超空軌道交通管理隊 ―指令脅威 人類の敵を排除せよ―   作:えぴっくにごつ

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交通管理隊が宇宙や超次元を舞台に活躍するお話です。
宇宙戦艦や人型兵器、宇宙怪獣といったスケールのデカい存在を、交通管理隊が淡々と扱う様子を描きます。

シュールのレベルかもしれないトンデモ話です。


緊急1便:「―超常開局 驚異的現場着―」

 

 

 ――瞬く星々の広がる大宇宙を背景に。超巨大宇宙戦艦が降下、いや――突っ込んで来る。

 

 

 

「ッ――!」

 

 その推測降着、いや墜落激突地点。

 そこに在った交通管理隊員――〝侵外(しんがい)〟は。

 襲い来た恐ろしい宇宙生物の巨体を、しかし片手間程度に蹴飛ばして退けながら。その印象の良くない人相を、目一杯に顰めて降下して来るそれを見上げる。

 そしてその纏う青い制服の肩章から下がる、私物の長距離観察スコープを構え覗き。そのレンズ越しに、拡大された超巨大宇宙戦艦のブリッジを見る。

 その内に見えたのは――〝渥美(あつみ)〟の。自らの上長の主任交通管理隊員の姿。

 拡大されたその姿は、今の状況に全く似合わない朗らかな笑みを浮かべて。何か片手を翳してこちらに挨拶のようなジェスチャーを向けている。

 

「――侵外くーん」

 

 その視認できる口の動きは、侵外の名をのんきなまでの様子で口にしていることが理解できる。

 

「――」

 

 それを見た侵外は、スコープを降ろすと。最早驚きも億劫と言うような、疲れ呆れた顰めっ面でただそれを、渥美の乗る超巨大戦艦を見上げる。

 

「――誰も――あなたのスタンスにはついて行けませんよ――渥美さん――」

 

 そしてそんな淡々と疲れたような、ある種で評するような言葉を。

 背後で停車する巡回車が轟かせる、けたたましいサイレンに混ぜて紡ぐ侵外。

 

 

 

 ――その直後。超巨大宇宙戦艦がその空間に降着墜落。

 巨大という言葉ですら生ぬるい、エネルギーの膨張崩壊による爆発と衝撃が。一帯のあらゆる全てを包み込んだ――

 

 

 

― 超空軌道交通管理隊 ―

 

 

 

 ――そこは、広大な銀河宇宙のある一帯。

 

 そこに在り、並び布陣するは、数多膨大な数の宇宙戦闘艦艇。

 超巨大航宙戦艦から航宙巡洋艦に航宙駆逐艦まで、その数は100や200でも到底足りない。さらにその合間を埋めるように、各艦の搭載機である無数の人型戦闘機体が隊形布陣している。

 それらは定められた布陣隊形を取り、まるで巨大な生き物のような様相を成している。

 それは。この宇宙世界に存在するあらゆる国家、組織共同体から参じた、宇宙艦隊の連合体であった。

 時には互いに刃を交えた宇宙の戦士たちが、今この一堂に会していた。

 まさに圧巻の姿。感動にすら値する姿。

 

 ――しかし。

 

「――ッ……」

 

 その膨大な内の一隻、超巨大航宙戦艦。

 アキツ帝国と呼ばれる国家文明圏の、その軍に所属する戦艦――アマテラス。

 そのアマテラスのブリッジ内の。中心の艦長席に座す人物、すなわち艦長である人物の姿がある。壮年の様相を見せる、一目で数々の戦場を潜って来た事を察せるその男性は。

しかしその猛々しい顔に。苦い色を浮かべて、同じく苦い色で口を鳴らした。

 

「艦長……」

 

 そんなアマテラス艦長の元に、眼下より声が届く。

 声の主は、艦橋要員の若い女士官。艦長へ振り向き見上げる女士官の、その顔は不安に染まり、どこか怯えている様子すら見えた。

 いや、それは彼女に限らない。アマテラスのブリッジに詰めるアキツ軍人の皆全てが。雄々しいまでの大艦隊の中に立っているというのに、一様に何かに怯えた様子であったのだ。

