スグリ「タロと事故チューした」   作:すぺしうむ

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第7話

「カイリュー、ぼうふう」

 

強靭な肉体とはうってかわった小さな羽で嵐をふき荒らすカイリュー。お相手のポケモンは耐えきれず戦闘不能に。お疲れ様とねぎらいの言葉をかけ、カイリューをボールの中に戻す。ブルベリーグのバトルコートの一角。先日のバトルサブウェイでの資料も参考に、部員の指導を行う。

 

「序盤にゴチルゼルで壁を展開、その後に別ポケモンで攻撃っていう線はすごくいいんだけど、相方に決定打にできるようなポケモンがいないと厳しいね。たとえばゴリランダーとか...」

 

見直す部分と改善された部分をそれぞれ伝えると、女生徒がそのアドバイスについてメモを行う。その後ろからこっちをまっすぐ見てくる影。14年間一緒に生きてきたその人はただ何も言わずこっちを睨みつけてきた。時間もちょうどいい具合なので、この後のタロとの打ち合わせのために部室に移動。その間も俺の後ろをついて回ってきている。

 

ガラガラとスライド式の扉を開け、入室。中ではすでにタロがホワイトボードに何かを書き込んでいた。部員はブルレクや育成のために出払っているため、ここには俺とタロと、あと一人しかいない。最後の一人の存在を考えないようにし、ホワイトボードに書かれた文字に目をやる。 

 

「うーん、経験アメでレベルを上げたことでのギャップかあ。こっちもそれは薄々感じてた」

 

「簡単に強くなれますけど、トレーナー本人の実力がなければそれを発揮できないし、それがかえってポケモンのストレスにもなるんですよねえ」 

 

「こればっかりは俺たちが部員の実力の底上げを頑張るしかないね。それか構築を注視してレベル上げを緩和させるとか」

 

「外部の特別講師の方にも相談してみましょうか?」

 

「うん、お願い。俺は俺で別ルートから模索してみるよ」 

 

っと今後の課題についてタロと意見交換してる最中も、こっちをじろじろと見てくる。いい加減面倒になって来たな。タロもさっきからそっちの方に意識を向かせている。

 

「ねえ、なんかすっごく見てるんだけど」

 

「見ない方がいいよ、あの人最近おかしいから」

 

幽霊部員で普段ろくに部室に来ないくせになんだか最近は異様にこの人の出入りが増えた。いっそのことハルトあたりに引き取ってもらおうか。いや流石に可哀そうだからやめよう、ハルトが。

 

「ねえ」

 

タロとホワイトボードの方に視線を向け、会話しているとその間をぬらりと何かが入り込んできた。驚きすぎて思わず変な声で叫んでしまった。

 

「キャ!」

 

「うぎゃあ!音もなく忍び寄るな!」

 

そんな俺たちを意に介することなく、姉ちゃんは続きを話してく。この人は、優しいくせに我が道を行くを徹底しているものだから手が付けられない。

 

「アンタたち、最近距離近くない?」

 

今日の開口一番でそれかよ。っていうか近くても姉ちゃんには関係ないので気にすることはないじゃないか。などなど言い始めたらきりがないので一度口を紡ぐ。なんか目が殺人鬼みたいで怖いし。

 

「そうかなあ。スグリくんはどう?」

 

「部長と実質的な副部長だし、仕方ないでしょ」

 

「いーや、もっと他のつながりがあるわね。アタシの目が黒いうちは誤魔化されないわよ」

 

なんでこういうときだけ勘が鋭いんだよ。タロも若干引いてるし。ジロジロと欺瞞といった感情を孕んだ目で両者を見つめてきた。

 

「とりあえず、今は打ち合わせだから。構築の話とか、特別講師の話とかもしないといけないから姉ちゃんは離れてもらっていい?」

 

「アタシもリーグ部だし、ここに居て話を聞く権利はあると思うけど?」

 

「まあ、いいんじゃない?今日は時間あるし、ゆっくりと考えようか」

 

ホワイトボードに書き込みつつ、意見を交換していく。お互いの考えや主義主張はある程度は理解してきているので、思っていることの奥底まで汲み取れるし、わからないことがあれば素直に聞くので話しやすい。そうやって交換していくうちにだんだんと形になって来たので、一旦区切り。ここから先はその分の書類作成。

