「ハカイ……ハカイィ……モットハカイシテヤルゥ……」
人々が逃げ惑う街中で、重い体を引きずるようにミノトンが歩いていた。だが、そのミノトンの体は明らかに巨大化していた。その身長は街路樹に匹敵するほどにまで伸びており、体格もそれに比例するように巨大なものとなっていた。だが、何よりも異質なのは光のない目と、意識が残っているかどうかも定かではないその声音だろう。ただただ破壊衝動だけが残っているかのような姿をスキアヘッドは見下ろしていた。
「……」
気配を感じ、スキアヘッドが視線を動かす。ミノトンもその足音が耳に入ったのか振り向く。その先には、こちらへ走ってくるヤクモ達の姿があった。
「いました!鳥さんが言った通りです……!」
「!!プリキュア!!」
プリキュアの姿を見つけたミノトンが両腕を振り上げながら鼻息を荒くする。破壊衝動だけではなく闘争心も残っているようで、プリキュアを倒すべく今にも襲い掛かりそうな雰囲気を感じさせる。
「あれ……本当にミノトンなの……?」
「あの姿が……?」
「俺達が知るミノトンよりも凄く大きくなっている……だけど、意識がないのか……!?」
「……来たか」
だが、ミノトンは動こうとはしない。まるで何かを待っているように。そんなミノトンの変わり果てた姿を驚いたようにヤクモ達が見ていると、こちらを見下ろしてくるスキアヘッドの声が聞こえてくる。
「スキアヘッド!?」
「奴は、アンダーグエナジーで生まれ変わった。我らの目的を果たす忠実な僕としてな」
「プリキュアァア!!タオスゥウウ!!」
スキアヘッドが右手にアンダーグエナジーを生み出す。スキアヘッドに早く命令を出してほしいと言わんばかりにスキアヘッドが覇気を見せる。今にも襲い掛かりそうな状態をどうにか我慢しているような姿。だが、その姿を見てソラは怒りに拳を震わせていた。
「シャララ隊長に使ったのと同じ手を……ただただ自らの操り人形として利用するためだけに……許せません!」
ソラが思い出したのはバッタモンダーがシャララにアンダーグエナジーを注ぎ、ランボーグとしたことだ。それと同じく、スキアヘッドは他人を道具を使い捨てるかのように酷使しているのだ。そこにはミクモのような酌量の余地も一切ない。絶対にスキアヘッドの行いを許してはいけないと声を張り上げる。
「プリンセスはお前なんかには渡しません!」
「もはやプリンセスを連れて行くことに我らはこだわっていない」
「こだわっていない……?」
ミノトンの力を使ってエルを連れ去ろうとしているのだろう。だが今度は前回のような不覚は取らない。そう考えていたヤクモ達にスキアヘッドはまさかの言葉を口にする。
「ここで、貴様ら諸共消えてもらう……」
「える……!?」
今まで、アンダーグ帝国の刺客たちはエルを連れ去ることを目的としていた。だが、今回スキアヘッドはエルを抹殺するために現れたのだ。その理由はおそらく、エルがキュアマジェスティへと変身したからだろう。今までは抵抗する力を持たなかった彼女が、それを可能とする力を手に入れた。となれば、アンダーグ帝国の方針も変わらざるを得ないということか。
「「「そんなことさせない!」」」
「プリンセスは安全な場所へ!」
「お前たちがどんな目的で来たとしても、俺達は負けない!仲間にすらこんな酷いことをする奴らには絶対に!」
そんなことは当然許さないと、ソラ達がエルを守るように前に立つ。そしてヤクモは、ミノトンを見上げる。スキアヘッドがどういう理由で自ら戦わず、ミノトンに一任しているかはわからない。だが、敵だったとはいえ本人なりにしっかりとした矜持を持っていた彼の意識をアンダーグエナジーによって塗りつぶし、利用するような非道を許すつもりはなかった。5人はスカイミラージュを手に取り、プリキュアへと変身する。
「やれ、ミノトン」
それだけ言い残し、スキアヘッドがトンネルの中へと消えていく。どうやらスキアヘッドからすれば今のミノトンでプリキュアは十分だと判断したようだ。そしてスキアヘッドからやっと戦闘の許可をもらったミノトンが歓喜を含んだ怒りの声を上げる。
「ギョイギョイィイイ!!」
