曇り空の夜のプリキュア   作:popoponpon

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第96話 キョーボーグ交戦

 

「こちら、美大生の紋田さん」

「こんにちは」

 

プリキュアが全員揃ってしまったことに内心挙動不審になりながらもどうにか穏便に進めようとする紋田。

 

「凄く真っ白な絵を描かれるんですよ!ほら!」

「確かに……いやこれ本当に描いてるんです?」

「多分まだ何も描いてないだけじゃないかな……」

 

これはそういう絵なのだと疑わないソラだったが、ツバサとヤクモは当然これは絵じゃないだろうと気付いていた。先ほど絵を見せるにあたってスマホを操作してたのもあり、おそらく紋田も描いた作品はそっちの保存していたのだろう。だがソラが自身満々に無地のキャンバスの方を持ちだしてしまったため、否定するに否定しきれない微妙な雰囲気が流れてしまったのかもしれない。もしそうなら申し訳ないなと思いつつヤクモが紋田を見ていると、あげはが紋田に詰め寄っていた。

 

「……んー?」

「あ、あの?ど、どうしました?」

 

紋田に怪しい視線を向けるあげは。何か引っかかるものがある様子で、首を傾げながら思い出そうとしているようだが、いまいちわからない。

 

「……どこかで会いました?」

「いえ……初対面ですよ……?」

「……気のせいか……」

「そうそう……」

 

思わず目を逸らしてしまったが、あげはも目の前にいるのがまさかバッタモンダーだとは思っておらず、このように問い詰めたら気まずくなって視線を逸らすことも違和感を感じなかったのもあり、自分の思い違いかと納得し、気まずそうにお互い笑う。さっきからピンチの連続すぎていい加減心の方も限界を迎えつつあったが、まだまだ苦難は続くようで、自分の足首の方を小さな手が触れている感触に気付く。

 

(はっ!?何かいる……!!)

 

紋田が足元の気配に気付き視線を向けると、そこにはエルがこちらに無邪気な視線を向けていた。ただの赤ん坊で今まで攫う対象としか見ていなかったはずの彼女でさえも、自分に気付くかもしれない、そう考えると今の紋田には恐ろしい存在に見えていた。

 

(超見てるぅ!?何故だ、気付かれたのか!?ヤクモにだってこの女にだって気付かれてなかったんだぞ!?わかるわけが……)

「バッタ!」

(バッタァアアアア!?見抜かれた!?完璧なはずだったのに!?)

 

バレるはずがない。そう思っていた紋田の耳にトドメに等しい言葉が告げられる。エルが紋田をはっきりと指差して言った言葉。これがスカイランドのプリンセスなのかとか、そんなことを考えている余裕すらなかった。これで自分の人生も終わりかと絶望し、遂にその不審さが表にも出始めている紋田だったが、周りから見るとその挙動不審な動きもある意味仕方ないのだろうという様子に見えていた。

 

「バッタ!」

「本当だ、バッタだ」

「バッタですね」

 

6人の目線は偶然か紋田の頭部に跳んできて止まったバッタに向けられていた。いきなり頭の上に虫が止まればこんな風にもなるだろう。偶然に偶然が重なり、紋田は自分の動きの違和感を悟られずに済んでいたのだが、

 

「うーん、これは放っておくわけにはいかないな」

「はい!皆で捕まえましょう」

「ひっ!?」

 

あからさまに恐怖を浮かべる紋田。あくまで6人は紋田が頭の上のバッタに怖がっていると思っており、それを取ってあげようとしているだけなのだが、紋田から聞けば文脈は完全に自分をバッタモンダーだと既に見破っており、こいつを絶対に逃すわけにはいかないと目をギラギラさせているようにしか見えない。そろり、そろりと紋田へと静かに近づいてくるヤクモ達の姿が余計に恐怖心を煽らせてくる。

 

(俺、万事休す!?どうする!?どうすんのよ俺!?)

