曇り空の夜のプリキュア   作:popoponpon

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第98話 1人じゃない

 

「そっかぁ、野球?っていうのやってるんだ。面白いの?」

「面白い人は面白いと思うよ。俺は見ていて楽しいし」

 

家に帰ったヤクモをムラクモとミクモが出迎える。ムラクモがミクモと一緒に帰った時、ひと悶着あるのではないかとヤクモも少し不安だったのだが、母のおおらかな気質が良い方向に作用したのか、すぐに受け入れてくれた。ムラクモは実家の方で色々ごたごたしていてその間引き取ってほしいと言われたと説明しており、彼女を連れて一時期遠出していたのも彼女を気遣っての事だとあかりも納得したようだった。その後、基本的に家で家事などを教えてもらいながらこの世界の知識などを勉強しているようであり、あかり曰く、

 

『ヤッ君の妹ができたみたいね~』

 

とのことだった。実際ヤクモとはいとこの関係にあるため遠からずかもしれない、と当時のヤクモは思っていた。

 

「……だがま、気になるなら外を歩いてみてもいいんじゃないか?」

「え?いいの?」

「危ないって言ってなかった?」

「そう思ってたんだがな……ちょいと撒き餌を出してみたら普通にスルーしてきたから問題ないと思うぞ?」

「「撒き餌?」」

 

母がちょっとした買い物で家を空けており、込み入った話ができる状態になったところでムラクモがミクモの外出制限の撤廃について言及する。元々、アンダーグ帝国の刺客がミクモを見つけたら始末しにかかると思っての対応ではあったのだが、急にどうしたというのだろうか。

 

「……まぁ、俺も色々やってたってわけだ。それに家にばっかいたって窮屈だろうしな」

「外……いろんなものがあるんだよね……!」

 

目をキラキラさせるミクモ。アンダーグ帝国から離れてすっかり見た目相応の少女になったようだ。これなら昼間はエルやツバサと一緒にいてもいいんじゃないかとヤクモが考えている傍で、ムラクモはこの世界でひっそり暮らしているカバトンとバッタモンダーを思い浮かべる。

 

(……ま、スキアヘッドのやつがそこまで無関心になってるならこいつだって大丈夫だろう……なんかあったら俺が時間ぐらいは稼いでやるさ)

 

内心でそう呟きながら、ムラクモはあかりが帰宅したことを告げるインターホンの音を聞くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ごめん、肘……手術が必要になったって……」

「手術……!?」

 

翌日。いつも通り練習しようとしていたソラ達の元に沈んだ面持ちのたまきと顧問が現れる。たまきは昨日病院で経過を見てもらったといい、その結果、手術が必要な状態になってしまったと告げる。

 

「……野球肘と言われるスポーツ障害でね。ただ手術してリハビリすればまた投げられるようになるんだ」

 

本人にとって、そして部員達にとって深刻な問題なのは間違いない。それはわかっているが、必要以上に落ち込まないようにと顧問がたまきを慰めるように言う。顧問の心遣いは本当にありがたい。だからこそ、たまきは申し訳ないと思っていた。

 

「これからも野球を続けたいなら酷くなる前に手術した方がいいって……でも……手術したら……」

 

ぎゅっと肘を握るたまき。今後の野球人生を考えるなら手術した方がいいのはわかっている。しかし、手術をすれば大会で投げることはできなくなってしまう。

 

「そんな……」

「お願いします!大会が終わったら手術を必ず受けます!投げさせてください!!」

 

頭を下げて懇願するたまき。優勝したいという思いの強さの表れなのだろう。しかし、大会が終わった後に手術をするとなった場合、その大会で酷くなってしまえば手術しても手の施しようがなくなってしまう可能性もある。そんな選択を仲間として受け入れるわけにはいかなかった。

 

「……駄目だ」

「!」

「野球、続けたいんでしょ?」

「……はい」

 

かなめから厳しい声がかけられる。大会に出たい気持ちは強い。だが、これからも野球を続けたい気持ちもまた事実だ。かなめは悔しそうな様子で頭を上げたたまきの肩に手を当てる。

