まかごと   作:騎利

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「貫狗郎。お前は家族を大切しろ。家族とは血だけで共に過ごし意を共にしたものこそが家族たる」
祖父さんはよく俺にそう言っていた
家族の為に命を落とせるならばそれでよし
家族を見捨てることなかれ
それは散々言われたことで
「ええか貫狗郎。お前は絶対正義になんぞなったらあかんで。正義っていうのは今あるもんを持続させて変化と異なるモノを除去しきるド畜生どもや。悪は目的があって手段を選ばん。常に激動と激流の存在で周りに何があれど気にせん奴らじゃ。お前は悪であるんやで」
親父はよく俺にそう言っていた
それは昔から思ってた
結局のところ正義を語る人間は何もしないと

だから俺は、悪になる




正義と悪と人と妖しの物語

「おきなさい!クロウ!」

ズドン、という豪快な音が自分のさっきまで腹があった場所で響く

「おはよう、玉乃。俺の布団に飛び込んでくるとは大胆なヤツめ」

「クロウ、貴方今からもう一度横にならない?最近取得したのよ。サソリ固め」

布団から起きて制服をはたいて身だしなみを整える

この人を起こすのにエルボードロップを使うイカした女は八坂 玉乃

俺の大切な家族の一人である

「全く、クロウはギリギリまで寝ようとするから油断ならないわ」

「早く起きたところでやることないだろ。時間は有効活用しようぜ」

「新学期で入学式当日にもそういう事いいやがりますかねこのバカは」

「わかった、着替える。着替えるから出て行ってくれその振り上げた拳と共に!」

全く、そう言いたげな顔で部屋から出ていく玉乃を目にやれやれと息をつく

 

 

猛烈な勢いで着替えた俺に死角はなく、時間にたっぷりの余裕を持って通学路を歩いていた

「クロウ、入学式で早々に寝ちゃダメだからね」

「わーってるよ、ったく。朝は起こしに来るわ通学中もお小言ってどこの押しかけ女房だよお前は・・・」

「起こしに来るわ、ってクロウのお父さんに頼まれてるからだし前科があれば言いたくもなるでしょう。ただでさえクロウなのに」

うわー信用ねー

そう言って空を仰ぐ

ん?

「おい、玉乃。アレなんだ?」

「ん?何?」

指差す方を見る玉乃

だがしかし

「何?何もない普通の空だけど?」

「あーいや、見えてないならそれでいいや」

「そういうこと。それなら見えなくて結構」

そうこうして歩いているうちに学園の前に着く

依言学園(ゆごとがくえん)

昔は世界に誇れる淑女を

という目的で造られたお嬢様学校だったわけだが時代の流れによって共学校となった

ただ全てが全て変わったというわけでもなく学校内では一般科と高等科に分かれている

高等科とは入試での上位10%のみがいることのできる特殊な科がある

一学年に240人。そのうちたった24人しかいない上に高等科と一般科は校舎が違うために普段まったくもって交流がない

そのために高等科について詳しい生徒というのはこの一般科にはそういない

 

 

