召喚士である高校生の日常   作:木山 浩一郎

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襲撃 イプシロン

「ハイッ、ここからは自由行動、煮るなり焼くなり好きにしてもよいです」

 

ワープをくぐり抜けた先には、こびりついた血がどこもかしこもいる景色が広がる。部屋の門には性別もわからない人だったナニカがいる。見るからにすべての皮膚が剥がれており、足が切断され、のこった腕がまるで枝のように細くなっている。胸の肉には焼けた番号『試作 1682657』と表示して、この陰陽師集団の卑劣さが垣間見れる。

 

それを気にせずに一直線で走っていく『ヨルムンガンド・テュポーン』や、他の人達を横目に佐藤は眺める。

 

(相変わらず、これはヒドイな………こう言うのは怖いんだよなぁ)

 

「………体……体………もともともともと…………もともとも」

 

「何なんだ!?コイツ……キメェな」

 

「………よせ、なりたくてなったわけじゃない」

 

しかし、そのナニカは動き始め、うわ言の様に喋っている。明らかに異色なナニカに嫌悪感を感じたバンダがつい口に出し、ナンダはその言葉を避難をする。

 

「何だこのゴミは? フンッ、汚い………」

 

ファイに喧嘩をふっかけた男がワザワザ近づき、その枝ように細い腕を蹴る。白衣の女の目は一瞬とんでもなく鋭くなるのを感じ、佐藤は呆れる。

 

(馬鹿だなぁ………やっちゃいけない事ってわかるはずなのに………)

 

「あっあ、あ、あ、………ぃよぉ……ぉ………」

 

その蹴られた腕は中を舞、ガンマンの足元にたどり着く。その様で銃を向けようとするも、白衣の女は手で制する。

 

「………あ~、彼等には手を出さないでください。一応私達の目的の一つがこの子達の救助でもあるので」

 

「は? この雑魚をどうこうしようが俺の勝手だろ?」

 

「いいえ、我々は依頼主でありますので、指示に従って貰わなくてわ困ります。それとも、成功報酬をなかったことにしてもよいのですよ?」

 

「………ッチ、分かった。やめりゃあいいだろ?やめれば」

 

そういうと男はそのナニカの元を離れ、そのまま不貞腐れたように走っていく。

 

「最後に残ったあなた達も、彼等に獲物が取られないように頑張ってくださいね……私は少し用事がありますので先に失礼します」

 

そう言うと、折られたそのナニカを抱え、鏡に向かって操作した後、消えていく。残ったのはグリガム二人組と佐藤、ゴチャ混ぜガンマンだけである。

 

「………あ? 俺はここにいるぞォ? 助けて欲しい時は協力する………。頑張っていけよォ?」

 

「………我々も先に行こう。先に失礼する。」

 

そのガンマンの後押しを聞いたナンダは少し礼をした後、佐藤達を連れて離れていったのだった。

 

ーーーーーーーー

 

「ッ!? 貴様!! 深郷田一派の!!」

 

「そんなこと言う暇ないでござろう?」

 

その言葉と共にすれ違い様に斜めに刀を振りかざす。

 

「あっ、ァァァァァ!!!」

 

そこから血が溢れ、そのまま白目を剥いて倒れる。

 

「………素人で良かった……」

 

「ハハハ!! ここまで衰退してるとはね!!」

「……あぁ、我ながらこんな手加減で気絶するとは思わなかった」

 

「ひ、引くな!! やれ! 殺れぇぇぇぇ!!」

 

「そうはさせないよ? アイスボール………」

 

「な!? グハァ!!」

 

手に持った刀を鞘に収め、少しずれた能面を被り直す。その隣にいるプサイは水蒸気を集めて凍らせた一つのボールを使って、襲ってくる陰陽師をぶつけて気絶させる。

 

「な、何!! これでもくらえ!! 『第8階位 氷炎(ヒョウエン)』!!」

 

「『第5階位 千本岩(センボンガン)』!!」

 

その白く冷たく周りの空気を凍らしながら進む炎と、鋭く尖った1000でも足りない位の土状の針が二人を襲う。しかし、当の二人は笑みを絶やさなかった。

 

ズガガガッッッッ!!!

 

その2つの技は巨大な煙を巻き起こし衝突する。

 

「や、やったぞ!! やってやったんだ!!」

 

「あの化け物を殺しましたね!!」

 

「フンッ、2人の女など……動作もないわ」

 

「ヘヘッ、たかが批判したネズミなんざ、我々にとっては動作もない──────え?」

 

「ッハ!!」

 

誰もが、あの2人を倒したと喜ぶのもつかの間、前線の一番近くにいた一人はその一閃により、真っ二つに割れる。激しくあふれる血しぶきを物ともせずに、次の獲物を狙う。

 

「ひ、ヒィ!! 」

 

「……それでは……一掃するとしよう………簡易型 第一 一閃(イッセン)

 

