スグリ「タロと事故チューした」   作:すぺしうむ

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スグタロ警報発令中。苦手な方は避難してね。


第6話

翌日、遠征二日目。とは言っても現在はお昼ごろ。

朝早くから、俺がシングルトレインでタロがダブルトレインに挑み、レポートの提出に必要な資料を集めた。ネモさんとの戦いでは見えなかった自分の欠点や、改善点が見つかっていったため、収穫は大きい。

ハンバーガー屋で動物性たんぱく質と油たっぷりのジャンクフードを頬張りながらタロに尋ねる。

 

「今日これからどうするの?」

 

テーブル席の反対側に座している女子生徒は、俺の二倍はあるであろう量をぺろりと平らげ、口元を軽く拭いてから答えた。こういう細かな所作が彼女が大企業の令嬢であることを感じさせる。文字通り俺とは住む世界が違うな。

 

「やることもないし、二人でデートだねー」

 

「デ!?」

 

思わず飲み物を吹き出しそうになった。今まで姉ちゃんの背中にひっつき虫をしていたせいか、そういう色恋とは全くの無縁だ。ましてやデートなんて。...タロとは肉体的な意味で関係を持ってしまったんだけど。それとこれとは話は別だ。

喉を軽く鳴らし、質問を続ける。

 

「デートって具体的に何すればいいの?俺やったことないからわからないよ」

 

「それについては私の方が詳しいから。タロ先輩に任せて欲しいな!」

 

エヘンと胸を張り、答えてくれた。ライモンシティについてはタロの方が詳しいし、大船に乗ったつもりでいよう。流石に昨日みたいにヤーコンさんが途中参戦してこないだろうし。...しないよね?

残ったハンバーガーを一気に平らげ、出立の準備を整える。初めての町に初めての風景でワクワクし始めている自分がいる。姉ちゃんからはおこちゃまと言われそうだが、未知の場所にときめかない男はいない。

 

「まずはねー」

 

 

 

...

.....

.......

 

 

 

 

「えっと、こっちのワンピースはー、色味がちょっとかわいくないなあ」

 

というわけで始まったタロとのデート。最初はブティックだ。っというかこのペースなら最初だけで丸一日を使い潰しそうだ。さっきから服を選んで来たりしているが違いがわからない。辛うじて装飾が違うということはわかるんだけど。服に無頓着すぎるのも考え物だな。

 

「ねえ、この藍色のやつとこっちのツートーンのドレス、どっちが似合うと思う?」

 

予想はしていたが、こっちに質問が飛んできた。元の素材がいいため、どっちも似合うと思いますと答えたい。だが、俺は以前姉ちゃんにそれを言うと『そういうことじゃない!』と理不尽に怒られたことがある。ちゃんと選べということだろう。

 

「ツートーンの方かな」

 

「うん、私もそうだと思った!かわいいし両方とも買っちゃおっと」

 

ならなんで聞いたんだろう。まあ、普段散々事務に指導にとリーグ部のために働いてくれているんだ。これぐらいならかわいいもの。

それにしても、タロは顔もスタイルもいい。学園で人気になるのも肯ける。俺ももう少し身長が高ければ女の子にモテモテになれるだろうに。

っとふとタロがちょいちょいを俺を手招きする。先を行く背中を追いかけていくと、着いた先はメンズファッション。大体理解できたが、生憎俺は手持ちが全くと言っていいほどない。BPならそれなりにあるんだけど。

 

「俺、服のこととか全くわからないし、BPしか持ってないよ」

 

「知ってるよ。言ったでしょ?タロ先輩に任せてって。えっとー」

 

俺の体をペタペタと触った後、ふむふむと考え、棚にあった服を押し付けられ、試着室に押し込まれた。

 

「わ、なになに」

 

「一度着てみて」

 

シャッっとカーテンを閉められる。ついていけないが、ここで変に時間を食ってもいいことはないので素直に着替えよう。普段は着たことがないようなイケてる服になんだか落ち着かない。鏡をみて確認してみるが、似合っているのかそうじゃないのかよくわからない。とりあえず一旦確認してもらおう。