しかしその話を聞きながらも一切頭を相槌だけで聞いてる人がいた。絶対構築とか考えないだろ。

 

 

 

カリカリカタカタと例のごとく部室にいつもの音が響き渡る。途中糖分補給も兼ねて瓶の中に入れてあるキャンディを取り出し舐めていると2個ほどかっさらわれていった。俺のなんだけど。

書類に不備らしきものを発見したため、それを隣で作業しているタロに尋ねようとすると。

 

「タロ、この書類なんだけど」

 

「どれどれー?」

 

「ハイ、ストップ。一旦離れなさい」

 

っと姉ちゃんが割り込んできて一度離された。今日中に確認しておきたいんだけど。というかさっきから何もしていないのに何で何時までも居座っているんだろう。

 

「なに?どうかした?」

 

「アンタたちやっぱり近い。不純異性交遊よ」

 

「えと、仕事なんですけど」

 

「ならもう少し離れてもできるでしょ。なんだって隣同士でくっついてやってるのよ」

 

「お互いに確認しやすいからだけど。...っていうか普通に邪魔だからあっち行ってて」

 

「邪魔!?スグのくせに生意気!」

 

仕事の邪魔だから向こうに行ってろと言っただけなのになぜここまで言われなければならないのか。時間も押してきているからさっさと終わらせて俺もブルレクしとかないと。

 

「ここいらで噂についてもハッキリさせておいた方がいいわね。...三者面談よ」

 

「いや、今はそういうのいいから」

 

「シャラップ。黙って机を動かしなさい」

 

「...ごめんなタロ。うちの姉ちゃんが」

 

「気にしないで。どうせいつか伝えることだし」

 

 

 

...

.....

.......

 

 

 

 

二人で机と椅子を動かし、教師側が姉ちゃん。生徒と保護者側に俺とタロが座っている。どうせ距離感近いことが聞きたいだけなのに大げさな。教師側の人が魔王かの如く威圧感を放ち、腕を組みながらこっちを睨みつけてきた。早く終わらなかなあ。

 

「最近のアンタたちなんだけどやっぱり距離感近いと思うの。そこについてはどう思ってるのかしら?」

 

タロがぼそぼそと耳打ちしてくる。もうゲロった方が面倒もなくいいかもしれない。どのみち通らなければいけない場所だし、今のうちに潰しておこう。いつかタロにもキタカミの里に来てもらいたいし。

 

「言った方がいいかな?」

 

「うん。正直面倒くさくなってきたから言おうか」

 

「なにを相談しているのよ、ハッキリと言いなさい。大体、噂を知らないわけじゃないでしょ?」

 

知らない。っていうかそういうものに関しては自分の目で確かめる質なので興味がない。そんな俺の様子を察してかタロが俺の方を向いて噂の説明をしてくれた。

 

「この前ライモンに遠征した時に、二人で行ったスタジアム。あれ中継で見てた生徒がいてね。カメラに私服で二人で映ってたから、そこから私たちが付き合ってるんじゃないかっていう噂になってるの」

 

私服というか買ってもらった服だけど。あれは結局今後着ることが怖くなったのでタンスに押し込んだ。今も大事に保管してある。付き合ってるに関しては半分本当なのが面倒だな。

 

「まあ、おこちゃまなスグがまさかタロと付き合うなんてないとは思うけど」

 

「あ、それ半分本当ですよ」

 

「へー...........!!?!?!???!?!?」

 

「認めちゃうんだ」

 

あっさり認めたし状況に驚きすぎたのか、姉ちゃんの目が飛び出そうになっている。そんな姉ちゃんを無視し、タロが部室に鍵をかけた。これ以上の話は他の生徒に聞かせても困るのでありがたい。

 

「お父さんにも会ってもらいましたよ。...あ、そういえば、これ」

 

口から何かが発射されそうな姉ちゃんを余所眼にタロがポケットから名刺か何かを渡してきた。そこには何度か見たことのある企業名とヤーコンという名前が書かれている。ある程度は理解することはできたが、受け取ったのち一応確認。