 

「それならお医者さんの言う通り、酷くなる前に手術するべきだよ」

「でも……連続優勝がかかってるんですよ!?それに……かなめ先輩は卒業しちゃうから……!これが最後の大会なのに……!」

「たまきさん……」

 

たまきの言葉に悲しそうな表情を浮かべる部員達。彼女の言う通り、かなめは今年度で卒業してしまう。つまり、このバッテリーが組めるのも今年が最後なのだ。だというのに自分の故障のせいでそれはできなくなり、大会での優勝も逃してしまうかもしれない。ぞうなることが耐えられないのだ。

 

「落ち込むのはそこまで!!」

「「「「「!!」」」」」

「私達がこんなんじゃ、たまきも安心して手術受けられないだろう!」

 

かなめの叱咤激励に部員達もはっとなる。そうだ、自分達が落ち込むよりもたまきのために、かなめのために頑張らなければ。そのためにソラに鍛えてもらったのだと。そんな皆の気持ちを聞き、

 

「皆……ありがとう」

 

たまきも流れかけた涙を拭いて笑う。そして練習が始まり、何事もなく夕方まで時間が過ぎていく。最後にグラウンドをかなめと共に整備していたソラは、部員達と仲良く手を振って帰ろうとしているたまきの姿を遠目に見ながら心配そうに呟く。

 

「たまきさん……大丈夫でしょうか」

「……明るく振る舞ってはいたけど、辛いと思う……たまきはエースだから……」

「……」

「エースはチームの勝利を背負ってたった1人でマウンドに立つ。チームの中心だし、皆を引っ張っていかなきゃいけない……だから、辛いとか怖いとか、皆の前で言えなかったんじゃないかな……」

 

ソラに、たまきがどのような心境なのかを語るかなめ。エースとしての重圧の中にいたたまきも、今回の告白はそれだけ苦しいのだろう。

 

「……実は、次の大会でたまきの代わりに投げるのは私なんだ」

「かなめ先輩が!?」

「ソラさんにたくさん鍛えてもらったから大丈夫だよ」

 

そしてたまきが無理してでも大会に出ようとしたのはエースだからだけではないのだろう。このチームに自分のように投げられる人がいないと。だが今回、投げるのはなんとキャッチャーのはずのかなめだった。確かに、練習中は彼女もピッチャーとして立っていた記憶があるが、あくまで皆へのトレーニングを積ませるためのものだと考えていた。しかし実際は彼女自身が万が一の場合はピッチャーとして立つための練習だったようだ。そしてかなめは、ソラに自分の決意と気持ちをぶつけるのだった。

 

「……それに、自分が休んだせいで負けたなんて思ってほしくない。だから……絶対に勝ってみせる」

 

 

 

 

 

 

 

 

「いよいよ明日が一回戦だね。横断幕、なんとか間に合いそうだよ!」

 

その日の夜。虹ヶ丘家にはヤクモの姿もあった。ソラが特別コーチを受けてから、ましろに女子野球部を応援するための横断幕を作ることを持ちかけられており、これまで材料集めやデザイン案の選定、資料の検索などで協力していたのだが、今夜は全員で作ろうというましろの誘いもあってヤクモも泊りがけで作業することにしていた。

 

「明日……な、なんだか私まで緊張してきました……!」

「大丈夫だよ、落ち着いて」

「は、はい……」

 

自分が特別コーチになり鍛え上げた皆の晴れ舞台。そう考えるとどうしても緊張してきてしまったのか、ガチガチになってしまい、手に握るマーカーが震えてしまうソラ。その手をヤクモが優しく握りしめてソラを落ち着かせている光景を苦笑しながら見ていたましろの元にあげはが飲み物を持ってくる。

 

「ずっと特別コーチをしていたんだもん。緊張するのも当然だよ」

「……それで、その……たまきさんの手術はどうなったんですか?」

 

無言でマーカーを走らせていたが、ここでどうしても聞かずにはいられなかったのか、申し訳なさそうにツバサが質問する。ソラも、少し悲しそうな表情になりながらヤクモの手を握りながら話し始める。

