5人のプリキュアと謎の人物が対峙する。5人はその人物の睨みつけながら声を上げる。
「エルちゃんを返しなさい!!」
「答えろ!プリンセスはどこだ!!」
「アンダーグ帝国へ送った」
無機質な声でそう返す謎の人物。その光景を、実際にアンダーグ帝国の送られたエルは見せられていた。
「エルちゃんが……」
「アンダーグ帝国に!?」
「そんなの、嘘に決まってる!」
「嘘?嘘はつかない」
そんなことがあってたまるか。目の前の現実を認められずに叫ぶプリキュア達を一蹴する謎の人物。エルが連れ去らわれたのは紛れもない事実。となればその行き先がアンダーグ帝国なのも当然の話だ。
「私が求めるのは真実のみ」
そう呟き、ローブを脱ぎ捨てる。そこから現れたのは、モノクルを付け、2本の角を生やした細身の男だった。
「私はスキアヘッド。帝国の支配者、カイゼリン・アンダーグ様の命により、プリンセスエルを頂いた」
「カイゼリン・アンダーグ……?」
淡々と、自らの行動とその意図を述べていくスキアヘッド。その話の中に出てきたカイゼリンという名前。アンダーグ帝国を統べる人物の名が明らかになるも、今はそんなことを気にしている余裕はない。
「私はプリンセスを連れてくるように。そしてもう1つ命を受けた」
「「「「「!!」」」」」
5人が身構える。エルを連れ去ることはアンダーグ帝国の目的として正しいのだろう。しかし、それ以外に目的があるとすれば、それはバッタモンダーやミノトンがやろうとしていたように、自分達を倒すこと。そう予測するもスキアヘッドから告げられた言葉は予想外のものだった。
「キュアクラウド。いや、ヤクモと呼ばれていたか」
「!」
「カイゼリン様は、お前がアンダーグ帝国に下ることを所望している」
「なっ!?」
スキアヘッドの告げた言葉の内容に、スカイが驚愕したような声を上げる。スカイだけではない。5人全員がまさかの発言に驚いていた。
「クラウド。お前が私と共に大人しく来ると言うのならば、他の者には手を出さない。今日の所はここで帰ろう……カイゼリン様のお気持ちが変わらなければお前たちは助かるかもしれない」
「断る!」
スキアヘッドの誘いに、クラウドは明確な否定の意思を示す。その意見に同調するように、スカイ達も頷く。
「クラウドが、アンダーグ帝国につくことはあり得ません!」
「そうだ!!プリンセスを連れ去った挙句、クラウドまで連れて行こうだなんて、そんなこと、許すわけがない!」
スカイとウィングもスキアヘッドを激しく攻め立てる。だが当のスキアヘッドはどこ吹く風。そしてその様子をアンダーグ帝国から不安そうに見ていたエルは、その背後の赤髪の女性、カイゼリンのどこか呆れたような声を聞く。
「やれやれ……似ているな」
カイゼリンの呟きにはどんな意図が含まれているのか。エルがそれを考えようとした瞬間、中継されているプリキュアとスキアヘッドの戦いが始まる。
「はああああ!!」
スカイがスキアヘッドへと殴りかかる。その拳を前に、スキアヘッドは軽く後ろに跳びながら背後に出現させたトンネルの中へと入り込んで消えてしまう。そして別の所に出てきたスキアヘッドへ今度はウィングが攻撃を仕掛ける。
「うおおおおお!!」
再びトンネルの中へと入り込み攻撃を回避するスキアヘッド。そして空中へと出てきたスキアヘッドへ向かって、
「ええい!」
プリズムが大量の光弾をさらに上空から放つ。それらを回避していくも、そのうちの1発が右腕に命中してスキアヘッドの体勢が崩れたところに、着弾によって生じた煙を突き抜け、アンブレランスをランボーグへと変換させたクラウドが現れる。
「っ!」