「寝たわね」

「あぁ寝たぞ」

入学式の教師の話なぞ聞いてられようか

「しかしお前が前にいるのにも随分と慣れたな」

「私も、クロウが後ろにいるのに慣れたわ」

付き合いが長ければ同じクラスになることも少なくはない

そうなったとき、テストの時や休み明けの初日などは確実に五十音順で並ぶ

そうなると名前の関係上どうしても玉乃が俺の前にいるし、俺が玉乃の後ろに来る

「おーら野郎どもと女郎ども。席付け席付けー」

クラス担任の教師が入ってくる

無精髭の生えた中年のおっさんだった

「あーっと、俺の名前は須野 命だ。漢字はあれだ、命って書いてみことの奴だ。よろしくな」

なんとも中途半端、もといいい加減なおっさん教師である

しばらくぼーっとしていた

「んじゃー次は矢多野。お前で締めだ。しっかりやれよ」

「ういーっす」

ド前の女がもっとちゃんとやれとオーラを出してくるが知ったことか

「矢多野 貫狗郎です。字は矢が多い野原に貫く狗の朗報と書いて<やたのかんくろう>って読みます。以上」

「おいおい矢多野。なんか無いのか。こう、締めにふさわしいの」

「あるわけねぇですよ。そんな便利なもん」

「それもそっか。そんじゃあ今日はこんだけだ。明日から平常通り授業始まるから送れんなよ、そんじゃあ解散おつかれさん」

ひもくゆるーく終わる初日である

まぁはじめは誰だってこんなものだろう

「おい玉乃。お前今日はこの後どうすんだ?」

「特に予定はないけど、何よ」

「今日から羊未(ひつじみ)さんがうちに住むんだよ」

「は?聞いてないんだけど」

「親父曰く最近動きが荒いらしくってな。一応ってことで」

「どういうことなのよそれ・・・」

羊未さんとはフルネームで羊未 斗轍(ひつじみ とてつ)と言い子供の頃、俺の世話係をしてくれていた人だ

小さい頃から付き合いのある玉乃は当然知っている

それよりもどうやら動きが荒れている方に気が言ってるらしい

「おい玉乃、二人で歩いてんのに一人でブツブツ言ってる奴とこれ以上一緒に帰りたくないぞ」

「うっさいわね。クロウが私に何も言ってくれないから自分で考えるしかないんでしょう?」

「それだったら家帰ってから羊未さんが教えてくれるってよ。俺もなんにも知らねぇんだわ」

「だから私の予定を聞いたのね・・・」

恨めしそうにこちらを見るも本当に俺が何も知らないことをようやく信じたかやれやれと前を向く

 

 