たかが横に大きく振られるだけの攻撃。しかし、それだけで十分であった。その一振りは圧縮され、真空波へと変わり、陰陽師達を通り過ぎる。その真空波が通り過ぎる所から血が溢れ、そのまま全員倒れていく。

 

「………あーあ、全員やっちゃったねぇ。あ、死んでない」

 

後ろから身を守るために出現させた透明のシールドを解除させ、ゆっくりとタウの方へと近づく。

 

「………それにしても、ボスが居ない………これは死活問題だ………」

 

「そうでしょうな。こちらでプサイ氏………いち早く深郷田様を見つけたら何をするのでござるか?」

 

「あ? ウーン…………するかな?監禁!!」

 

当たり前のように言うその言葉に、タウは驚くわけでもなく口を開く。

 

「おぉぉ、同じでござるな!! やはりまた危ない目に会うのは嫌でござるもんね!!」

 

「そうそう!! 女子同士気が合うね!!」

 

「「フフフフフフフフ!!」」

 

2人の恐ろしい笑い声は室内を更に冷えさせる。その笑い声に比較的近くにいたファイとカイは心の底から震え上がる。

 

「やっぱアイツラには近づけさせられねぇな……」

 

「同感だね………なんであんなに激重なんだろ……」

少し青ざめながら、深郷田をいち早く見つけ出そうと向かったのだった。

 

一方その頃、イプシロンは戦いにふけっていた。眼の前に向かってくるかつての名ばかりの盟友や、自身の成果を横取りしてきた隊長に当たる者達を、ちぎっては投げ、ちぎっては投げとしていた。

 

「な、なんでだ!? なんでお前との実力はこれほどまでに違うんだ!!」

 

「そんなの、しれた事だ!!」

 

「ッブベ!!」

 

拳を突き出し、顔面にめり込ませると面白いくらいに吹っ飛んでいく。そのあまりの拍子抜けにめんを食らう。

 

「丹念を積んでいた私が強くなったのか………それとも、お前等が努力を怠っていたのかは知らんが……今は私のほうが圧倒的に上らしいな………」

 

「…野郎ォォ!!……言ってくれる!! 第9階位 炎慶(エンケイ)!!」

 

「………昔の技か……その技に何度憧れたことか………」

 

炎を纏った侍が、イプシロンに向かって突撃するも、その大きく振りかざした踵落としですぐに消滅する。

 

「…しかし……もう私はあの頃の人物などではない。

人として、本当に成長したのだ………」

 

「……く、クソ!! 来るな、来るなァァァァァァ!!」

 

「っフン!!」

 

男を腹パンし、気絶させる。あたりを見渡すと、もうすでに誰も起き上がる者はいなかった。

 

「…………これでも強くなったのだろうか………」

 

そうイプシロンは黄昏る。しかし、後ろから何かを感じ、すぐに横へ飛んでいく。その直後、物凄い音がなるのを聞いて、その場所を見るとそこがえぐられていた。そして、そこにいた人物は何処にも居らず、ただ血だけが残っていた。そんな芸当ができるのは現段階で一人しかいない。

 

「貴様………まだ生きていたのか……老害の分際で……なぜ仲間を殺した?……必要なくなったからか?」

 

「…おお………寒雷(かんらい)家直属の部下であろうものが何と言うザマだ………そんな奴らなど必要などない………そうだろう?」

 

当たり前かのようにケタケタも笑いながらヒゲを蓄えた男、寒雷家当主 重間 順三(じゅうかん じゅんぞう)が言う。三年前まで、今は亡き腐敗した(つわもの)どもの腰巾着でしかなかった男である。

 

「貴様が離反して、チャンスが舞い込んできたと思った。貴様の空いた席に座るだけなのだからなぁ!! クハハハハハハハハハ!!!」

 

ニヤニヤと続けた男は、挑発するかの様に嘲笑する。その姿はまるで三年前とは想像がつかない。そのおかしさに思わず笑ってしまう。

 

「プッ、クックック なんておかしい!!」

 

「な、何がおかしい!!」

 

笑われ憤る順三に、イプシロンは今度は目をそらさずじっと見る。

 

「なに、言うじゃないか、今やもぬけの殻のこの業界に、ただ居座り、再興するだけでもなく、崩れていくのにも気づかない裸の王様が………現状を打破しようする私達をバカにするなど………片腹痛し……」

 

「き、貴様ァァァァァァァァァァァァ!! この俺様を愚弄するなァァァ!!」

 

そう言って、掌から大きなボールを作り出し、イプシロンの方へと投げる。

 

「……軽いなぁ!! ハッ!!」

 

しかし、それはイプシロンもまた可能であった。それもそうだろう。寒雷家はイプシロンの家系の分家であるのだから。

 

「………すまない深郷田、今だけ名を名乗らせてくれ。……それに貴様のような愚者に我々の家系を汚してほしくないのでな……ここで消えて貰おう。重花 玄武(じゅうか げんぶ)の名のもとに」

 

その瞬間、霊力が跳ね上がる。それは順三が青ざめる様な形で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

圧倒的とも言える戦いが始まるのだった。

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