勢いよく両手を握り、地面へと叩きつける。それは堅いコンクリートの地面を簡単に砕き、小さなクレーターを生み出すほどの威力。これをまともに喰らうわけにはいかないことを認識しながら、ミノトンの腕をプリズムとバタフライが駆け上っていく。2人を振り払うようにミノトンが腕を振り上げるが、その直前に2人は離脱。そして腕が上に上がったところを見計らい、2人が光弾と蝶の光で攻撃する。
「!!」
「ヒーローガールスカイパンチ!!」
ミノトンが若干怯んだところを狙い、スカイが攻撃を仕掛ける。それはミノトンの胸部にクリーンヒットする。だが、
「フン!!」
「!?」
勢いよく胸部に力を込めると、なんとスカイパンチを跳ね返してしまう。そのまま勢いの止まったスカイをミノトンは両手で挟み込む。
「「「「スカイ!?」」」」
「う……ぐ……!?」
「ツカマエタゾォ……」
締め付けられる痛みに顔を顰めながら、どうにか拘束を脱しようともがくスカイ。だが、スカイパンチすら抑え込めるミノトンの力に敵うわけもなく、むしろ拘束する力はどんどん強くなっていく。
「マズハオマエカラシマツシテクレル……」
「う、うぁ……!」
「スカイ……!」
このままでは握りつぶされてしまう。全身にミシミシと嫌な音が鳴り始める様子を遠くから見ることしかできないエルが、涙を目元に浮かばせながら祈るようにか細い声を上げる。
「ひろがるちぇんじ……ひろがるちぇんじ……!エル、つよいの……」
だが、エルがいくら念じてもミラージュペンは出てこない。エルが変身することができず、スカイがミノトンに潰されようとしたまさにその瞬間、ミノトンの頭部にクラウドが取り付く。
「グォ!?」
「とりあえず……目を覚ませ!」
ミノトンの頭部に両腕を押し付け、クラウドが声を張り上げながらアンダーグエナジーを頭部から吸収し始める。それによってミノトンが苦しみ始め、スカイもミノトンの腕から逃れる。
「オ……オ……お……」
苦しんでいたミノトンの目に徐々に光が戻り始める。苦しんでいる様子だったが、ミノトンの意識が戻るにつれてその苦しみも和らいでいったように落ち着き始める。
「お、お前は……クラウ……グァアアア!?」
「うわっ!!?」
しかし、いきなりミノトンの全身からアンダーグエナジーが吹き上がり、ミノトンの意識が再び塗りつぶされてしまう。さらにその衝撃でヤクモが吹き飛ばされてしまう。
「クラウド!?大丈夫ですか!?」
吹き飛んだクラウドをスカイが受け止める。スカイに受け止められながらクラウドは再び全身からアンダーグエナジーを意識諸共放出するミノトンを見据える。
「ああ、俺は大丈夫……倒せなくても意識さえ戻ればミノトンのことだから仕切り直しを受け入れると思ったんだけどね……」
「確かに……ミノトンであればこのような戦いは望まないと思います……ですが、そのミノトンの意識すら奪ってしまうとは……」
クラウドの言葉に同意しながらも、スキアヘッドが施したアンダーグエナジーによる意識の忘却の強力さに戦慄するスカイ達。だが、クラウドの一手は効果自体はある。それがわかっただけ成果としては上々だと結論付けながらクラウドは立ち上がる。
「イナ……イナイナイナァ!!イナァアア!!」
「「「「「!!」」」」」
アンダーグエナジーの中、ミノトンが咆哮を上げながら構え、両手にエネルギーが溜まっていく。
「サイキョウノワレノコウゲキヲォオオオ!!」
ミノトンが両手を突き出すとともに禍々しい闇のエナジーが放出される。咄嗟にバタフライがシールドを展開して受け止めるも、ミノトンの砲撃の威力はあまりにも高すぎるのか、シールドに簡単にヒビが入っていく。
「バタフライ!」
「クラウド!」
クラウドも即座に飛び出し、バタフライのシールドに手を当てて抑える。クラウドの雲がシールドのヒビに入り込んでいき、シールドを補修していく。だが、2人がかりでシールドが攻撃に耐えることはできてもあまりの威力に2人だけでの踏ん張りでは耐えきれず、徐々に後ろへと押し出されていく。
「く……」
「まず……!」
「ムダムダムダァ!!アキラメロォ!!オマエタチニプリンセスヲマモルコトナドカナワン!!」
「エルちゃん……!」
スカイ達の視線が背後に向けられる。ミノトンが放った砲撃の進行上にはエルもいる。この攻撃は絶対に防がなければならない。スカイ達も2人が支えるシールドに手を当て、ミノトンの攻撃を全員で受け止める。