スキアヘッドの無機質な表情が一瞬、クラウドの右腕を見て険しくなる。直後、クラウドの右腕から放たれた槍をスキアヘッドが左手にアンダーグエナジーを纏わせて受け止める。槍がアンダーグエナジーとぶつかり合い、甲高い音が響く中、無表情ながらもその威力を感じ取り、スキアヘッドが感心したような呟きを漏らす。
「ほう」
「やああああ!!」
スキアヘッドの意識がクラウドへと向けられているところにバタフライが割り込み、スキアヘッドに強烈な跳び蹴りを放つ。それを右腕で受け止めるも、そのまま勢いよく吹き飛んでいってしまう。だが、
「開け」
出現させたトンネルの中へと入り、何事もなかったかのように地上に現れる。全く自分たちの攻撃が通じていない、簡単にいなされる相手。エルを簡単に連れ去ったという事実だけではなく、これまで戦ってきたランボーグやアンダーグ帝国の刺客とは比べ物にならない実力を前に5人の表情はさらに険しくなる。
「……返しなさい」
だが、今の5人に恐れはなかった。それよりも、怒りが込み上げていた。
「私たちのエルちゃんを……!!」
拳を強く握りしめ、スカイが言う。そして、
「「「「「返せ!!」」」」」
5人が同時にスキアヘッドへと突っ込んでいく。その姿を見ながら、エルが必死に応援の言葉を上げる。
「がんばえー!ぷいきゅあー!!」
「……守れ」
だが、5人の怒りとエルの言葉は無意味だと言わんばかりに、スキアヘッドが静かに呟く。瞬間、スキアヘッドを覆うようにアンダーグエナジーのバリアが出現し、5人の攻撃を受け止める。
「っ……!?」
触れただけで、その膨大なアンダーグエナジーを感じ取って冷や汗を流すプリキュア達。それでも絶対に退くわけにはいかない。このバリアを破壊し、スキアヘッドに何としても一撃を与えようとするも、
「弾けろ」
スキアヘッドの無慈悲な宣告と共にバリアが弾け飛ぶ。さらに膨大なアンダーグエナジーは無数の弾丸となって吹き飛ばされたプリキュアを襲う。
「「「きゃあああああ!!」」」
「うわあああ!!」
「があ!?」
攻撃に全ての意識を割いていたことでスキアヘッドのカウンターに全く反応することができずにその攻撃をまともに喰らってしまう。4人の体が地面に転がり、体を動かすこともままならなくなってしまう中、スキアヘッドはこれで終わりだとゆっくりと口を開く。
「ないのだ。プリンセスを助ける術は」
「……」
スキアヘッドの視界に、立つ者は1人だけだった。それはキュアクラウド。アンダーグエナジーの弾丸をその身に受けながらも、自らの特性によって耐えていた。
「既に全てが終わっているのだ。そしてお前たちも」
スキアヘッドが手を上げると、トンネルが上空に開かれる。そこから、どす黒いアンダーグエナジーがこちら側に入り、それはクラウドの周囲を漂い始める。
「だがクラウド。お前がそのアンダーグエナジーを受け入れ、カイゼリン様の元へ下るならば残るプリキュアを見逃してやろう」
「……」
「だ……駄目……」
全身に流れる痛みに表情を歪めながら、スカイがクラウドに制止する声を上げる。クラウドも、そのアンダーグエナジーがまるで生き物のように動いているのを感じていた。そして、本当に自分が寝返ったところで本当にスキアヘッドが皆を見逃すのかはわからない。だが、今動けるのは自分だけ。そして今の自分の攻撃力ではエルを助けるどころかスキアヘッドに勝ち目はない。いや、そもそも仮に勝てたとしても、スキアヘッドはアンダーグ帝国に撤退するだけだ。自分達にエルを助けに行く方法はない。それを可能にするための唯一の方法は1つだけ。
「本当に、俺がこの力を受け入れれば見逃すというんだな」
