曇り空の夜のプリキュア   作:popoponpon

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第99話 文化祭

 

昼食が終わり、午後の授業が始まる。担任がチョークを使い、黒板の右端の方に大きな文字で今日の議題のテーマについて書き始める。そして文字を書き終えると、クラスメイト達に向き直り、

 

「というわけで……文化祭の出し物を決めようと思います」

 

そう言い授業を始める。今日、クラスメイト達の議題となっては近づいてくる文化祭の出し物だった。去年は何をやったかなとヤクモとましろが思い出す中、ソラは文化祭というフレーズを見て首を傾げていた。

 

「文化祭、とは?」

「ん?ああ……学校でやるお祭りだよ。クラスや部活で出し物をやってお客さんを出迎えるんだ。文化祭の日は外部からも人がたくさん来るからね」

「成程……」

 

スカイランドの学校では関係のない人でも自由に出入りできる。そのため、もしかしたら似たような行事はあるのかもしれないがこの世界の文化祭のようなイベントはソラもあまり馴染がないのだろう。

 

「いろんな出し物があって楽しいんだよ。カフェとかアクセサリー作りとかあったなぁ」

「そういえば軽音部とかがライブやったりしてたっけ。去年は行ってなかったけど……」

「それはすっごく楽しみです!」

 

去年の文化祭を思い出しながらヤクモとましろが説明をする。ソラも2人の話を聞いて楽しみそうに目を輝かせる。そうしている間にも黒板には生徒達の希望する出し物が次々と書き込まれていく。

 

「やっぱりカフェだよ!」

「いやいや、ここはお化け屋敷だぞっと!」

「キーホルダー作りは?」

「コスプレ喫茶はありですか!?」

「衣装の準備がきついからなしかな……」

「お化け屋敷がありなら迷路とかは?」

「ダーツとか射的とか!」

 

カフェ、お化け屋敷、キーホルダー、迷路、ダーツと様々な案が出されていく。それらを多少拡大解釈してカフェやキーホルダーは飲食、ハンドメイドと多少広めの案に変えて黒板へと書き込まれていき、一通りクラスメイトから出尽くされる。そしてクラスを一通り見渡した担任が、

 

「それじゃあ、皆で話し合ってどれがいいか少し話し合ってみてくれ。時間は……10分取るか。それから多数決だ」

 

先生から話し合いの時間を告げられ、生徒達がわいわいと話し始める。クラス全体が途端に賑やかになる中、ソラも椅子をヤクモの方へと近づける。

 

「ヤクモさん、文化祭ってやれることがいっぱいあるんですね!」

「うん、どれも面白そうだよね」

「ヤクモ君はどれがいいと思う?」

「そうだな……」

 

他の男子はどんな感じかと少し調べるようにヤクモがあさひに視線を移す。しかしあさひはどうやら、自分がお化け屋敷を提案した張本人ということもあり、他のお化け屋敷賛成派の男子たちと色々話し合って意気投合している様子だった。確かにお化け屋敷も客が盛り上がってはくれそうではあるが、ちらとソラを見て、

 

「……とりあえずお化け屋敷はやめようかなって思ってる」

「あ、はは……すみません……」

「別にいいよ、俺だってそこまでしてやりたいって思ってるわけでもないし」

 

お化けが苦手なソラにはお化け屋敷は運営の側であってもあんまりやりたくないのだろう。夏休みにまろんとの一件があり、個々に対してであれば接するならばともかくお化けそのものに対する苦手意識は残念ながらまだまだ根付いているようだった。

 

「まあ、俺はどれでも皆と楽しめるならそれでいいかな」

「私もです!」

「でも、それでもどれに票を入れるかは決めた方がいいんじゃないかな?」

 

何をやりたいのかを選べず周りに選択を任せようとしていたヤクモとソラだったが、ましろがそれはちょっとまずいのではないかと口を出す。それを聞いたソラとヤクモは互いに顔を見合わせる。

 

「ソラさんはどれが一番面白そうだと思う?」

「そうですね……この中だとカフェが雰囲気もよさそうな気がします!」

 

カフェならプリティホリックのカフェスペースに時折行ったこともあり、その雰囲気を気に入っていたのもあるのだろう。単純に他の出し物が面白そうではあるがイメージしにくいというのもあるかもだが。

 

「じゃあカフェにしようっか」

「うん、私もそれにするよ」

 

ソラが選んだカフェにヤクモとましろも同意する。そして時間が来たことで担任が生徒達の話をぶった切るように声を出す。

 