 艦長はその女士官に返す言葉を見つけられず、ただ前を。艦橋の窓よりその先を見る。

 

 ――その先に、宇宙空間に見えた物は。巨大で、異様な〝何か〟だ。

 

 一目見てまず、その朧げな輪郭から巨大な星雲とも見紛うそれ。しかしその色合いは、あまりに不気味で禍々しい。

 その正体は、ある存在の群れであった――

 

 

 ――ディマイズ。

 

 

 Demise、終焉と名付けられたそれ。

 それは突如として現れた、人類の敵だ。

 

 姿形、大きさは様々。人よりも多少大きいものから、宇宙要塞を飲み込むレベルのものまで。

共通するはいずれも人類の本能を、嫌悪を揺さぶる恐ろしい姿。そしてその最大の特徴は、その驚異的な力。人類の武力兵器をものともしない強靭な体だ。

 その圧倒的な、人類の武力を易々と退ける恐るべき力を持って。人類の無敵の艦隊を蹴散らし喰らい。文明を、惑星を、全てを飲み込み無に帰して来た存在。

 それがディマイズだ。

 

 今日ここまでに、この宇宙の人類の文明圏の大半はディマイズに侵され失われていた。

 いくつもの町が、都市が、星が、文明が滅び。

 そして数えきれない程の人々が犠牲となった。

 

 撤退を続けて来た人類文明は、ついに宇宙への出発点となった母なる惑星に迫られた。

 そして、その母なる惑星を侵させまいと。人類文明は今日ここに、この宙域に戦力を終結。排水の陣の構えで、ディマイズに立ち向かう事となった。

 

 

 その人類の敵たるディマイズが今、艦隊に。この場に集った全員の目の前に迫っている。

 艦隊の士気は決して低くはない。しかし巨大で、恐ろしいディマイズの出現を前に。その士気すら恐怖と絶望に飲み込まれ、掻き消えてしまいそうな気配に侵されかけていた。

 

「ッ……」

 

 それに耐え、飲まれ掛けた恐怖から留まるように。艦長はその顔を険しくし、奥歯を食いしばる。

 

「艦長。総旗艦、ユニティから……全艦砲撃備えの命令です……!」

 

 その艦長に、先の女士官から報告の声が上がる。その言葉の通り、それは連合艦隊の総旗艦からの砲撃準備の命令が来たことを告げるもの。

 すでにこのアマテラスは元より、宙域に展開した全ての艦艇は。その主砲から、主機に直結する必殺の船体砲まで、その全ての砲口を迫り来るディマイズへと向け。照準を完了させていた。

 後は、次に来る攻撃開始の命令を待つのみ。命令が下りた時が、全艦が一斉に砲門を開く時だ。

 例え、それを向ける敵が――〝人類の攻撃を物ともしない相手〟であっても。

 その主砲の、船体砲の必殺の攻撃すら、跳ねのけて見せる恐るべき存在である事が分かっていても。

 緊張、恐怖。縋るような希望と大きすぎる絶望。それがない交ぜになった空気がブリッジを、それぞれを支配し。

 次には、総旗艦からの砲撃指示が降り。全艦の全砲門が開かれる――

 ――はずであった。

 

「……え?……!う、右舷情報よりアンノウンッ!?」

 

 しかし、直後にブリッジ内に響いたのは、そのはずを外れる知らせの声。その主は、艦のレーダー士官のもの。

 

「ッ!?」

 

 その知らせに、艦長の。ブリッジ内の全員の顔が強張る。

 全員が真っ先に想像したのは、敵――ディマイズの別動隊の存在。奇襲の可能性であった。一瞬、ブリッジ内をいよいよの驚愕と絶望が支配する。

 

「……え?」

 

 しかしまた次に上がったのは、ブリッジ内の誰かのそんな呆けたような声。いや、ブリッジ内の誰もが、次には同じ感情を浮かべていた。

 ブリッジ内の誰もが、艦橋窓のその向こうに見える。現れたその〝存在〟に気付き、視線を向けている。

 