「そうだ」
「「「「クラウド!!」」」」
クラウドの最終確認の言葉に4人が必死に制止する声を上げる。だが、スキアヘッドの肯定の言葉を聞いたクラウドは周囲のアンダーグエナジーを一瞥すると、それを受け入れる意思を示す。瞬間、アンダーグエナジーが待ち侘びていたかのようにクラウドの体内へと入り込んでいく。
「うおおおおおおお!!」
クラウドの全身にアンダーグエナジーが満ちていき、暗い赤色の髪に金色の瞳へと変わっていく。その服装も以前、ミクモによって変えられた姿となっており、右腕に付けられていた、スキアヘッドの反撃によってボロボロになっていたランボーグも完全に修復される。
「あ、ああ……クラウド……」
アンダーグエナジーを取り込み姿を変えたクラウドが、ゆっくりとスキアヘッドを見る。
「よくぞ、力を求め、アンダーグエナジーを受け入れた。お前の決断を私は尊重しよう。カイゼリン様もお喜びだろう」
これまでとは打って変わり、クラウドを称賛するような言葉を口にするスキアヘッド。声音こそ無機質なのは変わらないが、そんな彼でも喜びを感じているようには聞こえてきた。
「なんで……」
「そんな、クラウドが、また……」
「嘘だよ……嘘だよね……エルちゃんだけじゃなくて、クラウドまで……」
「ヤクモさん……行ったら……行っちゃ駄目!!」
4人はクラウドまでも奪われてしまうと言う最悪の結果を前に、完全に戦意が失われつつあった。そんな中、スカイから飛び出した悲痛な言葉に、クラウドが一瞬スカイを見る。その時、スカイは気付いた。それは以前ミクモに変えられた時とは雰囲気も、顔も違っていることを。それに気付いたスカイは、ある事実に辿り着きはっとなる。
「共に帰ろう。我らのアンダーグ帝国へ」
スキアヘッドがそう言い、トンネルを出現させようとする。その時だった。スキアヘッドの眼前に高速で移動してきたクラウドが、躊躇なくその頭部に右腕を叩きこもうとする。その右腕をスキアヘッドは咄嗟にアンダーグエナジーを纏わせた左手で受け止める。次の瞬間、槍が再び射出されると、なんとスキアヘッドの左腕の守りを貫通し、勢いよく突き刺さる。
「っ!!」
スキアヘッドの表情が初めて苦痛で歪む。表情を歪めながら即座にクラウドに蹴りを叩き込んで吹き飛ばそうとするが、それをクラウドは黒い雲で受け止める。しかしその雲を蹴るようにして自分の方が後ろに跳び、距離を取るスキアヘッド。そして傷ついた左腕を一目見てからクラウドを見据える。
「……何のつもりだ?」
「見た通りだ」
アンダーグエナジーを受け入れたはずなのに、クラウドにははっきりと自我が残っていた。アンダーグ帝国につく、などという思考は一切なく、むしろこちらを倒そうとしている。スキアヘッドは無表情のままクラウドへと問いかける。
「それがお前の答えか。プリキュアが死ぬぞ」
「お前を倒せばいい」
「アンダーグ帝国へ行けなくなるぞ」
「散々目の間でやってみせただろう。覚えて行けばいい。お前を倒し、アンダーグ帝国に乗り込み、エルちゃんを助ける。そのための力を得て、強くなる……それが俺の答えだ」
「最強にでもなるつもりか」
スキアヘッドとの問答に、クラウドもまた冷静に返していく。全身を満ちていくアンダーグエナジーは、確かにクラウドに大きな力を与えていた。だがその中でもクラウドがはっきりと意識を保っているのは、ミクモとの戦いの経験故だろう。アンダーグエナジーを取り込んでも、クラウドの意識は完全に侵食されることはなく、それどころかアンダーグエナジーとプリキュアの2つの力を調和させ、より大きな力へと変えることが可能となっていたのだ。先ほどよりも明らかに強大な力を手に入れたクラウドに、スキアヘッドはある問を投げかける。それを聞いたクラウドははっきりと頷くと、