 

「着たけど、どう?」

 

「うーん。ちょっと待っててね。あ、今着てる上着脱いどいて」

 

それだけ言うとそそくさと別の場所に服を取りに行ってしまった。ボーっとしていても仕方がないので、言われたとおりに上着を脱いで待ってると、いくつかの洋服をもってタロが帰って来た。嫌な予感...というか面倒な予感。

 

「これ、上から順に着てってもらえるかな?」

 

「あ、はい」

 

俺に拒否権などあるわけがない。心を無にし、順にタロプレゼンツのコーデに着替えていく。もっと服についての知識をつけていこうと思いました。

最終的には上が薄手のパーカーに黒の上着。下は茶色のズボンという姿に落ち着いた。鏡の前にいる自分が自分でないような感覚に陥る。この人は一体誰だろうか。

 

「じゃあお会計するからついてきて」

 

「あ、うん」

 

さっきから肯定の言葉しか発していない。おかしい、未知の町を二人で楽しく駆けだすイメージをしていたんだけど、現実は狭い密室に閉じ込められ着せ替え人形。こんなはずじゃなかったのに。

タロの後ろをついていくと店員さんがハンディーで服についたバーコードを読み込んでいく。今の服屋ってこんなにハイテクなんだな。うちの村とは大違いだ。タロの分も読み込むと、値段が表示されていく。よく見ると、どれも目ん玉が飛び出そうな価格である。

一度天井を見て心を落ち着かせる。

 

「お会計これで」

 

っとタロが財布から謎のカードをだし、会計を済ませた。見たこともない金色のカードである。一度記憶を消し、何も考えないようにした。ここから先は俺が知ってはいけない景色だろうな。

 

 

 

...

.....

.......

 

 

 

 

続いては2件目。ライモンシティにあるとあるスタジアム。タロがあらかじめチケットを抑えていたため、そこでベースボールの試合観戦。二人ともさっき自分たちが選んだ服装に着替えているため、平日を楽しむ人にしか見えないだろう。

俺たちが座っている席はどちらかというとバッターに近い席であるため、スタジアムがよく見渡せる。

ベースボールなんてやったことも見ることもほとんどない。新鮮なことが多すぎて感覚がおかしくなりそうだ。

タロがこっそりと腕を絡めてくる。

 

「ねえ、こうしてると私たちカップルに見えてくると思わない?」

 

「思わない」

 

「思 わ な い ?」

 

「お、思います」

 

圧がすごい。グランブルに超至近距離で凄まれた気分だ。っと視界の端でファールボールが飛んでくるのが見えた。バトルで鍛えているせいか咄嗟の判断でも体がうごくようになっている。このままいくとタロの頭にゴチン。そして肝心のこの人は俺のことをまっすぐと見ているため気が付いていない。

 

「よっと」

 

短い手を精一杯伸ばし、ボールをつかむ。キタカミという超ド田舎で暮らしてきたので肉体には自信があるが、それでも痛いものは痛い。しかもグローブもサポーターもなし。だが、タロが無事ならそれで大金星だ。

 

「いちち」

 

「え?あ、大丈夫?擦りむいたりしてないかな?」

 

手を確認するが軽く傷がついたりしているものの大きな裂傷などはできていないため、無問題。軽くグリグリと回して動作を確認するがこれも特に異常なし。随分と幸運だな。

 

「うん、大丈夫。...ファールボールって貰っていいんだっけ?」

 

「いいよ。部屋に飾っちゃう?」

 

「ううん、タロにあげる。お礼じゃないけど、さ。ずっとお世話になってるから、そのお返しとして」

 

いらないというわけじゃないけど、俺が持っているよりもタロに貰ってほしい。今までの恩に比べたらほんの些細なものでしかないけど、少しずつでいいから返していきたい。

タロが顔を赤くしてこっちを見てきた。と思ったら胸の前でいつものバッテンを作る。

 

「そ、そういう不意のやつ、よくないよ」

 

「ええ、なんかダメだったべ?ならこれは姉ちゃんに」

 

「貰わないとは言ってません。貰います」

 

どっちなんだ。はっきりしない人だなあ。こんな具合に9回裏までベースボールを楽しんだ。夕焼けが差し込んできたため、次が最後になるだろう。

 

 

 

...