 

紋田が迫るヤクモ達に怯えていたが、ここで一陣の風が吹いて砂煙が巻き上がり、その風圧と砂に全員が目を覆う。突然の突風にしては何かおかしいと怪しむ中、風が収まり視界が取り戻された瞬間にヤクモが一点を睨みつける。そこにいたのは、

 

「お前は……スキアヘッド!?」

「「「「「!!」」」」」

(!?良いところに……いや全然よくない!?アンダーグ帝国は失敗した者を許さない!見つかったら処刑される!!)

 

スキアヘッドの姿を当然紋田は知っている。もし自分の事にスキアヘッドが気付いたらどうなるかなんてわからない。もうヤクモ達に正体がバレようがバレまいがこの場ではどうでもいい。とにかく逃げてスキアヘッドに悟られないようにする。それ以外に自分が生き残る道はないと、キャンバスで顔を覆いながら紋田がその場から全力で逃げるように走り出す。

 

「ひぃいいいいい!!」

「紋田さん!?」

 

バッタでそれほどまでに精神を削られていたのか、それともスキアヘッドを見て恐ろしいものを本能的に察したのか。逃げ出す紋田の身を案じるようにましろが声をかけるが、逃げるのならばむしろ好都合だ。それに、力のない一般人などただの有象無象とでも思ってるのか、紋田が逃げたことに対してスキアヘッドは無反応、ならば彼の身は安全だろうと安堵しながら、6人はスキアヘッドを見据える。

 

「……ん?何の騒ぎだ?」

 

そんな小さな騒ぎを聞きつけた、スケボーとフリスビーを持つ2人の少年が野次馬をするように近づいてくる。スキアヘッドは2人が持つ道具を一瞥すると、

 

「アンダーグエナジー、召喚」

 

地面に手を当て、アンダーグエナジーが吹き上がる。それは2人の持つスケボーとフリスビーにそれぞれ流れていき、

 

「「うわあああ!?」」

「キョーボーグ!!」

 

その異変にそれぞれ持ち物を手放して逃げ出す。そして、2つの道具を素体として生み出された、スケボーの体に手がフリスビーとなっている見たことのないランボーグ、いやキョーボーグが現れる。突然現れた化け物に人々が逃げ惑う中、今まで見たことのない敵の出現にヤクモ達は険しい表情を浮かべる。

 

「ランボーグ……じゃない!?」

「キョーボーグ!?」

「いつものと違う……どうして!?」

「戦えばわかる」

 

2つの素体を使って生み出されるキョーボーグ。それがこれまで戦闘したランボーグよりも高いポテンシャルを秘めていることは簡単に予想できる。しかし、スキアヘッドを相手にするとなればこれまでよりも強い敵と対峙することになるのは世分かっていたこと。それにこちらには新たな力、マジェスティクルニクルンもあるのだ。

 

「皆、いこう!」

 

ましろの言葉を合図に6人が変身する。キョーボーグとプリキュア達の戦いが始まるのを近くの草むらの茂みから隠れて覗いていた紋田の視線は、マジェスティへと向けられていた。

 

「キュアマジェスティ!?どういうこと!?」

 

完全に言葉を失い、驚愕する紋田。それもそうだろう、まさかエルまでプリキュアへと変身するとは思ってもいなかったのだから。そして紋田の困惑を他所に、プリキュア達とキョーボーグの初めての戦いが始まろうとしていた。

 

「キョーボーグ!!」

 

スケボーの車輪を使い、高速で走り出すキョーボーグ。高速で回転しながら突進してくるキョーボーグが、向かってくるスカイを回り込むように避けると、完全に後ろを取られたスカイとプリズムへ向かい両手のフリスビーから円盤型の光弾を放ち攻撃する。

 

「「「きゃあ!?」」」

 

回避や防御をする間もなく攻撃を喰らってしまう。しかも円盤は直進するだけでなくそのまま弧を描くように戻ってきてしまい、プリズムの傍で完全に虚を突かれたバタフライも巻き込まれてしまう。

 

「速い!?」

「くそっ!」

 