「それが目的のために必要なことならどんな手段を使ってもやってやる。そのために強さが必要ならいくらでも強くなる。お前たちアンダーグ帝国から皆を守り、エルちゃんを助けるためなら」
「……」
それを聞いたスキアヘッドは暫し目を閉じていた。やがて、スキアヘッドの口元に笑みが浮かぶ。
「最強を目指し、アンダーグエナジーを受け入れるその姿勢……素晴らしい」
「……」
「キュアクラウド。私がお前を叩き潰し、カイゼリン様の元へ連れて行こうではないか」
スキアヘッドがクラウドにそう告げた瞬間、今度はスキアヘッドの方からクラウドへと攻め始める。クラウドもまたほぼ同時に地面を蹴ってスキアヘッドへと迫ると同時に左腕にアンブレランスがくっついていたチェーンがアンダーグエナジーを纏って組み付いていく。それはもう1つのガントレットに変わっていき、スキアヘッドとの激しい肉弾戦を繰り広げる。その激しさは先ほどまでの戦いとは比べ物にならないもので、
「おぉおおお!」
隙を見つけ右腕から槍を放つ。スキアヘッドがそれを両腕を交差させて受け止めた次の瞬間に両腕を下から振り上げてスキアヘッドの腕を弾いて防御を崩し、そのままの勢いで勢いよく顎を蹴り上げる。その一撃はクリーンヒットし、高く打ち上げられるスキアヘッド。
「す、凄い……」
その光景を見て、ウィングが驚いたような声を漏らす。スキアヘッドが呼び出した膨大なアンダーグエナジーはクラウドの力を一時的にではあるがスキアヘッドに肉薄するレベルにまで上げていた。スキアヘッドもクラウドのパワーアップにどこか嬉しそうに笑みを零していたが、
「もっとお前の力を堪能したいが、あの御方をこれ以上待たせるわけにもいかない。クラウド、終わりにしようではないか」
「っ!?」
戦いはここまでだとスキアヘッドが空中で静止し、手を上にあげる。すると、あまりにも膨大なアンダーグエナジーが集まり、巨大な球体となっていく。それを見上げ、スカイ達の顔から血の気が引いていき、クラウドも険しい表情でそれを見上げながらそれを受け止めるように腕を交差させる。
「爆ぜろ」
スキアヘッドの呟きと共に球体が放たれる。それはクラウドに命中する寸前に大爆発を引き起こす。クラウドはその爆発をその身で受け止めていくと、爆発全体を自らのアンダーグエナジーと黒い雲を盾のようにして皆を守り、爆発の方はその身で受けることでどうにか耐えていく。
「クラウド!?」
スカイの声も爆発音にかき消されていく。そして爆発が消え、クレーターの中でなおも膝をつかずに立ち尽くすクラウド。しかしあまりのダメージにコスチュームは傷だらけになっており、その全身も傷だらけになっていた。そして、遂に膝をついてしまう。アンダーグエナジーの攻撃ならば対応ではできたが、爆発はその身で受け止めるしかない。ここで爆発を避ければ他の皆が巻き込まれてしまうため、クラウドには避ける選択肢は存在しなかったが、そのダメージはあまりに大きかった。
「……まだだ」
クラウドの全身に漲っていたアンダーグエナジーが消えていく。両腕のほぼほぼ死にかけのランボーグも元の素体へと戻っていき、そのアンダーグエナジーが体内へと取り込まれる。そして元のキュアクラウドの姿に戻ると共に傷はある程度癒えていくが、それでもダメージの全ては消しきれなかったようだ。
「エルちゃんを絶対に助ける……俺は、俺達は諦めない……!」
「「「「……!」」」」
