スグリ「タロと事故チューした」   作:すぺしうむ

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第9話

キタカミの里への里帰りを終え、数日が経過しようとしている今日この頃。見られた部分はタロが口止めをしてくれているらしいので噂がこれ以上広がることはないとは思うけど、一抹の不安が残る。

必要な書類の不備や漏れ等がないかを確認し、部長のサインと名前を記入する。凝り固まった体をぐぐぐと伸ばし、軽くストレッチ。仕事自体はあと少し残っているが、今日中にやらなければいけない部分はすべて終わった。

掌の上で指を巧みに使い、ペンをクルクルと回す。一昨日ごろにカキツバタに華麗な回し方を教えてもらった。あまりにもかっこよかったので書類の合間やメモの記入の隙間時間に練習していたが、完璧に形になったといっていい。タロは反応は微妙そうだし、ネリネはよくわからなそうだし...アカマツあたりに見せびらかしたいな。

 

「ふふふーんふーんふーん」

 

鼻歌を歌いながら軽く部室を見渡していると、不意に扉がガラガラと開く。部員は相も変わらず出払っており、俺一人しかいないはずなんだけど。誰が来たのかを確認するために開いた扉を見てみるが、誰もいない。心霊現象だろうか。ここ一応新設された場所なのに。

辺りを見渡していると、視界の端に青い耳らしきものがぴょこぴょこと動いているのが確認できた。

下に視線をやると

 

「なんだマイナンか」

 

ほっと胸をなでおろす。部室に幽霊何て発生されたら、これからの仕事に支障がきたしてしまうからな。

可愛らしく揺れ動く体の前に膝をつき、マイナンが見上げやすいラインまで屈む。

 

「...この大きさタロのところの子か」

 

呟くと鳴き声をあげ、小さな体でぴょんぴょんと跳ねた。バトルのことを抜きにしても、彼女の部屋で何度か見せてもらったことがあるのでわかる。静電気が発生しないように軽く頭に触れ、花を扱うかのように撫でる。見た目からはあまり想像できないような小さな毛とその肌触りが心地いい。指の先で顎や眉間を擽ってやると嬉しそうに目を細めた。

あまりにもリラックスしすぎたのか、マイナンの体から静電気よりも強めの電気が漏れて俺の手先に軽く感電する。でんきタイプのポケモンがたまにやってしまうことだ。火傷するほどの熱さではないが、痛いものは痛い。

 

「いちッ」

 

手で感電を振り払い、息を吹きかける。効果があるわけでもんないが心根的にやっておきたい。指先を確認すると若干熱を帯びているが、怪我がないことが確認できた。

心配になったのか涙目になりながらマイナンが俺の手をのぞき込んでくる。愛いやつめ。

マイナンの頭をもう一度撫で、怯えさせないように優しく声をかける。

 

「痛くねえよ。ちょっとビックリしたけど」

 

それでも心配なのか俺の手を小さな手でつかみ、舌で舐めてきた。表面のざらついた感触が何とも言えない快感を生み出す。数回舐めると大丈夫なのを確認したのか手を放してくれた。

 

「ありがとう。優しいんだな、お前。...あ、そうだ」

 

ここでふとあるものが思い浮かんだ。とにかく人に見せたい欲求に駆られていたのを思い出す。ジャージのポケットからペンを抜き取り、マイナンの前でクルクルと回す。頭にはてなしか浮かんでいないが、多分通じてないなこれ。

 

「ペ、ペン回し。どう?」

 

あまりにも唐突すぎただろうか。青い大きな耳を付けた頭が一度首を傾げた後、困った表情で拍手してくれた。微妙な表情による賛美というものはここまで心に来るものなのか。うん、人に見せるのはやめておこう。

 

「ありがとな、褒めてくれて。...よっこいしょ」

 

小さな体を幼子のように抱きかかえ、椅子に座りなおす。行儀は悪いかもしれないが、机に座っといてもらおう。役に立つかはわからないが、俺の背もたれとして使っていたクッションを手渡し、もう一度頭を撫でる。

 

「タロが来るまで待ってっか?」

 

『マイナ!』

 

同意と見ていいんだろう。タロは現在用事があるといって別の場所まで行ってしまっているので、どこにいるかはわからない。時としてボールの誤作動でポケモンが外に出てきてしまうこともあるのでこのマイナンも多分それだろう。特に考えずに、ふと心の声が漏れた。

 

「俺さ、タロにすっげえ感謝してんだ。俺を変えてくれて、大事なものいっぱいくれてさ」

 

本人にも言えることではあるが、なんだかこそばゆい。好きとかそういった気持ちは...あんまり言えてないかも。ポケモン相手でもいいから練習しておこう。

 

「お前のトレーナーに伝えといてくんろ。その、愛...し、てるって。って何言ってんだ俺」

 