しかも円盤には追尾性能でもあるのか、空中にいるウィングを四方八方から捉えようと追いかけてくる。その挙動に反応しきれずに吹き飛ぶウィング。クラウドも目の前の一枚をアンブレランスで受け止めるも、ランボーグ本体が背後から勢いよく突進し、その回転に巻き込まれ吹き飛ばされてしまう。

 

「ぐあっ!!」

 

全員が吹き飛ばされ、フリーになった円盤が次々とマジェスティに襲い掛かる。それらを最小限の動きで回避していき、時には手で弾くと、持続時間の限界が来ていたのか空中で円盤が粉々に割れてしまう。

 

「ならば」

 

ここまでは予想の範囲内だったのか、スキアヘッドが短く声を発する。それを合図としてキョーボーグの両手から赤い光が生み出され、その光がスパイクのついた巨大なフリスビーを生み出していく。

 

「キョキョキョー!!」

 

それを勢いよく投擲するキョーボーグ。マジェスティがシールドでフリスビーを受け止めるも、キョーボーグの攻撃の方が威力が強いのか、徐々にシールドが持たなくなることを悟り始め険しい表情に変わっていく。そしてシールドとフリスビーが同時に砕け、マジェスティの体が後ろへと吹き飛ばされてしまい、そのまま木に叩きつけられる。

 

「うあ……!」

「マジェスティ……!?」

 

ウィングが体を起こしながらマジェスティの身を案じる。全員、多少のダメージは受けたものの、まだまだ戦闘は続行可能だ。

 

「強い……ランボーグとはレベルが違う……!」

「どうすれば……」

 

しかし、キョーボーグが見せたその強さにバタフライとプリズムが厳しい声音を漏らす。ランボーグとは文字通りレベルが違う強敵。この速度と攻撃力の前には打つ手がないのだろうか。だが、スカイとクラウドは立ち上がりながらゆっくりと口を開く。

 

「それでも関係ないよ。最初から分かってたことだ」

「その通りです。やることは決まっています……!いつも通り、戦うだけです!!相手がどんなに強くても、関係ありません!!」

「……だよね!苦戦する覚悟なんて、とっくにできてるもんね!」

(覚悟……)

 

クラウドとスカイの言葉にその通りだと言いながらバタフライが体を起こす。そしてプリズムは、覚悟と言われ紋田から言われた言葉を思い出していた。

 

「大切なものを守るためですから」

「どうってことないわ」

(戦う……守るため……)

 

ウィングとマジェスティも再び立ち上がる。皆の想いと覚悟。それを目の当たりにしたプリズムは、静かに目を閉じる。そして、自分も皆のように困難に立ち向かう覚悟を改めて決めると、吹っ切れた表情を見せる。

 

「……そうだね」

「さぁ、力を合わせて!」

「皆でアゲてこ!」

 

まだまだ戦いはこれからだ。会話をし合い気合を入れ直す6人。その様子を茂みの中から見ていた紋田は疑問そうに首を伸ばしていた。

 

(あいつら、何話してるんだ……?もしかしてキョーボーグに勝つつもりなのか……?)

 

プリキュアが何の話をしているのかが気になり、少しでも近づこうとする。とはいえ茂みを揺らすわけにはいかないため、そこの距離感は慎重に保とうとしていたのだが、足元への注意がおろそかになってしまい、不幸にも足元に落ちていた小枝を踏みつけて折ってしまう。

 

(!紋田さん!?)

(やべ!?じろじろ見んな!?)

 

その音に反応してプリズムが後ろを振り向く。この際プリキュアからバレるのはいい。だがスキアヘッドには。紋田の願いは通じたのか、スキアヘッドはプリズムの視線に気付くことはなくキョーボーグに指示を出す。

 

「いけ」

「キョーボーグ!!」

 

キョーボーグが今度こそプリキュアを倒してやろうと構える。その姿を見据えながら、プリズムはぎゅっと手を握りしめる。

 

(紋田さん……私、わかったよ!)