クラウドの諦めない言葉を聞いたスカイ達は、激痛に耐えながらも静かに力を込める。5人の脳裏には、エルと過ごしたあの楽しい日々が蘇っていた。もう一度、あの日々を取り戻すため、そのために負けるわけにはいかないのだ。スキアヘッドの圧倒的な実力を前に一度は弱気になりかけていた心も、クラウドの奮戦によって闘志が蘇っていた。
「エル……ちゃん……!」
必死に体を起こそうとするスカイ。天に手を伸ばそうとしてどうにか立ち上がろうとするも、ダメージはやはり深刻だったのか、力が抜けてしまいそのまま倒れそうになる。だがその手を、プリズムが握り、引っ張り上げようとする。
「!!」
「う……うぅ……!絶対に……取り戻す……!」
プリズムの方も、体をふらふらしており、両脚は震えている。それでも必死に立ち上がろうとし、気力を振り絞るプリズム。その姿を見て、スカイも死力を尽くして全身に力を込めて立ち上がる。そして立ち上がったのは2人だけではない。
「う……ううぅ……!」
「ふ……う……!」
ウィングとバタフライも手を握り、互いに最後の力を振り絞って立ち上がる。4人の姿を見たクラウドも、ゆっくりと立ち上がると、アンブレランスを構える。
「……」
それを見たスキアヘッドは無言で再び膨大なアンダーグエナジーを球体状に集めていく。再びこれを爆発させれば、今度こそ4人のプリキュアは消し飛ぶだろう。そう、冷酷に視線で告げるスキアヘッドの姿と、必死になって立ち上がるプリキュアの姿を、エルは今にも泣きそうな表情で見ていた。
「「「「エルちゃん……!」」」」
「プリンセス……!」
5人がエルの名を呼び、残る力を全て出し尽くそうとする。だが、なんとか細い抵抗だろうかとカイゼリンは嘲笑する。
「カバトン、バッタモンダー、ミノトン。あの者達の手を煩わせたプリキュアもスキアヘッドの前では無力。すぐにでもプリキュアは倒れ、スキアヘッドはあの子を連れてくるだろう。ふふふ……」
カイゼリンの嘲笑を後ろから聞きながら、エルの瞳から涙がこぼれる。それが地面に落ちた時、エルはある決意をしたように目を閉じて両手を合わせ、何かを祈る。その瞬間、エルの体から紫色の光が溢れ出す。
「これは……」
次の瞬間。光がその空間を満たす。そして光が消えると、そこにエルの姿はなくなっていた。
「……」
それが、エルの力によるものなのか。それとも別の誰かの仕業なのか。カイゼリンには心当たりがあったが、それよりも消えたエルの行き先を確認するように視線を中継されている戦闘へと向けるのだった。
★
「「「「「!?」」」」」
暗い空が突然晴れていく。5人が顔を上げると、そこから光が降り注ぐ。
「……来たか」
スキアヘッドはそう呟きながら光を見る。そこには、1人の紫の髪の少女が空から降りてくる姿があった。
「誰……なの……?」
「ミクモさんに、似ている……?」
「いや、でも彼女からアンダーグエナジーは全く感じない……」
その容姿や雰囲気から一瞬、ミクモかと連想するが、すぐに違うとクラウドは判断する。それにミクモはそもそもこの場にいないのだから。5人が驚いたように少女を見ている中、スキアヘッドはまずは情報のほとんどない彼女への攻撃を優先することにしたのか、
「消し飛ばせ」
そう言い、アンダーグエナジーの球体を投げつける。だが、
「ひろがるチェンジ」
少女が呟くと同時にアンダーグエナジーが命中する。しかしそのアンダーグエナジーの中から、その人物は現れた。ウェーブがかかったクラウドよりも濃い紫色の長髪。全身に包まれた気品を感じせる紫と白を基調としたドレス。それに身を包んだ気高い戦士が、スキアヘッドへと攻撃を仕掛ける。
「まさか……」
「新しいプリキュア!?」
「守れ」