.....

.......

 

 

 

 

今日の大トリはライモンシティに存在するとある観覧車。なんでも恋が成就するだとか不思議な逸話があるらしい。幸い混んではいなかったため、二人で乗り込む。

 

「なあ、近くない?」

 

「そうかなあ」

 

2・3人は余裕をもって座れるであろう席なのに、俺は壁際でタロはそのすぐ隣である。正確に言うなら最初は隣とは言っても人一人分は余裕があった。タロが段々と近づいてきたため、少しづつ距離を開けていったら最終的には壁際である。

 

向かい側の席へと移動しようとすると、顔の横を手がドンと退路を遮って来た。これは俺でも知っている。壁ドンというやつだ。

 

「逃げちゃダメ」

 

完全にいつもの俺を襲うときの瞳になってしまっている。黒渦のように吸い込まれてしまいそうな、奥底にあるものが何かもわからない目。少しづつ顔が近づいてきたため、慌てて手で静止する。がその手を払いのけられた。もう止められない。言葉でどうにかできるのを祈るしかない。

 

「ちょ、タロ。ここ観覧」

 

っと言い切る前にキスで口を塞がれる。もはや言い切る前である。いつもの激しいキスではなく、のんびりとスローに楽しむようなキス。唇が離れるたびに拒否の言葉を述べようとするが、その前にキスで喋れなくされてしまう。なすがままにされてしまっていると、今度は優しく舌が入って来た。歯止めが利かなくなっている。

 

「...!?」

 

しら、からめれ(舌、絡めて)

 

言われるがままにお互いの舌を絡める。ここは公共の場所だというのに。唇が離れるたびに唾液の桟橋が出来上がっては崩れていく。いつもとは違う蕩かせ合うようなキスに、心臓が高鳴る。ダメだと頭ではわかっているのに、体はもっと欲しいとこの快楽を楽しんでいた。

だが、その快楽は突然終わりを迎えた。何かに気が付いたタロがキスを止め、人差し指を俺の唇に当ててこう告げる。

 

「ごちそうさま」

 

周囲を見渡してみると観覧車ももう終盤であと少しで一周というところ。これなら終わりも仕方ない、が、拍子抜けだし満足はできていない。ヤキモキしている俺にタロがボソボソと耳打ちしてきた。

 

「不完全燃焼なのも、かわいい」

 

着せ替え人形の次は操り人形。この演劇はいつになれば終わってくれるんだろうか。

 

 

 

...

.....

.......

 

 

ホテルで豪勢な夕食をとり、ベッドに寝転ぶ。楽しかった遠征も今日で終わり。2泊3日とはいうが明日は帰学するため昨日と今日が実質の遠征だ。なんだが非常に名残惜しい。帰ったら生徒の指導に、試合用に新しい構築も考えとかないといけない。やることが多すぎる。

デートでの疲れが大きいのか、二人ともさっさと入浴し、寝間着に着替えた。俺はジャージ。タロは上がモコモコのパーカーで下が短パン。

 

「あー、ベッドがふかふか。これだけでも持って帰りてえ」

 

「こんなに大きいの部屋に置けないよー。...明日からまた部活だけど、がんばろうね」

 

「嫌だー、レポートも書かないといけねえ。帰りたくねえな」

 

また戦術を一から丁寧にほどいていってそれを文章にするとなると相当な労力となる。自分の頭の中で考えているときはすっごく楽しいのに、いざそれを人に伝えるってなると難しい。どうにか俺の考えを文章に出力してくれる夢のマシーンが導入されないだろうか。