 

「それが……手術の日も明日なんです」

「試合と重なっちゃったんだ……」

「はい……」

 

別の日だったら応援という形でチームと一緒に戦えたのだろう。しかし手術の日を選ぶことはできず、運悪く試合当日になってしまったようだった。

 

「しゅじゅつ?」

「イタイイタイしているところをお医者さんが治してくれるんですよ」

「しゅじゅつ、こわい」

 

ソラとツバサの雰囲気から手術は悪い物なのかと考えてしまったのか、エルに聞かれたツバサが簡単に説明する。しかし、そんな説明でも手術に対する怖さをエルは理解したのか両手を頬に当てて驚いたように言う。

 

「……そうだね。たまきさんもきっと不安かも」

「私達も応援しよう?」

「……応援……」

「……」

 

野球部の試合も、手術をうけるたまきも。両方応援してあげよう。あげはの言葉に同意するましろ。しかしソラは思うところがあるようで、ヤクモもその姿を無言で見ていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝。試合が行われるソラシド市営球場を訪れたソラ達。まだ開会式も行われる前だというのに既に生徒以外の人も多く、熱気に包まれていた。

 

「うわぁ、凄い熱気!こっちまでアガるね!」

「球場には初めて来たけどやっぱり生だと全然違うね」

「本当にね。これならもっと前から来ても良かったかも!」

 

テレビの中で見ていた球場だが実際に足を運んでみるとこうも違うものか。現実と映像の違いにましろ、ヤクモ、あげはの3人が感激していると、ソラがかなめ達の姿を見つける。しかし彼女たちはどこか不安そうな顔をしており携帯を覗き込んだりしていた。

 

「あ……先生!」

「!ちょうどいいところに……ソラさん、ましろさん、ヤクモ君、誰でもいいんだ。たまきから連絡を受けていないかい?」

「え?」

 

3人が顔を見合わせる。同じ学校の生徒なら誰かしら手がかりを持っているのかもしれない。そう縋るような彼女の姿に3人は不安を感じ取る。

 

「知らないか……実はたまきが病院から抜け出したって……!」

「「「え!?」」」

 

手術を控え、病院にいたはずのたまきがいなくなった。手術が怖くなったのか、試合に出られない悔しさや辛さに耐えられなかったのか。それとも両方なのか。

 

「あの子が辛い思いをしていたのはわかっていたのに……」

「かなめ先輩……」

「ソラさん」

「はい!私達で見つけてみせます!皆さんは試合に集中してください!」

 

かなめの悔しそうな言葉に部員達も無言で同意する。その様子を見て、ソラ達はすぐにたまきを見つけると言う。彼女たちにはこれから試合がある、となれば自由に動ける自分達がやるべきだと。

 

「ソラさん……」

 

早速5人で手分けをして町中を探し始める。あまり1人にならない方がいいと言われてはいたが、こうなってはそうも言っていられない。そしてヤクモも皆と別れ町中を走り回っていたが、ここでふとその足が止まる。

 

「……今の」

 

急に出現したアンダーグエナジー。それはキョーボーグが出たというものではない。トンネルが開かれたようなそんな量。しかしそれが、スキアヘッドの襲来を知らせる警報になったのは言うまでもない。

 

「……急ごう。ソラさんはきっと……」

 

たまきの事も大事だが、まずは仲間と合流するのが先だ。ましろとあげはにメッセージを送ると、ソラと合流するためにヤクモはソラが探しに向かった場所へ走り出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「はっ……はっ……!」

 

皆と別れたまきを探していたソラが向かった場所は学校のグラウンドだった。もしたまきが行く場所に心当たりがあるとすれば自分にはここしかない。そう思って必死に走ってきたが、どうやら正解だったようだ。ソラのいる場所からは背中しか見えないため表情はわからないがそこにはたまきの姿がしっかりとあった。

 

「たまきさん!!」

「!」

 

ソラの声に気付き、振り返るたまき。息を切らすほどの勢いで走ってきたソラは呼吸を落ち着かせてたまきを見ると、たまきは申し訳なさそうに、そして悲しそうに俯く。

 