「お帰りなさいませ、貫狗郎様」

家の玄関口を開けると丁寧に返された

赤みがかった黒のショートヘアに深緑の和服

世話係をしていた時とその見た目も何ら変わらない羊未さんだった

「ただいま、羊未さん。えーっととりあえずこのままでいいから色々聞かせてもらっていいかな」

「いえ、貫狗郎様。しかと手を洗って着替えてからにしましょう。玉乃、貴女は先に奥へ」

はい、と答えて速やかに奥へ行く玉乃

流石の玉乃も羊未さんには敵わない

二人を待たせるのも悪いのでさっさと手を洗って着替えて奥に行く

机をはさんで向こうに羊未さん、横に玉乃

「さて、羊未さん。久々に会って積もる話もあるだろうけど先に情勢とか聞かせて」

「はい。ここ数年動きを見ていた四獣、特に朱雀の動きが目に見えてくるようになりました。西洋の方は相変わらず原点聖書の復元に尽力しているようで」

「四獣が揃って動いてる。特に朱雀陣が活発ってこと?」

「はい。それとここ、依言の地の陰陽のバランスがどうにもおかしいので調べろ、と。獅子氏(ししうじ)様が」

獅子氏とは俺の親父の名である

ここで少し俺の実家、矢多野家について言うべきであろうか

矢多野家、正しくは八咫之家と書く

遥か昔、世界に妖しがまだいた時代

あらゆる道を極めし仙人の中に陰、すなわち闇の性質を持った仙人がいた

それが初代八咫之仙である

初代はその陰の性質をもって一部の妖しと共生、一部の妖しを滅ぼすという大々的な変革をもたらす

当時、初代は強力な妖しだけを残しそれらと組んで世を暗黒に落とさんとする悪とされた

しかし、この行為が転じ数の多い妖しの種が滅んだことで下々の民の被害はなくなり

また強大な妖しは初代が束ねているが故に恐れられはせど何かをすることはなかった

その血は脈々と受け継がれ現代になっても今ある魑魅魍魎を滅ぼし、また強大なものが力を振るわぬようにする

世に激動と激流を産み、変革の痛みをすべて引き受ける邪仙の一家

それが俺の実家、八咫之家である

ではこんなファンシーなところに何故玉乃がいるのかというと

玉乃は普通の人間ではないからである

赤ん坊の頃に捨てられた玉乃は黄泉津大神こと伊佐波様に拾われる

そして伊佐波様により黄泉の気を吸い、呪符、護符、武符を教わっていた

玉乃、当時七歳

その後伊佐波様と親父が同盟を組んだ際に俺の護衛として俺と共に過ごす事になっている

ついでなので言っておくと羊未さんも人間ではない

羊未さんの本当の姿は四凶と言われる大妖怪、饕餮である

初代八咫之仙が最初に率いれた妖しで実質年齢などとてもじゃないが分かったものではない

現在ある妖しの勢力図は国内であれば八咫之・伊佐波同盟と四獣の二つである

八咫之・伊佐波は外堀を埋めてから人間達に自身の存在を知らしめるべきであるというゆったり派

それに対し四獣は大々的に名乗り出ればいいという突進派

という妖しの有り様にズレがありそれが今日まで小競り合いをしている原因ともなっている

説明、終わり

「で、羊未さんはバランスが崩れてるのなんでだと思う?」

「やはり私と同じく四凶の誰かがそろそろ起きようとしている。あるいは人目についてしまった、のどちらかかと」

四凶は羊未さん以外は今、日本の地のどこかで眠っている

詳しくは知らないが昔、四獣との大戦があった時に羊未さん以外は全員致命打を受けてしまったらしく休養のため眠っているそうな

「人目についたらのなら楽じゃないわね。情報操作も楽じゃないのよ」

「まぁ伊佐波様に土下座するだけだろ」

外堀を埋める為に伊佐波様は現に大企業のトップである

それはもう、知らない人などいないほどの世界クラスで

それゆえに財界、政界についてはちょくちょくと弄っている

「だからといって忙しい人の手を煩わせるよりは自分たちで片付けれた方がいいでしょ?」

「玉乃の言うとおりですね。四獣の動いている今は下手に伊佐波様の力に頼らないほうがよろしいかと」

「それってさぁ。俺が頑張らないといけなくね?」

「そりゃそうでしょ。クロウじゃなきゃ四凶を起こせないんだから」

「はい、貫狗郎様にはお手を煩わせて申し訳ないのですが是非その才を発揮していただきたく思います」

「いやそんな言うほど才能ないって。親父がやればいいじゃん。現当主なんだから」

「ご謙遜をなさらないでください貫狗郎様。十の時に全ての修行を終えて当主様から正しく仙人を名乗ることを許されたのは八咫之家の長い歴史の中でも貫狗郎様だけなのですから」

誰でも彼でも仙人を名乗ることができるわけではない

正式に仙人と名乗るには一〇八の修行を終え当主より認められる必要がある

俺の場合はひとつの鍛錬におよそ一週間しかかからずそのために歴代最速で仙人になってしまった

「それにクロウは子供の頃お大怪我治す時に伊佐波様の力を受けたから妖術だって使えるし肉体も常人じゃないでしょ」

「いや、それはそうなんだが」

仙人となった後はより高みへ行くために肉体を磨き知を磨く精錬と呼ばれる鍛錬に入る

修行は決められたことをするだけだったが精錬では己が感じた事をすることになる

その際、まだ十だった俺は盛大にヤンチャをやらかして四獣、青龍と戦闘

ズタボロにされ生きるか死ぬかになった時、伊佐波様が俺を救ってくれた

これだけならいい話なのだが、伊佐波様はただ救うのでなく俺の傷ついた身体を治すのに妖しの血を使った

そのため俺は半人半妖の仙人となり、精錬と共に妖しの血が馴染むようになり果てには妖術まで使えるようになった

結果、仙人から妖仙へとグレードアップ

肉体強度も通常の仙人を凌ぐものとなってしまった

おかげで怠惰な親父から仕事を回されることが多くなってしまったのである

いや、俺も親父の息子だから

「面倒、くせぇなぁ」

 

 

数週間が立ち、ゴールデンウィークが近づく4月末

一体この街のどこで四凶が寝ているのやらまるで分からずのままであった

羊未さんも町内の情報を集めているらしいがこれといって目星の立てるようなものはないという

玉乃なんかは四罪ではなく別の妖しが出現したのではないかという線を探っているらしい

で、そういう事態の中でわざわざ夜に俺が出かけて何をしているのかというと、アイスを買いに行っていた

ほら、夜になって無償にアイス食べたくなるときってあるだろ?