「は……?」

 

 また誰かの、呆けるような声。その誰もが浮かべるは、信じられないといった様相。

 

「まさか……」

 

 それは艦長も同じ。その艦長は視線を持って行かれながら、無意識の一言を零した。

 

 超巨大戦艦アマテラスの。いや、巨大な連合艦隊の前に現れたもの。

 それは、赤や黄色の光を煌々と灯し。そして自らの意思で宇宙空間を飛び翔ける、複数の物体。いや、乗り物。

 

 

 その正体は――自動車。

 

 

 本来は、宇宙空間を飛ぶ事などできないはずのそれ等。

 しかし複数台のそれ等は確かに、自らの行動意思を持つ様子で動き。斜め一線の隊形隊列を編成し、まるで艦隊の行く手を、砲撃を遮る様に進入して来る。

 

 

 詳細には、それ等は車体を黄色。もしくは白黒やシルバー等、それぞれの色で塗装し。そしてそのルーフ上に警光灯を装備し瞬かせる――〝緊急車両〟。

 ――パトロールカーであった。

 

 

 

 艦隊の前に現れた、自動車――パトロールカーの隊形隊列。

 

 その数は7台。正しくはその種別種類は複数になる。

 まず。そのボディを黄色に、前後バンパーを赤白の縞模様に塗装し。そして赤黄の警光灯を備えた標識器をルーフ上に搭載する、道路パトロールカーと一般に呼称される大型SUV。これが3台。

 そしてボディを白黒で塗装し、ルーフに赤色の警戒灯を搭載した大型セダンのタイプ。いわゆる〝パンダ〟と渾名される警察パトロールカーが2台。

 さらに。同じく大型セダンだが、そのボディ塗装は白ないし青の単色であり。そしてルーフには格納隠蔽機構を持つ赤色警戒灯を備える、いわゆる覆面パトロールカーがまた2台。

 

 その計7台からなるパトロールカーの隊形。

 それがいずれも艦隊の前に流れ込むように進入、艦隊の前で斜め一線の隊形を作り展開した。その様子はまるで艦隊を先導し、同時に艦隊の進路を抑える様だ。

 そして実際、抑えるというのは正しかった。

 ――パトロールカーの隊列が始めたのは、〝先頭固定〟と呼ばれる交通規制行動。

 本来は自動車道路、軌道上にて。安全確保や調査行動の際に、あえて通行する一般車の先頭を低速で走行し、その動きを抑え込む事を目的とするものだ。

 しかしそれが今は・宇宙空間のこの宙域に布陣していた、連合艦隊の艦船群に対して行われ始めたのだ。

 そしてSUVパトロールカー、及び各セダンパトロールカーはそれぞれ。本来は音の響くはずのない宇宙空間で、しかしけたたましいサイレンの音を鳴らし響かせ。

 そしてルーフ上の標識器ないし、リアガラスの内に備える標識器に。―規制実施中―、―速度注意―、―パトカーに 続け―、等いった文字列表示や、アニメーションを映し流している。

 それ等は艦隊に対して、その行動の抑制を訴え促すもの。

 そしてそれは効果を成し、巨大な艦隊は行おうとしていた攻撃行動を止めて留めるに至っていた。

 もっとも、その艦隊の艦船に乗る誰もが。突然の光景に目を丸くしていたが――

 

 

 

 艦隊に対して先頭固定行動を開始したパトロールカー隊とそして艦隊より、その斜め上方の側方。

 そこにまた、別のパトロールカーの一隊があった。

 内訳は、黄色い塗装を施した大型SUVの道路パトロールカーが2台。セダンタイプの白黒の警察パトロールカーが2台、同じくセダンタイプのシルバー単色の覆面パトロールカーが1台。

その計5台。それ等が斜め横一線の隊形を組んで、各警光灯を煌々と照らしながら、宇宙空間を〝走行〟――飛び翔け、進んでいる。

 内の、2台の道路パトロールカーは先頭と2台目に位置する。それ等の道路パトロールカーは〝使用者〟からは〝巡回車〟と呼称されている。そしてその使用者とは――

 