「エース失格だよね……私……大会には出られないし病院からは逃げ出すし……」

「そんなことありません!怖いですよね……わかります」

「ソラさんにはわからないよ!!」

「っ!」

 

自分が負うべき責務。向き合わなければならない現実。それに対する恐怖は、ソラもよく理解している。それは、これまでの経験から出てきた言葉だったが、そんなことをたまきが知っているわけもない。案の定というべきか、たまきには知りもしない上っ面だけの言葉と受け止められてしまったようで、耐えきれずに泣き出してしまう。

 

「野球が好きで、野球ばっかやってきたの!!なのに肘は手術しなきゃだし、私のせいでチームが負けちゃうかもしれないんだよ!」

 

必死に野球に打ち込んできた。自分のために、チームのために、しかし、自分が肘を痛めたせいで試合に出ることができず、そのせいで皆が負けてしまうかもしれない。それが、凄く怖いのだろう。泣き崩れて膝を付いてしまうたまき。

 

「皆はグラウンドにいるのに……私は1人で病院にいて……!こんな気持ち……わかるわけない……」

「たまきさん……」

 

たまきにかけた言葉が不用意だったことにソラも気付いていた。彼女を説得して、病院に行ってもらわなければならないのはわかっている。しかし、彼女の無念に対してどのような言葉をかければいいのかソラにもわからなかった。そして訪れる気まずい静寂。それを打ち破ったのは、ソラでもたまきでもなく、招かれざる者だった。

 

「プリキュア」

「!?スキアヘッド!?」

「?」

「ここで消えてもらう……アンダーグエナジー、召喚」

 

その声にすぐに反応するソラ。ソラの険しい言葉にたまきが一体何事かと顔を上げた時にはスキアヘッドの手によってピッチングマシンとキャッチャーミットがキョーボーグへと変えられていた。

 

「キョーボーグ!!」

「か、怪物……!?」

 

キョーボーグを見て恐怖の声を漏らすたまき。その前に盾になるように両手を広げて立ちはだかるソラを見て、たまきが焦りの声を上げる。

 

「そ、ソラさん!?逃げないと!!」

 

なんて危険なことを。たまきは恐怖に怯えながらもソラの身を案じるように声を絞り出す。しかしソラは静かに言う。

 

「わかります……一人ぼっちで戦う気持ち」

「え……」

「ヒーローの出番です!!」

 

どういうことなのかとたまきが言う間もなく、ソラはたまきの目の前でキュアスカイへと変身する。プリキュア、その存在はたまきも知っていたが、まさかソラがそのプリキュアだったとは知らず、唖然となってしまう。

 

「キュア……スカイ……?」

 

キョーボーグがピッチングマシンとなっている右腕を突き出し攻撃しようとする。しかし即座にスカイが反応して殴りかかるも、左手の巨大なキャッチャーミットで受け止める。その反動でスカイの体は吹き飛ばされてしまうも、即座に態勢を整えると、キョーボーグを押し込むように何度も連撃をミット越しに叩きこんでいく。

 

「聞いたことがある……怪物と戦うヒーローの噂。ソラさんが、そのプリキュア……!?」

「キョーボーグ!!」

 

スカイが勢いよく押し出し、少し距離が開いたキョーボーグが反撃とばかりに右腕からスカイの顔程のサイズのあるボールを何発も発射する。それらを回避し、腕を交差して受け止めるが、その威力が高すぎるのか吹き飛ばされてしまう。

 

「きゃっ!?」

 

偶然か否か、スカイがたまきの近くまで吹き飛ばされてしまう。しかしキョーボーグにそんなことは関係ないと言わんばかりにスカイごとたまきを攻撃してくる。

 

「!?」

「っ……」

「ふん!」

 

しかしそのボールが2人に命中することはなかった。何故ならそこに、クラウドが現れボールを雲をキャッチャーミットのように広げて受け止めてみせたのだ。

 