「よーし、それじゃあ投票を始めるぞー。まずはカフェをやりたい人ー」

 

クラスメイト達の票を集計していく。票は割れていたが、僅差でソラ達が選んだカフェが選ばれ、カフェに投票した生徒達の喜びの声が上がる。

 

「やった!」

「カフェで決定だ!」

「ちぇー、お化け屋敷やりたかったなぁ……ま、しょうがないか」

 

お化け屋敷派だったあさひの残念そうな声にヤクモも御愁傷様と内心漏らす。その後はカフェの内容についてどんどん詰められていき、チャイムが鳴るまでクラスの中から賑やかな声が絶えることはなかったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よかったね、ソラちゃん。カフェに決まって」

「はい!……でも、カフェをするってどうすればいいのでしょうか?」

 

放課後。プリティホリックを訪れ飲み物やスイーツを食べながら、ソラ達は今日決まった文化祭の出し物について話していた。出し物がカフェに決まり、様々なメニューが提案されたのだが、火を使うものは使えないということ。ホットプレートも使えるかどうかはまだわからないということで飲み物をメインとすることがとりあえずの方針として決まっていた。

 

「そうだね。飲み物っていってもいっぱい種類があるからね。ほら、ここだってコーヒーもジュースもタピオカもあるし!」

「タピオカ……あのもちもちしてて甘い飲み物ですね!また飲みたいです!」

 

カフェのメニュー欄をソラに見せながらわいわいと話し始めるましろ。そういえばタピオカなんて全く飲んだことなかったなとソラの発言に思いながら、2人が見ているメニューとは別のメニューを見ていたヤクモも口を開く。

 

「飲み物だったらジュースだったら買ってきて保管して注ぐだけでできそうだけどね。家庭科室の冷蔵庫……は多分使えないだろうしクーラーボックスとか必要になるのかな。コップは紙コップになりそうだけど」

「あ、そうなりそう?でも、クーラーボックスぐらいなら持ってる人もいるよね?」

「そうだね、運動部の人なら個人用で皆持ってるんじゃない?確か大きいのを持ってる人もいたような」

 

飲み物を保管する用のクーラーボックスなら家にある人も少なからずいるだろう。何なら部活用の大きなものを持っている人だって何人かいるのをヤクモも過去に手伝いに駆り出されたり用事を頼まれたりした際に聞いたことがあるし、ヤクモ自身もそこそこのサイズのものは自前で持っている。飲み物に関しては何の問題もないといえる。

 

「皆、来たよ。待ってた?」

「あ、あげはちゃん!ううん、そんなことないよ。実習終わったの?」

「今日の所はね。それで何の話をしていたの?」

「実は……」

 

と、文化祭の事で話をしているとそこにあげはが合流してくる。保育園での実習が終わってすぐに来た様子のあげはがましろの隣に座ると、3人に何の話をしていたのか質問する。それを受け、ましろが中学の文化祭の事を話すと、あげはも少し驚いた様子を見せる。

 

「へえー、そうかもうそんな時期なんだ。こっちの中学ってどんな出し物するの?」

「私たちのクラスはカフェだよ」

「わお!すっごく楽しみ!皆で行くよ!」

「ありがとうございます!」

 

言われてみれば秋なのだ、もう文化祭をやってもおかしくない時期になってたことに時間の流れを感じて驚いていたようだ。しかしすぐにましろ達がカフェをやると聞いて、絶対に皆で行くと楽しみな声をあげるあげは。

 

「ツバサやエルちゃんも来るなら気合入れて準備しないとだね。それに……ミクモも誘った方がいいのかな」

「はい!……え?大丈夫なんですか?」

 

そして折角楽しむのなら、ミクモも。そう言ったヤクモに3人の視線が向けられる。それは、ミクモを誘っても大丈夫なのかと言う一抹の不安からくるものだった。そういえば3人にはまだ話していなかったとヤクモもここで気付いたのか、先日家で父と話していたことを伝えることにする。

 

「父さんと話していたんだよ。そしたらこっちで確かめてみたけど多分大丈夫だって」

「そうですか……ミクモさんがスキアヘッドに狙われることはないんですね」

「……いや待って、それってさ……つまりムラクモさんは、スキアヘッドが誰かと会ったことを知っているって事じゃない?」

「「「……あ」」」

 

その話を聞いていたあげはが冷静に指摘する。確かにその通りだと無言になってしまう3人だったが、

 

