三角関係な朝8時半   作:カードは慎重に選ぶ男

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魔法少女トリオの色は、ワンピースの3大将の赤犬・黄猿・青雉と一緒だと認識すると覚えやすいと思います。




第1話:名前の無い魔法少女トリオ

昼休みの学食って言う(ゆー)たら、ぎょうさん人がおって、ガヤガヤ喧しいもんなんやろな。

ワイの通っとる大都会の中学校でも、それは変わらん。

ただ、ワイの場合は一人で寂しくメシ食うとんのやけどな。

孤独のグルメみたいな顔して一人飯と洒落込んどるワイやけど、周りの中学生らの噂話もバッチリ聞いとるで。

 

最近のホットな噂は、なんちゅーても魔法少女3人衆と謎の怪物やろな。

赤黄青のフリフリな衣装でめかし込んだ魔法少女3人が、不定期に現れる怪物を退治しとるっちゅー噂や。

動画なんかでも拡散されとるけど、まぁ大体の聞き手はフェイクニュースっちゅう前提で楽しんどる。

 

ま、実際に居るんやけどな。

まさか学食で一人飯を食っとる冴えない男子中学生がそのメンバーの一人だなんて、悪い冗談みたいな話や。

変身したら下のモンも無くなって完全に女子やし、まぁバレへんやろ。

ちゅーか、家族はおろか魔法少女仲間にすら正体はバラしとらん。

女装っちゅうんは、なかなかにハードル高いで。

身体ごと変わるんは、女装って呼ぶんも何か違う気もするんやけど、他の呼び方も分からんし別にええか。

 

スマホを卓に出して、SNSでワイらのエゴサでもしとくか。

飯食いながらスマホ見るんは行儀悪いかもしれんけど、堪忍やで。

 

 

赤い魔法少女は、あからさまに犬っぽい子やな。

秋田犬みたいなクルっとした尻尾も付いとるし、頭には犬耳風のリボン付いとるし。

喜んどるときに尻尾を振るんが、フォロワーの間でかなりウケとるみたいや。

SNSのコメント欄を覗いても、可愛がられとるっちゅーか、愛されとる感じやな。

 

 

『主人公感』

『犬耳は王道』

『モフりたい』

『餌付けできそう』

『ソーセージをペロペロしろ』

『叱られたら耳と尻尾もシュンってしてほしい』

『こんな妹が欲しい人生だった……』

 

いつの時代も犬や猫の人気は根強いもんやな。

あと妹感は分かる気がするわ。

この犬っ子の変身前の姿を知る身としては、なおさらやな。

ワイと同じく中学2年生のはずなんやけど、実年齢マイナス1歳か2歳ぐらいに感じる時があるねん。

 

 

 

黄色い魔法少女は……まぁワイやな。

サイヤ人みたいな尻尾を使って器用に戦うタイプや。

実質腕が3本あるみたいなもんで、思った以上に戦いやすいで。

SNSのコメント欄は……不人気っちゅー訳やないんやけど、好みが分かれる感じやな。

 

 

『圧倒的マナ板』

『この子の「やっちゃるでー!」は何かクセになる』

『黄色い珍獣』

『悪いが関西人はNG』

『エセ関西弁はちょっと……』

『ええやん方言っ子! 可愛いやろ!?』

『だが絶壁だ』

 

絶壁は別に気にせんけど、エセ関西弁は堪忍したってや……。

一応小学生までは関西在住だったのはホンマやねんで?

けど色んな所から移住して来てた御近所さんらのせいで、たぶん色々混ざっとるわ。

本場の関西人からはエセ関西弁扱いされるし、都会人からは異物扱いやし、ええトコ無しやねん……。

ファンタジーなんかで見るハーフエルフっちゅー奴等の気持ちが少しは分かるわ。

まぁ日常生活では方言を隠して喋っとるから、無問題や。

 

 

 

で、最後の青い魔法少女は、こっちも固定ファンが多い感じやな。

中学2年生のワイらより少し年上かなって気がするんやけど、実年齢は教えてもらっとらん。

他の二人が脚を普通に出しとるのに対して、このお姉さんは黒ストッキングのせいで下半身の露出が完全にゼロなんや。

長手袋もしとるから、露出は3人の中で一番少ないお姉さんや。

けど、背中側が結構大胆に見えとったり、脇チラしたりすんねんで。このお姉さん。

 

 

『知性担当』

『お色気担当』

『脇担当』

『おっぱい担当』

『泣き黒子は俺の性癖に効く……』

『この子って長手袋から羽飾りを大量に生やしてるけど、全く飛ぶ気配無いな』

『※飛べません』

 