「えるぅ……!」
「皆!」
「諦めたりなんか……!」
「しない!!」
「そうです!」
5人の力でシールドを支え、ミノトンの決死の攻撃を耐えていく。押し込まれていたシールドはその場から動かなくなり、逆にミノトンの方が反動で徐々に後ろの方へと動き始める。
「ム……ムダナアガキヲォオオ!!」
だがミノトンの方も、叫びながら放出するアンダーグエナジーを強くする。クラウドの手によって直されたシールドも端が欠け始めていき、盾を支えるプリキュア達の手にも大きな衝撃が襲い掛かってくる。
「エルちゃんは……!」
「プリンセスは……!」
「私達が……!」
「絶対に……!」
「守ってみせる!!」
しかしここで破られるわけにはいかない。自分達が負けてしまえば、この攻撃はエルの命を容易く奪ってしまうから。5人がシールドを支えるべく全力を出し、クラウドが声を張り上げながら、ミノトンの放ったアンダーグエナジーを雲によって浄化し、今まで修繕、維持に回して安定させていたエナジーをシールドの強化へと回す。
「っ……はぁああああ!!」
瞬間、バタフライの両手にかかる負荷もさらに跳ね上がる。しかしそれがクラウドのサポートによるものだとすぐに気付くと、スカイ達3人に目配せをする。そしてバタフライの意図を3人が理解して頷くと、
「「「「「はあああああああ!!」」」」」
声を合わせて叫ぶ。瞬間、壊れかけていたシールドが巨大な光の蝶へと生まれ変わり、ミノトンの攻撃を弾き始める。クラウドが強化し、バタフライがその制御を行い、残る3人がシールドを押し込まれないようにその場に維持する。5人が力を合わせている姿を見ていたエルは、何かを悟ったように呟く。
「まも……る……」
遂にミノトンの攻撃と5人のシールドが完全に拮抗し、互いに弾け合うように消滅する。しかし、5人とも疲労はさすがに隠せない様子で、ミノトンの方もアンダーグエナジーを多量に放出したためか、先ほどのような威圧感は感じさせない。それどころか、その瞳にはうっすらとだが光が戻りかけているようにも見える。
「く……ここまでやるとは……敵ながら褒め……!?」
そしてミノトンが口にしたのは間違いなく彼の言葉だったのだろう。だが、その言葉を最後まで言い終える間もなく、ミノトンの体内から全身を薄くアンダーグエナジーが包んでいったかと思うと再びその瞳から光が失われてしまう。
「グゥ……イナイナァ!シマツスルノミ!!オォオオオ……!」
再びアンダーグエナジーを高めていき、攻撃に転じようとするミノトン。まさかまた攻撃しようとしているのか。また同じ攻撃をされたら。プリキュア達の顔に不安の色が出てくる。
「……ソラ……ましろ……ヤクモ……ツバサ……あげは……」
5人の疲弊した姿を見て、後ろから見て名前を呼ぶことしかできないエルの目に再び涙が浮かぶ。何故、昨日のようにキュアマジェスティになれないのか。エルが後ろで悲しむ中、ミノトンは無慈悲な宣告をする。
「モウオマエタチニチカラハノコッテイナイ!」
この一撃を放たれればどうなるか。先ほどのようにバタフライのシールドを強化するやり方で防ぐのは難しいだろう。もし破られれば今度こそ終わりだ。となれば、
「……」
「クラウド!?何を……」
「今のミノトンを止める方法はこれしかない。攻撃の喰らい役は俺がやる。あいつのアンダーグエナジーを取り込めば多少は持つ……アンダーグエナジーを一旦抜けばミノトンも少しは意識が戻るようだからな、今度こそ話ぐらいは通じるようになるだろうさ」
皆の前に立ち、ミノトンの攻撃を受け止めるように両手を前に出すクラウド。その足は雲によって固定されていき、真正面から受け止めようとしていた。だが、クラウドの明らかに危険な策。だが、他の4人はそれ以外に方法がないと頭では理解しているからか、何も言うことができない。しかし、この作戦が成功してもクラウドは無事では済まないだろう。もし失敗すれば、クラウドだけでなく全員が。
「いやいやいやぁ!」
「コレデ……オワリダァ!!」
「だめええええ!!」
