召喚士である高校生の日常   作:木山 浩一郎

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集う怪物達

勉強机に向かい、あくびをしながら勉強をしている少年がいた。彼のノートには数学の参考書の例題がビッシリと書かれており、余白があまり見えない。

 

「相変わらず2周目みたいに始めから強くてニューゲーム的な事ができないのはつらいね。今度は何しようか?グリガムの仲間入りする?いや、それは3回やっちゃったなぁ、いろんな所で暗躍してラスボス枠に入る?ウーンしっくりこないな。これは塩梅で善人ロールプレイをしよう」

 

 そんな事をぼやき、スラスラと暗記していたかのように一心不乱に書き進める。だが、少し時計を眺めると動きがとまる。

 

「あ、もうそんな時間か……コスパの良すぎる最高な依頼」

 

 そう呟くとおもむろにカバンに入っていたパソコンを開く。起動すると、検索をし始める。

 

 検索から出てきた物をクリックしウェブに飛ぶ。危険だと報告をするためのドクロマークを無視しそのまま入る。

 

「えーーと依頼依頼……そこそこ。うん………パスワード、1145141919っと………終わってんな…」

 

 鼻で笑いながら依頼を受ける。深郷田がダークウェブで依頼を出したときのはじめの人物である。

 

「ここに来てから初めての依頼、張り切ってやるとしますか?武器はどうする?あの相棒の……蛇腹剣!!………とは言っても初っ端からないからなぁ、しょぼいけどナイフにしましょうかね?」

 

果物ナイフをキッチンから慣れた手つきで取り出す。

 

「初ミッションだし楽勝………とはいかないものの、こっちは元メンバーに金に目がないグリガムの豪華メンツ。負ける通りがないんだよな………フン!」

 

おおきく振りかぶり、そのナイフはビリヤードの真ん中を刺した。しかし、それに頭を傾げる。

 

「身体が対応できる範囲で動くのはこれくらいか………ちょっとニブチンだなぁ」

 

ビリヤードから刺したナイフを抜き取り、その刃を眺める。

 

「けど、それが面白いんだよな……こういうあまり動かない系の縛りプレイでどれだけ行けるのか………いやこれだけじゃ足りない!!このミッションはこの果物ナイフ一本で攻略!!………いやぁワクワクするなぁ」

 

誰ともいない部屋の中でニヤリと笑うのだった。

 

ーーーーーーーー

 

窓ガラスが割れ、散らばった廃校舎の教室。黒板にはイタズラのせいか好き勝手に落書きがあり、机は後ろに乱雑に詰め込まれている。そんな不気味な廃校舎に二人の男女の机同士が等間隔で空いている所にいた。片方は女性で、片方は男性。見た目や雰囲気は普通なのだが、その明らかに普通ではない教室が、彼らの異質さを感じさせる。

 

男の方はメガネに黒を基調としたスーツを着込んだ人物、インテリそうな見た目をしているが口が悪い。

 

女の方は褐色な肌を覆うような青いパーカーに帽子を被り、動きやすそうな短パンを着ており、男とはあまり接点のなさそうな見た目をしている。

 

「お、最高な依頼来たじゃん」

 

男がいつものようにお金稼ぎの為にダークウェブから依頼が来るのを待っていると、深郷田の依頼に目を見開く。

 

「ん?何だよ……お、ホントだ。何かの罠じゃないのか?というか今いいところなんだよ……邪魔すんな!!」

 

女の方はその依頼をチラ見した後すぐにゲームに戻る。普通の相場なら150万から高くて400万、それだと言うのに前金でその2.5倍。とんでもなく好条件かつ、その依頼というのも最も落ち目である陰陽師の改革依頼。それを見て何か裏があるのではないかというのも当然であった。しかし、その依頼主を見て確信した。

 

「は?そんなわけ無いだろよく考えてみろよ。あのリーダーの名前書いてあるんだぞ?そんなの偽物が書いたら即暗殺行きだろ?」

 

3年前の大反乱以降、陰陽師の中で彼の名を名乗ることは許されないという暗黙の了解となっていた。そして現在その名を使ったものは、どれも偽物にせよ実力は高い者であった。その実態は反旗を翻した者が、名を借りて宣戦布告をした者達であり、そこらのちょいと強い傭兵やゴロツキ等ではない。そんな彼等がそれを名乗った次の日、複雑骨折の状態で発見されたのは陰陽師の都市伝説でとても有名な話だ。

 