 

再びキョーボーグが先程のフリスビーを生み出そうとする。しかし、今度はそれを生み出させないとプリズムが光弾を連射する。連射された光弾がキョーボーグの頭部に命中して怯むと同時にスカイとマジェスティが跳び、背中側に伸びている反対側のスケボー部分を勢いよく踏みつける。それによってキョーボーグが反動で上空へと吹っ飛ばされていき、両手から伸ばしていた赤い光が霧散してしまう。

 

「キョキョキョ!?」

「ウィング!」

「クラウド!」

 

マジェスティとスカイがウィングとクラウドの名を呼ぶ。ランボーグが吹き飛ばされた上空には既にウィングとクラウドが待機していた。

 

「待ってました!」

「いくよウィング!」

「よし、やっちゃえ!速さの力、アゲてこ!!」

 

ミックスパレットの力によってウィングの体が淡い黄色い光が包み込む。そして速度を増したウィングをサポートするべく、クラウドが両手を突き出す。

 

「ひろがるクラウドプロテクト!!」

「ひろがるウィングアタック!!」

 

クラウドが生み出したクラウドプロテクトを通過し、ウィングアタックを強化する。ミックスパレットも合わせ二重に速度も威力も強化された一撃がキョーボーグの反応を一切許さない。

 

「キョキョキョウボー……グ……」

「今です!!」

 

顔面にきつい一撃を受け、グロッキーになりながら落ちてくるキョーボーグ。それを見て、ここがチャンスだと言わんばかりにスカイが声を張り上げ、マジェスティが頷く。過去に交戦したランボーグであればこの一撃は耐えることができず、浄化されていたはずだ。しかし、キョーボーグはこの一撃を受けても浄化されることはなく、いまだに健在。ダメージこそあるがいつ立ち上がってくるかはわからない。となれば、キョーボーグを浄化できるのはあれしかない。そう確信を持ち、マジェスティクルニクルンを取り出す。

 

「「「「「「マジェスティクルニクルン!!」」」」」」

 

6人が声を合わせる。心と力が1つとなり、巨大な光の中で生み出されたシンボルの照準器から放たれた巨大な浄化のエネルギーがキョーボーグへと襲い掛かる。

 

「「「「「「プリキュア!マジェスティック・ハレーション!!」」」」」」

「スミキッター……」

 

6人が新たに会得した最強の浄化技。その威力はキョーボーグすらも容易く浄化しうるポテンシャルを秘めており、見事、キョーボーグは素体となっていたフリスビーとスケボーへと戻り、周囲の戦闘によって傷ついた景観も瞬く間に修復されていく。

 

「……幕開けだ」

 

マジェスティック・ハレーション。その威力をしっかりとその目に焼き付けたスキアヘッドは、相も変わらず感情を感じさせない声でそう告げると6人に背を向け、トンネルの中へと入っていく。幕開け。それはスキアヘッドがこれからもキョーボーグを差し向けプリキュア達を始末しに来るという宣告だった。

 

「……キョーボーグ。ランボーグを超えた存在……」

「まさかあのような存在があったとは……」

 

クラウドは初めて交戦したキョーボーグの実力を改めて思い返す。ランボーグは1つの素体から作り出される。しかしキョーボーグは2つの素体を使って作り出すランボーグ。スキアヘッドが注いだ大量のアンダーグエナジーから生まれただけあって高いポテンシャルを持つだけでなく、2つの素体から生まれる能力を併せ持つ難敵。今回はうまく切り抜けることはできたが、これからも厳しい戦いを強いられることは間違いないだろう。

 

「でも、力を合わせれば今日みたいに勝てます!」

「うん、その通りだ」

 

しかし、今の自分達にはそれに対抗し、打ち勝てる力があるのだ。スカイに言われ、クラウドも笑顔で応える。

 

「ウィングも、そう思うでしょう?」

「ええ、もちろんです!例え相手がキョーボーグでも、プリキュアは負けません!」

 

ウィングもまた、マジェスティに声を掛けられ、同意していた。その光景を、喜んだ様子でバタフライとプリズムが見守っている中、茂みの中で紋田はただただ驚愕していた。

 

(あ、あいつら……前より強くなってる……!?)