ミノトンが再びアンダーグエナジーを放とうとし、クラウドが全身に力を込めたその瞬間だった。なんとミノトンとクラウド達の間にエルが割り込んできたのだ。
「エルちゃん!?」
「いけません!!」
「戻るんだ!!」
「いやいやぁ!!」
スカイ、プリズム、クラウドが立て続けに下がれと言うも、エルは一切退かない。エルの脳裏には、5人が初めてプリキュアになった時の記憶が蘇っていた。誰かを守るため、誰かを救うため、皆はそのためにプリキュアになったのだ。自分がプリキュアになるために必要だったのはトレーニングでも食事でも、情報でも戦術でもない。それは、
「みんな、だいじ!だいすき!!エルも……まもるぅ!!」
大切なものを守りたい、助けたい。その気持ちなのだ。その気持ちをエルが自覚したその瞬間。エルの目の前に一つの光が現れる。それは、紛れもない、エルだけのミラージュペンだった。
『エルちゃんには、エルちゃんだけのミラージュペンがあるはずだよ。それは、エルちゃんだけにしか見つけられないものなんだ』
「……みつけたの。エルの!プリキュア!!」
あげはの言葉が蘇る。ぎゅっと、大事そうにその光を握りしめると、エルは声を上げる。今こそ、本当の意味でキュアマジェスティへと変身するときだと言わんばかりに。その瞬間、エルの体から光が溢れ、その姿が成長していく。そこにいたのは、昨日クラウド達が見た少女と全く同じ姿。
「スカイミラージュ、トーンコネクト!ひろがるチェンジ……マジェスティ!」
成長したエルの全身を光が覆っていく。その髪は腰まで伸びるウェーブがかかった長髪となり、紫と白を基調としたドレスがまとわれていく。赤ん坊の時とは異なり、頼もしく、そして美しい姿へと変わった少女は、プリキュアの己の名を口にする。
「降り立つ気高き神秘!キュアマジェスティ!!」
遂に変身することに成功したキュアマジェスティ。再びその姿を目の当たりにして、スカイ達の表情にも明るさと希望の色が浮かび始める。
「これが……エルちゃんの変身……」
「キュア……」
「マジェスティ……」
「やりましたね……」
「見つけたんだね……エルちゃんだけのミラージュペン……」
朝からずっと、もう一度マジェスティへと変身するために頑張ってきたエル。その努力が、想いが遂に実ったのだ。
「あのペンは自分の中の気持ちが形になったものです!」
「!じゃあバタフライは最初からわかってて……」
プリズムに問われ、バタフライもその通りと言わんばかりに頷く。そして嬉しさを見せる5人に、マジェスティが振り返って優しく笑いかける。
「信じてくれてありがとう」
「グゥ……!カエリウチニシテクレル!!」
目の前でエルが変身することはミノトンも予想外だったようだ。意識がなくても本能的にも驚いているようだ。得体のしれない相手に先ほどのような攻撃を放つのはリスクがあると察したか、アンダーグエナジーの量を抑え、高速で放つ弾丸へと変えてマジェスティへと次々投擲していく。
「ふっ!」
それらを完全に見切って避けていくマジェスティ。そのまま素早くミノトンの足元へと潜り込んだマジェスティを見て、咄嗟に両腕を交差して防御姿勢を取るミノトン。その両腕を、
「はぁ!!」
なんとマジェスティが力任せに弾いてしまう。それによって後ろによろめいているミノトンに向かって蹴りを放ち、その反動で距離を取る。
「グゥ……コシャクナ……!?」
距離を取ったマジェスティを視界に捉えようとするミノトン。しかし、マジェスティが着地したはずの場所に既に彼女は存在していなかった。一体どこへ、ミノトンが探し始めた時には既に背後に回り、ミノトンの頭部に鋭い回し蹴りを放つ。
「やあ!!」
「アガガガガガ!?」
そのまま吹き飛ばされ、近くの線路にかかっていた電線に引っかかってしまう。それによって全身に高圧電流が流れ、ミノトンの全身が焼け焦げていき、倒れてしまう。マジェスティは優雅に着地して軽く髪を払い、余裕な表情を見せる。
「アリエナイ……ワレハサイキョウ……!」
ふらつきながらもどうにか立ち上がり、反撃に転じるミノトン。しかし、その拳は簡単に回避され、逆にマジェスティの掌底を喰らってしまう。その後も、マジェスティはミノトンの攻撃をいなしながら的確に反撃していき、どんどん追い詰めていく。