SNSのコメントを見ても、やっぱ皆そういう目で青いお姉さんを見とんのやな。

まぁワイもやけど。

一緒に戦っとる時も、不意にドキっとさせられるっちゅーか、男の身体だったら勃っとったなって思う場面が多いねん。

怪物に弾き飛ばされた後に、あのお姉さんに優しく抱き留められたことがあってな。

あのオッパイは魔性やでホンマ。

その日は夜までずっとムラムラしっぱなしやったわ。

 

 

 

 

 

 

「お待たせ、猿渡。なんだ、また噂の魔法少女の動画を見ているのか」

「鳥山アニキ、お疲れッス」

 

一人で寂しく学食飯と洒落込んどったワイの隣の席に座ったのは、3年の先輩やった。

絵に描いたようなインテリって感じのメガネマンや。

ワイは中学1年の頃に大喧嘩をやらかして同学年からは腫物みたいな扱いなんやけど、この先輩は気軽に接してくれるんや。

名前は鳥山カイセイ。

たぶん良い(ええ)トコのボンボンなんやけど、何やかんや縁があって一緒に飯を食うことが多いねんな。

一緒に学食で昼飯を食うとるだけでも、食い方ひとつで育ちの良さが伝わってくるタイプのインテリメガネマンや。

 

 

「猿渡って『露出は多ければ多いほどエロい』みたいな事を言ってたよな? その割に青い子の動画ばっかり見てないか?」

「もちろん露出も好きッスよ。でも、なんかこのお姉さん、チンポに来るものがあるんス」

 

確かに青いお姉さんって露出度だけで言ったら3人衆の中でワーストなんやけどな。

黒ストのせいで下半身は露出ゼロやし。

けど……せやけど、なんかエッチやねん!

自分でも上手く説明できんけど、なんかチンポに来るんや!

女の身体になって戦っとる時ですら、心のチンポが強制的に反応するんやで!!

 

 

「いわゆる『(ちゃく)エロ』ってやつか」

「何スかそれ? 検索検索っと……へー、こんな概念あるんスね。まさにコレっス」

 

ググってみたら予想外にガッツリ情報出てくるやんけ!

っちゅーか、Wikipediaに専用ページあるんやな!?

90年代からの歴史がズラっと載っとるやん!?

そないな由緒正しい言葉だったんか??

あ、この言葉自体が出来たのは2002年なんやな。

 

 

「なんか存在としては分かるけど名前を知らないものって多いっスよね。西部劇で荒野を転がってる謎の丸いヤツとか」

「タンブルウィードな」

 

「なんで知ってるんスか??」

 

ホンマ何でも知っとるな鳥山アニキ……。

そんで、ふと思ったんやけど、魔法少女トリオってまだ名前無いねんな。

どっかのヒーロー番組みたいに「〇〇レッド!」「〇〇ブルー!」みたいな名前があっても良さそうなモンやけど。

ワイらが自分で名乗っとらんから、正式名称も何もあらへんのや。

 

 

「名前といえば、噂の魔法少女トリオって名前とか無いんスかね?」

「本人たちが名乗った訳じゃないみたいだが、イラスト投稿サイトのタグとして定着している呼び名ならあるぞ」

 

あるんかい!?

え、ワイらが名乗ったこと無いのに、既に通り名が付いとるん?

そないなことあるんか??

っちゅーか、鳥山アニキなんでそんなん知っとんねん??

 

 

 

「近年大流行したヒーロー番組から文字った名前らしいな。

 

イヌシスター

サルシスター

キジシスター

 

3人あわせてキュアシスターズと呼ばれているらしいぞ」

 

「ネーミングセンスとか無いんか??」

 

 

アカン(白目)。

色々とアカンで、コレは。

元ネタと一人も色が一致しとらんやんけ!

終盤まで、「何も知らないイヌシスターさん(13)」とか言われるヤツやろ??

 

うっかり関西弁を口に出してしもた。

ツッコミ魂がうずいたんや……。

 

 

 

 

「猿渡の要所要所で関西弁が出てくるところ、ヒロアカのヒロインみたいよな」

「喜んで良いのかどうか迷うコメントっスね……」

 

戦法としてはウラビティってよりテイルマンなんやけどな。

まぁ鳥山アニキはサルシスターの正体知らんし、しゃーなし。

 

……って、サルシスターちゃうわ!!

アカン、頭の中でクソダサ仮名が定着してまうわ。

こうなったら、緊急招集(スクランブル)や!!