ヤラしい本とアイスを買った帰り道ほど慎重にならなければならないものはない

コンビニで買い終え焦らず急がず、しかしアイスが溶けないようにできる限り近道をして帰る

夜中の公園に人気はない。深夜ともなれば酔っ払いが現れるだろうが今は充電中だろう

だが、そんな風に思っていた俺の考えを容易く打ち破る存在がそこにあった

公園のベンチで座ってそのまま眠っている少女

肩口まで伸びている茶髪は染めているのではなく恐らく自然(ナチュラル)のものだろう。座ってはいるが立ってもその頭頂は俺の目の高さに届くか否かといったところだろう

胸は良くも悪くも発展途上国。玉乃のようなバインバインでもなく羊未さんのようにスレンダーでもない

まぁ、羊未さんの場合は動きやすさを重視してのあの姿なので言うべからずだが

上着の前を閉めていなく、大きく開いて肩が見えている。なるほど下にはノースリーブというやつか

ハーフパンツにスニーカー・・・いや、あれはスニーカーじゃない、スポーツシューズだ。どうやら最近のスポーツシューズもオシャレ化が進んでいるらしい

名も知らぬ彼女の脚を見る。足はしっかりとして筋肉が絞られスラッとしている。ふむ、長距離ランナーなのだなと適当な事を思った

なんというか、本当に名も知らない女の子をジロジロと観察してしまって申し訳ない気がしてきた

月の位置から察するにおよそ8時といったところか

夜の公園、眠る少女、若干脱げかけている上着

犯罪の匂いがした

めったにない親切心をもって彼女を起こしてあげることにした

彼女が首を傾げていない方の右側に言って両手を自分の口の左右にセット。そのまま彼女の耳に近づけて

「おはよーございます!」

大声で叫ぶ

「いやあああああああ!」

慌てて起きようとして足が絡まったのかズデーンと前にこける

「な、なな、なんですか!」

「いや、俺は」

「寄らないでください!変態!変態!変態ぃ!」

もはや泣き叫ぶように言う彼女

クソムカつく父上、今は亡き母上、俺の心は、仙人として鍛え上げたはずの心は今脆く崩れ落ちそうです

よもや名も知らぬ初対面の少女に変態と連呼されることがこうも心抉り破壊するとは思いもしなんだ

「あの、お願いします俺の話を聞いてください」

もうへりくだるしかできなかった

 

 

ベンチに座る少女、正座の俺

「つまり、変態さんは夜一人で公園で寝ている私を気遣って起こそうとした、と」

「はい、そうです」

誰だ、情けは人の為ならずとか適当なことを言った輩は。情けをかけた結果情けない姿に俺がなってるじゃないか

「あの、そろそろ俺は帰ってもよろしいでしょうか」

正直アイスなんてもうとうに溶けているだろうがこれ以上遅くなって羊未さんからも叱られるのを考えると気が沈んでしょうがない

「そうですね、私も家に帰りたいですのでさっさとどっかいってください変態さん」

「あ、俺が先に行くんすか」

「私が後だと尾行されそうなんで」

そこまでこの少女の中で俺の評価は最低か

「そんじゃあ俺は帰るけど、夜遅いから気をつけて」

少女の視線は終始冷たいままだった

で、余談ではあるが

帰ってからも羊未さんに散々怒られた

泣きたい

 

 

今週を乗り越えればゴールデンウィーク

そんな週を直前にした日曜日に玉乃がやたらと嬉しそうに貫狗郎の方へ擦り寄ってきた

「ねぇクロウ。明日から体育でスポーツテストがあるでしょう?勝負しない?」

「いいぜ。そんじゃあルール決めようぜ、反則があったらいけねぇ」

「そうね、まずは妖力、仙術それから符の使用の禁止ね。使ったら色々と問題にもなるし」

「勝敗条件は点数化した時に高い方でいいよな」

「おっけ。敗者は勝者にコンビニの高いアイス奢りね」

そしてスポーツテストはこなされていく・・・

 

 

 

そして明日からゴールデンウィークという日の終礼

「よーし、お前ら。この前のスポーツテストの個人結果渡すぞー。あと男女トップ5はプリント載ってるからなー」

須野先生が結果を返却していく

「おーし次、八坂。女子一位とは恐ろしいな。しかも男女合わせても三位とは恐れ入るぜ、ホント」

しかし貫狗郎は違和感を覚える

(ん?玉乃が三位?)