「……やっぱ、強すぎ」
「これがプリンセスの……キュアマジェスティの力」
マジェスティの雄姿を驚いたように見るウィングとバタフライ。彼らが驚いている間にも、マジェスティは段々攻勢に移り始めていき、
「はぁ!!」
「ウグゥ!?」
ミノトンに強烈な一撃を放ち、吹き飛ばしてしまう。ここまでのエナジーの消耗とマジェスティからのダメージの蓄積で苦しいのか、ミノトンも動きがかなり鈍くなっていく。それでもなお、立ち上がろうとするのだが、
「クラウド!」
「ひろがるクラウドプロテクト!!」
マジェスティの合図に伴い、クラウドがミノトンをクラウドプロテクトの中へと閉じ込める。マジェスティはミノトンを浄化するために5人の元に吹き飛ばしていたのだ。
「今よ!」
そしてミノトンをクラウドが閉じ込めるな否や、マジェスティはスカイとプリズムに声をかける。2人はマジェスティの声を聞いて同時に頷くと、スカイミラージュを手に取る。
「「プリキュア!アップ・ドラフト・シャイニング!!」」
クラウドプロテクトの中から吸い込まれたミノトンがスカイとプリズムの力によって浄化されていく。全身からアンダーグエナジーを浄化されていき、ミノトンの意識を塗りつぶしていた力が消えていく。
「すみきった……」
アンダーグエナジーを浄化され、元の意識を取り戻し安らかな表情を浮かべるミノトン。とはいえ、意識までは失われたままのように、ミノトンは円盤から放出されるとそのまま落下し始める。
「ミノトンが落ちてくる!」
「助けよう」
今日の戦闘だけに関してはミノトンは被害者だ。最後まで面倒を見ようと雲のクッションをクラウドが作ろうとしたその瞬間だった。
『まだお前には戦ってもらう』
「!」
スキアヘッドの声が響き、ミノトンの真下にアンダーグエナジーのトンネルが出現し、その中にミノトンが吸い込まれてしまう。6人は、トンネルが消えた場所を見ていたが、ここでマジェスティが光に包まれていったかと思うと、変身が解けて元の赤ん坊の姿へと戻ってしまい落ちてしまう。彼女が落ちるのを待っていたようにゆりかごが飛来して彼女を受け止めると、5人の元へと降りてくる。
「「「「エルちゃんん!!」」」」
「プリンセス!!」
5人が心配そうにゆりかごを覗き込む。そこでは戦いで疲れたのだろう、安らかに寝息を立てるエルがいた。
「疲れて、眠っちゃったみたい」
エルの身に何かあって倒れたわけではないことを知り、5人はほっとするのだった。
★
夕暮れの帰り道。エルはまだ眠ったままで、5人はそんなエルの姿を微笑ましく見守っていた。
「プリンセス、ぐっすりです」
「こんな小さな体にあんな力があるなんて……」
「……皆、どう思う?」
と、ふとあげはが立ち止まり、4人にあることを問いかける。
「心配は心配だけど……これからは私たちの目の届くところで、一緒に戦った方がいい気がするな」
あげはの提案は、これからはエルと共に戦うようするべきではないかというものだった。今まで、護るべき存在だったエルは、今や自分の意思で戦うことができる。そしてキュアマジェスティの力は大きい。これからの戦い、5人だけでは厳しい局面もきっと増えてくるだろう。そして、そんな状況を前にしてエルが黙っていることは絶対にない、むしろ今回のように自分から戦おうとするだろう。ならばいっそ、自分達が見ているべきじゃないかと。
「……確かに!」
「はい!それに……エルちゃんがいれば、ヤクモさんも無茶しなくなりますし!」
「あ、はは……でも、俺もエルちゃんが戦うつもりならそれは尊重してあげるべきだと思う」
ツバサとソラとヤクモもあげはの意見に賛成のようだ。だが、ソラに釘を刺されてしまいヤクモも苦笑してしまう。実際、今日も無茶しようとしていたのは事実だったからこそ、否定や言い訳もしようがない。
「でも、俺達も俺達でできることはしないとね。きっとできることはあるはずだから」
「はい!最強のエルちゃんを護るために、私たちはもっともっと強くなるのみです!!」
ヤクモの言葉に同意するように、ソラも拳を突き上げる。5人が明るいムードで盛り上がっていく中、ましろだけは少し離れたところから5人を見ながら、
「……うん」
と、小さく、心配そうに呟くのだった。