 

「これは?」

 

「お父さんの名刺。何か困ったことがあればこの番号にかけてねって」

 

強面だが、すっごく優しくていい人だ。サブウェイの時にもっと話しておけばよかった。人生相談でなくともじめんタイプにおいてなら特別講師のチリさんとは違う角度から切り込んでくれるかもしれないし。

 

「ありがとうって言っておいて。列車の時、もっと色んなこと話しておけばよかった」

 

「アハハ。あの時はお父さんも緊張してたから。次の休みに二人でまたライモン行こうか。その時はお母さんもいるしさ」

 

どっしり構えていたので、緊張とは無縁の人かと思っていたのに。意外とかわいい部分もあるんだな。本当は遠征2日目か3日目の時に両親に合うはずだったんだけど、2人とも仕事で都合が合わなくなってしまった。ヤーコンさんに関してはギリギリの合間を縫ってなんとか来てくれたようなもの。...なんだか次の休みが楽しみになって来た。

 

「ハァー、ハァー。詳しい状況を聞かせなさい。半分ってどういうこと?付き合ってないの?」

 

ようやっと帰って来た。

 

「それに関しては私の判断です。付き合ってるけど、付き合って無いみたいな。友達超過恋人以下ってところですね。今は時期が良くないから」

 

「部も俺のせいでめちゃくちゃだったのをようやっと軌道に乗って来たばっかりだしね。...責任はとるつもりだから、言うのはいつでもいいよ」

 

タロは異性からよくアプローチをかけられるし、俺は少し前までは爪弾きもの。今付き合ったと他の人に知られたら部内がガタガタになってしまう。今いる場所が色恋で崩壊なんてヤーコンさんになんて説明すればいいかもわからない。っというか合わせる顔がない。

 

「ど、どこまで行ったのよ。ま、ままさかキスとか?」

 

おこちゃまなのは姉ちゃんの方だったな。多分今のところ異性もしくは同性との経験においては圧倒的に俺の方が上だ。

 

「それより先」

 

「は!?!?!?」

 

姉ちゃんが血反吐を吐いた。面倒だからあとでちゃんと片付けて欲しい。かと思えばいつもの握りこぶしに力を入れ、ワナワナと震えだす。

 

「な、なら恋人っぽいことしてみなさいよ!」

 

「どういう無茶ぶり?」

 

恋人っぽいことでなにもピンとこない。デートはできなし、なら手でも繋ごうかと思ったとき、タロの手が後頭部に回って来た。ちょっとまて強烈に嫌な予感がしてきたぞ。顔がだんだんと近づいて来た。やっぱりそれか。

 

「タロ、他のやつに」

 

「やーだ♡」

 

唇が合わさり、中に舌が入ってきた。何も姉の前でキスをしなくても!?チラリと姉の方に目を向けると、顔を真っ赤にし目を逸らしている。っが気にはなるようでこっちをチラチラを見ている。どんどんと激くなっていくキス。俺もなんだか乗り気になり、いつの間にか腰引きで互いに求めあえるようにしていた。

キスが終わり、口がだんだんと離れていく。

 

「信じてもらえましたか?」

 

「え、あの、その。...信じ、ました」

 

「ならよかった」

 

っと不意にタロがぼそぼそと耳打ちをしてくる。蠱惑的なその表情に不覚にもドキッとしてしまった。

 

「続き、あとでね」

 

その言葉に心底胸が高鳴る自分がいてしまう。最近だとキスだけでは消化不良になってきている。俺も性欲モンスターとうことなのだろうか。あ、姉ちゃんに一応釘を刺しておかないと。

 

「姉ちゃん、他言無用ね」 

 

「あ、うん。しません」 

 

見たことのない表情で、モジモジとしながら姉ちゃんがチラチラと見てくる。

誰だこの可愛い生物は!?













R18版削除について
SSに対して作者本人が非常に大きな違和感を覚え、今後の創作に対してモチベーション低下をもたらすと考えました。
アンケートを撮った手前大変申し訳ないのですが、削除させていただきます。(pixivの方は残します)
申し訳ありません。
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