「次、矢多野。男子一位、男女総合一位おめでとう。お前おっそろしく足速いなぁ。陸上部入れよ」

「嫌っすよ。部活、めんどくさいです」

「そうか。いやしかしグラウンドで1500を3分58秒っていうのを帰宅するのに使うのはもったいねぇなぁ」

昔から貫狗郎は走るのが好きだった

仙人の一〇八の修行の中に山飛びというのがある

未開の山を走って越えるというもので、一度でも止まれば始めからという修行である

山の持つ気脈の力を汲み取りそれを行使することで山を越え、仙術を使う上で欠かせない流れの操作を身につけるというものなのだが、貫狗郎はそんなことお構いなしに体力と根性だけで山越えしてしまったのである

よもやこんな事になろうとは思っていなかった師たる父・獅子氏は「よし」というまで繰り返せと言った

何十回も山を走り回っているうちにそれ自体が楽しくなってきたのを貫狗郎自身覚えている

以来、趣味は走るということになった

余談だが山飛びを何度も経験したことで身体前進が気脈を掴むようになり貫狗郎の仙人になる速度を、そして仙術のレベルを格段にあげる結果となった

で、返されたプリントに目を通す

点数によって並べられた男女総合欄

一位、俺

して三位に玉乃

間に入っている男子、総合二位。

叢井 剣(むらい つるぎ)

しかもこの男、恐ろしい事に貫狗郎との点数が僅差

もし貫狗郎が走るのが好きでなかったら確実に負けていただろう

いや、テスト全体での点数でこれならもしかすれば何個か負けたものがあってもおかしくない

貫狗郎と玉乃の思考がリンクする

((・・・これはかなりまずい!))

幼少から特殊な環境下で身体を鍛えまたこれ以上を目指さねばならない二人にとってただの人間、しかも同い年の人間と僅差とは

傍から見れば奇怪なことだろう

スポーツテストにて貫狗郎は男子、総合で一位

玉乃も驚異の記録で二人の例外を除いて男子を突き放して総合三位

それでいてまるでこの世の終りのように沈んでいるのだ

その時

「たあのもおおおおおおおおおお!!」

なんとも騒がしいのが来た

「ここに矢多野貫狗郎と言う男がいると聞いた!」

自分の名前が大声で出たので渋々そちらに目をやる

身長一七五と誤差すこし。制服の上からだが充分にわかる肩、いや全身の筋肉

その雄々しい顔立ちからしてその男の成りを充分に表していた

「人の名前を逐一大声で呼ぶな、なんだってんだ」

「おぉ、お前が矢多野貫狗郎か!」

「そういうお前はアレだな。えーっと叢井剣」

「ほう!よく俺の名を知っていたな!もしや、俺が貴様を求めたように貴様も俺を求めたのか!」

「いや訳分かんねぇこと言ってんじゃねぇよ。要件さっさと言え。聞くだけ聞いてやる」

この高いテンションについていくのは疲れる為にバランスを取るため低いテンションで接する

「俺はお前に決闘を挑む!」

指差し堂々と発せられた言葉に貫狗郎は

「はぁ?」

としか返せなかった

 

 

「決闘・・だと?」

「そうだ。俺はこれまで運動においては誰にも負けていなかった。だが!俺は所詮井の中のオタマジャクシ!俺と張り合える人間を求めていた!そして!ようやく!俺はお前に出会った!この出会いは運命だ!」