 

 ――〝超空軌道交通管理隊〟と呼ばれる組織だ。

 

 

 この大宇宙を、そして宇宙と次元を違え並行して存在する様々な次元空間を。しかし縦横無尽に巡り通された特別な軌道――〝超空軌道〟と呼ばれるものがある。言ってしまえば宇宙や次元空間に巡らされた高速・専用道路、ハイウェイ。

 その超空軌道を管理、パトロールし。安全を守り司るのが、超空軌道交通管理隊だ。

 

 

 その超空軌道交通管理隊――略称、管理隊の使用運用する2台の巡回車の、内の前より2台目の1台。

 その車内内部。運転席と助手席シートには、それぞれに座す2名の人物の姿が在った。

 その姿服装は、いずれも濃い目の青色を基調とし、各所に蛍光テープを走らせラインを描いた制服を纏い。さらに蛍光ベスト、白いヘルメット、ブーツなどを装着装備している。

 それは管理隊の制服。二名はどちらも、超空軌道交通管理隊の隊員であった。

 

 

 内の助手席側に座す隊員。年齢は20代後半から30程。

 名を、侵外(しんがい)と言う交通管理隊員だ。

 言ってしまえば、あまり印象の良くない顔つきをしている侵外は。同様に印象の良くないその眼をサイドドアのガラス越しに外へと向け、視線を何かつまらなそうな色で降ろしている。

 その眼下に見えるは、先頭固定を今まさに実施している、別のパトロールカーの一隊と。それを受ける巨大な艦隊。

 

「――目がまん丸だろうな」

 

 それを眺めていた侵外の隣。運転席側より、なにやら揶揄うような一言が飛んで来る。声の主は、現在巡回車のハンドルを預かるもう一名の交通管理隊員。

 服装こそ侵外と同じ青を基調とした管理隊の制服――しかし、その隊員の姿は異質であった。

 まず、身長は200㎝を優に超えている。そして管理隊の制服越しにも、蓄えられた筋肉体躯がありありと分かる。

 顔立ちは険しく厳つい。そしてしかし最大の特徴は、その肌色。

 その隊員の肌色は――青。

 比喩ではない。管理隊の制服よりも深い、文字通りの濃い青色の肌を、その隊員は持っていた。

 ――その隊員は、ミュータント。メタヒューマンと飛ばれる人種であった。

 まるでモンスターの様だが、その元はヒト。それが自らの体を強化するために、人工的な手を加え、その姿を変えた存在。

異質に見えるがしかしこの世界、宇宙では。そういった事象や存在はまた当たり前の物であった。

 そのミュータント隊員は、名を辻長(つじなが)と言った。

 年齢は30代後半。管理隊では〝巡回長〟の階級を持ち、現在二人の乗車する巡回車の長を務める。侵外からすれば先輩であり、現在の上長でもある。

 その辻故は。いくら大型SUVであっても窮屈であろうその身体サイズを、しかし苦にしていない様子で器用に座席シートに納まって、ハンドルを支えながら。

 その恐ろしいまでの顔立ちに、しかし反した揶揄う様な色を浮かべて、視線を侵外へと寄こしている。

 その言葉は侵外が眼下に見る、艦隊の艦船の乗組員達の。突如として宇宙に、目の前に自動車の一隊が現れた彼等の心情を想像しての冗談交じりの言葉であった。

 

「どうですかね」

 

 そんな今の上長の辻長の寄こしたふざけた言葉に。しかし侵外はさして興味の無さそうな、端的で淡々とした言葉だけを返して、眼下に向けていた視線を戻す。

 

「だと思うがね――しかし、デカい事になったもんだ」

 

 そんな侵外に、辻長もしつこく食い下がる事はせず。視線を前方に戻しつつ、そんな言葉を零した――




言うまでもないかもですが冒頭は亜人のパk――パロです。
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