今の俺の顔を鏡で確認したら、多分耳まで真っ赤になっているだろうな。そうやって髪をガシガシと掻いていると、ふと目の前が可愛らしい小さな顔で一杯になる。不意なことで避けることはできない。唇に柔らかいものが触れ、心地いい。ゆっくりと顔が離される。また直観的に声が出てしまう。

 

「タロ...?」

 

そんなわけはないのに、疑問が口から発せられた。今のマイナンの表情というかキスの仕草がどうにもタロを想起せざるを得ない。トレーナーがしていることを真似たのか。それにしてはやけに艶のある表情だったし、何よりタイミングも...。などと悶々と考えていると、ふとマイナンがどこかに立ち去っていく。慌てて手を伸ばすが、すり抜けてそのままどこかに行ってしまった。

 

「あ、ちょっと!...なんだったんだべ」

 

なんだか腑に落ちないな。回転する椅子で、酔わない程度に回りながら考えを整理していると、また扉が開かれた。今度はポケモンではなく人間。それもさっきの子のトレーナーである。ピンクのカーディガンを靡かせ部室に入ってくる。

 

「あ、調度よかった。タロ、さっきマイナンが」

 

っと言いかけた時、俺の元に無言で近寄り抱きしめてきた。いつもより力が強い。かといってスる前のあれこれといったような妖艶な雰囲気はない。ただただ愛するものを目一杯に抱きしめるといった具合だろうか。

 

「愛してるってもう一回言ってみて?」

 

「な、なんでそれを」

 

心臓をぎゅっと鷲掴みにされたような、そんな恐ろしさ。本人には言っていないはずなのになぜ知っているのか。もしかしたら、どこかにカメラでも仕掛けられていたのかもしれない。

 

「手、痛くない?電気だしちゃってゴメンね」

 

「あの、もしかして見てた?」

 

「見てたよ、目の前で」

 

目の前と言ってもさっきこの場にいたのは俺とマイナンしか...。ふと別の考えがよぎるが、それだけはないと思う。いやだって、さっきの子は完璧にポケモンだったし中身に別のものが入っているなんて。

 

「さっきのマイナン、実はタロ先輩でしたー」

 

「わ、わや...」

 

一番嫌な返答だ。さっきのペン回しから何から何まで聞かれてたし見られてたのか。変な気を起こさず撫でていればよかった。ニマニマと俺の顔を覗き込んで笑う先輩。今すぐポーラエリアの雪の中に埋まって一生出てこないでいたい。明後日からはカキツバタに部長を頑張ってもらおう。

 

「顔真っ赤でかわいいね」

 

「うう...」

 

口からうめき声が漏れる。もうどうにでもなれ。

 

 

 

...

.....

.......

 

 

 

 

小さな体をタロに抱きかかえられ、校内を練り歩く。ポーラエリアこそいかないものの、コーストと言った行きやすい場所を二人で散歩。正確には一人と一匹に換算されるのだろうか。

 

「プラスル、かわいいー」

 

「でしょでしょー?」

 

『プラー(わやー)...!』

 

女子生徒にいたるところを撫でまわされ、擽られ、気持ちがいいはずなのに、なのにこの状況には全く納得できていない。撫でられているときはつい表情が緩んでしまうが、撫で終わったら俺の態度は一変。顔から機嫌の悪さを醸し出させる。俺が不機嫌顔でぶすっと膨れていると、件のご主人様が撫でてくる人たちに向かって注意喚起。

 

「ごめんねー、この子今ちょっとご機嫌斜めで。いつもは喜んでくれるんだけどね」

 

なぜこんなことになったのか少し前を遡ろう。

 

 

 

 

 

 

----------------------------------------------------------------------------

 

 

「ポケモンとシンクロ?」

 

「うん。さっきの私みたいにトレーナーの意識をポケモンの中に移し替えることができるの。スグリくんもやってみる?」

 

「わやすっげえなあ。でも、俺はいいよ」

 

「はーい、一名様ご案内」

 

「え?話聞いてた?」

 

----------------------------------------------------------------------------

 

 

 

 

 

っとこんな具合である。タロのプラスルにシンクロし、体を動かしてはいるが如何せん元の体とは勝手が違うため、のっぴきならない。

軽く手を挙げてみるが可動域が普段とは違い若干狭い。皮膚や骨格の限界によるものだろうか。

 

「この子はねえ、ここを撫でてあげると喜ぶんだ」

 

眉間と臀部をカリカリと掻かれる。全身にゾワゾワとした快感が駆け巡る。体から力が抜け、うまく稼働しない。頭の中でバチバチと火花が散り、思考が全く定まらない。浅い息が口から洩れ、涎が地面に垂れていきそうだ。

 

『プララ(なにこれえ)』

 

「気持ちいいねー」

 

「「かわいいー」」

 

中に入っているのが俺だと知ってしまったら幻滅するだろうな。ないとは思うが俺であることがバレないことを祈ろう。

そんなことを考えている間も、タロの擽りはエスカレートしていく。甘くしびれるような心地よさが俺を包んで放さない。

もはや快楽に身を委ね、ビクビクと微小な痙攣を繰り返すだけの人形となってしまった。プラスルに申し訳が立たない。

 

『プララ(もう勘弁して)』

 

ようやっと解放されたころには、俺の足腰はしばらく経てないほどに砕けてしまっていた。

 

 

 

...