ましてや、何気なく面白半分でやった場合、とんでもないリーダー信者が冒涜と勘違いしてただならない雰囲気を纏って殺しにかかるのは当たり前だ。

 

「え?……ああ……確かにそうだな。それにヤツのお気に入りでもあったからな………そんなことされたら黙ってないだろうなぁ」

 

「そうだろ?…ということはつまり……そいつが依頼してるってことだ……ただ……文字があまりにも達筆過ぎる。もう少しパッパラパーな感じなんだが………」

 

男は初めて会った深郷田を思い出す。

 

『ハイィィ、ワイの勝ち!!ザマァねえな!!』

 

『ガミム………彼が例の君の()()か………とんだ変わり者だな』

 

『いや、彼奴……やる時にはやる男なんだ……』

 

『人目も気にせず台パンしてる奴がそうだとは思いたくないんだが………』

 

『それ以上言ってはいけない!!』

 

なんてことを思い出す。確かにやる時はやった男だった。一つ依頼を頼めば絶対に利益になって返ってくるくらいには。そして現在反乱メンバーもまた、全員生存できているのは深郷田自身が全身全霊をかけて守ったからに過ぎない。その代わり深郷田の開拓した技術と式神は全て陰陽師の手にわたってしまったのだが。

 

「それでも勝てるだろう。100%とはいかなくても、99.999%は確保できる。やるか?」

 

「………おいおい、オレは腰抜けじゃないぜ?行くに決まってんだろ!!」

 

「そうこなくっちゃな………」

 

女がニヤリと笑うのを見て、男は釣られて笑みをこぼす。

 

「それじゃ、張り切ってやりますか」

 

「おう……」

 

彼等の目はまるで絶対的な捕食者のような目つきをしていた。

 

ーーーーーーーー

 

廃れた工場のある部屋の中、そこを拠点としているもの達もまた、深郷田の依頼を聞きつけた。

「深郷田が本格的に動くらしい。『陰陽師改革依頼』という感じで…………」

 

ピアスを付けた黒髪の若々しい男、『カイ』が淡々と呟くと、その他の4人は各々違った反応を見せた。

 

「フッ、やっと私の出番というわけか……待ちくたびれた。」

 

金髪のオールバックにした切れ長な目の男『イプシロン』が笑みを絶やさずに櫛で髪を一回後ろに回した後、ニヒルな笑みを浮かべる。

 

「いやぁ前回は苦い経験をしたからね……今回ばかりは絶対に倒しておかないと!!……思いだしたら腹が立ってきた……」

 

クリクリとした中学生くらいの背に男物の服を着ている少女『プサイ』が悔しそうな表情を浮かべ近くにある椅子を叩き折って八つ当たりをする。

 

「お、おい!!それ……俺が買ってきたお気に入りの椅子じゃないか!!……毎回言ってるだろ!!ものに八つ当たりするなって!!」

 

それに難色を示したベレー帽を被った緑髪の男は椅子を霊力の力で元の姿に戻したあと、その戻った椅子にゆっくりと座る。

 

「ったく、面倒臭いことするんだから!!」

 

「………ファイ氏の能力は目を見張るな……」

 

「……これをやるのにも一苦労なんだぞ」

 

「私が見ている限り指先一つでそんな簡単に直したのにか?」

 

「…………その話はやめにしよう」

 

そんな彼らの服装とは全く違った和服をした能面を被った人『タウ』が壁に持たれ掛かっている。声質から女性だろう。

 

「まぁ、君達はすぐに会いたいだろうなって思って一応、依頼は受けることにした。行きたくないって人はいないよね?」

 

「無論じゃないのか?……というか俺等、半分ボスの為に動いてるようなもんだし……」

 

ベレー帽の少年、もとい『ファイ』は間髪入れずに当たり前のように言うとそれに賛同するように全員首を縦にふる。

 

「やっぱ決まりだね。今来てないアホどもには僕がなんか言っておく。陰陽師側()には事前に避難しておくように行っておいたから安心して潰しても良いと思う。殺さない範囲位にな?特にファイ。お前だぜ?」

 

「いや、流石に私はやらないと思う………ちょっとしそうだな……」

 

「ハハ……分かってるって」

 

ファイはバツが悪そうに目をそらす。イプシロンは少しドン引いた様子でファイを見る。

 

「ま、それにしても久しぶりの再開……十分に鍛えてくれよ?」

 

そう言うと、その場から『カイ』が音もなく消える。それを見た四人は各々の準備に勤しむだった。

 

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