戦犯ちゃんと弁護人さん   作:あやもり6

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第一話「契る」

「しかし、君ィ。被害者の親族が弁護をするというのはいささかねぇ」

「夫と娘は軍務で死んだだけです。立派な最期でした」

「いや、しかしだ」

「はっきり申し上げれば他の者は“あんなの”をやれ怪物だ、虐殺だの

 数字と言葉だけが独り歩きして怯え始めている」

 

―机を両手で叩き前のめりになる

 

「ううむ。しかし、事実でもある。あの戦犯ちゃんは」

「情報と雰囲気だけで糾弾して殺すなら“あんなの”未満です。

 若手連中に任せられませんし、お歴々の方に傷を付ける訳にもいかないでしょう?」

「……わかった。ただ、当人の了承を得る事が条件だ。面会の時間を設けよう」

「ありがとうございます」

 

―面会室

 

「囚人A。面会だ」

「初めまして。囚人A」

「今度は女か。

 同性なら警戒が解けると言う算段ですか」

「その程度を考えて実践するのは当たり前です。

 文明国ですので人の層が厚いんですよ」

「猥雑な。無駄な苦労をするのが好きなようですね」

 

―相手の前の椅子へと座り、監視員は一歩後ろへ

 

「トライアンドエラーが出来る余裕こそ、進歩の秘訣です囚人A。

 蓄えと余力こそが敗北と不幸を遠ざける。貴女は追いつかれましたね」

「センスは兎も角、頭は悪くない様で」

「悪かったら生き残れませんからね、今の世の中」

「頭が良かろうが強かろうがみーんな、死んだよ。

 私も豚を沢山殺した」

「報告は見ています」

 

―誇らしく胸を張り、にんまりとした笑顔で唇の端を上げる

 

「しかし、裁判というのは建前として弁護人ね。

 君たちはどうせ私を処刑するのではなくて?」

「ええ、その意向かつ十中八九、否。

 確実にと言い切ります」

「では、無駄ではないかしら?」

「そうですね。無気力に無抵抗に貴女を首に吊るせばそれでいい。

 

 ――ただ、私はそう思わない」

「では聞かせて貰いましょう。

 その、やたら胸にばかり栄養が偏っている図体の脳みそと心臓は

 どういった答えを得たのでしょう?」

「貴女は“生きるべき”だ」

「…………失礼。卑下しか思いつきません」

「実に結構。私は貴女の善悪や所業にさしたる興味はありません」

「実績作りかしら」

 

「違います。立証されうる事実を鑑みての判断です」

「好きに証拠を作れるのに?」

「検察側もその位は当然済ませているでしょう」

「負け戦に意味があるのですか」

「それを決めるのは私です」

「自己満足」

「自分自身を満たせぬ人生など意味がありますか?」

「……………興味が湧きました」

 

「了承と認識します。私が弁護する形で構いませんね?」

「ええ、申し出を受けましょう」

「では」

 

―手袋をし直して、手を差し出す。

 

「触りたくないのに握手を求めるのですか?」

「貴女が触りたくないと思いましたが

 儀礼として必要かと思いまして」

「……」

 

―ぺっと手のひらにつばを吐いて、弁護人の手を握り返す。

 

「ではよろしく囚人A。

 弁護人とでも呼んで下さい。

 互いの名乗りに意味はない」

「どうせ、しくじったら吊るされますものね」

「ええ、お互いに」

 

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