 

キョーボーグと戦い真正面から打ち勝ったプリキュア達。その実力は、自分と戦っていた時は比べ物にならない程であった。こんな奴らに屈辱を味合わせてやろう、なんて考えていたのかと途端に恐怖が湧き上がり、紋田はその場から逃げるように去っていく。

 

「……よかった、無事で」

 

その姿はプリズムにはばっちり見られていたのだが、本人は最後まで気付くことはできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……必ずしも、皆が面白いって言うとは限らない」

 

その夜。何を思ったか鏡の前に今まで書いたプリンセスシリーズの絵本をドミノのように並べていたましろは、クッションを鏡へろ軽く投げる。クッションが鏡に当たって反射し、一番奥の一冊にクッションがぶつかる。クッションがぶつかった絵本は手前側へと倒れ、それによって次々と絵本が倒れていく。そして最後の一冊をスケッチブックで止めながら、ましろはある考えに至っていた。

 

「でも……!」

 

ましろの心の中には、昼間に紋田から言われた言葉が強く残っていた。それは、今後のましろを支える大きな思いになる。そう、ましろは確信していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。工事現場の近くにあるベンチの上で項垂れた様子で座っている紋田の姿があった。俯き、暗い視線をお腹に向けていたが、その視線にお腹が気付いたかのように空腹を訴える音が鳴る。

 

「……腹減った……」

 

ここ最近は碌なものを食べれてないなとぼやきながらも、不思議と気分は悪くなかった。バイトで怒鳴られる気が沈みそうな日々ではあったが、昨日の事を思うと気分が良かった。

 

「だが、これであいつも夢を諦めたはずだ。ざまーみろ」

 

昨日、ましろにかけた言葉。あれでましろも絵本作家になるという夢も完全に諦めただろう。なりたいものを失い無気力になっているであろう彼女の姿を想像するだけで気分が良くなってくる……と思ってたのもここまでの話だった。

 

「あれ!?紋田さん!?」

「え!?ぎゃー!?」

 

突然ましろの声が聞こえ、顔を上げると何故かそこにましろ本人が立っていた。ましろの方もまさかこんなところで紋田と再会できるとは思ってもいなかったようで驚いているが、それ以上に驚いていたのは紋田の方だろう。昨日のバッタの事とといい気が弱いのかなと驚かせてしまったことを申し訳なく思いながらも、ましろは紋田ともし会えたら言おうと思っていたことを話し始める。

 

「よかった!また会いたいって思ってたんです!」

(……あれ、正体バレてなかったのか?)

 

昨日あれだけバッタバッタと連呼していたからとっくにバレていると思っていたが、ましろは紋田と呼んでいた。もし本当にバッタモンダーの変装だと見抜いていたらわざわざそっちで呼ぶわけもないはずだ。

 

(……危ねー……とりあえずバレてなさそうだ……いやよかったマジで)

「私、紋田さんのおかげで自分の気持ちがはっきりしたんです!」

「え?」

「私、絵本を描くのが好きで、それを読んでもらえるのが嬉しくて、だから一人でも喜んでくれる子がいるなら描き続けようと思って!私、紋田さんの覚悟を見習って絵本作家を目指すことにしました!」

「え?」

 

落ち込んでいるかと思いきやそんなことはなく、むしろ何故か感謝される紋田。訳がわからないまま、ましろに握手され、

 

「紋田さんも頑張ってください!思い通りにいかないこともあるけど、目標に向かって頑張る紋田さんは素敵です!私、応援してますから!」

 

と言われる。そして嬉しそうに去っていくましろの姿をぽかーんと見ながら、初めて抱く感情に紋田は襲われていた。

 

「俺……応援されるの初めて……って!?いやいや……お前の応援なんかいらねーし……」

「仕事しろ紋田!!」

「!?すみませーん!?」

 

だが、その感情にあれこれ考える前に紋田の姿を見つけた上司が怒りの声を上げる。その声に慌てて謝りながら紋田は余計なことを考えるのをやめて仕事へと戻っていくことになる。そしてましろは紋田と再会して、意欲が高まったのか家へ帰ろうとしていた。これからも絵本を描くために。

 

(描こう!これからもたくさん!思いっきり!)

 

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