Discord(ディスコ)で声かけて放課後に集合やで!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

\ピンポーン/

 

「アカネはーん、まいどー!」

 

そんなこんなで、放課後にワイが来たんが、何の変哲もない一軒家や。

表札を見ての通り、犬飼さん一家の御宅やで。

ほんで、ここの一人娘の犬飼アカネはんがイヌシスター(仮)の正体っちゅう訳やな。

呼び鈴を押したら30秒も待たせずに、本人のお出ましや。

小豆色の背中にかかる程度の髪を流した、妹感のある女子やで。

 

 

「お待たせ、ミカンちゃん。とりあえずスリッパ用意したよ」

「おーきに」

 

ミカンちゃん、っちゅうんはワイの女バージョンの偽名やな。

女の姿で犬飼家に参上しとる訳や。

ワイの本名と素顔は隠しとるんやけど、変身時の色ぐらいは後から弄れるタイプの魔法少女やさかいな。

デフォルトやと金髪魔法少女なんやけど、髪色を黒に直してTシャツと短パンに換装して一般人スタイルや。

女らしい服なんて持っとる訳ないやろ。

 

ワイの本名は猿渡ハッサクいうんやけど、ホンマは犬飼アカネはんとは普通に学校の同級生なもんで、間違ってもバレたらアカン。

女装はバレたらキッツいで。

なもんで、本名から連想してミカンって名乗っとる訳やな。

 

ワイの口調は……男の時とは違って、素のままで喋らしてもろとるわ。

戦闘時はいちいち標準語に頭の中で変換して喋っとる余裕なんてあらへんからな。

そうしとるうちに、魔法少女トリオの仲間には素の口調で話すのが当たり前になってしもたんや。

正味な話、関西弁(こっち)の方が話すのは楽やねん。

 

 

「なんや、ワイが一番乗りやったか」

「ソラお姉ちゃんって多分高校生だろうし、私達とは下校時間が違うんじゃないかな」

 

犬飼家に上がり込んで、茶でもしばきながら寛がせてもらうわ。

アカネはんの部屋に通してもらうと、まぁ何ちゅうか、絵に描いたような女子の部屋っちゅう感じやな。

ぎょうさんヌイグルミもあるし、パステルカラーのカーテンが窓にかかっとる。

 

 

「自分の家のように寛ぎ始めたね……。今日は緊急会議なんて言い出して、一体どうしたの?」

 

神妙な顔して、アカネはんが腹を探って来とるな。

これからワイが話す内容が一大事やっちゅうことを察しとるんや。

3人そろってから話す予定やったけど、まぁええか。

 

 

「マジな話やで。ワイらの名乗り文句を決める会議や!」

「はぁ……真面目に聞いて損した」

 

そないな白い眼で見んといてや!?

お茶さげんでもええやん!?

ワイらの未来に関わる話やんけ!

なんでや!

名乗り文句大切やろ!?

 

 

「あれ? それってボケじゃなくて本題なの?」

「大マジやで」

 

とりあえずスマホを出して昼間の情報の共有や。

イラスト投稿サイトとかで勝手に名づけられてるんやで、ワイら。

見ろや!

 

 

「へー……。そんなファンアートとか書かれてるんだ。ちょっと、嬉しいかも」

「まぁ有難い話ではあるんやけどな」

 

ファンがいること自体が嬉しいっちゅう気持ちは分かるんやけどな。

でも流石にその名前はクソダサすぎん??

あと東映の偉い人に怒られたら困るやろ。

 

 

「ひょっとして……ファンアートの件数で人気順が分かるかも?」

「ファンアートの数なんて乳比べ順と同じに決まっとるやんけ」

 

「それはそう」

 

キジシスター>>越えられない壁>>イヌシスター>>サルシスター(絶壁)

 

正直、あのオッパイと色気があったらワイらなんて束になっても勝てんやろ。

男はあのオッパイには勝てんのや。

ワイも頻繁に夜の御供として御世話になっとるし。

 

 

……と思っとったんやけど。

なんや、スマホを弄っとったアカネはんの笑顔が曇ったか?

笑顔が曇ったっちゅうより、目が死んだっちゅう感じやな。

悪い意味で衝撃を受けた人間の目や。

 

ワイの方でもスマホで調べてみた方がええやろな。

どれどれ、ファンアートの投稿件数は……?

 

 

イヌシスター:約300件

サルシスター:約500件

キジシスター:約1000件

 

 

 

「おん……??」

 

いや、なんでや。

ソラ姐さんの一番人気は想定内やけど、なんでワイが2番手やねん??