「クラウド!」

「ごめん、アンダーグエナジーに気付いて急いできたつもりだったんだけど……」

「いえ、そんなことはありません!」

「まずは四宮さんを!」

「はい!」

 

短いながらもクラウドと嬉しそうに言葉を交わすと、クラウドがお返しとばかりに雲からボールを一気にキョーボーグへと押し出すように放つ。それをキョーボーグがミットで受け止めている間にスカイがたまきを抱え、その場から跳ぶ。

 

「そ、ソラさん!あの人も連れて逃げた方がいいんじゃ……」

「……昔、こう思っていたんです」

 

クラウドがキョーボーグの相手をしている中、たまきはスカイに逃げた方がいいんじゃないかと進言していた。だがスカイは話を始める。

 

「独りぼっちを恐れない、それがヒーロー……でも、そうじゃないんだよと教えてくれた人がいて……」

「……」

「それから、たくさんの友達や仲間もできて……大切な人もできて……私、前よりもヒーローに近づけたような気がしたんです」

 

たまきは驚いた様子でスカイの話を聞いていた。スカイは校舎の屋上に降りるとたまきを下ろす。

 

「かなめ先輩から聞きました。エースはチームの勝利を背負ってたった1人でマウンドに立つんだって。でも……1人で何もかも背負わないでください」

「ソラさん……」

「私もたまきさんも、1人じゃない!」

 

そう告げ、スカイはクラウドの元へと跳ぶ。ランボーグの放つボールを次々と受け止めて耐えていたクラウドは、背後から近づいてくるスカイに目も向けず受け止めたボールの1つを雲の後ろに押し出す。それを受け取ったスカイは雲の脇に飛び出ると見事なフォームで投球。それがキョーボーグへとクリーンヒットする。

 

「キョーボーグ!?」

 

キョーボーグがスカイの反撃を受けよろめいている間にスカイとクラウドは互いに顔を見合わせて笑う。

 

「さあ、反撃です!」

「うん、勝負はここからだよ、皆!」

「はい!」

 

2人が声を上げると共に、空からウィングたちが現れる。その様子を見て、スカイが言っていることを理解するたまき。スカイは1人じゃない。クラウドが現れ、そして他のプリキュア達も集まってきた。そして6人揃ったプリキュア達はキョーボーグを着実に追い詰めていく。

 

「はああああ!!」

「はぁ!」

 

バタフライがシールドを展開し、スカイ、プリズムと共にランボーグへと走る。右腕から放たれたボールがシールドに弾かれていき、弾かれたボールをクラウドが雲で受け止めるとそれをウィングへとパスし、ウィングが足で蹴り返してキョーボーグを攻撃する。それに気を取られた一瞬を狙い、次々と連携攻撃を畳みかけていく5人。そして、

 

「プリズム!」

「うん!」

 

クラウドとプリズムが手を重ね、雲の球体をキョーボーグへと放つ。それをキョーボーグがミットで受け止めようと球体から視線を離さずミットを前に着きだそうとした瞬間、球体の内側にある光が弾け、閃光となってキョーボーグの目を潰す。

 

「キョーボーグ!?」

「はあああ!!」

 

ランボーグが視界を封じられ、動きを止められた瞬間を逃さずマジェスティが勢いよく蹴り飛ばす。

 

「今よ!」

「ヒーローガールプリズムショット!!」

 

追撃とばかりにプリズムがプリズムショットを放つ。しかしすぐに立ち上がったキョーボーグは視界が戻ったようでミットでプリズムショットを受け止める。するとそのままミットを使い一番近くにいたスカイへと放り投げる。その光景を見て焦りの声を漏らすプリズム。だが、

 

「え!?」

「スカイ!これを使って!」

「!はい!!」

「よし、やっちゃえスカイ!」

 

クラウドが咄嗟にアンブレランスをスカイに投げ渡す。それを受け取ったスカイに、バタフライがミックスパレットで桃色の光をスカイに与え、パワーを増幅させる。そしてスカイは勢いよく足を踏み込むと、

 

「どおりゃあああああ!!」

「キョウボォオオグ!?」

 