 

「アハハ、いっそのこと二人でライモンに住んじゃう?」

 

「いいな、それ」

 

何も考えずに返事してしまった。タロと二人でいるのはなんやかんや言っても姉ちゃんや他の誰と一緒にいるよりも楽しかった。この人とずっと暮らせるなら幸せかも。なんだかまた襲われそうだな。体を起き上がらせ、警戒しながらタロの方を見てみると。

 

「へ?あ、冗談なん、だけど、ア、アハハ」

 

顔を真っ赤にした知らない女性がいた。自分の真っ赤な顔に気が付いたのか、パーカーのフードを深く被り俺と目を合わせないようにしてきた。見たことのないしおらしい態度にあっけにとられていると。毛布をかぶってしまう。

 

「寝るね!おやすみ!」

 

好機到来。タロを見返すチャンスだ。毛布を引っぺがし、中で丸まっているタロを白日の下にさらす。ベッドの中でもフードを深く被り、手で視線をガード。できる限り目を合わせないようにしている。その光景が、なんともいじらしく嗜虐心をくすぐられた。

 

「タロ、こっち見て」

 

「ダメ!今の顔絶対変だから!」

 

「いいから」

 

自分でも驚くほど簡単にタロの視線ガードの手を解けた。両手を左手一本で押さえ、右手でフードから顔を露にさせる。中からでてきたのは、目を潤ませ頬と耳を真っ赤に染めた少女。俺の中の独占欲が産声を上げた。

 

「み、見ないで」

 

「...なまらめんこい」

 

左耳を軽く甘噛み。華奢な体がビクりと跳ねる。

 

「ひゃあ」

 

噛むと皮膚の感触と共に少量の汗が口の中に入って来た。少ししょっぱいが不快な味じゃない。次はどこにしよう。もっと甘噛みをすることも捨てがたいが、はやく他のことをしたいのもやまやまである。

 

「観覧車でしたキスの続き、するな」

 

「は、はい♡」

 

唇をゆっくりと近づけ、重ねた。最初は鳴らすように舌を入れることなく、軽く味わうようなキス。重なり合うたびに甘い快感が脳内麻薬を分泌しとチュっという愛くるしい音が部屋に響き渡る。それを何度か繰り返すと、タロの視線が潤んではいるがトロンとしたものに変わった。

 

「トロンってしてる。欲しかった?」

 

「...うん」

 

それだけ聞き終えると、またキスをする、今度はさっきされた仕返しとしてゆっくりお互いを蕩けさせるような舌を使ったディープなキス。タロの口内にゆっくりと舌をいれ、歯茎や歯といった場所に這わせていく。一度唇を放し、呼吸を整える。

すると今度は向こうから舌を差し出してきた。それに応えるように、舌と舌を絡ませた蕩かし合いを行う。

 

「もっと...♡」

 

放すと、潤んだ目で俺に要求してきた。今まで散々襲ってきた挙句そっちはもっとくれなんて言いご身分だ。ふと足を軽く移動させると、タロの股付近を軽く当ててしまった。当てるといっても少し押し上げるようなもの。しかし、向こうにとってはそれで充分だったようで、

 

「ん♡」

 

と艶めかしい嬌声ともとれるような声をあげる。

 

「スグリくん、意地悪しないでよ...」

 

その一言で俺の理性の糸は途切れた。

残った記憶は俺が今までの仕返しとばかりに目の前の女性を襲っていた光景。

 

 

 

 

...

.....

.......

 

 

 

 

朝っぱらからベッドの上で正座をさせられている今日この頃。

 

「スグリくんのケダモノ!」

 

「ご、ごめん。...え、いつも俺あんな感じでやられてなかった?」

 

いつもの仕返しをしただけなのにとんだ言い分である。

でもこれで名実ともにヤーコンさんの娘に手を出したことになった。

いよいよ俺の命もあとわずかかもしれない。

 

 

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