「皆さん、何を話しているんですか?」

「える?」

 

エルを連れたツバサもやってくる。しかしすぐに、無言になってしまった4人の姿を見てエルと共に首を傾げてしまう。

 

「あ、ツバサ、エルちゃん。実は……」

 

座ったツバサに文化祭の事、そしてミクモもあげは達と一緒に文化祭に来れないかと言う話をしていたこと。その中であげはが何故ミクモが出ても大丈夫になったのか、そしてその理由が、自分たちの知らないところでスキアヘッドが自分達が過去に戦ったアンダーグ帝国の刺客と既に対面しているからではないかと推測したことを話す。

 

「……確かに、説得力はありますが……え?カバトン達って今もソラシド市にいるってことなんですか?」

「そこなんだよなぁ……ソラシド市って言っても広いから、遭遇しないのは単純に生活圏が被ってないだけなんだろうけど……」

 

ヤクモも彼らのアンダーグエナジーをまるっきり感じておらず、使ってもヤクモが気付けない程の量でちょっとしたことにしか使ってないあたり、真っ当にこの世界の人間として新たな生を過ごしているのかもしれない。

 

「もし町中でばったり遭遇したら襲われちゃうのかな……」

「そうするメリットがもうないんじゃないかな?だってミクモちゃんやミノトンも言ってたじゃん?負けた自分達は帝国には戻れないって。それはカバトンとかも同じじゃないかな?」

 

スキアヘッドが出るときはトンネルを使用するからヤクモにはわかる。しかし、それ以外は普段は町中に潜んでいるということ。もしも1人の時に襲われたら他の皆が気付いて駆けつけるまで時間がかかってしまう。恨みつらみから襲われてしまうのではないかとましろが不安を見せるも、帝国から切り捨てられてる以上それは多分ないのではないかとあげはが指摘する。尤も、既にましろ達はこの世界の人間に扮したバッタモンダーと出会っているのだがそれについてはまだ知らない。

 

「……むしろ街にいまだに残ってるとは、なんて面の皮が厚い……」

「逆に戦いの舞台になってる場所にいまだに居座ってるのはそれだけ肝が据わってるとか……?」

「えー?まぁミノトンはともかく、カバトン……は百歩譲ってもいいとして、バッタモンダーがそんな奴ですか?」

 

しかし、散々プリキュアと戦って負けたうえでソラシド市に居付いているなら、確かにツバサとヤクモの言う通り相当に面の皮が厚いか肝が据わっているかのどちらかだろう。と、バッタモンダーの名前を口にしてしまったツバサがちらとソラを見る。しかしソラの方は特に気にした様子は見せておらず、それを確認してそのことをソラに悟られないように自分の飲み物に口を付けて誤魔化す。

 

「そういえば、仮にこの話が本当だとしたら父さんはカバトン達がいる事を知っているってことか……まあ、スキアヘッドの事を警戒してるみたいだし、本当に住んでいるなら存在は把握しててもおかしくないのか……」

「聞いてみたらどうです?」

「……聞いてもな……正直あんまり意味ないっていうか……」

 

気にはなるのは間違いないし、踏み込んで質問すれば父だって答えてくれるとは思う。しかし、そのことを聞いたから何かが変わるかと言われると、気になることが解消される以上の利益はない。かといって、父のアンダーグ帝国にいた時の姿やミノトンも存在を知っていたことを考えると、ミクモのように切り捨てられたかつての帝国の仲間たちに思うところがあるのも当然のことだろうし、実際そうなのだろうとヤクモも半ば確信していた。そんな彼らがプリキュア達に接触してこないということは放っておいてほしいという意思の表れだろうし、それなのにこちらから踏み込んで今の生活に干渉するのも違うだろうと。

 

「……まあ、こっちに何かしらして来たら考えるけど今は放っておいていいんじゃないかな?」

「そうですかね……」

「私はヤクモさんに賛成です。確かにカバトン達がどんな生活をしているのかは気にはなりますが……何もしていないのであれば私達と会いたくないところに会いに行くわけにはいきませんし」

 

ソラもヤクモの意見を汲み取り同意を示す。そして、

 

「それに何か聞きたいことがあるならその時はミノトンと会う方法を探した方が手っ取り早いだろうしね」

「確かに……」

 

2人よりも帝国の事情に詳しく、こちらにも好意的になってくれたミノトンの方がわざわざカバトンらを探し出して交渉するよりも楽だというヤクモの発言にツバサも同意するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……文化祭?」

「そう。どうかな?」

 