気合と共にアンブレランスを振り抜く。ランボーグに投げ返されたプリズムショットをさらにスカイが打ち返したことで無防備な所にカウンターで命中、キョーボーグの体が大きく浮き上がり、地面へと叩きつけられる。それを見てマジェスティが今がチャンスだとマジェスティクルニクルンを取り出し、6人が手を翳す。

 

「「「「「「プリキュア!マジェスティック・ハレーション!!」」」」」」

「スミキッター……」

 

6人の心と力を合わせた浄化の一撃がキョーボーグを浄化し元のキャッチャーミットとピッチングマシンへと戻っていく。キョーボーグが敗北したのを見たスキアヘッドがクラウドを一瞥する。プリキュアが1人の時を狙う策も、すぐにヤクモがアンダーグエナジーに感づくことをこれで悟ったのだろう。スキアヘッドは無言のままトンネルを作り出すとその中に入って消えていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

キョーボーグとの戦いが終わった後、ソラはたまきと共に病院の駐車場まで来ていた。ソラは目の前で変身してしまったこともあり、正体はバレているが他の皆はそういうわけではない。そのため一旦皆とは別れる形になり、ソラが連れて行くことになったのだ。

 

「……ソラさん。ごめんね」

「え?」

「私、酷いこと言っちゃったから……それと、助けてくれてありがとう」

 

一緒に歩く途中で、たまきがソラに謝る。そして、キョーボーグから助け、そして自分のため、皆のために手術を受ける決意をする手助けをしてくれたことに礼を言う。彼女がもう一度向き合うことができるようになったのも、ソラの行動のおかげなのだと。お礼を言われたソラが照れながら手を振っていたが、ここであることに気付く。

 

「いえいえ、そんな……あ!?そ、その……さっきのことは……」

「大丈夫!あれは私とソラさんだけの秘密ね!その代わり、私が泣いてたことも秘密だよ」

「……はい!」

 

自分がプリキュアだということを内緒にしてほしいのだろう。それをたまきは快諾する。と、2人の歩みが止まる。何故なら病院の前にはかなめ達がいたからだ。

 

「皆……」

 

かなめ達のユニフォームは土塗れであり、試合が終わった後着替えずに急いでここまで来たのだろうということがわかる。チームの皆の姿を見たたまきはかなめへと駆け寄ると、彼女に抱き着く。

 

「心配かけてごめんなさい!」

「第一試合、勝ったよ」

「!」

 

そして、かなめはたまきを安心させるために試合の結果を伝える。たまきの代わりにマウンドに立ったかなめは無事に投げ切って勝利を掴んだのだ。彼女の報告を聞き、チームの皆の顔を見ると皆が清々しい表情を浮かべていた。次はたまきの番だと。今度は自分達が応援すると、そう言うかのように。それを見て、たまきも感じ取っていた。自分は1人ではない、皆が応援してくれている、一緒にいると。

 

「今度は、私の番ですね!」

「応援してます!頑張って!たまきさん!」

「ソラさん……!」

 

そう言い、ソラが横断幕を取り出す。といっても、大会の為に皆で作ったような手の込んだものではなく、戦いが終わった後、たまきのためにと彼女を迎えに行くまでの僅かな時間でたまたま荷物としてあげはが持っていた大き目の無地のタオルに即席でマーカーでメッセージを入れただけの簡単なものだった。しかしそこには、でかでかとソラからのメッセージが記されていた。

 

『たまきさんは1人じゃない』

 

それを見たたまきが感極まった声を漏らす。しかしすぐに笑顔を見せる。

 

「ありがとう!ソラさんは私のヒーローだよ!」

「私と女子野球部の、でしょ?本当にありがとう!ソラさん!」

 

たまきの言葉にかなめがくすくすと笑いながら訂正し、野球部全員でソラに手を振る。そして、たまきは手術を今度こそ受けるために病院の中へと入っていく。その背中を皆で見送るのだった。

 

それから少しして、大会が終わった後。学校の中には女子野球部の優勝旗とトロフィーと賞状、そして一枚の写真が飾られるのだった。

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