られる。慌ててヤクモはエルを抑えながらその衝撃に耐えていると、なんとか車は停止したようだった。

 

「ど、どうしたんですか!?」

「!?た、確かに人が……」

「っ!?あげはさん、すぐに車を出して!」

「え!?……え!?」

 

今、人が目の前にいたはずだが、その人物は消えてしまっていた。そのことにあげはが困惑した直後にヤクモがすぐに車を出せと強い口調で声を上げる。そのただならぬ声音にましろとソラがヤクモの顔を覗き込むと、冷や汗を流しながら何か、やばい気配を感じている様子で車の後ろを見ていた。あげはが言われるがままにアクセルをベタ踏みしながらミラー越しに後ろを確認すると、なんと先ほどまで前にいたはずの謎の人物がそこにいたのだ。

 

「誰!?」

「まさか、アンダーグ帝国の新たな敵!?だったら、戦いましょう!」

「……やばいよ、あれ」

「え……」

 

その人物の不穏さに気付いたツバサがそう提案する。しかしあげはは真剣な表情のまま、ツバサの言葉に待ったをかける。ヤクモは急ブレーキで起きてしまい、怖がるエルの手を握りながら言う。

 

「……あいつ、わざとアンダーグエナジーを出してきていた」

「ど、どういうことですか!?」

「俺達に、自分の存在をわざと知らしめようとしてきた。でも、それは……今まで感じたことがないほどだった」

「私も、只者ではないと思います。一瞬見えたあの目……戦いの前に付き物の昂ぶりも、緊張も、怒りも憎しみも、何もありませんでした」

 

その異質さは、ソラも理解していた。ヤクモはその気配で断定したが、目でより詳細にその異質さを見たソラの手は、未知の脅威を目の当たりにした恐怖と不安からか震えていた。

 

「あんなに冷たい目……見たことがありません……!?」

 

とにかく、ここですぐに戦うのは危険だ。戦うなら何かしら作戦を立ててからだとあげははもっと車の速度を上げようとする。が、突然車の上の方から何かが落ちてくる音が響く。その音が、謎の人物が車の上に飛び乗った音だと気付くのに時間はかからなかった。

 

「どうやって!?」

「っ?!」

「開け」

 

さらに速度を上げて振り払おうとする。しかし、それを待っていたかのように謎の人物が呟くと、アンダーグエナジーのトンネルが車の前に出現する。そしてあげはが次の行動をとる間もなく、車はトンネルの中へと入っていってしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

トンネルを抜けた先に遭ったのは霧が深い駐車場だった。おそらくは山の中だろうか。考える間もなく、急ブレーキをかけて止まったあげはは、困惑した様子で辺りを見渡す。

 

「ここ、どこ……!?」

「ああ!?」

 

さらにソラの悲鳴が聞こえてくる。皆が後部座席に視線を向けると、なんとそこにはヤクモとエルの姿が消えてしまっていたのだ。

 

「エルちゃんと、ヤクモさんが!」

 

震える声で2人がいなくなってしまったことを報告するソラ。直後、4人は慌てて車の外へと飛び出して2人を探すために声を上げる。

 

「プリンセス!!」

「どこにいるの!?返事して!!」

「ヤクモ君!!大丈夫なの!?」

「お願いします!声を……!?」

 

ソラが声を上げかけたその時。目の前にヤクモが落ちてくる。そのまま勢いよく背中を打ち付け、悲鳴も出せずに痛みに顔を顰めるヤクモの元に4人が駆け寄るも、ヤクモは声を出せないまま、顔を動かして上を見ろとソラ達に伝える。ソラ達が空を見ると、

 

「エルちゃん!?」

 

アンダーグエナジーで作られた球体の中に閉じ込められ、泣きながら内側から球体を叩くエルが、アンダーグエナジーのトンネルへと吸い込まれそうになっている姿があった。そのまま、エルは4人が行動を起こす間もなくトンネルの中へと吸い込まれてしまい、消えてしまう。

 

(嘘だよ……こんなの、嘘……さっきまで、あんなに楽しかったのに……こんなのきっと、悪い夢……)

「ヤクモさん!何があったんですか!?」

「トンネルの中で……エルちゃんがアンダーグエナジーに包まれて……それを止めようとしたけど、あいつに叩き落された……!」

 

ツバサがヤクモに何があったのかと詰め寄る。ヤクモは痛む体を起こしながら、ある場所を睨みつける。ツバサ達がヤクモの見ている方角を見ると、そこには先程の謎の人物がいた。その人物がアンダーグ帝国の刺客なのはもう明らかだ。5人は無言のままミラージュペンを構え、プリキュアへと変身するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「える……!?」

 

アンダーグエナジーのトンネルを通過したエルが辿り着いたのは、洞窟のような場所だった。洞窟内の景色を活かし、装飾などがない殺風景な景色だが、何となくだが雰囲気がスカイランドで玉座があった間に似ている気がする。

 

「そら……?やくも……?ツバサ……?ましろ……?あげは……?どこ……?」

 

その真ん中に落とされ、球体が割れる。自由を取り戻したエルだったが、ここがどこなのか全く分からない。どこかもわからない場所で、誰もいない。そんな場所に1人きりで落とされたエルの背後から、笑い声が聞こえてくる。

 

「ふふふ……」

「!?」

 

エルがその声の主の正体を確かめるように振り向く。少しでも誰かの姿を見て安心したかったのだろう。そこに現れた女性の姿と雰囲気を見て、その人物が自分の求める味方ではないことは一瞬で理解してしまう。だが、エルはその女性を見て驚いてしまう。

 

「……やく、も……?」

 

無意識だったのだろう。だが何故その女性を見てエルはヤクモの名を呟いたのか。だが、その理由をエルはすぐに気付く、目の前にいる、王族特有の気品を感じさせるドレスを纏った暗めの赤と金色の髪の2つを持つ金色の目の女性。その姿はまさしく、

 

「ヤクモ、か。そう呼ばれていたな、あの子は」

 

かつて、ミクモのアンダーグエナジーによって変わったキュアクラウドの姿。それが彼女と重なっていたのだ。見た目も性別も違う、しかしその髪の色や目は、まさに同一のものだった。そして女性はエルに驚愕の事実を告げるのだった。

 

「似ているか?そうかもしれんな……何故ならあの子は、アンダーグ帝国王家の血を継ぐ者なのだから」

「える!?」

 

目の前に現れた女性の姿から告げられたヤクモの衝撃の事実に驚愕するエル。そんなエルの目の前に鏡のような円形の物体が現れ、そこに、駐車場で対峙するローブの人物と、プリキュア達が映る。そしてエルの不安と心配な視線は、クラウドへと向けられていたのだった。

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