貫狗郎からすれば面倒事の集合体のような男だった

だがしかし、現にこの男は自身にも届かんばかりの能力を秘めている

ここでその能力を測るのも悪くない

が、しかし思うところは一つ

「で、なんで決闘なんてところに行き着くんだよ」

「俺とお前のクラスが違うからだ!これでは体育の授業でも雌雄を決することができん!」

「なぁ剣や。お前は俺と競いたいんだよな?」

「そうだ!お前は俺の待ち望んだライバルだからな!」

「ならさ、その待ち望んだライバルとの戦いをこんなすぐに決めてしまうのは惜しくないか?」

「どういう意味だ?」

「もし今決着を着けようとしたところでさして時間が経ってないから俺が勝つだろう。だがそれでは俺も面白くない。俺たちの決着を着ける場は、年に一度の体育祭こそふさわしい!」

「ふ、ふははははははははは!矢多野貫狗郎!お前は俺の想像以上だ!いいだろう!決着の場は体育祭だ!」

ふははははと笑いながら立ち去っていく剣

「良かったの?あんなこと言っちゃって」

「玉乃、俺の顔になんて書いてある?」

「面倒事先送りできて良かったって書いてるわね」

「ご明察」

二人してカバンを手にいざ帰路へという時に放送がかかる

「矢多野貫狗郎、八坂玉乃。至急、生徒会室へ来なさい。繰り返す。矢多野貫狗郎、八坂玉乃至急。至急、生徒会室へ来なさい」

さらなる面倒が二人を襲った

 

 

「突然呼び出したりしてすまなかったね」

生徒会室にて待っていたのは女子生徒だった

「私は叢井 天見(むらい あまみ)、この依言学園で生徒会をしている」

「叢井・・・??」

「あぁ剣に会ったのか。あれは私の弟だ」

「あの、生徒会長がわざわざ私たちに何の用でしょうか?となりのは兎も角、私は問題を起こしてなどいないはずですが」

「そうだな。君たちにも時間があるし、手短にしよう」

表情を一転、真剣な眼差しで貫狗郎と玉乃を見る

「君たちは本校の入試で手を抜いていたね?」

形式上は質問だったがそれは確信の篭った声だった

「生徒会は生徒指導部の役割も果たしていてね。君たちのテストがあまりに不自然だから呼び出させてもらった。入試では最後の大問を空白にしてその他は全問正解。そして、入学直後の実力試験でも同じことをしている。これは君たちが意図的に点数を落としていると見た」