自分で言うのも何やけど、ワイって中身は男やし、ホンマに色気もオッパイも皆無な人種なんやけど?

 

 

「こんなのって無いよ、あんまりだよぉ……!!」*1

「そないにガチ泣きするほどショックやったんか……??」

 

まぁ予想外やったのはワイも同じやけど。

っちゅーか……アカネはん、案外人気とか気にする子やったんかい。

コレは、ますますワイの正体は明かしたらアカンな。

中身が男の奴に負けたって知ったら、アカネはん立ち直れなくなるやろ……。

おいたわしや、アカネはん……。

 

 

「ぐすん……。シスターズって言われてるみたいだし、人気順を盾に私の方が『お姉ちゃん』だって言い張るつもりだったのに……!」

「はん、真面目に聞いて損したわ」(意趣返し)

 

さては、内心「絶対ミカンちゃんにだけは負けないでしょ」みたいに思っとったなコイツ??

しょーもな。

そうやって背伸びをかますとこが、妹っぽいって言われるんちゃう?

 

 

 

 

 

\ピンポーン/

 

『ごめんくださーい』

 

おっと、インターホンから聞こえるこの声は、ソラ姐さんやな。

ちょいノンビリした感じの、落ち着いた声や。

 

アカネはんが、飼い主に呼ばれた犬みたいにスッ飛んで行きよった。

むしろここ、お前の家やろがい?

なんで来客の方が飼い主ポジやねん??

 

 

 

「ソラお姉ちゃーんっ! ミカンちゃんが人気順でマウントとってくるよぉ! 慰めて!」

「何ゆーとんねんジブン!? 完璧にアカネはんが自爆しただけやんけ!」

 

玄関口に立っとったソラ姐さんに駆け寄ったアカネはんは……迷わず抱き着いてオッパイに顔を(うず)めに行きよった!?

何しとんねん!?

羨ましいやんけ!

その場所代われや!!

 

 

「あらあら……? 大丈夫ですよ? ちゃんと()()は、アカネちゃんが優しくて素敵な子だって知っていますから」

 

アカネはんを抱き留めて、ソラ姐さんが優しく頭を撫でとるな。

なんちゅーか、ママ味(?)みたいなモンを感じるわな。

あと、そんなに線が出ない服装のソラ姐さんやけど、抱き着いとるヤツのお陰でオッパイ大きいのが丸分かりやで。

心のチンポに来るわ、こんなん。

 

それと、さらっと「私達」って言えるトコ、ワイへの信頼も感じて素敵やで!

コレは一生ついていきますわ。

まぁ欲を言うたら、ミカンやなくて猿渡ハッサクとしてソラ姐さんにお近づきになりたいんやけどなぁ。

どうやったら接点が出来るんか、誰か教えて欲しいモンや……。

 

 

「もっと褒めて♡」

「アカネちゃんは出来る子です。毎日学校のお勉強も頑張って、怪物とも戦って、偉い、偉~い!」

 

頭を撫でられとるアカネはんが、尻尾をブンブン振っとる幻が見えるわ。

変身前やから尻尾なんて無いんやけど、心の目で見えるんや。

やっぱし、アカネはんに「お姉ちゃん」は無理やろ。

どう考えても妹キャラやで、あんさん。

 

これで闇深系の漫画とかだと、アカネはんがチラっとこっちを見ながら「計画通り……!」って呟いたりするトコなんやろけど。

アカネはんも別に心に闇とか抱えとる子や無さそうやし、普通に幸せそうな顔しとるな。

 

なんちゅーか、三人で仲睦まじく、理想的な関係の魔法少女チームを築けとる感じがするわ。

まさかソラ姐さんに限って、内に秘めたる心の闇が云々とか言い出したりせえへんやろしな!

ワイの身バレだけが不和の種に成り得るんやけど、逆に言えば、それぐらいしか不安要素があらへん。

 

 

「ふふ。ミカンちゃん、何だか御機嫌ですか?」

「せやなぁ。ワイら、ええチームやなって思っただけや。怖いモン無しやで!」*2

 

 

 

 

後は……サルシスターとかいうクソダサネームを何とか回避できれば行幸やな!

 

 

 

 

 

 

*1
奇跡も魔法も無いんだよ……

*2
もう何も怖くない!!




あとがき
なんて牧歌的で愛に溢れた魔法少女チームなんだ……!
これは間違いなくプリキュアorきらら系ですね!!
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