戦犯ちゃんと弁護人さん   作:あやもり6

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第三話 「誰が、誰を」

―面会室にて

 

「面会時間だ。囚人A」

「大立ち回りでしたね、弁護人さん?」

「ええ、囚人A。何もかも順調です」

「聞きました、貴女はご息女と番が私の作戦で死んだそうで?」

「事実です」

「なら、辱めて敗北させるのがもくt――」

 

―立ち上がり、顔面を踏みつける様に蹴りつける。椅子ごと大きく倒れる囚人A

 

「座らせて下さい」

「弁護人、囚人に手を出すのは」

「出したのは足なので問題なく」

 

―立会人にタバコを一箱投げると静かに頷き、囚人Aを無理矢理座らせる

 

「貴女が気に入らず、痛めつけるならこう出来ます」

「野蛮な」

「貴賓を口で言うのは簡単ですが

 それを維持が出来るかが重要ですよ囚人A」

「……ふん。で、次はどうするのですか」

「貴女の最大の悪業。

 難民キャンプ及びゲリラの殲滅の件」

「…………ああ、あの花火の事ですね。

 きれいに豚が焼けたものです」

「その花火の有り様を次の弁論で使います。

 報告書は受けておりますが

 貴女の口で語れる範囲で教えていただきたい」

「いいでしょう。あれは今も瞼の裏に焼き付いてる」

 

―そして、法廷へ

 

「続いて貴女の行った所業について精査します」

「豚の駆除です。

 それだけに何を聞く必要があるのです?」

「確かに襲撃したのは発言通りですが

 このキャンプ地域に着目して下さい」

 

―プロジェクターに地図が表示される。

 

「第三国の国境沿いに近い、というか隣接し過ぎていますね。

 コレでしたら、普通に隣国への亡命の方が

 早い上に安全でしょう」

「受け入れ体制や手続き上の問題ではないかね?」

「確かにこの国境近くの隣国は

 戦争難民の受け入れを拒否しています」

「ふん。日和見を決めた、腰抜け国家は責任など取らぬさ」

「被告の事件の前に表明されて

 国境警備も厳しくなっていますね」

「報告と報道には流れている通りだ」

「では、既にご存知と思われますがこれを」

 

―プロジェクターに派手な宣伝映像とビラが次々と映される

 

「何だこれは?」

「平和を祈る音楽フェス。

 まぁ、歌手や芸事が集まる祭り会場ですね」

「報道で流れている事も再三の中止要請があって

 それでも強行した事も知っている」

「今の反応を見るに被告は開催を“知らなかった”という前提で

 話を進めてもよろしいでしょうか?」

「……ふむ。続けてくれ」

「既に開催が終わっており、海外からの著名人、セレブ等が

 多数参加した様です。ちなみに開催場所はここです」

 

―プロジェクターに地図が映り、赤丸が付けられる

 

「場所が難民キャンプに近いという事は解るが

 弁護人、これが本件と何か関係あるのかね?」

「はい。被告、囚人Aがこの難民キャンプを

 襲撃した事が彼女の主な戦争犯罪とされていますが

 此処は国連軍が警護をしていました。

 部隊数としては少ないとはいえ、なぜ此処を襲撃したのでしょう?」

「ホワイダニットを語るのは今更だと思うが

 物資と食料の強奪であると報告を受けている」

「確かに、被告の部隊は徴収しています。

 これが強奪されたとする物品リストと彼女の部隊が持っていたモノと

 国連軍の所有武装のリストなのですが」

 

―プロジェクターに火器の写真、リストが並び映される

 

「……ふむ」

「“いささか数が多くありませんか?”」

「確かに小火器類に手榴弾などは分かるが

 警護部隊の所有する規模に対しては多いな」

「随分贅沢なものですね。まぁ、私達の部隊には助かったが」

「では、被告。写真の武装を強奪や使用した記憶にありますか?」

 

―プロジェクターに大型の弾頭やタンクの様なものが映る

 

「仔細までは知りませんが根こそぎ奪いました。

 見たこともあるし、使えるものは使いましたよ」

「本当にですか?」

「ここで嘘を吐いてどうするのです。私は君の口車に合わせるつもりはない」

「これはBC兵器、要するに毒ガスや化学兵器等の非人道的なモノですが

 そもそも、貴女の部隊で扱えるものでしょうか?」

「なっ……それは」

「確かに技術的に運用や仕組み等は解りますが

 軍人とはいえ、軽率に接収するものではない。

 そして、被告の部隊で専門の訓練を受けている軍人も居なかった」

「弁護人。それは本件とどういった関係があるのかね?」

「つまり、これは国連軍、あるいは難民キャンプに持ち込まれたものです。

 これは難民キャンプ内で破損、あるいは被告が使用したとされています」

「被告の部隊が知らずに使用したという可能性は?」

 

―プロジェクターに映し出される弾頭やタンクの拡大図にマークが映る

 

「まともに教育を受けた軍人なら、このマークで危険物だという事は理解します。

 まして、そんな所を攻撃したら返り討ちで使われり、暴発する可能性もある。

 難民キャンプでの被害は主に砲撃や銃撃による殺害です」

「豚を殺すのにわざわざそんな物を使う必要はないでしょう。

 鉛玉があれば十分です」

「被告。先程の発言と矛盾している。どちらが正しいのかね」

「ええい、豚を殺すのにちまちま覚えていられるか!」

 

―囚人Aは証言台を細い拳で叩き音を出す

 

「毒ガス漏洩と砲撃により損耗が激しく、断定は出来ません。

 ただ、国連軍の所有するには多量の銃火器、誰も扱えないBC兵器の残骸。

 ここは本当に難民キャンプだったのでしょうか?」

「推察だけの陰謀論を語る場ではないぞ、弁護人」

「ば、バカバカしい。妄言も大概にしろ!」

 

―更に裁判は続き

 

「では、次に証拠を提出します」

「事前の通告によると命令書だと聞いている」

「はい。彼女の真偽について疑義を呈しましたので

 ここで筆跡による本人確認を申請しています」

「今更ではあると思うが、意図があるのだろう。どうぞ」

 

―証言台の前に一枚の用紙とペンが用意される

 

「では、被告。そちらの軍の書類の複製品です。

 貴女の普段どおりにこちらに名前を書いて下さい」

「名前位はいくらでも。しかし、普通の白紙でよいのでは?」

「線に対する位置や書き始めの癖は似た書類のほうが良いんですよ」

 

―静寂の中、ペンを走らせる音だけが響く

 

「はい。確認しました。では、こちらを証拠として提出します」

「うむ…………ん? これは!?」

「なんだ、また私が偽物だなんだという話ですか。くだらな――」

「被告、確認する。これは君が読んで書いたと見ていいかね?」

 

「詐欺師紛いに何か罠でも書いてありましたか?

 そんな瑣末事は気にしません。名前を書けば良いんでしょう」

「しかしこれは」

「これは私の仕込みではありません。面会の時間の立会人もおります」

「……ううむ。被告。君は」

「ええい、まどろっこしい! たかがサイン一つで何を!」

「被告、君が名前を書いた紙は始末書だ」

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