「時間が足りないから最後の問題はやってないだけっすよ」

「それはどうかな?数学では見事な途中式だと高等科の先生も言っていたよ」

しょうがないな

貫狗郎が玉乃を一瞥し玉乃はそれに頷く

「最初の質問、手を抜いていたかどうかっていうのに答えはイエスです。俺たちは高等科にいかない為に自分たちから点数を落としました」

高等科には入試以外にも行く方法がある

それは実力試験で高等科の生徒の点数を上回ること

高等科に行かないためには、実力テストでも点を落とす必要があった

「何故そのような事を?」

「俺たちが学園に来る目的が勉学には無いからです。俺たちはただ社会の縮図とも言える学校という環境に身を置くことに目的を見出しています」

そう

実際問題、貫狗郎にしろ玉乃にしろ学力に関して言うなら学校で習うことなど無いほどである

それでもなお学校に来る理由

それはただ人間社会を理解する為だった

貫狗郎は自分が八咫之の当主になったならば妖しの存在を世に示す気でいる

そのために、どういった言動が世にどういうった波紋を広げるのかを深く知る必要があった

「君達は非常に優秀だから教師陣からも是非に高等科へと言う話があるが・・・行く気はないと」

「現状で充分です」

「私も、同じく」

二人の返事を聞いて薄く微笑む

「そういう返事を聞けて私は嬉しい。勉学を全てとせず社会学習の為に学校に来るその考えは素晴らしい。私にできることがあれば協力しよう」

「ありがとうございます、会長」

「人を役職で呼ぶのは失礼じゃないか?天見という名前が私にはあるんだよ。貫狗郎君」

「すいません、天見先輩。あの、早速で申し訳ないんですけど一つ聞いてもいいですか?」

「ん?あぁ構わないよ」

何でも聞いてくれ、と言う天見

いい人なんだなと貫狗郎は思った

「先輩は既に歴史学の博士号を取得してるんですよね?」

「あぁ、考古学が専門だがそれで?」

「先輩は既に何かの調査などをしているんですか?」

玉乃が驚いた顔を貫狗郎に見せる

それに対し天見は楽しそうに答える

「噂になってたかい?」

「えぇ、天見先輩が学校裏手の山へ行って何か調べてるって」

「そうか。はて、これを君たちに言ってもいいのかどうか・・・。いや、いずれ知る事だ。教えてあげよう。依言学園では敷地の拡大の為に裏手の山を切り開く事にしたんだ」

「私の知ってる限り、依言ってかなりの面積ありますよね?まだ広げるんですか?」

「それは校舎を含めてだろう。実際グラウンドは狭くて運動部の活動が伸びやかでないのが現状だ。そこで新たに広げようと思って地質調査を行ったんだが、少し面白いものが見つかってね」

「面白いもの、ですか」

「あぁ。木造の高さ三メートルほどのものでね。一体何の木から出来ているのかも不明。文字らしきものが書いてあるが日本のどの時代のものとも当てはまらない。さらに土の中から見つかったのに一切の腐敗腐食なしときている。これを調べてもし大規模なイタズラで無ければ過去に人類が木を遥か未来までその姿を変えさせずに保存する術を持っていたことになる」

興奮気味に話す天見

その話を冷静に聞く貫狗郎と玉乃

その木造物体とは確実に四凶を封印している杭だろう

あまり多くの人の目につくと休息に入っている妖気がざわつく。それに調査しているともなれば触ったりもしているだろう。

(陰陽のバランスが崩れるのもしょうがないな)

随分と動くのが遅くなってしまったと思いながらもどこか他人事のように貫狗郎は考えた

「あぁすまない。一人舞い上がってしまった。聞きたいことはそれだけかい?」

「はい、すみません。こんな大事な話聞いてしまって」

「いや、いいよ。君たちの事は気にったしね。ただ、今の間は他言無用でお願いするよ」

頷き失礼しますと言って生徒会室を後にする

「で、どうする?クロウ」

「今日中にパパッと回収しちゃおう。別にあの杭自体は調べられてもどうでもいいけど、中で寝てるのがそのままなのは頂けない」

家に着いてモードを切り替える

「お帰りなさいませ、貫狗郎様」

「出迎えありがとう、饕餮(とうてつ)。今晩、家族を起こしに行く。準備を」

その普段とはまるで違いながらも内にあるものの変わらなさに

「はい。かしこまりました」

嬉しそうに、羊未斗轍は頷いた

 

 