.....

.......

 

 

 

コーストエリアを2匹のポケモンが駆けまわる。片方はそれほど乗り気ではなく、もう片方はデート気分。

他のエリアだと流石に危険かもしれないと判断したためコーストスクエアの周辺を散策中。

 

『プララ(ねえ、まだやるの?)』

 

『マイナ(これで最後だから)』

 

多分これで本当に最後なんだろうけど、体が腰砕けなっていてうまく歩けない。ただでさえ普段とは違う等身に苦労しているというのに。そんな俺を気遣ってか、マイナンことタロが俺の手を引っ張って先導してくれている。でも俺は早く帰りたい。というか俺もブルレクやってBP稼いでおかないと。

 

『プラーラ(っていうか言葉通じてるべ。不思議ー)』

 

『マイナナ(ポケモン同士だからかなあ)』

 

はたまたマイナンとプラスルという似た性質を持つポケモンであるからか。実験していた生徒曰く、データが欲しいとのことなので近縁のポケモンでシンクロした場合のお互いの認識を報告してくれと言われた。特に自分の中の感情や考えが変化している気はしない。

っと原っぱをかけていると、開けた場所で見慣れた可笑しな前髪の人間を見つけた。傍らにはネリネとアカマツらしき人も見受けられる。おそらくブルレクでもやっているんだろうけど。

 

「スグリとタロに効率的な稼ぎ方聞こうと思ったんだが、どこ行っても見当たらねえな」

 

「先生のところにもいなかったしね。どこ行ってるんだろう」

 

『プラ(四天王のみんなだ)』

 

『マイ(私たちを探してるみたいですね)』

 

『ププラ(戻ったほうがいいかも)』

 

タロもつい仕事モードになってしまっている。ふとじっと見ていると、ネリネと目が合った。二人とも蛍光色なので気づかれやすかったか。悪いことは何もしていないはずなのに逃げることを考える。

こっちに気が付いたネリネがスタスタと足早に歩き、あっという間に距離を詰められた。

 

「どした?珍しいもんでもあったのかい?」

 

「この子たちは...タロのマイナンとプラスル。近くにいるということでしょうか」

 

「よくわかったね」

 

「ネリネは一度見たポケモンは記憶しているので」

 

カキツバタとアカマツも近づいて来た。なんだかネリネの視線が怖い。さっきから俺の目というかその奥底まで覗かれているみたいだ。キュッと下唇を噛み、恐怖を堪えているとネリネに抱きかかえられてしまった。

 

「かわいい」

 

『プラ?(え?)』

 

むぎゅむぎゅと抱きしめられる。タロとは違う柔らかいものが肉体に押し付けられる。強く抱きしめられているせいか呼吸がし辛い。だが不思議と悪く無い感触でもないような気がしてきた。マイナン...というかタロの視線もなんだか怖い。自分に決定的に足りないものを無理やり見させられているような苦い顔だ。そんな顔してないで助けて欲しい。

 

「ネリネ、なんだか苦しそうだよ」

 

「あ、失礼」

 

やっと放してくれた。優しく地面に下ろしてくれたが、呼吸ができていなかったことでフラフラしてしまう。深呼吸を何度か繰り返し、息を整える。タロの方から視線を感じたのでそっちを見ると、目の奥にブラックホールが宿っていた。明らかに殺意がわいている。

 

『プラ(タロ、どうかした?)』

 

『マイナ(そういうの、良くないと思いますよ)』

 

『プラー(わやじゃ。なんも言ってねえべ)』

 

「さて、じゃあオイラはマイナンに触ろうかな」

 

筋肉質な男性の手がタロの頭に触れようとしたとき、耳の水色の部分から火花が散った。ヒューズが飛んだような音と閃光をあげる。さしものカキツバタも「うお!」っと声をあげ、たじろいだ。なんだかピリピリしている、色んな意味で。

 

『マイーナ(スグリくん、戻ろっか)』

 

『プラー(え、怖いべ)』

 

首根っこを軽くつかまれ、引きずられていく。言葉の節々から今夜は寝かさねえぞという隠れた意味がひしひしと伝わって来た。

翌日、俺の体は噛み跡と赤い斑点まみれであった。

 













乳首責めと悩んでこっちにしました
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