その日の夜。家に帰ったヤクモは早速ミクモに文化祭の事を話していた。最初は存在も知らなかったこともあり疑問そうに首を傾げていた彼女だったが、ヤクモの話を聞いている内に段々楽しみになってきたのかわくわくした様子を見せ始める。

 

「面白そう!行ってみたい!」

「よかった。それなら当日、あげはさん達と一緒に来てもらっていいかな」

「うん!……あれ?ヤクモは一緒じゃないの?」

「まあ、シフトがどうなるかわからないから」

「シフト?」

 

要するに店番の事だと説明すると納得するミクモ。そしてミクモからも文化祭に行くことについて承諾を受けたとグループにメッセージを送ると、代表してあげはから『OK!』と返事が返ってくる。これで当日は問題ないだろうと頷いていると、

 

「すっごく楽しみ、私外に出れるようになってもすることがなかったから、行ける場所を教えてくれるのが嬉しい」

「……そっか。それじゃあ色々な所も教えて行かないとね」

「うん!」

 

常識や振る舞い、そしてこの世界の施設などはムラクモから教わっているが、こういった施設やイベントに関しては教えきれなかったのだろう、その点はヤクモや他の皆からも徐々に教えて行かないといけない。

 

「ツバサやヨヨさんにも話して日中はましろさんの家に居てもいいようにしようか?」

「いいの?エルちゃんとまた会えるの楽しみだなぁ」

「……」

 

エルと会えることも楽しみにするミクモの様子を見ながら、ヤクモはキュアマジェスティとなったエルを思い出していた。カイゼリンの娘として生まれた、成長したエルの姿とそっくりなミクモ。それは当然、スカイランドに遺されていた遺跡に描かれていた少女にもそっくりということになるのだ。

 

(……エルレイン)

 

誰にも絶対に言うなと特に強く念入りに押された、ミクモに、そしてエルに似ていると思われる人物の名前。遺跡の事を考えるとこの謎は相当昔にまで遡ってしまうのだろうか。そんなことを考えながらも、父の言葉の手前、誰にも伝えられずヤクモはそっと胸の内にしまい込むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、文化祭の当日まではあっという間だった。出すメニューが決まり、それぞれの担当も決め、教室の中を彩る飾り物を用意して内装を整えたり、買い出しに行ったりと多くの生徒達がバタバタと動いていた。中には部活などの兼ね合いでそちらに集中してクラスの方を手伝えない者も多少いたが、残った生徒達がカバーしたりして、順調に準備は進められていく。そして遂に文化祭の日が訪れる。その日は土曜日ではあったが、朝からましろとソラが登校して家の中にはいなくなっており、あげはとツバサも学校へと行くための準備を進めていた。そんな中、インターホンが鳴り、あげはがその対応の為に扉を開けるとそこにはミクモとムラクモの姿があった。

 

「ミクモ!」

「久しぶりだね、エルちゃん」

 

誰が来たのか、薄々と察していたのかエルがあげはの後を追うように玄関に出て、ミクモの顔を見て嬉しそうな様子を見せる。ミクモもエルとの再会を喜んで抱きしめるその姿を姉妹のように見守っていたが、ここであげはがムラクモに視線を移す。

 

「ムラクモさんも文化祭に?」

「いや、今日は別で用事がある。ミクモを連れてきたのは道を教えるついでだ。そんじゃ、後は頼む」

 

そう言うと、用事のためかムラクモはそそくさと立ち去ってしまう。彼の用事はわからないが、物騒なことでなければいいなと少しだけ心配そうに思いながら、ムラクモはエルと笑い合うミクモを見る。

 

「ミクモちゃんも準備万端、って感じだね?」

「うん!」

「エルも!」

「そろそろじゃないですか?」

 

あげはの言葉にミクモもエルも今にも待ちきれないといった様子だ。そして奥から、時計をずっと見ながらそわそわしていたツバサが顔を覗かせて聞いてくる。あげはもスマホの時間を確認すると、そろそろ家を出ていいかと頷く。

 

「そうだね、それじゃあ皆、学校に行こうか!」

「ふふ、行ってらっしゃいね」

 

見送りに来ていたヨヨが4人に手を振る。ヨヨには今日は外せない予定が入ってしまっており、残念ながら皆と一緒に文化祭を回ることはできなくなってしまった。しかし、自分の分まで楽しんできてほしいという彼女の言葉を受け、あげは達も3人が待っている文化祭へと向かうのだった。

 

 

 

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