依言学園裏山へ向かう三人

右には八坂玉乃

道着を着て裸足。両手足と左目を布で巻いている

どれだけ符の力を得ようと玉乃の肉体は本来普通の人間である

そのため妖力や霊体を本来見ることはできない

しかし霊力を込めた布で片目を封じる事でもう片方の目を゛見える目゛にすることができる

そして両手足の布によって霊体さえ触れることができるようにしている

所謂、玉乃の正装である

左には羊未斗轍

普段通りの和服である

そしてその真ん中。先頭を歩くのは八咫之貫狗郎

両者とはある意味異なり完全に普段着である

ただし両の手には異なる籠手

右の籠手は血のような紅色に黄土色で縁が彩られている

左の籠手は深淵の如き紺色に銀鼠色の縁飾り

堂々と道行く異質の三人組

学園の敷地に入り一直線に裏山へ向かう

「おい、そこの三人。止まりなさい」

警備兵が呼びかける。が、

「倒れろ」

貫狗郎の発するその声一つで警備兵が倒れる

「流石に警備兵くらいはいるみたいね」

「ま、天見先輩はかなり重要なものに思ってるらしいからな。当然だろ」

山の中へ入っていく

調査機材の搬入の為か車の通った後が道を作っていた

ある程度進むとまた警備兵それと

「貫狗郎君と玉乃さん?その人は・・・いや、そもそもここにどうやって来たんだ?」

叢井天見その人だった

「どうするのクロウ?」

「あーこりゃ完全に予想外だわ。まぁとりあえず、倒れろ」

同じくその一声で周辺の警備兵が気絶する

「な、なんだ!何をした!」

理解の外の行為が突然起こり軽度のパニック状態に陥る天見

「まぁまぁ落ち着いてくれよ天見先輩。周りの奴らにはしばしご退場願っただけだ。さぁ聞きたいことには答えれる限り答えますよ」

「いいの?クロウ」

「天見先輩は充分に理解ある人と見た。信用できるさ」

一連のやり取りの後に深呼吸して問う

「君たちはこの木柱に何の用だ?」

「そこで俺たちの家族が寝てんだ。あんまり寝てるところを人に見せるわけにもいかねぇからな。起こしに来た」

「私がその現場にいるのはいいのかい?」

「問題ない。言ったろ。信用してんだ」

真っ直ぐな瞳に真っ直ぐに返す

その真意から嘘をついてるとは思えない天見だった

「ちゃんと後で説明するよ、天見先輩。だから今はそこの奴をお越してもいいかな?別に木柱は壊れないし過去のことが知りたいなら横に見てきた奴もいるからさ。頼むよ」

「・・・わかった」

木柱と貫狗郎達の間に立っていた天見がその道から横へズレる

その道を通り木柱の正面に立って異なる籠手で手を合わせる

そして一声

「起きろ」

ただその一声に応えるように木柱が光だす

発された光は次第に禍々しい紫に輝きその光が一つに集まり始める

人の形を成して輝きが失せていく

そしてはっきりとする人の姿

肋あたりまで伸びている髪は針のように尖り、その四肢は玉乃や斗轍よりも細くそれでいて彼女らよりも長い

纏っている服装は服と呼べずただの布切れを胸と腰に巻いているだけだった

その少女は顔をあげ貫狗郎を見る

「八咫之仙?」

「次期、だけどな」

「ふーん。そ」

それだけ聞くとトテトテと歩いて貫狗郎の横に立つ

そして頭の後ろで腕を組み

「ま、いっか。付いていくよ、次期八咫之仙」

「よろしく頼むぜ、窮奇(きゅうき」)

その様を見て信じられない、という顔をする天見

そして問う

「貫狗郎君・・・君は何者なんだ・・・?」

その声に忘れていたという風に

「そうえば自己紹介がまだだったか」

天見の方を向き真っ直ぐに応える

自分は何者か

玉乃は今更といった顔で

斗轍は嬉しそうに目を伏せて

窮奇はニタニタと笑って

貫狗郎は不敵に応える

「妖しを束ね激動と激流を世に呼ぶ邪仙、次期八咫之家当主。八咫之貫狗郎だ。以後、よろしく」




はじめましての方しかいないと思うのではじめまして
どこかで知ってる人はおはようこんにちこんばんわ
妖怪とか全然知らないクセに勢いだけで初めててんやわんやな、騎利です
まずは「まかごと」一話を見ていただきありがとうございます
初めてこういった小説を書くので駄目駄目の駄目にもう一つ駄目を重ねた文だったと思います
そもそもここHAMELNの仕様すらまるで把握しておらずでして如何せん四苦八苦
さて、こんな話をしても面白くないので今回この話を創るに至ったきっかけでも
ただなんとなく「カンクロウ」という名前が思いついてこの名前が主人公の作品創れないかなぁと思ったのがきっかけ。クロウ→烏。となって八咫烏がいたなぁ
そういう流れから「矢多野貫狗郎」は出来上がっています
で、実はこの小説。名前の出来上がった順番でいうと
貫狗郎、玉乃、天見先輩の順番なのです
というのも八咫烏から八咫鏡に飛んで三種の神器にたどり着いて
八尺瓊勾玉→八坂 玉乃
天叢雲劍→叢井 天見
という経路でして
そのあとに四凶の別名を考えたり須野先生の名前思いついたり
キャラ名も割と勢いで決めてます
お話の内容はというと「どっかであったような・・・」が多々あるかと思います
多分それは無意識下で作者が影響を受けてます。お許しを
「まかごと」はもうちょっとだけ続きます
予想外の出来事やらあの人が実はメインヒロインだったりとかそんな読者の皆様が楽しめる内容を書けるといいな!
では、この辺りで
次話あとがきで会いましょう
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