スキアヘッドは負傷していない右手を翳し、アンダーグエナジーのバリアで少女の攻撃を受け止める。少女は自らの右手に雷鳴のような光を溜めると、バリアへと勢いよく叩きつける。
「ふっ!」
激しいエネルギーのぶつかり合い。その中でスキアヘッドが少女へと問いかける。
「問おう。汝の名は」
「……キュアマジェスティ」
キュアマジェスティ。そう宣言した戦士は、アンダーグエナジーのバリアを浄化していく。浄化されていくことで崩れていくバリアの中、スキアヘッドは呟く。まるで役者は揃ったと言わんばかりに。
「キュアマジェスティ。その名前、知識の宮殿に記録しておこう」
そう言い残し、スキアヘッドがトンネルと共に消えていく。そして5人は、スキアヘッドがキュアマジェスティの手によって撤退する様を呆然と見ていたが、そのアンダーグエナジーの浄化と共に広がっていく閃光に視界が塞がってしまう。そして次に視界が戻ると、そこには完全に元通りになった周囲の景色と、霧が消え、夕暮れの空が広がっていた。
「……終わった?」
「キュアマジェスティは……?」
「消えた……?」
このわずかな時間で何が起こったのか理解できないでいた5人。ただわかることは、スキアヘッドは強力な存在であり、そのスキアヘッドをキュアマジェスティが撤退させてみせたということ。しかしそのマジェスティは姿を消してしまった。一体彼女はどこにいるのか。
「プリズムー!」
「「「「「!」」」」」
瞬間、5人の耳に聞き覚えのある声が聞こえる。はっとなってプリズムが声がした方向を見ると、そこにあった木の陰からなんとエルが出てきたのだ。エルは皆と再会できたことを嬉しそうに喜び手を振っている。
「エルちゃん!?」
変身を解いた皆が飛び出すように走り出して歩いてくるエルへと駆け寄る。ソラがエルを大事そうに抱えると、涙を流しながら喜びの声を上げる。
「エルちゃん……!」
「ソラ!」
「よくぞご無事で!プリンセス!!」
「よかった……本当に良かった……!」
「エルちゃん、怪我してない?」
「うん!」
ソラだけでない、他の皆も涙を浮かべながらエルとの再会を喜ぶ。その様子に、一歩遅れて駆けつけようとしたが、緊張の糸が切れたように座り込んでしまうましろ。
「エルちゃん……怖かったよね……ごめんね、ごめんね……守ってあげられなくてごめんね……!」
「ましろさん……」
エルを守り切れず、怖い思いをさせてしまったことを思うと涙が止まらない。両手で顔を覆って泣き始めるを見て、エルがソラの手から降りると、ましろに近づいていき、泣き出すましろの頭を撫でる。
「ましろ、なかないで。よしよし」
エルに頭を撫でられたましろはぎゅっとエルを抱きしめる。込み上げてくる感情を我慢できず、ましろの口からどんどんエルへの想いが零れてくる。
「もう絶対に離さないからね!」
「あい!」
ましろの言葉を聞き、エルも嬉しそうに返事をする。そんなエルとましろにあげはとツバサも嬉しそうに駆け寄る。その姿を見ながら、ソラは不安そうな表情を浮かべていた。
「……スキアヘッドと、カイゼリン・アンダーグ、か……」
ぽつりとヤクモが呟く。スキアヘッドの実力を一番肌で感じていたのはヤクモだった。それから自分達が戦う相手は今までとは違う。一段階上のレベルの戦いに入ってきたということをヤクモだけではなく、他の皆も感じていた。だが、今日の戦いを結果的に乗り越えたことで、ある決意が浮かんでいた。
(新たな敵、スキアヘッド……そして帝国の支配者、カイゼリン・アンダーグ……エルちゃんを守るために私たちは……もっと強くならなくては……)
そう静かに決意しながら、ソラは夕日をヤクモと共に見るのだった。